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猫の喧嘩にも、人間と同様に様々な理由があります。
ここでは、猫が喧嘩をする理由を野良猫と飼い猫に分けてご説明します。
野良猫の喧嘩で多いのは縄張り争いです。
野良猫は飼い猫と違い、食べ物がいつも手に入るわけではありません。
雨風にも晒されて、暑さ寒さにも耐えなければならないとても過酷な環境で暮らしています。
そのため、より多くの食べ物や、快適な居場所を手に入れるためには、自分の縄張りを広げておく必要があります。
また、雌猫の発情期には、雌をめぐる雄同士の争いも起こります。
飼い猫は、いつも食べ物がもらえ、快適な居場所も提供されていて、一見何の不自由もなく暮らしているように見えます。
しかし、同居猫がいる場合、相性に関わらず、いつも同じ空間で暮らさなければなりません。
飼い猫の喧嘩の理由は大きく2つに分けられます。
飼い猫の場合も野良猫と同様に、縄張り争いによる喧嘩が起こります。
狭い部屋の中では大抵の場合、猫同士の縄張りは重なり合っています。
猫同士の関係が良好なときは、時間的な棲み分けで問題なく縄張りを共有しますが、新しい猫が来た時には喧嘩が起こりやすくなります。
トイレが好きなときに使えないなど、環境についての不満が喧嘩に繋がることもあります。
また、雄同士の方が雄性ホルモンであるテストステロンの影響で喧嘩が起こりやすい傾向があります。
同居の猫を怖いと思っていて、その猫が近づいてくるだけで威嚇をしてしまうことがあります。
この場合、威嚇された猫もびっくりして攻撃してしまうことがあり、喧嘩になります。
それで痛い目に合うとますますその猫に対して恐怖心を抱くようになり、悪循環に陥るとこも考えられます。
猫同士が遊んでいるときも、一見すると喧嘩のように見えることがあります。
同居猫同士の喧嘩は大怪我に繋がることもあるので、出来るだけ早く対処したいですね。
ここでは喧嘩とじゃれあいの見分け方についてご紹介します。
どちらかの猫が唸り声をあげたら、喧嘩だと考えた方が良いでしょう。
唸り声は本気で怒っているサインです。
その前段階として、口を大きく開けて「シャー」と言うことがありますが、これはじゃれ合いの中でも見られる行動なので、一概に喧嘩とは言えません。
しかし、普段から喧嘩になりやすい猫同士の場合は、「シャー」と言っている時点で対処した方が安心です。
猫の爪は通常、相手を傷つけないように隠れた状態になっています。
仔猫の場合は爪を隠すことが出来ないので「出しっぱなし」になりますが、成猫が爪を出している場合は、攻撃の意思があると思った方が良いでしょう。
喧嘩になると興奮するので瞳孔が開きます。
夜は元々瞳孔が開いているので、それで喧嘩かどうか判断するのは難しいですが、昼間猫同士が瞳孔を広げて睨み合うように向かい合っているときは喧嘩です。
毛が逆立っている場合、瞳孔が開いているのと同様に興奮しているサインです。
耳がペタッと後ろに反って頭の方についている場合は、恐怖を感じているサインです。
この場合、自分を守るために相手の猫を攻撃してしまい、喧嘩になることがあります。
猫の喧嘩の勝ち負けは、どのようにして決まると思いますか?
猫同士の喧嘩には一定のルールがあります。
取っ組み合いをする中で力が及ばないことが分かると、地面に伏せて耳を倒します。
これが「負けました」というサインです。
すると、この行動を見た勝った方の猫はそれ以上攻撃をしなくなります。
狩りとは違い、相手の息の根を止めることが目的ではないため、一定の時間で終わりますが、ときには怪我をしてしまうこともあります。
猫の口の中は細菌が多いため、噛み傷が深いと命にかかわることもあります。
飼い猫の場合は、極力喧嘩にならないように注意しましょう。
激しくなってしまった猫の喧嘩、出来れば猫同士が怪我をする前にやめさせたいですよね。
また、仲直りして欲しいと思うのも飼い主の心情だと思います。
猫の喧嘩をやめさせる方法と仲裁に入る際に気を付けるべきポイント、仲直りのさせ方について見ていきましょう。
簡単で飼い主の安全を確保しながら出来る方法です。
一瞬猫の気を逸らすことが出来ますので、「戦意喪失状態」になっているうちに猫をそれぞれ別の部屋やケージに入れましょう。
空き缶を金属のスプーンで叩く、コインを入れた空き缶を鳴らす、笛を吹くなど、普段聞きなれないような大きな音を出して猫の気を逸らします。
猫たちは驚いてどこかへ逃げるので、一時的に喧嘩を終わらせることが出来ます。
水が顔にかかるのが苦手な猫は多いので、これも驚いて喧嘩どころではなくなります。
ただし、あまり近くで水鉄砲を向けると臆病な猫は飼い主を怖がるようになってしまうことがあるので、なるべく遠くから「ぴゅっ」と一瞬かける程度にしましょう。
野良猫の場合は、仲裁しても、その後人間がその猫たちのために出来ることはありません。
保護するなど家に迎えるつもりがない場合は、野生動物と同じように考え、仲裁に入るのはやめましょう。
仲裁するときにやってはいけないことがいくつかあります。
理由と共に注意点をお伝えします。
喧嘩が起きているときに、素手や軍手で猫を止めるのは噛まれる恐れがあり、大変危険なので絶対に行わないでください。
猫の歯は鋭く、軍手をしていても貫通してしまいます。
体罰はもちろんのこと、「ダメ!」などと猫を叱責することもやめましょう。
叱られた方が八つ当たりをして余計に攻撃してしまったり、飼い主の関心を引こうとして、わざとちょっかいを出したりする可能性があるためです。
なだめる行為も良いとは言えません。
一見すると、優しく声をかけるのは良いことのように思えるかもしれませんが、飼い主の優しい声を聞いて、猫が喧嘩自体を良いものと勘違いしてしまう可能性があるからです。
喧嘩が起きたときは、猫にあまり声かけはせず、とにかく一度猫同士を離すことが大切です。
猫を仲直りさせる方法についてご説明します。
この方法は喧嘩を防ぐことにも役立ちますので、これから新しい猫を迎えるご家庭でも是非お試しください。
雄はテストステロンの分泌により攻撃的になることがあります。
子どもを望んでいないのならば、去勢手術をしましょう。
去勢手術を行うことで、部屋の柱などへのマーキングも防ぐことが出来ます。
仲良くさせたい猫をそれぞれタオルでふき、タオルに匂いをつけます。
そして、相手の猫にそのタオルを嗅がせます。
このとき、タオルを嗅いだ猫が威嚇する様子もなく、何も反応しなければ、好きなおやつなどご褒美をあげます。
ご褒美をもらった猫は、何度も同じことを繰り返すうちに、他の猫の匂いを嗅ぐとご褒美がもらえることを学習します。
こうすることで、お互いの匂いとご褒美という良いものと結び付くので、「他の猫自体が良いもの」と認識され、喧嘩をしなくなります。
タオルを嗅ぐことに慣れたら、徐々に2匹の距離を縮めます。
焦らずに、少しでも威嚇したり、怯えたりするような仕草が見られたら、それ以上近づけないようにします。
攻撃的な様子や怖がる様子がなければ、ご褒美をあげます。
一緒の部屋にいられるようになっても、慣れないうちは、万が一のことを考えて猫から目を離さずハーネスなどをつけて、いつでも仲裁出来るようにしておきましょう。
喧嘩を減らすための方法の一つとして、飼育環境を整備することはとても重要です。
多頭飼いをする場合には、猫が安心出来る場所を作ってあげましょう。
それぞれのケージを用意し、落ち着いて眠れる場所を作ってあげます。
猫は高いところに登ると落ち着く習性があるので、キャットタワーもあると良いでしょう。
トイレの数と餌や水入れの数は、飼育頭数プラス1個が理想だと言われています。
猫の喧嘩について理由や遊びとの違い、喧嘩をする上での暗黙のルール、仲裁や仲直りのさせ方などをご紹介しました。
猫が喧嘩をし始めたときは、猫も飼い主も怪我をしないように、なるべく早く安全な方法で仲裁しましょう。
仲が悪くなってしまった猫同士を仲直りさせるには根気が必要です。
焦らずに、反応を見ながら行うようにしてください。
なかなか上手くいかない場合や飼い主が生活の中で困ることがある場合には、動物の行動治療を行っている動物病院に相談することをおすすめします。
日頃からトイレの数や餌の置き場所、新しい猫の迎え方などに気を配り、喧嘩が起きにくい飼育環境を整えて、猫も飼い主も心穏やかに暮らしたいですね。
執筆・監修:獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)
原因不明の難病に20年以上苦しみながらも、酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師免許を取得。
小動物臨床や、動物の心理学である動物行動学を用いたカウンセリング、畜場での肉の検査(公務員)など様々な経験を経て、現在は書籍の執筆や講演活動などを行なっている。
車椅子生活をしながら活動する、日本で唯一の「寝ながら獣医師」。
最終更新日 : 2024/07/11
公開日 : 2020/11/09