本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
きゅうりの成分は犬にとって毒性がないので、その点から言えば離乳後には食べることができるでしょう。
しかし、永久歯の生え揃う生後7ヶ月あたりまでは、咀嚼(噛み砕く)が上手にできないことがあります。
きゅうりは硬めの野菜で、しっかりと噛む必要があるため、生後7〜8ヶ月くらいまではあげないことをおすすめします。
特に日本で飼育頭数が多い小型犬では、きゅうりを大きいまま飲んでしまうと食道を傷つけてしまったり、時には詰まってしまう可能性もあります。
そのため、噛む力の強くない小型犬では、きゅうりもドッグフードの粒並みに細かくして与える方が安心です。
また、生後1才あたりまでは、消化吸収の力が未完成な子犬もいます。
日頃からよくウンチがゆるくなりがち、あるいは吐くことも時々あるという1才未満の子犬には、きゅうりを与えるのは止めておきましょう。
毒性成分はないものの、きゅうりの皮は消化に良いものではないので、胃腸の繊細な子犬に生野菜をあげるのはおすすめできません。
なお、犬が"食べられるもの"と"食べたいもの"は必ずしも同じではありません。
つまり、きゅうりが好きかどうかは個々の犬の好みによります。
「きゅうりが大好き!食べたい!」という犬もいれば、「これ、食べないといけませんか…?」という表情で逃げていく犬もいるでしょう。
きゅうりは95%が水分でできており、糖質やたんぱく質、脂質をほぼ含まないので、犬にとって魅力的な食べ物には映りにくいと思います。
それでもきゅうりを食べる犬は多いので、その噛み具合や特別感が犬の興味を引いているのかもしれません。
ウリ科に アレルギー がないかどうかは大切なポイントです。
以前にウリ科の食べ物(スイカなど)を食べて、下痢や吐き気、体調不良を起こした経験がある犬であれば、きゅうりもあげるのは止めましょう。
初めてきゅうりを食べる時は、きゅうりが体質に合うかどうか分からない状態なので、 ごく少量から食べさせてみる ことが大切です。
最初は薄くスライスしたきゅうりを1枚だけ与えるようにしましょう。
その後1日は、吐き気や下痢が出ないかを見ておいてください。
時々とても 苦いきゅうり があるのですが、実はこれが良くありません。
この苦味は ククルビタシン という成分なのですが、食中毒の原因になることがあります。
そのため、まずは人間がきゅうりを味見してみて、変に苦くないかどうかを確かめるようにしてください。
身体の小さな動物達には、ごく少量でも下痢や嘔吐の症状を引き起こしてしまうかもしれません。
愛犬にきゅうりを与える際は、苦くないものを選んであげましょう。
大型犬であれば、噛む力も強いので大きさにあまり配慮が要らないのですが、先述した通りきゅうりを大きいまま小型犬に与えると、上手く噛めずに飲んでしまうことがあります。
そのため、体重が2kg以下の チワワ や トイプードル 、 マルチーズ などの小型犬にきゅうりを与える際は、薄くスライスして噛む必要のない固さにするか、あるいは細かくしておくと安心です。
中型犬や大型犬であれば、噛む力も強く、しっかりと咀嚼して食べることが多いので、ある程度の大きさでも喉に詰まることは無いでしょう。
それでも、慌てて食べて丸呑みはしないように、飼い主さまが見ておくようにしてください。
犬にあげても良い きゅうりの量 は、厳密に決められている訳ではありません。
ただ、水分と繊維は多く、あげ過ぎると下痢になる可能性があるので、たくさんあげるのは良くないでしょう。
小型犬では、体調に問題がなければ2〜3cmにカットしたきゅうりでも問題が起きないことが多いです。
中~大型犬であれば、1/4本ほどのきゅうりでも体調に変化は無いことが多いです。
しかし、個体によっては許容量は異なるので、やはり少量に留めておいた方が安心です。
きゅうりは犬にとって必要なものという訳ではないので、犬とのコミュニケーションや楽しみという位置付けです。
「どこまでなら大丈夫か?」と段々とあげる量を増やすのもリスクが高いので、一口二口を食べたらおしまいにしましょう。
ほとんどが水分でできており、栄養素は無さそうなきゅうりですが、カリウムやビタミンC、ビタミンKが含まれています。
カリウム は、腎臓がオシッコを作る時に必要な電解質の1つです。
また、細胞同士のシグナル伝達にも重要な役割があります。
初期の腎不全や、心不全で利尿薬を服用している場合にもカリウムが低下していることが多いので、カリウムと水分の補充に適しているかもしれません。
ビタミンC は非常に有名な栄養素ですが、犬にとっても大切です。
抗酸化作用や代謝での重要な役割があります。
犬は人間と違いビタミンCを体内で合成することができるので、人間のように食べなければいけない必須の栄養素というわけではありません。
それでも水様性ビタミンなので、多くとっても問題になることは少なく、細胞の老化である酸化作用を軽減してくれる作用が期待できます。
ビタミンK は血液の凝固(血を固める作用)に無くてはならない成分です。
また、骨を丈夫にするためにも必要なビタミンです。
腸内細菌によってビタミンKが生成されるので、不足して大変ということは少ないのですが、体に良い成分には間違いありません。
きゅうりを食べるメリットとしては、何よりも低カロリーなところが挙げられます。
95%が水分なので、通常のオヤツ(ジャーキーやクッキー、ボーロなど)に比べると、明らかにカロリーが少なくて済みます。
「獣医から減量を指示されているけれど、ワンちゃんにオヤツが少しもないなんて可哀想…」というようなケースでは、オヤツをきゅうりにすればカロリー過多になることはありません。
きゅうりに栄養素は入ってはいるものの、重量あたりの量はごくわずかです。
栄養面で食べ過ぎて問題になるのは水分と食物繊維くらいなので、その点でも愛犬にあげやすい野菜と言えるでしょう。
持病のある犬では、必ずきゅうりをあげても良いのかを獣医師にあらかじめ確認するよにしてください。
食べ物に注意が必要な犬の持病について、以下に解説していきます。
初期の慢性腎不全では、軽度の脱水が見られることがあります。
きゅうりは水分を多く含んでいるので、その点では食べても良いと考えられます。
食欲が低下していて、血液中のカリウム濃度が低下しがちであれば、カリウムの補給という意味でも良いでしょう。
問題が出るのは、末期の腎不全の犬です。
オシッコが作れないほどの末期的な腎不全の犬では、血液中のカリウム濃度が高くなっていることがあります。
その状況であえてきゅうりをあげるのは良くありません。
食欲の無い状態で無理に食べさせるのも止めておきましょう。
小型犬の中高齢では、心臓の弁膜症を患っていることがよくあります。
心臓病の重症度によって飲んでいるお薬の種類が異なるのですが、心臓の重度な変形が表れるケースでは利尿薬(オシッコをたくさん出す薬)を飲むことが多いです。
オシッコをたくさん出すと、血液中のカリウム濃度が下がることがあります。
その点ではきゅうりも食べても良いと考えます。
また、肥満体型では心臓病が悪化することが多いので、減量のためのオヤツとしても役立つでしょう。
肺に水がたまってしまう肺水腫という状況を経験している犬では、水分摂取の量が病気を左右することがあるので、一応は担当医にきゅうりをあげても大丈夫か確認しておきましょう。
尿路結石の持病を持っている犬は、食餌療法で石ができるのを予防していることがほとんどです。
尿路結石が出来る要因は、たんぱく質の摂取量やカルシウム、リン、マグネシウムのバランス。
きゅうりにはミネラルが含まれていますが、水分量に比べればごく微量です。
そのため、基本的にはきゅうりを食べても尿路結石を悪化させる可能性は少ないでしょう。
それでも毎日多くのきゅうりをあげていると、話は変わってくるかもしれません。
時々、少量のきゅうりをあげるに留めておいてください。
下痢や軟便、食欲不振を繰り返す慢性膵炎を持つ犬も多く見られます。
慢性膵炎では、厳密な食事管理が理想ですが、食欲が出ないことが多く、なかなか療法食を食べてくれないので飼い主さまは大変です。
きゅうり自体は膵炎に悪影響をもたらす可能性は低いので、食べても大丈夫なことが多いです。
しかし、慢性膵炎の犬はとても繊細な胃腸の持ち主。
何をきっかけに膵炎が再燃して下痢や嘔吐を起こすのかわからない状態です。
そんな繊細な胃腸の犬に、あえてきゅうりをあげなくても良いでしょう。
もちろん、低たんぱくで低脂肪という意味では、きゅうりは膵炎の犬にも良いオヤツに位置づけられるかもしれませんが、与える場合にはごく少量をおすすめします。
きゅうりは低カロリーで水分補給ができるため、犬にとっても食べやすい野菜です。
アレルギーなどがなければ、夏にはオヤツとして取り入れても良いでしょう。
初めて食べる時にはごく少量から、様子を見ながら与えてください。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/06/10
公開日 : 2022/06/10