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白いもこもこの身体や日本犬特有の少し細い目つきは 柴犬 を彷彿させますが、三重県や 和歌山県 原産のこちらの犬は「紀州犬」という名称で親しまれています。
身体も丈夫で寒さにも強く、 日本犬 の中では家庭犬としての人気も高く、柴犬に次いで多い飼育数を誇ります。
それでは、こちらの紀州犬とはいったいどんな歴史を持ち、どんな性格の犬なのでしょうか。
性格や飼育に必要なもの、かかりやすい病気などを紹介していきます。
紀州犬は主に紀伊の国(現在の三重県や和歌山県周辺)に生息していた 犬 で、イノシシ猟やその他の猟犬として活躍していた土着犬です。
紀州犬にイノシシ猟を覚えさせるための専門の訓練所も存在し、昔から紀州犬は紀伊の国の人々の生活に密接に関わりを持ってきました。
1934年に国の「天然記念物」に指定されて以降、 和歌山県 は種の保存に努めて、より優秀な血統に「優良紀州犬章」を交付するなどの活動を行っています。
現在でも紀州犬の飼育率は近畿地方に多く、変わらずに現地の人々に親しまれています。
紀州犬は好奇心旺盛で独立心が強く、運動能力が高く多くの 散歩 を必要とします。
飼い主に従順で甘え上手な一面もありますが、逆に飼い主やその家族以外に対しては警戒心が強く、攻撃的になる面も持ち合わせています。
テリトリー意識が強く、番犬として非常に有能ですが猟犬としての特性上無駄吠えが少ないので、侵入者の撃退の面で活躍するでしょう。
また、独占欲の強い一面があり、他犬に対しても攻撃的になりやすく単独飼育が望ましいです。
もし 小型犬 が先住犬としている場合は、紀州犬は本能的に自分より小さい犬は獲物と認識してしまい襲ってしまうことがあるので、居住空間を完全に分けるのが良いです。
幼少期に徹底したしつけを行うことにより、その頭の良さから呑み込みも早く周囲に対しての攻撃性も抑制することができます。
飼い主やその家族に対しては従順なのでしつけをすることで、子供にも優しく接することができます。
丈夫な身体でたくましい強さを兼ね備えた紀州犬は屋外での飼育も可能ですが、寂しがり屋の面もあるので常に飼い主や家族の目につく場所での飼育が望ましいでしょう。
ピンとたった三角耳に少し細めの目つきが特徴で、尾は巻尾ではなくさし尾の場合が多いです。
身体の被毛はダブルコートで筋肉質な身体をしており、 秋田犬 より柔らかい毛質で換毛期の抜け毛は多く、ブラッシングが欠かせません。
成長すると体重は10kg~25kg前後で 中型犬 に分類され、寿命は14年前後と長生きする個体が多いです。
雄の方が雌に比べて縄張り意識が強く、他犬に対して攻撃的になりやすいですが、人には良く慣れ飼い主がリーダーシップを発揮すれば しつけ もしやすいです。
逆に雌の場合繁殖期などの時期もありますが、神経質な子や臆病な性格の子も多く、人と打ち解けるのに時間がかかる場合があります。
色は虎毛や胡麻なども認められていますが、現在は白い被毛の個体がほとんどで理由としては、山林などでイノシシと間違って誤射を防ぐためだと言われています。
実際に白色の人気が高く現在まで多く残ったというのが理由に挙げられ、過去にはまだら模様の紀州犬も存在していましたが、現在まだら模様は絶滅してしまいました。
原産国:日本、紀伊の国(現在の和歌山県・三重県周辺)
値段:20万円~25万円前後
毛色:白、ブリンドル、胡麻、レッド
寿命:14歳前後
体重:10kg~25kg
体高:43cm~53cm
特徴:三角耳に密集したダブルコートで尾はさし尾であり、筋肉質な身体つきをしている
性格:好奇心旺盛で独立心が強く我慢強い。飼い主とその家族には愛情深く従順だが、外部の人に対しては警戒心が強く攻撃的になる一面も持つ。頭がよくしつけも入りやすいが、神経質な面もある。
かかりやすい病気:皮膚疾患、心疾患等
注意点:地域の自治体によっては紀州犬は「危険犬」に指定されており、飼育に条件付きの場合もあるので、事前に最寄りの自治体に確認をしてください。
犬を飼育する際に用意するものを準備いただければ問題ありませんが、ここでは紀州犬を飼育する際にあった方が良いアイテムをご紹介します。
紀州犬を家族にお迎えしようか検討中の方や、紀州犬に興味を持っている方は参考にしてください。
紀州犬の場合力が強く瞬発力もあるので、突発的な動きにより首輪が外れてしまう恐れがあります。
一度解放されてしまった紀州犬は特に若い個体の場合、興奮してしまいなかなか呼び戻しがきかないものです。
筆者のお世話をしていた紀州犬もこちらの慌てた反応を見て遊びと勘違いしてしまい、なかなか帰ってきてはくれませんでした。
きちんと訓練の入った個体ならさほど大事には至らないでしょうが、散歩途中での逃走や他の犬に攻撃してしまったなど重大な事故に発展しかねません。
太めのぴったりサイズの首輪を用意することで事故を未然に防ぐことができ、おすすめは頑丈な皮の首輪です。
またハーネスも有効ですが、ハーネスは布製品であることが多く紀州犬がかみちぎってしまうこともあるので素材を慎重に選ぶのが良いでしょう。
最近では、力の強いワンちゃん用にジェントルリード(運動力学的に、グイグイ引っ張れないようなリード)も売られています。
噛まれてしまいそうな部分は金属製になっているものがおすすめです。
紀州犬本人に逃走する意思がなくても、俊敏な紀州犬に追いつき捕獲するのはなかなか大変なものです。
※合わせて読みたい: 犬の首輪・リード・ハーネスの種類と選び方、おすすめ商品も紹介!
紀州犬は現代でも猟犬として活躍しており、高い運動能力を持っています。
それに加え好奇心旺盛で独立心が強いため、若い年齢の時期は落ち着いていることが少なく活発に活動します。
室内飼いでのお留守番は苦手な子も多く、家族の不在時にはサークルをよじ登って脱走するなどの可能性が考えられます。
頭も大変良いので、サークルのカギを外してしまい脱走するというケースもあり、頑丈なサークルを用意するなどの対策が必要です。
脚力が強く、ジャンプ力も高いので背の高いサークル、または屋根付きのハウスを用意するのをおすすめします。
そして、幼少期のうちにお留守番のしつけを行うことが、脱走の予防になります。
※合わせて読みたい: 犬のサークルはどうやって選ぶ?犬用サークルの種類、選び方、おすすめ商品、diyの仕方まで
紀州犬は被毛が密にあり夏季などは湿気がこもり易く、皮膚疾患を起こしやすい 犬種 の一つです。
特に抵抗力の落ちた老犬は皮膚疾患を発症しやすく、発症してからですとなかなか回復に時間がかかるので、普段の 餌 に気を付けることで予防することができます。
アレルギーが出にくい自然食品を選ぶようにしたり、添加物の表示に気を付けて愛犬の健康管理をしてあげましょう。
※合わせて読みたい: 【獣医師監修】安心・安全なおすすめドッグフード22選!犬の餌やりの方法や注意点も解説!
ここでは、紀州犬がかかりやすい病気をご紹介します。
もし愛犬に気になる症状がある場合は、早めに動物病院を受診するようにしましょう。
また、治療方法や症状に関してはあくまで代表例として紹介しています。
概要として以下にまとめているので、愛犬の健康チェックの参考になれば幸いです。
なお、素人での診断や治療は危険ですので、不安な症状が出た場合は必ず専門の獣医さんにご相談ください。
紀州犬は被毛が密集しているため、皮膚疾患が起こりやすいです。
一口に皮膚疾患と言っても様々な原因があり、早期発見と原因特定が大事です。
最もかかりやすい皮膚疾患としては膿皮症などが挙げられますが、症状はフケ・かゆみ・脱毛・かゆみが酷い場合掻き壊しによる出血・化膿などが挙げられます。
膿皮症自体は直接死につながる病気ではありませんが、症状が悪化すると発熱や二次感染の危険もある厄介な皮膚疾患です。
屋外の飼育の場合はノミ、マダニなどの寄生虫による感染も考えられます。
少しでも普段と違う症状を感じた場合は獣医師の診察を受けましょう。
顕微鏡検査により皮膚疾患を起こしている原因を特定します。
原因の特定ができたらその症状に合わせた薬用シャンプーによる薬浴、投薬治療と外用薬を併用しながら症状の緩和をしていきます。
痛みやかゆみがひどい場合には痒み止めを使用して症状を抑えつつ、皮膚の回復力を高める治療を行います。
必要に応じてフードを皮膚サポートのものに変更したり、処方食を併用して経過観察していきます。
幼少期より皮膚に配慮したフードを与えたり、定期的にシャンプーをすることにより清潔に保つことで予防が可能です。
また、ノミ、マダニに対しては予防薬を使用するなどして対応できます。
一番の予防は、定期的にブラッシングやスキンシップをとるなどして日々の健康チェックを行うことでしょう。
しつけの際に信頼関係を築き、触られることに抵抗のないようにしつけることができれば早期発見につながります。
紀州犬は遺伝的な疾患として、白内障・緑内障などの目の疾患にかかりやすい犬種です。
シニア期になるほど発症率は高く、一度発症してしまうと完治は難しく長い付き合いの病気になります。
白内障・水晶体が白く混濁した状態を言い、目が白く見える・物にぶつかるなどの症状が見られ、視覚が狭くなることへの不安から夜泣きや攻撃的になる子もいます。
住み慣れた家の中などでは視覚以外の気管を働かせて生活できるため発見が遅くなる場合もあります。
普段との違いがなくてもつまづきや、瞳孔が常に開いてるなどの症状がみられる場合は白内障の可能性があります。
緑内障・犬の眼圧が上がって痛みや視力低下、失明などの状態になってしまう病気です。
目が出っ張ってみえる・顔を触るのを嫌がる、眼球が緑っぽくみえるなどの症状が見られます。
緑内障は痛みを伴うことが多く、犬にも多大なストレスをもたらす緊急性の高い目の疾患です。
緑内障により眼圧が上がることにより、目が突出しやすくなり、眼球が傷ついて二次感染を起こす場合があります。
その際には流涙、目ヤニ・目の周りの腫れなどの症状が見られます。
白内障には効果的な内科療法(お薬でなんとかする)はありません。
症状が重度の場合は水晶体を取り除き、人口のレンズを入れる外科手術が施されます。
外科手術は合併症も出てくることがあるので、専門医で適応できるかの判断をしてもらいましょう。
緑内障では薬物治療と点眼薬により眼圧を下げて痛みを緩和させる治療を行います。
眼球に傷があり、二次感染を起こしている場合には抗菌薬を投薬、点眼治療を併用して行います。
原因によっては炎症を抑える治療がメインになることも多いです。
症状が進行してしまい、眼球に負担がかかっている場合には外科手術が施されますが、最悪の場合眼球の摘出となってしまう場合もあります。
これらの目の疾患を予防することは難しいですが、幼少期からの目の観察をすることが一番の予防になり、早期発見になります。
また、年に一回の健康診断をすることで、愛犬の状態を把握でき目の疾患だけに限らず、病気を初期の段階で発見することができ適切な治療を行うことができます。
心疾患も遺伝的に紀州犬がかかりやすい病気の一つです。
高齢になってからの発症がほとんどですが、血統によっては若年性で発症することもあります。
運動が大好きな紀州犬にとって心疾患は命の危険もある重要な病であり、十分な運動ができないことで犬にとってもストレスになります。
一番特徴的な症状は咳であり他に運動を嫌がる、食欲不振・失神などの症状がみられます。
また、遺伝性の心疾患の場合は親犬が心疾患を発症している場合があり、同様の症状が確認できます。
咳の症状で有名なのは他にフィラリア症があげられますが、乾いたような咳や細かい咳の場合心疾患の疑いがあります。
一度発症してしまうと完治は難しく、長期的な治療が必要になります。
症状を緩和させるために薬物療法が一般的になり、併せて心疾患用のフードを与え心臓への負担を軽減させます。
また、激しい運動を避け夏などは風通しの良い涼しい場所で飼育するなど対策します。
紀州犬を購入する際に血統を確認して親犬に心疾患を持つ犬がいないかを確認することが一番の予防になります。
また、激しい運動のあとは、適度に休憩をとるなどの適切な運動が健康維持には大切です。
さらには肥満は心臓に負担をかけ、その他の病気にもかかりやすくなります。
普段の栄養管理、日常生活を見直すことで、臓器にかかる負担を減らすことができます。
紀州犬は私たち日本人の生活に昔から密着してきた、かけがえのない大切なパートナーでした。
現在もその位置は揺るぐことがなく、多くの紀州犬は猟犬として活躍しています。
その頭の良さや飼い主に対する一途な性格から家庭犬としても人気の犬種であり、身体の丈夫さから屋外飼育も可能な 日本犬 です。
ぜひライフスタイルに合わせた飼い方を検討し、紀州犬をパートナーとして迎えて頂ければ幸いです。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/04/18
公開日 : 2017/08/23