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デメリットもありますが、まずは犬を去勢するメリットをいくつかご紹介します。
オスとメス両方の犬を飼っていて繁殖を望まないのであれば、去勢は必要です。
不妊手術をしていないと、当然ながらメス犬は妊娠してしまう可能性があります。
また、特に犬を外飼いしている場合は、避妊していないメス犬と去勢していないオス犬が遭遇することによって妊娠してしまうことがあります。
室内飼育にしているからといって完全に安心はできません。
発情期には、去勢していないオス犬はメス犬を求めて脱走する危険性もあるためです。
犬を外で飼っている方はまだ多くいるので、その危険性は少なくはないでしょう。
また、自分が飼っているのがオス犬で妊娠の危険性がなくても、望まない妊娠をさせて 子犬 の命を奪うようになってしまうことは避けるべきです。
日本では多くの犬が 殺処分 されていて、その中には子犬も多数含まれています。
筆者は犬をはじめとした動物の保護活動をしていますが、乳飲み子で捨てられた子を育てたこともありますし、妊娠しているメス犬を保護したこともあります。
犬の遺棄や殺処分を減らすためには、オス犬も時に去勢することは大変効果が高いことであると思います。
去勢していないオス犬同士は、同居が困難であることがあります。
犬は群れで生活する動物で序列がありますが、去勢されていないオス犬は自分が上位になろうとする気持ちが強いですし、縄張り意識も強くなります。
去勢されていないオスを保護した経験もありますが、新入りであるにも関わらず周囲を威嚇し自分が上位に立とうとするので、他の犬と一緒にすることが困難でした。
保護した犬はすぐに不妊手術を施すのですが、手術後は攻撃性が抑えられ、他の犬の仲間に入ることが可能になりました。
犬の個々の性格によるところも大きいものの、攻撃性を抑えるのに去勢はかなり効果が高いと言えます。
去勢をかわいそうと考える人もいますが、攻撃性により飼育が難しくなるよりずっと良いでしょう。
去勢していないと ドッグラン で他の犬と遊ぶことも困難になる場合がありますし、 犬と泊まれる宿・ホテル・旅館 で他の犬と遭遇するのも避けるようにしなければならないなど行動が制限される面もあります。
発情期はメス犬の発するフェロモンの匂いに誘われて、オス犬はメス犬に引き寄せられます。
筆者の知り合いがメスの飼い犬を避妊手術していなかったところ、毎晩オス犬が通ってきて家の周りで吠え、あげくは昼間でもうろつくようになってしまったことがありました。
オス犬の飼い主が分かっていたので、犬を放さないこと(放し飼いは違法)、去勢してほしいことを話しました。
その後オス犬は来なくなりましたが、去勢はしなかったようですし、発情期のたびにかなりのストレスを抱えたであろうと想像できます。
発情期は自分の家に帰ることさえ忘れてしまうこともあるのです。
中にはメスの匂いに触発されて、遠吠えを繰り返すなどの行動が見られることもあります。
去勢すれば、発情して精神的に不安定になることはなくなります。
去勢していないオス犬はより縄張り意識が強くなるため、マーキング行動が多く出てしまいます。
マーキングは犬の本能なので、去勢してもマーキング行動が完全になくなるわけではありません。
また、一度マーキングを行い、自分の縄張りを主張するようになった後に去勢手術を行っても、マーキングをしなくなる確率は50%程度といわれています。
マーキングをしてほしくないという場合は、去勢手術が可能になる生後6か月ぐらいで手術を行う方が良いでしょう。
それ以降に去勢手術を行っても意味がないわけではなく、 トイレ の失敗や尿のとびちりを最低限に抑えることが可能です。
犬はオスもメスも高齢になると生殖器系の病気にかかりやすい傾向があります。
オス犬がかかりやすいのが 「精巣腫瘍」、「前立腺肥大」、「肛門周囲腺腫」 などです。
これらの病気は去勢手術をしておくことで発症を予防すること ができます。
また、オス犬によくある病気に「停留睾丸」があるのですが、これは放置すると中高齢になった時に腫瘍になる可能性が高くなります。
犬が停留睾丸であると判明したときは、必ず去勢手術を受けさせる必要があります。
停留睾丸は「腹腔内に精巣が停留する場合」「鼠径部(股)に停留していて皮膚の上からわかる場合」があります。
また、「両側の精巣」の場合もあれば「片側の精巣のみの場合」もあります。
精巣がどこに停留しているかによって手術の難易度は変わりますが、全身麻酔で行うため、100%安全とは言い切れません。
停留睾丸の場合は手術を行うメリットの方が大きいのですが、担当の獣医師とよく話し合ってください。
去勢手術には多くのメリットがありますが、もちろんデメリットがないわけではありません。
ここでは去勢のデメリットを詳しくご紹介します。
去勢手術の一番のリスクは手術を受けるための麻酔です。
犬は手術を受ける際に全身麻酔をしなければならないのですが、全身麻酔は動物にとってリスクが高くなります。
しかし健康状態がよく、手術に耐えうる体力があれば、このリスクは一般的に高くないといわれています。
筆者は何件も 保護犬 や 保護猫 に手術を受けさせてきましたが、1件も不妊手術で亡くなった例はありません。
手術を行う前には通常「血液検査」や「全体的な健康診断」を行い、麻酔をかけることが可能かどうか確認します。
年齢にかかわらず肝臓や腎臓の検査数値が正常範囲にないこともあります。
また、聴診の結果心臓のトラブルが見つかることもあります。
このような異常が見つかった場合は、麻酔のリスクが高くなるため去勢手術をするべきかどうかをよく検討する必要があります。
術前検査を行わないで手術を行う病院もありますので、担当の獣医師とよく話し合いましょう。
去勢手術をするとホルモンの影響で活動量や食欲が変化する場合があり、手術前と同じ食事内容だと太ってしまうことがあります。
これも個体差があり、全員が太るわけではありませんが、その傾向は高いでしょう。
今は ダイエット 用の ドッグフード や避妊去勢を行った犬用のドッグフードもたくさん発売されてるため、手術後はカロリーを抑えた食事にしてあげると良いです。
筆者は保護した犬を、不妊手術をしてくれる人にしか譲渡しませんが、避妊手術には同意しても去勢手術を嫌がる人が時々います。
かわいそうだからというのがその理由です。
また、「去勢手術をすると犬がうつ病になる」というあまり根拠のない説を唱える方もいらっしゃいます。
筆者は数多くの犬や猫に去勢術を受けさせてきましたが、「うつ病になる」という事実はありませんし、去勢されたからといって落ち込んだりすることはありません。
去勢前は縄張りを主張するためにカリカリしてほかの犬に攻撃性を示し、落ち着きのなかった子が去勢後には落ち着いて他の犬と仲良くできるようになり、のんびりとくつろげるようになる姿を何度も見ています。
去勢で犬が心理的に傷つくということは、少なくとも筆者の経験上はあまり考えられません。
子犬のときに家族に迎えた場合は、子犬がある程度成長してから去勢手術をすることになります。
生後6か月~1年未満に受けさせるのが通常ですが、子犬の成長には個体差があるので成長具合を見て 手術をします。
1歳以上の成犬を迎えた場合は、健康に問題がなければできるだけ早くに受けさせた方がいいでしょう。
成犬はマーキング行動をしますし、ほかの犬とけんかしたり、自分の思うようにならなければ飼い主に対して攻撃的な態度をとることもあります。
去勢手術をすることによって問題行動を抑えることができます。
去勢手術を受けることになった際の費用や、手術について説明します。
犬の去勢手術の費用は一般的に、 小型犬 ・ 中型犬 が 1.5 万円~2 万円、 大型犬 が3 万円前後 です。
動物病院によって費用は変わりますし、犬の大きさによっても変わります。
事前に血液検査や心臓の検査を行うと、手術費にプラスしてこれらの検査代もかかります。
検査はオプションで選ぶことができる病院と初めからセットになっている病院がありますので、事前に何をするのか費用はいくらかを聞いておきましょう。
血液検査はそれほど高額ではない場合が多い(1万円前後)ので、事前に受けておくことをおすすめします。
手術の前日夕方~当日の朝は絶食しなければならないので、病院の指示に従ってください。
去勢手術は全身麻酔をかけて行いますが、手術自体は20分~30分程度で終わることがほとんどです。
停留睾丸であった場合以外は開腹手術ではないので、日帰りすることができます(病院によっては1日入院のところもあります)。
術後は落ち着いて過ごせるようにし、傷口をなめさせないようにしましょう。
どうしてもなめてしまう場合は、エリザベスカラーや術後服で対策をします(病院で付けてくれるところが多いです)。
去勢手術はメスの避妊手術と 違って傷口も小さく回復も早いです。
犬の去勢に関しては様々な意見がありますが、去勢手術を受けさせない場合は、飼い主として望まれない命を増やさないようにする、周囲に迷惑をかけないようにするなど犬の管理には十分注意することが必要です。
犬の去勢にはリスクがありますし、デメリットもなくはありません。
しかし、問題行動の防止、病気の予防などメリットの方が大きいと言えるでしょう。
手術のリスクも去勢手術は短時間で終えることから、検査など十分に対策をすればかなり低いと言えます。
これらを考慮して去勢手術をするかどうか決めていただきたいと思います。
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監修:獣医師 平松育子(ひらまつ いくこ)
山口大学農学部獣医学科(現:山口大学共同獣医学部)卒業後、複数の動物病院で勤務医を経て、2006年ふくふく動物病院を開業。
2007年よりYICビジネスアート専門学校ペット総合科で講師を務めています。
また、公益社団法人 日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクターとして、人とペットが楽しめるアロマテラピーにも取り組んでいます。
飼い主様としっかりコミュニケーションを取ることを大切にし、飼い主様とペットの笑顔に繋がる診療を心がけています。
最終更新日 : 2021/05/20
公開日 : 2018/02/13