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猫がブラックキャップを食べたゴキブリの死骸を食べても大丈夫なの?
アース製薬から発売されている 「ゴキブリ駆除薬」 。
ゴキブリを見るのはもちろん、名前を口にするだけでも嫌!という方も多いのではないでしょうか。
他にも多くのゴキブリ駆除薬は販売されていますが、今回はその中でもよく見かけるブラックキャップについてご紹介します。
有効成分として含まれるフィプロニルの速効性の効果で、チャバネゴキブリであれば5時間ほど、クロゴキブリであれば1日ほどで死に至らしめます。
また、ブラックキャップを食べたチャバネゴキブリが持つ卵(抱卵初期)にも効果があるそうです。
ゴキブリはブラックキャップを食べた後、巣に戻ってから死亡することが多く、その死骸や糞を食べた他のゴキブリにまで効果が及びます。
そのため、 ゴキブリを巣ごと駆除できる可能性の高い駆除薬 なのです。
このようにゴキブリ駆除にとても効果があるブラックキャップ。
しかし、しぶといゴキブリにこれほど効果がある薬を、家の中に猫がいても使うことができるのでしょうか。
万が一猫がいたずらして食べてしまっても、大丈夫なのでしょうか。
そのような疑問をアース製薬さんに問い合わせてみたところ、 「猫のいるご家庭でも安心してご使用いただける」 と回答をもらえました。
その理由についても詳しくお話します。
まず第一に、薬剤の入っている容器が丈夫にできているということが挙げられます。
大型犬であれば破壊してしまったり、丸飲みしてしまう可能性はゼロではないですが、 一般的な猫の力では破壊することも、丸飲みすることも考えにくい構造 です。
また、容器にはゴキブリが侵入して中の薬剤を食べることができるように隙間があいています。
しかし、この隙間はかなり小さいため、猫がいくら器用な動物とはいえ、中の薬剤に接触することは不可能と思われます。
つまり、 猫が薬剤を食べてしまうことは物理的にほぼ不可能 であるということなのです。
その他、ドーム状のブラックキャップの場合、猫は見かけると高確率で遊んでしまいます。
前足でブラックキャップをパンチして、カーリングストーンのように床を滑らせたりして遊ぶこともあります。
しかし、ブラックキャップを激しく壁に打ち付けても、薬剤は中にしっかりと収まってるため、衝撃で出てきてしまうことはまずないとのことです。
猫がブラックキャップの中の薬剤を食べることは構造的にほぼ不可能とはいえ、万が一食べてしまうことがあったら大丈夫なのでしょうか。
猫がいても安心して使用できる理由として、丈夫な構造の他にも 含有成分が猫に対して毒性が低い ことも挙げられます。
アース製薬さんによると、ブラックキャップの薬剤を猫が食べてしまっても、大量でなければ特に問題ないとのことでした。
例えば、10kgほどの犬で30個食べてしまったというような大量摂取の場合は健康被害を起こす可能性がありますが、少量であれば問題ないとのことでした。
ブラックキャップの有効成分であるフィプロニルという薬剤は、猫のノミダニ駆除薬にも含まれている成分です。
つまり、通常の生活で猫が使用している薬剤なのです。
一般的なノミダニ駆除薬に含まれているフィプロニルは、一回使用量あたり50mg です。
また、体につけるタイプのノミダニ駆除薬を販売している会社が行ったフィプロニルの毒性試験では、通常使用量の約5倍の262mgを生後約1.5ヶ月の子猫につけても健康上問題はなかったという結果が出ています。
一方、 ブラックキャップ一個に含まれているフィプロニルの量は1mg とごく少量なので、もしまるまる一個食べてしまっても猫に健康問題が起こる可能性は極めて低いと言えるでしょう。
その他、フィプロニルは 昆虫などの無脊椎動物の神経系に作用して殺虫効果 を示します。
哺乳類と無脊椎動物ではフィプロニルの作用する神経系の構造が異なるため、 哺乳類に極めて高い安全性がある ことが知られています。
ただ、ブラックキャップの薬剤は半生状態になっており、高温多湿環境下では使用期限内でもカビが生えてしまうこともあるそうです。
そのような傷んでしまったものを猫が食べてしまった場合は、胃腸に問題を起こす可能性も考えられます。
さらに、猫の一般的な体格や顎の強さから考えると起こる可能性は極めて低いと思いますが、丸飲みしてしまったり噛み砕いて中の薬剤を飲み込んでしまった場合は、外側のプラスチックによる腸閉塞や、消化管に傷がつく可能性も考えられます。
ブラックキャップの成分表示を見てみると、様々な成分名が書いてあります。
有効成分であるフィプロニル以外の成分についても、猫に毒性を起こす可能性がないか、アース製薬さんに尋ねてみました。
成分表示に出ている液糖、濃グリセリン、水飴、香料、黄色4号に関してはゴキブリを引き付けるエサの部分であり、特に猫に強い毒性を引き起こすものはありません。
他に成分の中で 安息香酸デナトニウム というものがあります。
これは万が一子供や動物がブラックキャップを口に入れてしまった場合、たくさん食べてしまうことを防ぐために含まれている 苦味成分 です。
人間の子供の指しゃぶりや、爪かじり対策にも使用されている成分です。
この成分は、猫や犬のいたずら防止スプレーにも含まれているため、猫が口にして大きな健康被害が起こる可能性は低いと言えるでしょう。
また、猫は苦味を感じる遺伝子が他の肉食獣よりも圧倒的に多いという研究結果もでており、他の動物と比較しても苦味に敏感な可能性があります。
研究によると、安息香酸デナトニウムに対して人間より敏感に反応する猫もいるということです。
このように 猫は苦味に敏感な動物 なので、おいしいと思ってブラックキャップをバクバクと食べてしまうことはあまり考えられなさそうです。
ただし、苦いものを食べた時に猫によっては驚くほどヨダレを垂らしたり、口をクチャクチャさせて泡を出す子もいるので、そのような症状が認められる可能性はあります。
ブラックキャップの成分表示には、これらの成分以外にもその他8成分という記載があります。
これに関しても猫に毒性を持つ可能性のある成分がこの中に含まれているかアース製薬さんにj問い合わせてみたところ、 「その成分は社外秘なので詳しくは伝えることはできない」 とのことでした。
しかし、玉ねぎエキスなどは入っておらず、また含まれているものもごく少量なので、 大量に摂取しない限り猫に対して健康被害を起こす可能性はまずない と考えられるとのことでした。
以上のように含有成分の猫に健康被害を起こす可能性は低く、さらに苦味成分による大量摂取防止策もとられているため、猫のいる環境でのブラックキャップ使用に関しての安全性は高いと言えるでしょう。
あまり想像したくありませんが、猫はハンターなので昆虫を食べてしまうことは珍しくありません。
もちろんゴキブリも例外ではないので、ゴキブリやその死骸を食べてしまうことも起こり得ます。
ブラックキャップを食べたゴキブリによって、 猫に健康被害が及び可能性は低い と考えられますが、 ゴキブリは寄生虫を持っている危険性 があります。
猫がゴキブリを食べることで、鉤頭虫類や回虫類などの様々な寄生虫感染症にかかる可能性があるのです。
これらの寄生虫に感染すると、種類によっては下痢・血便・食欲不振などの症状を起こしますが、症状を何も起こさないこともあります。
完全に防ぐのは難しいかもしれませんが、出来る限り猫がゴキブリを食べないように対策をすることが大切です。
また、どうしてもゴキブリを食べる機会の多い猫では、定期的な駆虫薬の投与を検討してもいいかもしれません。
万が一猫がブラックキャップを食べてしまった場合は、少量であれば大きな問題はないと考えられるので、特に症状がなければご自宅で様子を見ることもできると思います。
ただし、 食べてしまった後に嘔吐や下痢などの症状が出ていたり、いつもと様子が違ったりするようならすぐに動物病院を受診 してください。
成分の安全性が高くても、苦味などに強く反応して吐いてしまうなどの症状が起こることも考えられます。
もしそのような症状が出ている場合は、脱水を防ぐために点滴などの処置が必要になる可能性もあります。
アース製薬さんのホームページで、子供やペットがブラックキャップを誤飲してしまった場合の対処法として、水や牛乳を飲ませるという記載があります。
しかし、猫の中には牛乳で下痢をしてしまう子もいますので、今まで牛乳を飲んだことのない子では避けた方が良いでしょう。
もしブラックキャップを食べてしてしまった場合は、水を飲ませる 方が安心です。
ただし、無理やり口に水を入れることは、誤嚥してしまう可能性があるのでやめてください。
猫缶を水で薄めてスープ状にしたものや、フードをふやかしてあたえるなど工夫して、水分摂取量を増やすようにしましょう。
また、 容器のプラスチックを食べてしまった場合は、緊急状態になってしまうこともあるため、すぐに動物病院を受診 するようにしてください。
構造的に食べてしまう可能性が低くても、いたずらされてしまうとブラックキャップ本来の効果も発揮できませんし、万が一食べてしまったらという不安もあります。
猫が絶対に いたずらできない場所にブラックキャップを設置する ということが一番の対策と言えるでしょう。
戸棚の中や家具の隙間など、ゴキブリが好む場所は、猫の手が届きにくい場所でもあります。
もし、どうしても猫の手が届く場所に設置したい場合は、裏面をテープで床に固定するといたずらされにくいです。
ゴキブリ駆除薬は様々な種類のものが市販されており、中には猫が食べてしまう可能性が高く、健康被害を起こしやすい商品もあります。
毒性があるわけではなくても、粘着シートタイプのものは猫が貼り付いてパニックになり、大事故に繋がることも考えられます。
また、貼り付いたシートを剥がすために麻酔をかけなくてはいけないような事例もあります。
猫はとても好奇心旺盛な動物ですので、基本的にそのようなものはイタズラをするものだと考えて防止策を講じておいた方が良いでしょう。
ゴキブリを駆除することは寄生虫に感染するリスクを下げることにもなるので、猫の健康面からもゴキブリ対策をすることはおすすめです。
万が一いたずらされても、安全性の高いものを調べてから設置するようにすると安心ですね。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2020/11/11
公開日 : 2020/11/11