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犬のしつけと聞いて、思い浮かべるのはどんなことでしょうか。
無駄吠えや噛み癖、いたずらを正すことと答える人も多いもの。
中には、ご飯の前に「待て」ができる、「おすわり」や「お手」ができることもしつけと答える人も多いはずです。
しかし、犬のしつけのためにすべきことはこれだけではありません。
問題行動を正すこと、「おすわり」などで犬をコントロールすること、時には芸を覚えさせること、そして外界のあらゆる刺激に慣れさせること、全てが犬のしつけとなります。
ここでは、犬を家族として迎える前に知っておきたい犬のしつけについて全てお伝えします!
犬のしつけとは、何なのでしょうか。
世の中にはたくさんのしつけ本があふれ、その理論やノウハウなど多すぎる情報が掲載されています。
本の中には理論のみを羅列したもの、逆に理論を省いて方法論のみを載せたものなどさまざま。
しかし、理論を分からずに方法だけで試みる、理論のみ勉強して実際にどうすればいいのか分からないというのでは、しつけは上手くいきません。
それどころか、しつけを施す飼い主さんも施される犬も混乱してしまいます。
せっかく本で勉強したのに、「うちの犬は全く聞いてくれない」と思ってしまいますよね。
犬のしつけとは、その犬が生涯幸せに人間とともに暮らすために必要な学習だと、私は考えています。
その犬がどんな生活でも適応できるためのしつけです。
したがって、飼い主は犬のしつけの理論と方法論、どちらも知った上で、犬との信頼関係を作っていくことが必要不可欠になるのです。
さらに、「この犬がどんな状況に陥っても幸せでいるために」という深い愛情をもってしつけを施すことも重要。
それでは、この犬のしつけについて具体的に理解していきましょう。
犬は生まれてから死ぬまでの間、多くのことを学んでいきます。
この、動物が「何かを学ぶ」ことを、人間の場合と同じく「学習」と呼びます。
動物の学習には初期学習と生涯学習があり、特に飼い犬のしつけを理解する上で、この2つは重要な要素。
まずはここだけでも知っておいていただきたい情報です。
犬の初期学習とは、主に犬が幼齢期に学ぶ犬語や人など他の動物に慣れる馴化を指します。
これは生後3〜12週目までの社会化期と呼ばれる時期に学んでおくべきものとされています。
この時期は、犬が犬社会や人間社会で暮らしていくのに大変重要な時期。
犬語は犬たちのボディランゲージであり、子犬の頃に兄弟や親犬とじゃれ合うことで、尻尾の振り方や服従姿勢、支配姿勢、相手を噛んでも良い力加減を学んでいきます。
また、馴化は、警戒心の薄い子犬のうちに他の動物や外界に慣れていくのに必要不可欠なもの。
この幼齢期はその犬の性質や表情を決定する非常に重要な時期です。
犬の生涯学習とは、社会化期を過ぎた13、14週齢以降における課題行動の習得、問題行動の矯正を意味します。
多くの飼い主が「しつけ」と考えるものがここにあたります。
課題行動とは、人間と生活する上で必要となる行動。
例えば、マンションに住む場合の犬の行動の仕方、一軒家での住み方、多頭飼いであるならそれらの犬との暮らし方など、生活の仕方によって異なる行動です。
問題行動とは、飼い主が犬の行動に対して問題だと感じる行動のこと。
無駄吠えなど飼い主が容認できない行動、拾い食いなど犬自身に有害な行動です。
犬には初期学習と生涯学習があるとお伝えしました。
この学習は犬の一生を決めるほど重要なものですが、特に幼齢期の初期学習は非常に重視されるべき学習。
初期学習がうまく行かなければ、後の生涯学習がうまく行かなかったり、性格が不安定な犬になってしまったりするためです。
しかし、この初期学習について、日本のペット業界では大きな問題を抱えています。
それは、子犬のときに十分な初期学習・社会化がされずに飼い主の手に渡ってしまうこと。
ペット流通業では、社会化期の犬を母犬や兄弟たちから引き離し、ペットショップなどの小売店に販売されるということが多く行われています。
これは、多くの飼い主が子犬を求める傾向があるため。
中には、より若い犬を流通ラインにのせようと、法で定められた時期より早くに販売しようとするブリーディング業者、小売業者もいるのが現状。
このような初期学習や社会化が不十分な子犬は、性格が不安定であったり、後のしつけがうまく行かないことが多々あるのです。
そうなれば、子犬を迎えた飼い主は問題行動に悩まされることに。
無責任な飼い主であれば、捨てたり処分してもらったりという行動に出ます。
良質なブリーダーから直接手に入れる欧米式ペット産業に比べ、日本のペット産業は、「悪質なブリーダー→子犬至上主義のペットショップ→子犬の可愛さに知識を持たないままついつい飼ってしまう消費者」という図式ができてしまっている場合が多いのです。
もちろん、「犬を大切にしてくれる飼い主でないと譲らない」という信念を持ったブリーダーもいれば、動物福祉に則った経営を行うペットショップ、犬の最期のときまで共にする飼い主はたくさんいます。
しかし、年間の犬の殺処分が1万頭という数字は、日本のペット産業の問題を表していると言わざるを得ません。
犬の学習は、初期学習と生涯学習の2種類があると述べました。
そして犬がこれらの学習をしていく方法も2つあるのです。
2つは古典的条件付けとオペラント条件付けと呼ばれる、犬の行動様式とそれを導く要因の関係を意味します。
古典的条件付けとは、異なる2種類の刺激を頭の中で結び付けて学習すること。
普通なら生理的反応を引き起こさないような刺激を与えた後に生理的反応を引き起こすような刺激を加えると、前者の刺激だけで生理的反応が生じるようになる現象です。
この例として、パブロフの犬の話が有名でしょう。
ベルの音の後に餌を与え続けたことで、ベルの音がしただけで唾液の分泌量が増えたという研究です。
犬はベルが鳴ると餌をもらえると学習した結果、生理的にも反応するようになったのです。
オペラント条件付けとは、行動とその結果の関連性を学習すること。
ある行動が自分にプラスの結果となれば、以降その行動を積極的に行うようになります。
逆に、ある行動の結果自分にマイナスが生じることで、その行動に消極的になっていきます。
積極的になっていくことを強化、消極的になっていくことを弱化といい、強化や弱化にはおやつなどのほうびと、おしおきなどの罰が必要となります。
これらの組み合わせでオペラント条件付けには4種類存在します。
前述した通り、オペラント条件付けには4種類存在します。
正の強化は、ごほうび(強化刺激)を与えることで行動が強化されること。
お手をするたびにおやつを与えると、犬はお手をすると良いことがあると認識して自発的にお手をするようになるなど。
正の弱化は、おしおきなど罰(嫌悪刺激)を与えることで行動が弱化されること。
イタズラをする度に怒鳴りつけると次第にイタズラをしなくなっていくなど。
おしおきなどの罰(嫌悪刺激)を取り除くことで行動が強化されること。
イタズラをしても叱らなくなると、怒られないことを学習してイタズラを繰り返すなど。
ごほうび(強化刺激)を取り除くことで行動が弱化されること。
甘え吠えしても無視することで犬がだんだん要求吠えしなくなるなど。
前述した通り、犬の学習は古典的条件付け、オペラント条件付けと呼ばれる理論で説明できます。
したがって犬のしつけも、これらの条件付けが必要不可欠。
その条件となるごほうびと罰についても見ていきましょう。
犬にとって最高のごほうびは、餌です。
特におやつは、最も効果的な強化刺激。
これは、餌やおやつが本能的な欲求の「個体の維持」に関わることに起因します。
したがって、多くのドッグトレーニングでもおやつを使用してトレーニングが行われています。
ごほうびは行動の最中や直後に与えなければ意味がないのもポイント。
ポケットからすぐ取り出せるえさやおやつを少量用意してしつけを行うのが良いでしょう。
また、おやつだけではなく、一緒に遊ぶことや散歩、褒めることや撫でることも犬の強化刺激となります。
犬にある一定の行動を学習させる場合、理論的には快(強化刺激)を与える方法と不快(嫌悪刺激)を与える方法があると紹介してきました。
しかし、快を与えて育てる方が犬にとっても飼い主にとっても良いもの。
犬のしつけはほめて育てるが基本なのです。
19世紀まで、犬のトレーニングは「調教」が主であり、嫌悪刺激を与えて厳しく育てるのが主流でした。
しかし、この方法では、「トレーナーの元では素直だが、飼い主の言うことは聞かない」または「飼い主の言うことは聞くが、他の人の前では問題行動が出てしまう」という結果しか得られませんでした。
犬自身が行動を楽しいと感じていなければ、一時的に行動を記憶できても、そこに永続性はありません。
叱る、痛みを与えるなどの嫌悪刺激・罰では良い犬は育ちません。
愛情を持って、犬の快を引き出して行動を強化してあげるのが、最も有効なしつけの仕方であることを覚えておきましょう。
犬のしつけの理論的な部分をご紹介しました。
それでは、実際に犬を前にしたしつけはどのように行うのでしょうか。
ここからは、室内で必要となるしつけ・屋外で必要となるしつけ・問題行動のしつけについて、そのしつけの必要性と具体的な方法論をご紹介します。
犬と飼い主がアイコンタクトでコミュニケーションが取れることをいいます。
犬が飼い主の目を見て飼い主の様子を伺えるようになるのが最終目標。
事故やアクシデントから遠ざけるため。
アイコンタクトにより犬の突発的な行動を中断させてトラブルやアクシデントを防止します。
犬と飼い主の上下関係をはっきりさせ、しつけしやすい犬に。
正の強化。
飼い主の目を見つめた瞬間におやつを与えるなど。
ボディコントロールとは、犬が体のどこを触れさせても抵抗しないようにしつけることです。
犬が人間を信頼し、体を任せるようにすることで、健康チェックや通院が行いやすくなります。
また、興奮した際に体に触れ落ち着かせることも可能に。
正の強化。
飼い主が体に触れたり動かしたりしても、じっとしていた瞬間におやつを与えるなど。
このとき、間違ってもじっとしてなかったからといって叱るなどの嫌悪刺激を与えてはいけません。
犬が「体を触られる→怒られる」という間違った学習をしてしまう可能性があります。
日常生活を人間の社会で送るためには、チャイムや車、テレビや掃除機、さまざまな音に慣らせておく必要があります。
見知らぬ音に対する警戒心や恐怖心が強いと、音に反応して無駄吠えする、攻撃的になるなどの問題行動に発展することも。
また、人間社会で暮らしていく中で、たくさんの音に対する恐怖心を抱きながら生きていくことは大きなストレスになってしまいます。
正の強化。
犬が苦手としている音を、弱いものから段階的に強いものへと変化させ、最終的に音に対して無反応にするという系統的脱感作法と呼ばれるものが効果的。
苦手な音がしてもじっとしていれば、おやつをあげ、その音をだんだん強くしていくなど。
トイレのしつけは、犬が自発的に、決められた場所で排泄すること。
早い段階で教える必要があるしつけです。
単純にいたるところで排泄をされては住環境が悪くなり、犬にとっても人間にとっても衛生的に良くありません。
何より、飼い主にとって大きなストレスとなります。
正の強化。
正しい場所で排泄できたら褒めてあげるなど。
気をつけていただきたいのは、犬がトイレを失敗しても怒らないということ。
「便意をもよおした→間違った場所で用を足した→叱られた」という形で正の弱化をしてしまうと、犬は用を足すこと自体が叱られることだと学習してしまう可能性があります。
さらに、用を足したことを隠すために食糞する結果になりかねません。
ハウスとは、飼い主の命令によって、犬が決められたケージや寝床、定位置に移動すること。
この犬にとっての定位置であるハウスは、犬が自由に動き回れないようにする役割の他、犬の安心できる部屋を与える役割もあります。
犬は本能的に外界から遮断された、身を守りやすい場所を好みます。
その場所を与えてやることで、よりリラックスした生活を送ることができます。
また、飼い主の命令でハウスに戻ることができれば、皿が割れるなど家庭内でトラブルが起きたとき、犬が動き回らないようにコントロールできます。
正の強化。
命令して、犬が自発的にハウスに移動した瞬間におやつを与えるなど。
大前提として、ハウスが犬にとって居心地の良い場所でなくてはいけません。
留守番では、視界から飼い主がいなくなってもおとなしくしていることができるかが大切です。
四六時中どこに行くにも犬を連れてというのは難しいため、留守番はどんな犬でも経験しなければいけない関門です。
犬は社会性が高く、集団で行動する動物。
仲間がいないと本能的に不安を感じてしまいます。
その不安が無駄吠えやイタズラ、攻撃性に繋がる可能性もあります。
正の強化。
犬の視界から飼い主が隠れ、それでも犬が落ち着いていたらおやつを与えるなど。
タイミングが難しく、何度も繰り返す必要があります。
犬が餌を前にしても、飼い主が許可するまで待つ状態のこと。
犬に待てをさせることは、犬の拾い食い防止に役立ちます。
また、無節操な食生活を是正し、肥満などの生活習慣病を予防することにもなります。
正の強化、正の弱化。
うまく待てたらおやつをあげるなど、正の強化がメイン。
待たないときにリードを引くなど、正の弱化をサブトレーニングとするのが効果的。
飼い主の命令に従えば餌よりも良いごほうびが、無視すると罰を与えられると学習させましょう。
犬が首輪とリードをしていても嫌がらないこと、または犬が首輪やリードを付けられるときに暴れないこと。
散歩で必須のしつけです。
リードは自転車や車との接触を避け、他の犬や人とのトラブルを防ぐ役割があります。
また、迷子になったときや災害時には首輪が飼い主を知る手がかりとなりますので、マイクロチップとともに首輪で飼い主を判断できるようにしておきましょう。
正の強化。
首輪やリードを付けて興奮しなかった瞬間におやつをあげるなど。
犬にとって首輪やリードが好きなものになるように素材や形も考慮してみてください。
飼い主の命令によって、犬が腰を落として動かなくなる状態。
犬の突発的な行動を抑制するために必要不可欠なコマンド。
頻繁に使うため、絶対に覚えさせていただきたいものです。
正の強化。
まずは立った状態から手におやつを持って犬の興味を引きます。
手を犬の視線より上げると、自然に尻を床につけるのでその瞬間にごほうびを。
同時に「おすわり」というコマンドを覚えさせ、命令だけで自発的におすわりができた瞬間におやつをやります。
おすわりという行動自体が犬にとってごほうびになるよう、たくさん褒めてやるのもポイント。
飼い主が命令し、命令を解除するまで犬が動かなくなる状態。
犬の行動を抑制するときに必須となるコマンド。
好ましくない行動を止めさせ、コントロールするために必要です。
正の強化。
おすわりの状態から飼い主が一歩退いてみて、じっとしていたらおやつをあげます。
「待て」のコマンドとともに距離を伸ばして、じっとできた瞬間におやつをあげるなどが効果的。
「待っていても飼い主は必ず戻ってくる」という安心感を犬に与えましょう。
犬が地面に胸をつけて動かない状態。
犬は伏せの状態から急に飛びかかることができません。
したがって、伏せを覚えておけば、おすわりや待てより確実に事故やトラブルを予防することができます。
正の強化。
手におやつを持ち、犬の鼻先に近づけ与えます。
今度はその手を下ろし、犬の視線を下げます。
犬が伏せの状態になった瞬間おやつを与え、コマンドとともに繰り返します。
犬が飼い主の膝に乗り大人しくしている状態。
小型犬専用のしつけであり、犬の安全を確保する目的があります。
正の強化。
犬が膝に乗ってきたらその瞬間おやつを与えるなど。
全ての犬が最初から抱っこが好きというわけではありません。
まずは、飼い主の膝の上が安心できるところ、膝に乗ると撫でてくれるなど嬉しいことがあるということを学習させましょう。
「ヒール」は飼い主の左側、「ツイテ」は飼い主の右側につくこと。
散歩の際、非常に重要。
犬を事故や怪我から守る意味があります。
正の強化。
手におやつを持ち、犬を自分の左側・右側に誘導します。
コマンドとともにおやつを犬の目線より高く持ち上げ、おすわりをしたらおやつを与えるなど。
リーダーウォークとは犬が飼い主から付かず離れず寄り添って歩くこと。
特に左側について歩くことをヒールウォークと言います。
飼い主の持つリードが軽くたるむくらいが理想的。
散歩中のトラブルや事故を防ぐため必要。
引っ張りの抑制にもなります。
正の強化・正の弱化。
通常、犬が飼い主から離れるとリードが伸び、首に圧力がかかります。
この不快感が正の弱化として働き、犬は「引っ張りをする→不快」と学習します。
ただし、この嫌悪刺激はやりすぎると、パグやシーズーなどの短頭種の致命的な病気に繋がりかねません。
特に引っ張ると首が締まるチョークカラーは大変危険。
首よりもマズルに圧力がかかるヘッドカラーを使うのがおすすめです。
また、嫌悪刺激だけではなく、犬が飼い主のそばを歩いたらおやつを与えるなどの強化刺激を合わせてしつけを行いましょう。
犬の欲求不満やストレス、恐怖心、ナワバリ意識から必要以上に吠えてしまうこと。
近隣住人とのトラブルとなります。
さらに、飼い主自身のストレスとなることも。
正の強化、正の弱化。
無駄吠えをしつけ直す際は、無駄吠えをした瞬間に叱るなどの罰を与え、無駄吠えをやめて大人しくなった瞬間におやつを与えるなどが効果的。
叱ることが嫌悪刺激にならないようなら、完全に無視するという手法もあります。
何より、無駄吠えの原因を知り、ストレスや分離不安がある場合はそちらを取り除く必要があります。
犬の様子をよく観察しましょう。
噛み癖とは、興奮や恐怖心、遊びの延長として噛んではいけないものや人を噛んでしまうこと。
噛み癖のある犬は、人や他の動物に危害を加える恐れがあります。
人間社会で暮らすためには絶対に治さなくてはならないものです。
正の弱化、正の強化。
無駄噛みすると不快なことが、やめると良いことがあると学習させるため、正の弱化をメイントレーニング、正の強化をサブトレーニングにするのが効果的。
噛み癖が出た瞬間罰を与え、やめて大人しくなったらおやつを与える、褒めるなど。
ただし、触られそうになって恐怖心から思わず噛んでしまった、ストレスがたまっているなどの原因から噛み癖が出る場合は、愛情不足や運動不足が考えられます。
その場合はコミュニケーションや運動の時間をしっかりとることを優先しましょう。
飛びついてはいけない場所やタイミングで犬が対象に飛びつくこと。
犬の安全性確保と、人や動物へ危害を加えることを防ぎます。
飛びつきがひどい大型犬が子どもや女性を傷つけてしまうという事故も実際起こっています。
正の弱化、正の強化。
飛びつくと不快なことが、やめると良いことがあると学習させるため、正の弱化をメイントレーニング、正の強化をサブトレーニングにするのが効果的。
興奮して飛びついた瞬間罰を与え、やめて大人しくなった瞬間おやつを与えます。
道や家の中に落ちているものを食べてしまうこと。
飲誤食事故の防止、胃捻転など胃の疾患を防ぐために矯正する必要があります。
正の強化。
犬が拾い食いをする状況を再現。
リードを付けた状態で犬の好物を届かないぐらいのところに転がします。
拾い食いしようとした犬は、好物が食べれないことに気づき、「どうしたらいい?」と飼い主の様子を伺うことでしょう。
その瞬間におやつを与え、飼い主に伺いを立てることを学習させるのです。
これにより、拾い食いしたいときに飼い主にアイコンタクトを送るようになります。
自分や他の犬のウンチを食べてしまうこと。
犬の食糞行動は本能に根ざした行動であり、通常は放置しておけば治ります。
ただし、食事の量が少ない、餌の種類が変わり気にくわない、体のなんらかの異常、本能行動の再現、ウンチを片付ける飼い主の真似、ストレス、飼い主の間違ったしつけによる影響などの理由から食糞が起こることがあります。
食糞は動物界では珍しい行為ではありませんが、犬の場合食糞が起こるのは体や心の不調の場合も多いもの。
よく観察して原因を突き止めましょう。
何よりも、犬を観察して食糞の原因を探ることです。
餌の問題であれば餌を変える・元に戻すなどの工夫を、ストレスであれば愛情不足や運動不足を疑いましょう。
獣医師などの専門家に相談、健康診断を受けるのも重要です。
トイレの失敗とは、しつけ不足や病気、恐怖心やマーキングで指定のトイレでできていた排泄ができなくなること。
住環境が不潔となり、飼い主のストレスとなるのが大きな問題でしょう。
正の強化。
正しい位置でトイレできたらおやつを与えるなどが効果的。
トイレの失敗で罰を与えるのは絶対にやめましょう。
前述した通り、排泄行為そのものが罰せられるものだと犬が学習し、食糞して証拠隠滅するなどの悪影響が考えられます。
「間違った場所でウンチやおしっこをしたらかまってもらえる」と学習する場合もありますので、トイレの失敗で犬を叱ることは避けましょう。
犬をしつけるにあたって、理論と方法論をご紹介しました。
それらを理解してしつけに臨んでもなお「犬が言うことを聞かない」「うちの犬は頭が悪い」という結論にいたる飼い主も中にはいます。
こういった感想を抱く人に知ってほしいのは、しつけの失敗は全て人間側にあるということです。
愛情不足やコミュニケーション不足、幼齢期の社会化不足、運動量が少ないことによるストレスなど、飼い主と犬が望ましい信頼関係を持てていないケースがあります。
また、ほうびや罰を与えるタイミングが違う、コマンドが家族ごとに違って犬が混乱している、学習するのに適した環境がないなどの問題も考えられます。
正しいしつけをするために、以下のことはしつけを行う上で大原則となるものです。
しつけをする際は念頭において、覚えておきましょう。
1.犬との良好な信頼関係を築く。
2.ごほうびと罰のタイミングを間違えない。
3.家族で命令の言葉を一貫する。(コマンドを変えない)
4.学習するのに適した集中できる場所で行う。
5.しつけの方針を一貫する。(家庭内のルールを決める)
6.愛情と根気を持って何度も繰り返す。
しつけの際、犬の名前にも大きな意味があります。
犬は自分の名前を認識し、呼んでもらうことで飼い主に餌をもらえる、褒めてもらえる、遊んでもらえるという学習をします。
これは、飼い主が正の強化でおこなわなければいけません。
名前を認識させやすいように、犬の名前はシンプルでユニークなものである必要があります。
犬は母音の聞き取りは向いてますが、子音の聞き取りが苦手。
凝った名前では自身の名前を覚えられません。
また、他の飼い主も付けているよくある名前、流行の名前を付けることもしつけをする際には望ましくはありません。
多くの犬が集まるところで、同じ名前の犬がいれば犬を混乱させることになるからです。
「チョコ」「ココア」などの日常生活で耳にする名前も、しつけをする上では避けた方が無難とされています。
もちろん、しつけの際に多少苦労しても、愛情を持って犬のために一生懸命考えて付けられた名前であれば、犬もその名前を好きになってくれるでしょう。
ですから、犬の名前を呼んだ後には、良いことがあるという学習をずっと続けてください。
犬が自分の名前を呼ばれることを好きになるのが、しつけへの第一歩です。
「名前=良いこと」は、一貫していただきたいもの。
したがって、叱るときは犬の名前を呼んではいけません。
犬のしつけは難しいものです。
とりわけ忙しい現代人にとっては、長い時間と根気、テクニックが必要なしつけは大変です。
そんなときは、ドッグトレーナーに依頼するのも良いでしょう。
ドッグトレーニングは犬の訓練のプロが飼い犬をトレーニングしてくれるプログラム。
犬を連れて行き預けるタイプと、自宅にトレーナーがやってくる出張タイプがあります。
中には、子犬の社会化を促す「パピー・ナーサリー(子犬の保育園)」なども増えています。
犬のしつけを他人に委ねることは恥ずべきことではありません。
そのまま問題を放置しておくことの方が恥ずかしいものです。
犬文化の先進国とされるドイツでは、犬の学校で人間社会に暮らすためのトレーニングを義務付けている地域もあります。
そしてようやく、飼い主と散歩に出たり、外で遊んだりできるのです。
ドイツでは、犬がノーリードで歩いていることも多く、公共交通機関にそのまま乗り込んでくることもあります。
だから人間社会で、人間にとっても犬にとっても不幸がないように、しっかりしたしつけが求められるのです。
欧米に比べ、日本人は犬のしつけが下手とされています。
それは、ペットショップで生体販売がされること、十分な住環境や犬との時間が取れないこと、犬のしつけの必要性がそこまで問われないことにも起因しているでしょう。
しかし、しつけを施されていない犬は不幸である、もしくは不幸になる可能性があります。
そのことを念頭に置き、犬と向き合ってほしいと思います。
犬のしつけは、飼い主の思い通りにするためでなく、犬との関係を友好なものにするため、犬の生涯を幸せなものにするために必要なことです。
現在も、犬の問題行動が原因で犬を手放す人がたくさんいます。
捨てるつもりがなくても、入院や転勤で犬を手放さざるを得なくなり、しつけを施していない犬の引き取り手を探すのが困難という場合もあるでしょう。
引き取り手が見つかったとしても、問題行動が原因でその犬が不幸になる可能性もあるのです。
しつけは飼い主のためでもあり、犬自身のためにもすべきこと。
このページをご覧になったあなたは、おそらく犬に対して真摯で誠実な方でしょう。
その気持ちを忘れずに、犬と一生一緒に笑いあえる関係でいるために、しつけを進めていってほしいと思います。
最終更新日 : 2020/11/29
公開日 : 2017/04/15