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病気でないことが分かったら、吠えるシチュエーションを把握しよう
飼い主にとっては悩みの種となってしまうことの多い「無駄吠え」ですが、犬が吠えるのにはきちんと理由があるのです。
「何故吠えるのか?」によって、吠えに対する対処方法は異なります。
ここでは、犬が吠える理由として考えられることをお伝えします。
体に痛みや違和感がある場合、泣き叫ぶように吠え続けることがあります。
「突然よく吠えるようになった」「あまり動かずに鳴き続けている」「不自然な動きをする」などいつもと様子が違うときには要注意です。
また、認知症など脳神経系の疾患でも吠えることがあります。
この場合、夜中に吠え続けることも多く、飼い主が疲弊していまいます。
認知症などは一見改善が難しいように思われるかもしれませんが、昼間の環境改善や投薬で軽減されることもあります。
ご自身の心身を健康に保つためにも、早めに動物病院を受診しましょう。
遊んで欲しいときや食べ物が欲しいときなど、何かを要求して吠えることがあります。
早朝や来客時、電話中などに吠えることが多く、近所迷惑になったり、話が聞こえなくなったりして、飼い主が困ってしまうことが考えられます。
散歩に行く前や出かける前、飼い主の帰宅時などに興奮して吠えることがあります。
また、来客のチャイムに吠えたり、猫など他の動物が来たりしたときに遊びに誘うように吠える犬もいます。
同じように飼い主以外の人や他の動物に対して吠えている場合でも、相手を怖がって威嚇していることも考えられます。
また、飼い主の留守中のみ吠えるという犬もおり、そういった場合は飼い主と離れることに不安を感じていることが考えられます。
「怖がり」や「興奮しやすい」などその犬の性格によって個体差はありますが、よく吠えるかどうかはある程度犬種によって決まっています。
どんな種類の犬がよく吠えるのか見てみましょう。
これから犬を飼うことを検討されている方は、住宅事情などを考えて犬種を選んだ方が良いでしょう。
吠えやすい犬種の特徴として、「狩猟犬や牧羊犬、番犬など職業犬として改良された犬」が挙げられます。
具体的には、 アイリッシュセッター 、 イングリッシュセッター 、 コーギー 、 ジャックラッセルテリア 、 ダックスフンド 、 コリー 、 シェットランドシープドッグ 、 ボーダーコリー 、 ドーベルマン 、 柴犬 などです。
狩猟犬は群れで狩りをするように育てられており、特に獲物を追い立てる役のセッターなどはよく吠える犬種として知られています。
家庭犬に多い、コーギーやジャックラッセルテリア、ダックスフンドも、狩猟を目的に改良された犬です。
また、コリーやシェットランドシープドッグ、ボーダーコリーなどの 牧羊犬 は、羊を小屋の中に入れるという仕事を目的として改良された職業犬です。
吠えて羊をコントロールし、放牧されている羊を小屋まで連れて行きます。
ドーベルマンや柴犬など、番犬として改良された犬もよく吠える傾向があります。
これらの犬種はどれも、もともとは「吠えて獲物を追い立てる」「吠えて羊をコントロールする」「吠えて不審者を追い払う」など吠えることを推奨されてきた犬なのです。
犬が吠える理由は沢山あることがお分かりいただけたと思います。
ただ、いくら意味があって「無駄」ではないと言われても、日常生活を送る上で、あまり鳴き声がうるさいと困ってしまうこともありますよね。
こうした飼い主が困ってしまう「吠え」に対しては、どのように対処したら良いのか見ていきましょう。
その「吠え」は突然始まったものではありませんか?
体を触るのを嫌がる、不自然な動作をするなどの行動は見られませんか?
もし愛犬にそのようなことが見られたら、病気が隠れている可能性も考えられます。
特に「普段あまり動物病院にお世話になることはない」という場合は、吠えに対するしつけを行う前に、健康チェックも兼ねて動物病院を受診することをおすすめします。
爪切りやワクチンのついでに、「吠え」についてちょっと相談してみるというのも良いかもしれませんね。
健康状態に問題がないことが分かったら、いよいよ吠えの改善に取り組みましょう。
まずは、「いつ、どんなときに吠えるのか?」に注目します。
日中の飼い主がいないとき(近所の人からの指摘で気付くことが多いです)なのか、来客時など特定の場面や特定の人に吠えるのか、夜間なのかなど、決まった時間や決まった刺激があるのかを把握することが大切です。
明らかに運動が足りていないなど飼育環境が充分整っていないと感じた時は、散歩や遊ぶ時間、落ち着ける場所の確保など快適な環境作りから始めましょう。
「常に吠えていて、何に反応しているのか分からない」という場合でも、何日か観察することで、吠えるときのパターンが見えてくることがあります。
飼い主の気を引くための「要求吠え」をしているとき、それに応えてしまうと、ますます吠えるようになってしまうことがあります。
これは、吠えることで要求を通すことに成功したと犬が認識するためです。
一度「要求吠え」で要求が通ると思った犬は、「吠える=自分の要求が通る」と学習し、どんどん吠えるようになります。
吠えることを加速させないためには、「要求吠え」に応えないことが大切です。
「要求吠え」をしているときは、飼い主は犬と目を合わさず無視します。
このとき、絶対に怒ったりしてはいけません。
飼い主は怒っているつもりでも、犬にとっては「飼い主が反応してくれた」「かまってくれた」となってしまうためです。
しばらく吠えても、飼い主が反応してくれないと分かると、犬は静かになります。
そのタイミングで「おすわり」などのコマンド(声かけ)を出し、座れたらご褒美を与えます。
これを繰り返すことで、犬は「吠えるよりも座った方が良いことがある」と学習し、吠えなくなります。
来客に対してなど、特定の人や物に対して吠える場合には、なるべくその刺激を回避出来るようにします。
窓の外に向かって吠える場合には、外の様子が分からない部屋に犬を移動させます。
外飼いの場合には、玄関に入れる、裏庭につないでおくなど、「吠える対象」となるものが犬の目に触れないようにすることが重要です。
また、自転車やバイクなどに吠える場合には、散歩の時間や散歩の場所を変えるなどして、なるべくそうした「苦手なもの」「興奮してしまうもの」に触れさせないようにします。
犬は、吠えることが習慣化してしまうと、ますます吠えるようになってしまうことがあります。
まずは、出来るだけ吠える要因になっているものを取り除くことが大切です。
郵便や宅配に吠える犬に多いパターンについてご紹介しましょう。
こうした来客に吠える犬は、「見知らぬ人が家に来ることに対する恐怖」から吠えている場合と「飼い主に不審な人が来ることを知らせている」、つまりそれを自分の仕事のように思い吠えている場合と2パターンに分けられます。
たまに、「来客の中に遊んでくれる人がいて、喜んでいる」というパターンもありますが、多くは「恐怖」もしくは「飼い主へのお知らせ」です。
どちらのパターンも、そのまま放っておくと、間違いなくますます吠えるようになります。
その理由は、「来客は家に近づいてくるけれども、用事が済んだら帰って行く」ということにあります。
人間にとっては当たり前のことですが、犬の見方としては「自分が吠えたおかげで、不審者が去って行った」となるわけです。
このように吠えがどんどん酷くなるのを防ぐためには、犬をなるべく玄関側の外が見える窓から遠ざけるなど、刺激から遠ざけることと、次にお話する「吠えること以外の対処法」を教えてあげることが重要です。
どんな理由にしても犬が吠えるのは、興奮しているときです。
そんな状態の犬に対して、やみくもに怒ったところで効き目はありません。
飼い主が大声を出したことに興奮し、ますます吠えるようになるだけです。
人間の発達心理学でよく言われていることですが、人間を含めて動物に「禁止」を教えるのはとても難しいことなので、代わりの案を提示することが大切です。
幼児に「走らないで」と言って聞かせることは難しいですが、「歩いて」というと、走っている子どもが走るのをやめることがあります。
犬の吠えに関しても同じことが言えます。
例えば、来客時に興奮して吠えることが問題ならば、吠えることの代わりに「来客時には、おもちゃを持ってきて静かにおすわりする」という別の行動を教えてあげるのです。
それが出来たらおやつを与えて褒めることで、「吠えるよりもおもちゃを持ってきて座った方が良いことがある」と学習させることが出来ます。
来客を例に「吠える」に代わる「別の行動」の教え方について解説します。
興奮している状態では何を言っても効果がないので、まずは来客があっても落ち着いていられるように練習をします。
郵便や宅配の場合はバイクやトラックの音など遠くからの音に反応していることも多いため、いきなり全ての吠えをやめさせることは難しいかもしれませんが、チャイムの音に対する反応を減らすことなら簡単にトレーニング出来ます。
まず、家族の誰かがそっと部屋を出て、チャイムを押しドアを開けます。
このときにおやつを与え、再びドアを閉めます。
これを何度か繰り返します。
こうすることで、犬は外にいるのが飼い主だということを認識出来るので、チャイムに対する興奮が弱くなります。
おやつを与えることで、チャイムに対する恐怖心も軽減できるのです。
前述した通り、犬にいきなり「吠えるな!」「静かに!」と言ったところで、犬は静かにはなりません。
まずは、「静かに」の意味を教えるところから始めます。
そのためには、犬を吠えさせることが必要となります。
犬を吠えさせるのは簡単です。
犬は興奮すれば吠えるので、飼い主が飛び上がったり、その場で走るような動作をして見せたりして、同時に「吠えて」と口で言います。
吠えやすい犬は大抵これで吠えます。
続いて飼い主がピタッと動作を止め、小さな声で「静かに」と言います。
こうすると、意味は分からなくても、犬は不思議に思って吠えるのをやめます。
吠えるのをやめたらすぐにご褒美をあげます。
これを何度か繰り返すことで、犬は「吠えて」と「静かに」というコマンドを覚え、言葉だけでも反応するようになります。
吠えるのを禁止するのではなく、「静かに」を教えるのです。
要求や特定の刺激に興奮して起こるような「吠え」は、しつけで解決出来るものも多いですが、犬にとって極端に怖いものがある場合や不安が強い場合などは、改善が難しいこともあります。
色々と試してみたけれど解決しないときは、一人で悩まずに、しつけ教室などを開催している「しつけに知識のある動物病院」や、犬の行動を専門に扱っている「行動診療科のある動物病院」に相談してみましょう。
吠えは放っておくほど酷くなる傾向があります。
気になるときには早めに相談することが大切です。
犬が吠える理由やよく吠える犬種、しつけの方法などをご紹介しました。
運動量を増やしたり、落ち着ける場所を作ったりすることで、飼い主の関心を引こうとしたり、不安な気持ちで吠えていたのを減らすことが出来るかもしれません。
また、要求吠えに対する反応をしないことで吠えるのをやめさせることや「静かに」を教えることで、来客時の興奮を抑えることも期待出来ます。
犬も飼い主も幸せに暮らすために「吠え」という犬の言葉に耳を傾け、心地よい環境を作ってあげたいですね。
執筆・監修:獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)
原因不明の難病に20年以上苦しみながらも、酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師免許を取得。
小動物臨床や、動物の心理学である動物行動学を用いたカウンセリング、畜場での肉の検査(公務員)など様々な経験を経て、現在は書籍の執筆や講演活動などを行なっている。
車椅子生活をしながら活動する、日本で唯一の「寝ながら獣医師」。
最終更新日 : 2020/12/28
公開日 : 2020/12/28