Top > 魚類/甲殻類/水生生物 > 甲殻類
本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
アメリカザリガニは、ウチダザリガニと並び、「日本の侵略的外来種ワースト100」に位置づけられているザリガニの一種です。
水があり、ザリガニの餌となるものがある場所では大抵その姿を見ることができるので、外来種ではあるものの、私たちの身近な場所にいる生き物と言えます。
元々は食用のウシガエルの餌として持ち込まれた生き物ですが、原産地であるアメリカ合衆国やフランスなどでは、アメリカザリガニ自体を食用とする文化もあります。
日本では用水路や泥地に生息しているため食用とされることは少なく、主にペットや釣りの獲物として位置づけられています。
今回はそんなアメリカザリガニについて、生態、特徴、飼い方の解説していきます。
アメリカザリガニは、元はミシシッピ川を中心としたアメリカ南部に生息するザリガニです。
川といっても流れが速い場所に生息していることは稀で、水深があまり深くなく、流れも緩やかな場所を好んで住み着きます。
そのため、日本各地でよく見られる用水路や水田は、アメリカザリガニの絶好の住処となるのです。
また、アメリカ南部という比較的暖かな場所で暮らしていたアメリカザリガニですが、冬眠をするため日本の環境に適応してしまいました。
元はたった20匹前後ほどを持ち込まれた個体が今では全国に広がっているため、その生命力は非常に頑健なものと言えるでしょう。
食性は雑食で、食べられるものであれば大抵は食べてしまいます。
肉食ではないので、 水草 や苔も食べます。
その他、ほかの生物の死骸もきれいに食べてしまうため、大きさは異なるものの、ある意味 ヤマトヌマエビ に似ている存在と言ってもいいのかもしれません。
しかし、 水槽 に他の生物と一緒に入れておくと捕食をしてしまう可能性が非常に高いので、アメリカザリガニを アクアリウム に加えることはおすすめできません。
アメリカザリガニ最大の特徴は、その赤い体と大きなはさみです。
実は真っ赤な体と大きなはさみを持っているのはオスで、メスは赤みもはさみも強くなく、どちらかというと褐色の体を持っていることが多いです。
ただ、個体差があるため、大きなはさみと赤い体を持っているけれど、実はかなり成長したメスだった…ということもないわけではありません。
アメリカザリガニの生殖器は腹を見るとはっきりとわかるので、外見ではなくそちらで判断するのが一番です。
稚ザリと呼ばれる幼体は褐色~透明なため、小さなときはオスとメスを見分けるのが難しいと思われます。
こちらも指でつまめるサイズまで大きくなってきて、腹側の生殖器が発達してくるとよくわかるようになります。
また、時折ペットショップに青いザリガニや綺麗なオレンジ色をしたアメリカザリガニが販売されていることがあります。
青いザリガニはサバなどのカロチンを含まない食べ物を与えることで作り上げられますが、オレンジや白などは遺伝の関係もあるようです。
劣性遺伝や人為的に作られた色で、そうした ザリガニ は自然界では滅多に見ることができないことから、ペットショップならではのアメリカザリガニと言えるでしょう。
野生の個体はどうしても衛生面が気になる、もしくは周りにアメリカザリガニが住んでいそうな場所がない方は、やはりペットショップがおすすめです。
ペットショップで販売されているザリガニは青やオレンジ、白などが多いですが、頑丈なことに変わりはありませんので問題なく飼育できます。
近くに沼や池、水田などがある方はそちらに釣りに行くのも楽しいです。
アメリカザリガニは繁殖力が高いため、一匹姿を見ることがあれば多くのザリガニがその場所にいると言っても良いです。
また、アメリカザリガニは貪欲で、水で戻したスルメや肉の切れ端をタコ糸でむすび、餌として投げるとすぐに食いついてくれることが多いため簡単に釣ることができます。
水面から出るときに驚いて餌を離すこともあるので、ザリガニ釣りに慣れていない時には網を持っていくことをおすすめします。
なお、他の エビ と同様に後ろに飛び跳ねて移動する性質があるので、それを利用して網のみで捕まえることも可能です。
どんな個体を選んで飼うかというのも、野生のザリガニを釣る醍醐味と言えるのではないでしょうか。
頑丈な体を持つアメリカザリガニの飼育は、そう難しいものではありません。
アメリカザリガニの飼育に必要なものは以下の通りです。
アメリカザリガニは、成体で大人の手のひらほどの大きさになります。
そのため、飼育の際にはある程度大きなものを購入するのがおすすめです。
プラスチックでも、ガラス水槽でも、どちらでも問題はありません。
ただ、気を付けた方が良いのはザリガニは脱走の名人であるという点です。
飛び跳ねて脱走するだけではなく、隠れ家やポンプの配線などを伝って器用に脱出するケースは、ザリガニ飼いの中で少なくありません。
また、多少の乾燥であれば堪えますが、長時間外にいたザリガニを急に水の中に入れると弱ってしまう時もあります。
そのため、ザリガニを飼育するときは必ず蓋のある水槽をおすすめします。
ザリガニの背が隠れる程度までの水で良いと以前はよく言われていたアメリカザリガニ飼育ですが、今はたっぷりの水で飼育した方が良いと言われています。
アメリカザリガニ飼育に最も欠かせないのがエアーポンプです。
ザリガニが住んでいる場所で、時折腹を横にして浮いている姿を見たことがある方もいるのではないでしょうか。
あの動作は、水中の酸素が少ないときに鰓(えら)から酸素を入れているのです。
ちなみに、水中に酸素が少ないのに、横になって鰓から空気を取り入れられないほど狭い水槽だとザリガニは溺れてしまいます。
水中に酸素が少ない、いわゆる緊急事態の時に見せる行動なので、そういう習性として見るのではなく、危険のサインであると考えてください。
自然の中では酸素は流れる水の中に溶け込んでいき、また水草からもある程度の供給があります。
飼育下ではそれがうまく回らないため、どうしてもエアーポンプが必要となるのです。
エアーポンプにもただ酸素を出すものと、ろ過をしてくれるものの二種類がありますが、ザリガニ飼育の場合には水質悪化のことも考えてろ過付きのエアーポンプがおすすめです。
無くても大丈夫なのですが、アメリカザリガニにとって快適な空間を作りたいのであれば入れた方が良いです。
水槽の床はプラスチック、ガラスに関わらずつるつるとしているため、ザリガニが足を引っかけることがうまくできません。
それを支えてくれるのが砂利なのです。
砂利に関しては色々な意見がありますが、その中に脱皮の時に体を安定させるために必要であるという説があります。
ザリガニの脱皮については後述しますが、命に関わることもある重要なもの。
脱皮失敗のリスクを少しでも減らしたい場合は、水槽に導入するのが無難です。
アメリカザリガニは案外臆病です。
人が来るとささっと逃げてしまったり、泥の中にもぐってしまったりします。
積極的に威嚇をしてくる個体も少ないです。
そんなザリガニのストレスを少しでも減らすために必須なのが隠れ家。
ザリガニがすっぽり入るようなら素材はどんなものでも問題ありません。
今ではペットショップで生物用の隠れ家は売っていますし、割れて使い物にならなくなった植木鉢や茶わんなど、隠れられるものであれば大丈夫です。
アメリカザリガニを飼育している方の中には、 流木 を使って水槽をレイアウトする方もいます。
アメリカザリガニは、塩分が多く含まれていないものであれば大抵のものは食べてくれます。
ザリガニ専用の餌だけではなく、 ドッグフード や キャットフード も食べますし、水槽に水草を入れていればそれを、 メダカ や 金魚 を入れていればそれも食べてしまいます。
そうした面もあって餌には困ることはないと思いますが、食べ残しには注意が必要です。
アメリカザリガニは食い荒らすような餌の食べ方をするため、水の汚れる速度が非常に速いです。
頑丈な生き物ですが、水質悪化にとても強いというわけではありません。
ザリガニが死ぬと死骸の痛みも早く、かなりの悪臭を放つことにもなりますので、水質の状態は小まめに目を配った方が良いでしょう。
多くの甲殻類の例に漏れず、アメリカザリガニも脱皮をします。
脱皮の兆候としては餌を食べなくなる、あまり動かなくなる、体の色が黒くなってくるなどが挙げられます。
稚ザリは年に何度も脱皮をして大きくなっていきますし、大人のザリガニになっても年に2度ほどは脱皮をします。
この際に死んでしまうザリガニも少なくはないので、脱皮の兆候が見えてきたら別の水槽に移したり、下手に刺激をしないことが大切です。
また、この際に残った殻は、次の殻を構成するための大事な栄養源になります。
市販されている餌はカルシウムが含まれているものが多いかと思いますが、脱皮後のザリガニは少しの間拒食になります。
殻はその間の食料にもなるので、なるべく取り除かないことをおすすめします。
アメリカザリガニはよく共食いをしてしまう生き物です。
弱った個体、脱皮したてで殻が柔らかい個体などが優先的に狙われ、食べられてしまいます。
そのような事故を防ぐためにも、アメリカザリガニの複数飼育はおすすめできません。
縄張り意識も強いため、特にオスとオスのペアにしてしまうと死に繋がるレベルの喧嘩をしてしまう時もあります。
繁殖の際にしっかり育ったオスとメスをペアにする、程度なら問題はありませんが、稚ザリはすぐに共食いをしますのでその点には注意です。
また、ザリガニは多産です。
一度の産卵で数百匹もの稚ザリを産み落とします。
もちろん、自然淘汰ですべての稚ザリが大人になるわけではないと思いますが、一度の繁殖で大量に子供が産まれることを頭に入れて計画的な繁殖をおすすめします。
野生下では平均5年程度だと言われています。
寿命が長い水生生物なのですが、飼育下でも野生でも脱皮に失敗して死んでしまうという時があります。
他の エビ 、 カニ 類と同じように、脱皮は非常に危険の伴う行為なのです。
そのため、飼育しているアメリカザリガニが脱皮を始めそうな時は、水の入れ替えなどの刺激になることはなるべく避けてください。
最大の死因が脱皮なので、逆にそれに気を付けていれば長生きをしてくれる生き物です。
今では私たちの身近な生き物になっているアメリカザリガニですが、元から日本にいたわけではありません。
外来種によって既存の生態系が脅かされないよう、2022年5月11日には「改正外来生物法」が参院本会議で可決され、 個人の販売目的でない飼育や個人間の無償譲渡、捕獲が容認 されましたが、 輸入や販売、放出は禁止 とされています。
褐色の体を持つ個体もいますし、稚ザリなどはほぼ透明な体を持っています。
個体の大きさによって体の色が変わる場合もありますし、外見だけではオスとメスを見分けるのも少々難しいです。
オスとメスの見分け方は、お腹の生殖器で判断することができます。
一番命を落としやすいのが脱皮前~脱皮直後です。
その際は、できるだけ刺激しないように見守ってあげてください。
殻が完全に固まるまでは触るだけで傷ついてしまうこともあるので、触れ合いは厳禁です。
ミナミヌマエビ や ヤマトヌマエビ 、 サワガニ などもそうなのですが、甲殻類は脱走が得意です。
跳ねる力も強いですし、はさみも器用で、水槽に蓋をしていないといつのまにか脱走してしまった…というケースも少なくありません。
アメリカザリガニを飼育する場合も、逃げないように蓋がしっかりついている水槽を購入するのがおすすめです。
多頭飼育はかなりの高確率で共食いをします。
共食いは、餌をちゃんと与えていても起きてしまう可能性があります。
弱っている個体、稚ザリ、脱皮後の個体はよく狙われてしまうため、共食いを避けたい場合は複数飼育はおすすめしません。
以前は捕まえてきて飼育するが主流だったザリガニですが、今ではペットショップで売られていることも多くなってきました。
今はアメリカザリガニの他にもミステリークレイフィッシュと呼ばれる単為生殖をする珍しいザリガニや、テキサスドワーフクレイフィッシュと呼ばれる世界最小のザリガニなど、様々な種類のザリガニも増えてきています。
さほど流通しているわけではない種類もいますが、ザリガニと侮らずに飼育してみると、新たな一面が見えるかもしれません。
本記事が、アメリカザリガニについて少しでも知識を深めたい方の参考になれば幸いです。
※合わせて読みたい: ザリガニの種類、飼い方、繁殖方法
最終更新日 : 2022/05/16
公開日 : 2018/01/14