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1.盲導犬の歴史〜世界の盲導犬の始まりと日本初の盲導犬が誕生するまで〜
7.キャリアチェンジ犬〜盲導犬になれなかった犬たちのその後〜
私たち人間と長い歴史を共にしてきている 犬 たち。
現在、家庭で愛玩動物として一緒に生活している犬は、日本で約900万頭弱もいると言われています。
犬好きにとって彼らは毎日の生活を彩り豊かにしてくれ、癒しを与えてくれる大切な存在ですよね。
しかし、犬たちの中には、家族としての役割だけでなく、 サポートが必要な人々の目や耳や手足となって助けてくれる犬 たちもいるのです。
そのような犬たちを補助犬といい、補助券は 盲導犬 、 介助犬 、 聴導犬 に分類されます。
今回は、その中でも最も活動数が多い 「盲導犬」 についてご紹介していきます。
街や駅、バスの中などで目の不自由な方が、犬と共に歩いている姿を目撃したことがある方もいるのではないでしょうか。
その目の不自由な方の「目」となって活躍するのが「盲導犬」です。
まずは、盲導犬がいつ・どのように誕生したのか、歴史について見ていきたいと思います。
現在の盲導犬のような組織ではないにしろ、「犬が目の不自由な方を助ける様子」は、実はかなり昔の資料から確認されています。
例えば、西暦79年に火山噴火により都市の全体が消滅した古代ローマのポンペイの遺跡からは、壁画に犬と目の不自由な人が一緒に描かれているものが発見されています。
また、13世紀の中国の絵巻物の中にも、目の不自由な人が犬に連れられている様子が描かれているなど、世界各地で確認されています。
今のような組織だった盲導犬の仕組みの発端となったのは、第一次世界大戦終了後のドイツが最初です。
多くの命が犠牲になった戦争では、毒ガスなどにより失明をしてしまった軍人も多数いたそうです。
そんな失明した人々をドイツの軍用犬によって助けることができないかと考えて盲導犬訓練学校を作ったのが1916年のことでした。
その後、ドイツ国内にて広まり、約10年後には4000人もの人が盲導犬を利用していたそうです。
1920年ごろからは、国外にも盲導犬の動きが広まっていき、イギリス・フランス・スペインなどのヨーロッパやアメリカ・カナダ・ロシアなど世界に広がっていきました。
日本に最初に盲導犬を広めたのは、1938年にアメリカ人のゴルドンという方が、日本に盲導犬と一緒に訪れたのが最初です。
ゴルドン氏は盲導犬に関しての講演を日本で行い、それがきっかけで日本にも知れ渡ることとなりました。
1939年には、 シェパード 4匹をドイツから輸入し、ドイツのように戦争で失明した兵士のために活躍しましたが、第二次世界大戦が始まったためにそれ以上盲導犬が拡大していくことはありませんでした。
第二次世界大戦後の1957年に現在のアイメイト協会創始者である塩屋賢一さんが、日本で初めて盲導犬の訓練を行い、ジャーマン・シェパードのチャンピィを国産第一号の盲導犬として誕生させました。
現在では、全国に11団体・14施設の盲導犬育成団体が存在します。
さて、そのような歴史の中で誕生した盲導犬ですが、現在日本にはどのくらいの盲導犬が存在しているのでしょうか。
日本盲導犬協会によると下記のような数値となっております。
■2016年度末実働頭数 951頭(国内)
■2016年4月〜2017年3月育成数 134頭 です。
(出典: 日本盲導犬協会 )
対して、日本国内の視覚障がい者の数は約38万人にも登り、盲導犬に申し込んでも1年の待機期間が必要と言われ、圧倒的に数が足りていない状況です。
日本は、欧米の国々と比較すると、盲導犬の普及率はかなり低く間に合っていない状況です。
日本が遅れをとっている要因としては
などがあげられます。
特に、盲導犬への理解については盲導犬ユーザーにとっても大きな問題です。
盲導犬は、平成15年10月に施行された身体障害者補助犬法によって、病院・店などの不特定多数が利用する施設において、障がいのある方のパートナーである身体障害者補助犬の同伴を義務付けられました。
しかし、まだまだ社会への浸透は薄く、利用先によっては利用を断られてしまうことも少なくありません。
上記のように、日本ではまだまだ盲導犬に関する理解を広げるとともに盲導犬を普及していかなくてはならない大きな課題があります。
盲導犬の具体的な仕事は、目の見えない、見えにくい方(盲導犬ユーザー)のフォローです。
街中を歩くときは、 障害物を避けたり、角や段差があることを伝えて、障がいを持った方が安全・安心に過ごせるようにお手伝い をします。
盲導犬は、特別な訓練を受けているため、既出の通り、バスや電車などの公共交通機関を利用することも、道路交通法や障がい者補助犬法により認められています。
通常、動物が入れないお店に入ることも可能なので、スーパーなど日々の日用品の買い物の手助けも盲導犬のお仕事です。
しかし、盲導犬は、例えば人が視覚障がいの方の手をとって目的地に連れて行ってあげるように、1から10までの全てを手助けできるわけではありません。
盲導犬に「バスに乗りたいからバス停に連れて行って欲しい」とお願いしても、盲導犬はどうすることもできませんん。
あくまで、 目的地へ進む指示は盲導犬ユーザーが出し、盲導犬はその指示に従いつつ障害物の有無などを教えることで目的地に行くまでのフォローをする のです。
■盲導犬の主な仕事
盲導犬は勝手に目的地に向かうことはできませんので、ユーザーの指示に従ってユーザーの「目」となって指示を待って進みます。
曲がり角に差し掛かった場合は、一度止まってユーザーに曲がり角があることを知らせます。
ユーザーは、目的地に向かって角をどう進むのか、盲導犬に指示します。
(ex.まっすぐ進むなら「ストレート・ゴー」、曲がるなら「レフト・ゴー」など)
進む道に車や大きなものなどの障害物を見つけた際は、障害物を避けて進み、ユーザーをフォローします。
道幅も盲導犬とユーザーが通れる幅があることをきちんと確認して進んだり、高い場所にある障害物も見分けることができます。
階段などの段差がある場合も立ち止まってユーザーに知らせます。
盲導犬は、基本はユーザーの左端を歩くように訓練されています。
盲導犬は、上記の5つのお仕事によって、ユーザーが安全安心に目的地にたどり着けるようにお手伝いをするのです。
ユーザーは、盲導犬が段差を知らせたり角を知らせて、きちんと仕事をした際は「グッド」と褒めてあげます。
盲導犬は、大好きな人間に褒めてもらえることで喜んで、日々のお仕事を楽しくこなすことができます。
盲導犬には大事な仕事道具があります。
それが仕事中に必ず身につける 「 ハーネス 」(胴輪) です。(写真の盲導犬が胴周りに装着している白いもの)
ハーネスは、盲導犬とユーザーをつなぐとても重要な役割を担っています。
ハーネスの動きを通じて、ユーザーは盲導犬の動きを察知し、盲導犬からのサイン(段差、曲がり角)を受け取ります。
また、盲導犬にとっても「ハーネスをつける=仕事をする」、という認識をします。
盲導犬になるのは、実はとても大変です。
たくさんの訓練犬たちが盲導犬になるべく訓練を行いますが、実際に盲導犬になれるのは全体の3〜4割と言われています。
盲導犬は、どの犬でもなれるというわけではなく、
上記のような特徴を持っている犬が適してるとされています。
その中で、現在日本で盲導犬として活躍している犬種は、
以上の3 犬種 です。
原産国:カナダ
飼い主に従順な賢い犬。
性格も温厚で、人や他の動物とも友好的なコミニュケーションが取れ社交的。
もともとは狩猟犬として活躍していました。
嗅覚も優れているため、 警察犬 としても活躍しています。
体高は60センチ前後の 大型犬 。
短毛と筋肉質な体つきな反面、垂れた耳が可愛らしいのが特徴です。
毛色は、ブラック、チョコレート、イエロー、レバーの4色。
イギリス原産。
利口で飼い主への忠誠心も高く、穏やかな性格。
元は狩猟犬で主人の指示に忠実です。
体高は60センチ前後と大型。
垂れた耳とアーモンド形の可愛らしい外見が特徴となっています。
ラブラドール・レトリバーと比べて毛が長く、毛色はクリームまたはゴールド。
ラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバーのミックス。
世界では、他にも ジャーマンシェパード 、 ドーベルマン 、 ボーダーコリー 、 スタンダードプードル など様々な種類の犬たちが盲導犬として活躍しています。
日本に初めて導入・訓練された盲導犬がジャーマン・シェパードだったように、以前はジャーマン・シェパードも盲導犬として活躍していた時期もありました。
しかし、ジャーマン・シェパードはレトリバー種と比較して見た目に威圧感があるため、子供などが怖がってしまう例も見受けられたため、現在のラブラドール・レトリバーたちのような可愛らしい見た目の犬たちが盲導犬として活躍するようになりました。
また、警察犬では トイプードル のような小型犬が活躍する例もありますが、盲導犬に関しては、 小型犬 では街中や電車・バスなどの公共交通機関を利用するのに適しません。
サイズが大きすぎる犬種も同様で、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバーのサイズが盲導犬に最も適しているとされています。
盲導犬たちの人生は、大きく4つの節目があります。
盲導犬候補の犬たちは、まず誕生して2ヶ月間は親と一緒に過ごします。
その後、2ヶ月〜1年までは、パピーウォーカーという一般のボランティアの家庭で過ごし、社会化生活を身につけます。
幼い時にパピーウォーカーを通して様々な人間と交流をしたり、経験をすることで人との付き合い方や信頼関係の結び方、車・バス・天気の変化などの環境面にも慣れていきます。
また、一般的な家庭で幼少期を過ごすことで人間と一緒に生活する楽しさを学びます。
パピーウォーカーの元での育成期間を終えた犬たちは、盲導犬となるための訓練へと進みます。
最初は一般的なシット(座る)、ダウン(伏せ)、ウェイト(待て)のような基本動作の訓練から開始します。
一番最初は、何もない状態で指示をしても覚えるのは難しいので、おもちゃなどを使って上手に楽しませながら訓練をします。
指示した動作がきちんとできた時は、「グッド」と褒めてあげることで、指示に従う喜びを与えます。
基本訓練ができるようになったら、実際にユーザーを誘導する際の訓練へと移行します。
ハーネスをつけて、道を歩きながら障害物を避けたり、段差や曲がり角を伝える、電車の乗り降り、エレベーターの乗り方などを訓練します。
段差や曲がり角を伝える誘導訓練、実際の車や自転車が通る道での交通訓練、電車などの公共交通機関に乗るための訓練など様々な形の訓練を受けます。
訓練を受けても全ての犬たちが盲導犬になれるわけではありません。
訓練で学びながら、段階を踏んで合計3つの適正テストを受けます。
この3回の適正テストを経て、合格した犬だけが、晴れて盲導犬になる資格を得ることができるのです。
テストにクリアしてもすぐに盲導犬として活動できるわけではありません。
次に、実際のユーザーとの共同訓練に入ります。
突然ユーザーに盲導犬を引き渡しても、ユーザーは盲導犬への指示の出し方や日常的なお世話の仕方がわかりません。
そのため、訓練士が間に入り、ユーザーと盲導犬が円滑にコミュニケーションを取れるようにサポートします。
共同訓練が終了して初めて、ユーザーと盲導犬の新しい生活がスタートします。
新しいパートナーと一緒に生活をしながら、信頼関係を築き、目の不自由な方の「目」となり公私ともにその方の生活を支えて行くのです。
盲導犬として活躍した犬たちは、10歳を目安に現役を引退します。
引退後は、パピーウォーカーに育ててもらった時のように、一般のボランティアの家庭の家族の一員となって大好きな人間に囲まれながら穏やかに余生を過ごします。
既述したように、盲導犬の訓練を受けても最終的に盲導犬になれるのは全体の3〜4割で、半分以上の犬たちは盲導犬になることができません。
盲導犬になれなかった犬たちは、キャリアチェンジ犬として、別の道を歩むことになります。
例えば、 盲導犬をPRするためのイベントのデモンストレーション犬として活躍したり、介助犬に転向 する場合もあります。
また、 キャリアチェンジ犬を飼育するボランティア などもあり、多くの犬たちは一般的な家族の一員として迎えられます。
その犬の適正にあった形でそれぞれの人生を歩むこととなるのです。
盲導犬訓練犬が盲導犬になるまではおおよそ半年から1年の期間を要します。
その間、訓練を行っているのが 「盲導犬訓練士」 と言われる方々です。
訓練士は、盲導犬を育てるだけでなく、盲導犬と目の不自由な方が一緒に生活をしていけるようにフォローをしたりと双方をつなぐ役割も担います。
また、仕事は犬の訓練だけにとどまらず、訓練犬のお世話やボランティアの方々の対応、キャリアチェンジ犬など盲導犬以外の犬たちの対応も行うため、 犬とも人間とも上手にコミニュケーションが取れる人 でなければ務まりません。
盲導犬訓練士になるには、 まず盲導犬育成団体の職員になる 必要があります。
そして、 その団体にて1年間の研修を受けた後に訓練士になるための試験を受け、試験に合格すると「盲導犬訓練士」になる ことができます。
ただ、「盲導犬訓練士」になってもそこで終わりではありません。
「盲導犬訓練士」は、犬の訓練のみを対象とした内容となるため、さらにワンランクステップアップした「盲導犬歩行指導員」を目指して、勉強をしていかなくてはなりません。
盲導犬歩行指導員は、犬の訓練に加えて、盲導犬ユーザーに盲導犬との生活を指導を行います。
盲導犬ユーザーと盲導犬を繋げる「盲導犬歩行指導員」になってから初めて「盲導犬訓練士」として活躍することができるのです。
訓練士を目指す場合は、まず盲導犬育成団体に入ることからがスタートとなりますが、職員の募集数が少ないため、かなりの狭き門といえるでしょう。
すでにいくつかご紹介していますが、盲導犬に関わるボランティアも多くあります。
こちらでは日本盲導犬協会にて募集しているボランティアをご紹介します。
(1)パピーウォーカー
(2)キャリアチェンジ犬飼育ボランティア
(3)引退犬飼育ボランティア
(4)繁殖犬飼育ボランティア(繁殖犬を預かるボランティア)
(5)ケンネルボランティア(犬舎の掃除や犬の手入れを行うボランティア)
(6)イベントボランティア(盲導犬啓発活動や訓練センターで行うイベントのボランティア)
飼育ボランティアは、飼育条件に指定などもありますが、興味がある方はぜひご検討されてみてはいかがでしょうか。
盲導犬は、はたからみるととても利口で可愛らしいので、街で出かけた時はついつい「可愛い〜」と声をかけたり触りたくなってしまうかもしれません。
しかし、盲導犬たちは、 大事なパートナーを守るために必死にお仕事をしている最中 です。
盲導犬がハーネスをつけている時は、「お仕事モード」というサイン。
盲導犬本人も仕事に集中しています。
そんな時に周りの人がむやみやたらに触ったり構ったりすると 盲導犬も仕事に集中できず、盲導犬ユーザーをフォローできなかったり、目の見えない盲導犬ユーザーに不安を与えてしまいます。
見かけた時は、「お仕事頑張ってるんだな」と温かい目で見守ってあげるといいでしょう。
また、もしも目の不自由な方が困っている様子が見受けられたら、積極的にご本人にお声かけしてお手伝いしましょう。
「盲導犬に構っていけない=目の不自由な方にも声をかけてはいけない」と考えがちですが、ご本人にお声かけするのは問題ありません。
盲導犬は、段差や障害物を理解することはできても、信号を判断したり、目的地に自動的に案内することはできないので、もしも困っている姿に気づいた際は、相手を驚かせないように配慮してお声かけするといいでしょう。
毎年4月の最終水曜日に盲導犬への理解を深める日として 「国際盲導犬の日」 というのがあるのを知っていますか?
これは現在、世界の盲導犬活動の中心的組織である国際盲導犬連盟の前進組織「国際盲導犬学校連盟」の発足日である、1989年4月12日が水曜日だったことがきっかけで始まりました。
毎年この日に合わせて、盲導犬に関するイベントが開催されることも多いです。
盲導犬の他にも私たち人間をサポートしてくれる犬たちはたくさんいます。
手足などの体に障がいある方のフォローをするのが介助犬です。
盲導犬は、目の不自由な方の「目」となる役割を担いますが、介助犬は「手足」となる役割を担います。
具体的には、物を拾ったり、持ってきてもらったり、緊急ボタンを押したりするのが主な仕事です。
他にも荷物の運搬やスイッチ操作、着替えの手伝いなど多岐に渡ります。
目の不自由な方の「耳」となるのが聴導犬です。
耳が聞こえない方のために玄関のチャイムや電話の着信など日常生活の中で必要な音がなった際は、聴導犬が動いてお知らせをします。
他にも、 警察犬 や 災害救助犬 など人命救助のために活躍してくれている犬たちもいます。
目の不自由な方の「目」となって生活をサポートしてくれる盲導犬。
しかし、その道のりはとても厳しく、日々訓練に打ち込んだにも関わらず、盲導犬になれない犬たちも大勢います。
反面、盲導犬として引退するまで利用者の生活に寄り添ってサポートし続ける子達もいます。
犬たちは私たち人間の生活にそっと寄り添い、癒しやサポートをしてくれる素晴らしいパートナーです。
これから先、街中で盲導犬を見かけた際は、ぜひ可能な範囲で手助けをしてみてはいかがでしょうか。
また、もしもご興味がある方はボランティアにも参加されてみてもいいと思います。
この先、盲導犬や訓練士の数が増えてますます力になる方が増えるといいですね。
公開日 : 2018/01/16