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犬と赤ちゃんの同居では、 第一に犬のしつけ(訓練)ができていることが大切です 。
同じように人間と一緒に暮らす動物では 猫 が一例として挙げられますが、猫は特に訓練の必要はありません。
それでは、なぜ人間と犬との生活では、しつけが欠かせないのでしょうか。
それは、犬が群れで生きる動物だからです。
犬 はかつて群れを作り、お互いを守り合い、協力して狩りを行うという生活をしていました。
群れを統率するためにはリーダーの存在が必要であり、リーダーは群れに責任を持つとともに、群れのメンバーはリーダーに従うという方法で上手く生きてきたのです。
群れの中にはリーダーの他にも序列があり保たれます。
現在、人間のペットとなった犬は、犬同士で構成された群れで暮らしていませんが、 犬は人間の家族を群れとみなします 。
人間との暮らしでは犬がリーダーになってはいけませんし、犬の方が人間より上位になってはいけません。
人間の方が犬より下位になってしまうと、リーダーである犬は当然の権利として、飼い主に自分の言うことを聞かせようとしますし、ときには暴力的になってしまうこともあります。
赤ちゃんとの暮らしの中で、犬が上位になってしまうことは絶対に避けなければなりません。
赤ちゃんが家族になる前に、犬にはきちんとしつけをしてあることが大事なのです。
犬の しつけ は多岐に渡りますが、赤ちゃんとの暮らしで最重要なのが、 犬が飼い主をリーダーと認めているか、アイコンタクト・待て・座れなどの基本のしつけができているか、社会化がなされているか です。
飼い主をリーダーと認めていれば、基本的なしつけは問題なくクリアできるでしょう。
リーダーと認めてもらうには、愛情の中にもときには厳しく接することができ、一貫した態度で「良い・悪い」を教え、犬に信頼されなくてはなりません。
社会化とは、犬がほかの人間やほかの犬とコミュニケーションをとることができ、人間社会の様々な場面で過度におびえたり、パニックになったりせずに過ごせるということです。
社会化はできれば犬の幼少時、犬を迎えたときからほかの人や犬に会せたり、家の中以外の人間社会に触れさせたりするなどして養いましょう。
しつけが上手くいかない、自信がないときは、「しつけ教室」を利用することをおすすめします。
人間側も犬への接し方を学べますし、犬は訓練のほかに社会化も身に着けることができます。
犬は子供が好きであるという印象が強い人は多いかもしれませんが、実は 犬は子供のことが苦手 な場合が多いです。
子供は傍若無人で加減を知らず、大きな声を突然出し、予測不能の行動をするからです。
しかし、 犬のしつけができていて、飼い主をリーダーと認めていれば、飼い主の大切にしている赤ちゃんを犬も大切にしますし、ガマンもします 。
そして、赤ちゃんを家族と認め、愛情を抱くようになるのです。
最近、犬を人間扱いして「上下関係はない」、「絆があれば分かってくれる」などと言う人がいますが、筆者は賛成できません。
長い人間との生活に犬は順応していますし、人間が教えたことを実行できる優れた能力がありますが、それでも「犬の習性」を持つ動物であり人とは違う生き物です。
動物だから下に見るのではなく、犬という動物であることを理解して一緒に暮らさなければ、不幸な結果になってしまうと思います。
特に赤ちゃんと犬が同居する場合は、飼い主の制止を聞くことは必要なことだと思います。
犬は猫よりも環境の変化への対応が上手ですし、飼い主に従う能力もありますが、いきなり赤ちゃんを犬に会わせるのではなく、少しずつ準備をしておいた方が良いでしょう。
犬は赤ちゃんを迎えるまでに、家の中の様子が変わったり、飼い主がバタバタしたりというような色々な変化を感じているはずです。
そして、赤ちゃんが生まれるとなったときは、人間も緊張しますが犬も飼い主の緊張を感じ取り不安に思うはずです。
その時は犬を思いやる余裕はなくても、後で声をかけ安心させ、いつも通りのスキンシップをして、何も怖がることはないと教えてあげましょう。
出産の前に犬をよそに預けるのは避けた方が良いでしょう。
ただでさえ、赤ちゃんとの対面は犬にとっても大変な変化です。
よそにやられている間に知らない赤ちゃんが増えていて、家庭環境が変わった中に突然戻ってくるのは犬を混乱させてしまいます。
犬は飼い主の様子を気にかける動物です。
赤ちゃんを迎え入れる準備や家の様子が変わっていくことを自分の目で見ることで、何かが変わると分かりますし、変わることをだんだんに受け入れてもいきます。
犬が待っている家に赤ちゃんを連れ帰るようにしましょう。
赤ちゃんは、お母さんの体内にいるときに色々な音を聞いていることが知られています。
そして、音楽など体内にいたときに聴いていたものを好む傾向があるようです。
お母さんのお腹にいる間に、愛犬の鳴き声をときどき聞かせてあげると赤ちゃんはそれを覚えているかもしれません。
ペットの犬の鳴き声を胎内で聞いていた赤ちゃんは、生まれてからも犬の鳴き声にあまり驚かないと言われています。
犬は他のにおいに敏感で、嗅いだことのない匂いを飼い主がつけて帰宅するとチェックしますので、愛犬ににおいをしつこく嗅がれたことがある飼い主さんは多いのではないでしょうか。
犬に不審がられないように、出産後に赤ちゃんに犬を会せる前に、赤ちゃんの匂いがついたものなどを嗅がせておきましょう。
犬は匂いから情報を得ようとします。
赤ちゃんの匂いに慣れておけば、犬の警戒心を軽減することができるでしょう。
犬に対してそれが「いいことである」と教えるのは「ほめてあげる」ことです。
赤ちゃんに犬が初めて会ったときに、フレンドリーで友好的な態度をとることができたら、穏やかにほめてあげましょう。
ただし、口をなめようとする、手をかけようとするなどの行動は制止した方が良いです。
口をなめるのは犬にとっては親愛のしるしですが、衛生面から口をなめさせるのは良くないですし、犬の爪は固いので、赤ちゃんの皮膚を悪気はなくても傷つけてしまう恐れがあるためです。
犬との暮らしで気を付けるべき病気には、犬だけが感染するもの、犬と人の両方が感染するものがあります。
犬も人も感染する病気を 「人獣共通感染症」 といいます。
ペットから病気が移ると言うと怖いと思う方もいるかもしれませんが、 リスクを知っていた方がきちんと予防できる のです。
特に赤ちゃんがいるご家庭では予防はとても大切です。
予防法を知り実施することで安心して暮らせますね。
サルモネラ菌は生肉や菌に感染した人や動物のフンに含まれます。
感染すると食中毒や胃腸炎を引き起こすことに繋がります。
カンピロバクター菌も、食中毒を引き起こす菌の一つです。
生肉や菌に感染した人や動物のフンに含まれます。
回虫は寄生虫の一つで、犬が最も寄生されやすい線虫といっていいでしょう。
世界中の感染例があり、人間の感染も珍しくはありません。
感染すると下痢や嘔吐、寄生虫の毒による体調不良などの症状が出ることがあります。
ノミやダニに寄生されると血を吸われてかゆくなるだけでなく炎症を起こしたり、ダニが媒介するに病気にかかったりすることもあります。
犬が感染するダニは犬にしか感染しないものもありますが、マダニ、ヒゼンダニは人間にも感染します。
ダニが媒介する病気としては「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が知られており、発熱、嘔吐・下痢、意識障害などを引き起こします。
これらの病気の予防法を知っておき、確実に実行することで感染は防ぐことができます。
予防法は難しいことではありません。
犬を正しく飼育し、衛生面に気を付けることが基本で一番大事なことです。
「犬を触ったら手を洗う」とはよく言われますが、室内で犬を飼っていて、触るたびに手を洗うのはかなり難しいことでしょう。
しかし、 「食事の前に手を洗う」、「食べ物に触るときには手を洗う」 であれば実行できますね。
「犬を触ったら手を洗う」は、外飼いが主だったときの注意の仕方と思われます。
筆者は保護活動をしており、動物に触れる時間が1日のほぼすべてに渡るため、テーブルやキッチンなど、食べ物に触れる場所には消毒液も置いています。
犬が菌や寄生虫に感染していると、フンから人に感染する可能性が高くなります。
特にウンチは放置したりせずに、速やかに片づけましょう。
もちろん、 トイレ やトイレ周辺も清潔にしてください。
犬を外で飼っていると寄生虫やノミ・ダニに感染するリスクは高くなります。
室内飼育をすることにより、感染リスクが減りますし犬自身も清潔に保たれるでしょう。
犬は室内飼育をしても散歩などで必ず外に出ます。
外に出れば感染のリスクはあるので、ノミ・ダニの予防はしっかり行いましょう。
現在では、1か月に1度つければいいだけの薬もあるので面倒ではありませんね。
犬を飼い始めるときに、たとえペットショップから購入したとしても、一度は検便し必要があれば駆虫しましょう。
駆虫後は散歩などで変なものを口にしない限り感染リスクは減りますが、年に一度程度、病院で検便をしてもらっても良いですね。
犬が人の口をなめたがるのは親愛の情ですが、やはり直接口をなめせると感染リスクが高くなるので、やめさせた方が良いでしょう。
生肉には食中毒を起こす菌が付着している可能性がありますので、犬への感染を防ぐために生肉を与えない方が良いでしょう。
生肉を食べさせることを推奨する人もいますが、オランダの大学による研究で生肉には多くの寄生虫や菌が付着していることが分かっています。
犬アレルギー はあまり聞きませんが、ないわけではありません。
アレルゲンになるのは、犬のフケや唾液です。
赤ちゃんがアレルギーを発症するかどうかは、一緒に暮らしてみるまではわかりません。
アレルギー体質にならないためには、小さいころから動物と暮らすと良いという意見もありますが、一方でアレルゲンにはなるべく近寄らない方が良いという意見もあり、どちらがより有効なのかはよく分かっていません。
アレルギーの最も多い原因はハウスダストであり、「犬アレルギーである」と断定されるためには検査が必要です。
もしアレルギーを発症してしまっても、できることはあるので、すぐに「犬を手放す」という手段はとらないで欲しいと思います。
犬を赤ちゃんがいる部屋に立ち入られないようにすれば、アレルゲンに接触する機会を減らすことができます。
子供が成長する過程でアレルギーが治ることもあります。
日本の空気清浄機はとても優秀です。
自動で花粉やにおいを感知してくれるものまであります。
空気清浄機を使用することでアレルゲンをかなり軽減することができますし、実際に筆者は空気清浄機の使用で 猫アレルギー の方がアレルギー症状を抑えられた事例を知っています。
部屋を清潔にすることはアレルギー対策にもとても重要です。
掃除機をいきなりかけるとアレルゲンが舞い上がってしまうので、はじめにウェットシートなどで拭き掃除をしてから掃除機をかけると良いでしょう。
犬を シャンプー すると、8割以上のアレルゲンを減らせるという報告もあります。
定期的にシャンプーをして犬をきれいに保つとともに、日ごろからブラッシングなどで抜け毛などを取り除いてあげましょう。
ブラッシングの際に蒸しタオルなどで拭いてあげると、抜け毛が舞い上がりづらく犬の被毛もきれいに保たれますよ。
どんなに賢くフレンドリーな犬であっても、赤ちゃんと犬だけにしておくことは避けるようにした方が良いでしょう。
犬を制止できる大人の監視の中で、一緒の時を過ごさせるようにしてください。
赤ちゃんがハイハイして動けるようになったら、犬のトイレや食器に触れることができないようにしてあげた方が良いです。
ベビーフェンスなどを活用するといいですね。
多くの犬は飼い主が大切に思っている赤ちゃんに愛情を示しますが、愛情を独占されることによって嫉妬することもありえます。
飼い主の気をひきたいばかりに、いたずらや破壊行動をしてしまったり、無駄吠えや粗相なのどの失敗をしてしまったりするような行動をとってしまうことも。
犬にとっても生活が激変し、自分へ向けられていた愛情がほかに向けられるのですから、ストレスを感じてしまうのは仕方がないことです。
このような行動が見られたら、一緒に遊ぶ、 散歩 に出かけるなど犬とのスキンシップを取るように心がけましょう。
赤ちゃんのお世話をするということ大変なことですし、ホルモンバランスの変化などからも犬の世話が負担に思うこともあるかもしれません。
犬は毎日散歩に連れて行ってあげるなどの世話も必要ですから、世話をする時間を取るのが難しいと感じることもあるでしょう。
犬の世話など、パートナーやほかの家族と家事の分担をあらかじめ決めておくとう良いですね。
どうしても飼うのが難しいと感じたら、ペットシッターにお世話に来てもらうなどの方法もあることを知っておき、全部をひとりで背負い込まないようにしましょう。
犬と赤ちゃんの同居は、気を付けなければいけないことがもちろんあります。
しかし、それによってもたらされる恩恵もたくさんあるでしょう。
赤ちゃんが来る前も犬がいてくれるだけで、日々の生活の疲れや心のささくれ立ちが癒されたはずです。
犬ほど 一心に飼い主さんを慕う生き物は中々いないと思います。
犬は家族となった赤ちゃんにも深い愛情を注いでくれると思います。
いい家族となり、友人となり、赤ちゃんの心を豊かにしてくれます。
そして、命の尊さも教えてくれることでしょう。
犬は人間より先にこの世を去ってしまいます。
命は失われたら二度と戻ってこないこと、その命が失われたら悲しむ人がたくさんいること、だから命を大切にしなければならないことを身をもって教えてくれるはずです。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/27
公開日 : 2018/02/08