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ラガマフィンの誕生はブリーダーのフランチャイズ契約がきっかけ
長い毛が魅力的な ラグドール は、テレビをはじめメディアで取り上げられる機会も多い人気の 猫種 です。
対して、ラガマフィンはメディアへの露出も低く、まだまだペットショップで見かけることも少ない猫種だといえるでしょう。
しかし、この2種は外見的にも似ている点が多く、同じような歴史を辿ってきた猫種なのです。
それでは、ラグドールとラガマフィンはどんな歴史から異なる猫種になっていったのかをご紹介します。
ラガマフィンの起源を語る前に、まずはラガマフィンのもとになったラグドールがどのように誕生したのかをご紹介します。
ラグドールは、黒いペルシャのブリーダーだった「アン・ベイカー」によって、1960年代に産み出された猫種です。
カリフォルニア州にあるリバーサイドでラグドールを誕生させたベイカーは、独自の登録機関「IRCA」を設立します。
IRCA設立の目的は、ラグドールの繁殖や登録に厳しい条件を課し、ラグドールの権利を独占することでした。
ベイカーは「ラグドールが欲しい」というブリーダーなどの顧客にフランチャイズ契約をさせ、ラグドールに関する権利を独り占めしていたのです。
そのため、愛くるしい見た目を持っているのに関わらず、ラグドールはなかなか一般の人に浸透していきませんでした。
こうしたベイカーのビジネススタイルをよく思わなかったブリーダーは少なくありませんでした。
ブリーダーの中には、ベイカーの考えに反感を示し、ベイカーとは別に育種や繁殖・開発を進めるようになった人も現れたのです。
1994年、そんな事態を見たIRCAのメンバーであるジャネット・クラーマンやカート・ジェム、キム・クラークは、ベイカーにIRCAを去るよう引退を迫りました。
クラークマンたちは、ベイカーを引退させることでラグドールという猫種を正しく人々に広めていこうとしたのです。
しかし、ベイカーがクラークマンたちの意見に反発したため、クラークマンらは自らがIRCAを去り、違う方法でラグドールを浸透させていこうと考えました。
こうして決意を固めたクラークマンたちでしたが、ひとつだけ問題がありました。
それは、交配や繁殖をするにあたり、「ラグドール」という名称が使えないということです。
当時、ラグドールという猫種名はベイカーが商標登録していたため、IRCAから脱退すると、他の名前を使用しなければいけなかったのです。
そんなとき、ジェムが冗談で「いたずらっ子」という意味を持つ「ラガマフィン」という名前でラグドールを呼ぶようになりました。
本人は冗談のつもりでしたが、愛らしい響きが人々に受け、「ラガマフィン」という名前が正式な猫種名になっていったのです。
ラガマフィンは、その後ブリーダーたちが ペルシャ や ヒマラヤン 、長毛種の イエネコ と異種交配(違う種類の猫同士を交配させること)をさせることで育種が進められていきました。
こうした交配の中で、ラガマフィンはラグドールよりも豊富な被毛パターンを持つようになり、体も丈夫になっていったのです。
また、IRCAを脱退したクラークマンは、1997年にRAG(ラガマフィン連合会)を設立し、2008年まで初代会長の役目を果たしました。
こうしたブリーダーたちの努力もあり、ラガマフィンはまず初めにUFO(全米猫組合)に公認され、その後ACFA(アメリカ、テキサス州にあるダラス・フォートワースの愛猫家団体)に認められていったのです。
さらに、アメリカで人気なラグタイム・キャッツ・キャッテリーのローラ・グレゴリーの努力によって、CFAの公認を得ることもできました。
しかし、CFAではラグドールと区別をするため、ポインテッド(ベースとなる毛色よりも顔や耳、しっぽ、手足の色が濃くなる)を持つ子はラガマフィンとして、認められていません。
このように、ラグドールとラガマフィンは外見的に似ているため、CFA以外の公認団体の中には、ラガマフィンを新しい猫種として認めていないところもあります。
なお、イギリスでは2010年にGCCFのプレリミナリー・ニュー・ブリードに認定され、現在チャンピオンシップ・ステータスへの昇格を目指しているので、これから人気になる猫種ともいえるでしょう。
ロング&サブスタンシャルタイプのラガマフィンは、中くらいの体型で長方形の胴体を持っています。
ボリューム感のある体は筋肉質なため、抱いたときにずっしりとした重みを感じるでしょう。
そして、肩幅が腰幅と同じくらいの広さをしているのもラガマフィンの特徴です。
4歳頃に完成するボディは、下腹部からあばら、背骨にかけて肉付きがよいのが理想的だとされています。
ラガマフィンの頭部は、やや丸い変形のくさび型(V字型)をしています。
ウィスカーパッドとも呼ばれるひげ袋は、一般的な 猫 よりも幅広い形をしているでしょう。
そして、ラガマフィンは横から見ると鼻にはっきりとしたへこみがあるのも特徴です。
中くらいの大きさをしている耳は丸みがあり、少し前方に傾いて付いています。
耳の先には、 ノルウェージャンフォレストキャット などにも見られる飾り毛があります。
クルミ形をしている目は、わずかに傾いて付いています。
目色はグリーン、ヘーゼル、イエロー、ゴールド、ブルー、アクアが見られ、オッドアイのラガマフィンも存在しますが、サファイヤブルーは現れません。
四肢の長さは中くらいからやや長めで、前足よりも後ろ足の方が長いです。
四肢の先端は楕円形をしており、指の間にはふさふさとした毛が見られます。
そして、他の猫種より肉球に厚みを感じるのもラガマフィンの特徴です。
ラガマフィンの尻尾は中くらいの太さで、根元が太く、先端が細くなっています。
また、ふわふわの尻尾は長毛種らしいボリューム感もあります。
ラガマフィンは長毛種ですが、被毛の長さはセミロングからやや長めになっており、意外にお手入れが楽なのが特徴です。
ラグドールとは違い、被毛にはブラック、ブルー、チョコレート、ライラック、シナモン、フォーン、レッド、クリーム、ホワイトといったすべてのカラーパターンが現れるので、自分好みの子を見つけやすいでしょう。
ただし、公認団体によってははっきりとしないポイントや白い毛色の量が多い子は遺伝子的な疾患を避けるために、認められていないこともあります。
さらに、首まわりと顔まわりが長めになっているラガマフィンは、前足よりも後ろ足の毛のほうが長くなっており、その手触りはまるでシルクのようです。
毛が密に生えており、ゴージャス感を楽しめるのも、ラガマフィンのチャームポイントだといえるでしょう。
ラガマフィンは、一般的な猫よりも大きく成長する猫種です。
一般的な猫の平均体重は、およそ3~5kg程度といわれていますが、ラガマフィンの場合は4~7kg程度になるといわれています。
オスの中には9kg近くになる子も少なくありませんので、ノルウェージャンフォレストキャットのような大型の猫種を飼いたいと思っている方にもぴったりの猫種だといえるでしょう。
一般的な 猫の平均寿命 は15歳程度だといわれていますが、ラガマフィンの場合はそれよりも少し短く10~13歳程度であるとされています。
しかし、こうした平均寿命は飼い主さんのお世話や普段与えている キャットフード によっても変わってくるので、日頃からラガマフィンの様子をこまめに観察しておきましょう。
運動好きなラガマフィンは食事の量も多いので、高栄養食を用意することも大切です。
キャットフードを選ぶ場合は、主原料(パッケージの一番初めにかかれていて一番多く入っている原料のこと)がお肉やお魚であるものを選ぶと良いです。
ラガマフィンはラグドールよりもまだまだ知名度が低い猫種なので希少価値が高く、値段も高めです。
平均価格は25~30万程度となっており、ペットショップではあまり見かけられませんが、ブリーダー経由で購入することができます。
ブリーダーサーチサイトの中には、ブリーダーとの契約とは別に何日かの生体保障サービスがつけられているところもあるので、お迎えをするときは保障内容にも注目しながら選んでみましょう。
ラガマフィンは人間が大好きで、甘えん坊な性格をしています。
飼い主さんに対して愛情深い態度で接してくれ、ひざの上で眠るのを好む子も多いでしょう。
そして、社交的な性格をしているのもラガマフィンのかわいらしいところ。
温厚な一面も兼ね備えているため、他のペットや小さいお子さんとも仲良くできます。
また、猫らしく遊び好きな子も多いため、 おもちゃ を通してコミュニケーションを取ることもできます。
ラガマフィンは飼い主さんに構われることが好きなため、どちらかというと「近い距離感で猫と触れ合っていきたい」と思っている方におすすめの猫種です。
ラガマフィンは食事量が多いため、肥満になりやすい猫種です。
肥満は糖尿病などの病気を引き起こす原因にもなってしまうので、十分注意するようにしてください。
また、ラガマフィンは毛が長い猫種なので、飼い主さんが抜け毛ケアをしてあげることが大切です。
毛の長さがセミロングからやや長めなラガマフィンは、他の長毛種よりは抜け毛が少ないものですが、やはり自分自身でグルーミングをするだけでは抜け毛ケアが不十分になってしまいます。
そのため、飼い主さんは1日に2回程度のブラッシングを徹底してください。
さらに、換毛期のように毛の抜けやすい時期は2週間に1回程度シャンプーを行って、抜け毛を洗い落してあげるのもおすすめです。
ただし、その際は必ず猫用の シャンプー を使うようにしましょう。
人間用のシャンプーに含まれるアロマ成分は、猫の体に害を与えてしまう場合があるため注意が必要です。
ラガマフィンは交配の中でペルシャの血を受け継いでいるので、ペルシャに見られやすい遺伝性疾患が見られることも少なくありません。
その中でも以下の病気は、ラガマフィンがかかりやすいとされている病気で注意が必要です。
肥大型心筋症は、心臓の筋肉が内側に向かって分厚く肥大化してしまう病気のことです。
肥大すると心室が狭くなり、血液の流れが悪くなってしまいます。
発症年齢は幅広く、生後半年でかかる子もいれば16歳程度の老猫になってから発症するケースもあるので、長い目でしっかりと様子を見ていくことが大切です。
さらに、早期発見が難しいのも肥大型心筋症の特徴だといえるでしょう。
肥大型心筋症は目立った症状がないまま、病気がどんどん進行していきます。
そのため、飼い主さんが飼い猫の異変に気付いたときには、すでに重篤な症状であることも少なくありません。
代表的な症状としては、少し運動しただけで 犬 のように息を切らす、歩き方に異変がみられる、呼吸困難を引き起こす、立なくなり痛がっているというような症状が見られます。
猫の心筋症では無症状に見えることが多いので、若い時から血液検査で心筋トロポニンなどの心臓マーカーを計測いておくと安心です。
肥大型心筋症は、現代の医学では完治させられない病気です。
しかし、病気が進行する前に早期発見することができれば、血栓症や肺水腫などが予防できるお薬を使って飼い猫の体を守っていくこともできます。
そのためには、定期健診のときに超音波検査や血液検査をしっかりと受けさせていきましょう。
多発性のう胞腎症は、ゆっくりと着実に進行していく遺伝性の腎臓病です。
この病気は、ペルシャと血縁関係がある猫種に起きやすいといわれており、 アメリカンショートヘアー や スコティッシュフォールド にも見られやすいといわれています。
多発性のう胞腎症を持っていると、両方の腎臓にできた小さなのう胞(液体が入った袋状のもの)が数を増やしながら少しずつ大きくなっていき、腎臓が劇的に肥大化していくのです。
こうなると、慢性腎不全と同じように食欲不振や多飲多尿、体重減少といった症状が見られるようになります。
多発性のう胞腎症は、残念ながら現在の医学では完治させることができません。
そのため、治療時は慢性腎不全の子と同じように、タンパク質やリンを制限した食事を徹底したり、血圧降下剤で高血圧対策を行うことが大事だとされています。
遺伝性の疾患である多発性のう胞腎症は、予防をするのが難しい病気なので、心配なときは、子猫のうちから受けさせられる遺伝子診断や超音波検査などで早期発見を目指しましょう。
長毛種であるラガマフィンは、飼い主さんが抜け毛ケアを怠ると毛球症を引き起こしてしまう可能性も高くなります。
毛球症は、毛づくろいのときに飲みこんだ抜け毛が消化器官の中にとどまってしまい、排泄や嘔吐で体の外へ出せなくなる病気のことです。
主な症状としては、食欲不振になったり、吐くような素振りを見せるのに吐き出せなかったりします。
中には、お腹を触られることを嫌がり始める子もいるでしょう。
毛球症は軽度であれば、毛球除去剤を猫に舐めさせて体内にとどまっている毛を排出させることができます。
しかし、それでも症状が改善しなかったり、腸閉塞を引き起こしてしまう可能性があったりしたときは開腹手術を行って、体内の毛玉を取り出さなければいけないこともあるので、猫の体に大きな負担をかけてしまう可能性もあるのです。
毛球症は、飼い主さんが日頃からこまめにブラッシングをしてあげるだけでも十分防げる病気です。
また、ブラッシングだけでなく、抜け毛ケア用のフードや おやつ 、猫草などを併せて与えることも効果的なので、ぜひ飼い主さんの努力で飼い猫の健康を守っていってあげてくださいね。
原産地:アメリカ
原種:ペルシャ、ラグドール
公認団体:CFA、TICA、GCCF
入手しやすさ:やや難しい
価格:25~30万
平均寿命:10~13歳
毛色:すべての毛(ブラック、グレー、チョコレート、レッド、ライラック、フォーン、クリーム、ホワイト)
目色:サファイヤブルー以外のすべての目色(グリーン、ヘーゼル、イエロー、ゴールド、ブルー、アクア) ※オッドアイも産まれる
体重:オス6.8~9kg、メス4.5~7kg
ボディタイプ:ロング&サブスタンシャルタイプ
体型:中型
特徴:筋肉質でがっちりしていて、ボディは長方形
性格:飼い主に対して愛情深く、社交的
かかりやすい病気:肥大型心筋症、多発性のう胞腎症
毛種:長毛種
ラガマフィンは、ラグドールとはまた違った愛らしさが楽しめる猫種です。
見た目だけでなく性格も愛くるしいので、猫を飼うのが初めてだという方でもお世話しやすいといえるでしょう。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/09/28
公開日 : 2017/11/14