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「世界一怖いもの知らずの動物」として知られるラーテル。
しかし、世界一という割には名古屋の「東山動植物園」でしか見られない動物ということもあり、日本での知名度は残念ながらそこまで高くはない動物です。
そもそも「世界一」と言われる由縁には、ギネスに認定されたことがきっかけとなりました。
ラーテルが生息しているのは、ヒョウや ライオン と言った凶暴な動物も数多く生息する南アフリカ一帯。
こうした動物がいる中でも、体長60cmほどのラーテルは「恐れ知らずな動物」として生息し、主に単独かつがいで行動をしています。
ラーテルが恐れ知らずと言われるのは、その気性の荒さだけではなく、分厚く頑丈な皮膚を持っているため。
背中の頑丈な皮膚は、たとえライオンが牙を立てても傷つけることができないほどに丈夫です。
また、ラーテルは神経毒にも耐性を持ち、たとえコブラの毒に侵されてもわずか数時間で回復できるため、命を落とすことはありません。
ラーテルは凶暴なだけでなく、素晴らしい防御能力を持っているために「怖いもの知らずの動物」として知られる動物なのです。
ラーテル(Ratel)はイタチ科の動物で、イタチ科ラーテル亜科ラーテル属に分類される動物です。
日本では「ラーテル(Ratel)」と呼ばれますが、英語圏では「Honey badger」、学名では「Mellivora capensis」」と呼ばれます。
体長は約60cm〜77cmほど、尾長は20cm〜30cmほど、全長で約80cm〜110cmほど、体重は7kg〜13kg程となっています。
ラーテルの特筆すべき特徴としては、頭部から背中にかけて覆われる白い体毛と、その頑丈な皮膚です。
前述の通り、この頑丈な背中の皮膚は非常に分厚く、外敵からの攻撃を寄せ付けることがありません。
ライオン等の猛獣が爪を立てようが、噛み付こうが貫通させることは難しいのです。
まるで硬いゴムのような皮膚は柔軟性を持ち、ラーテルは容易に動き回ることができる上に、非常に獰猛な性格をしていますので、猛獣と言えどラーテルを簡単に捕食することはできません。
ラーテルにとっては獰猛な 爬虫類 として知られる「コブラ」も捕食の対象となります。
ご存知の通り、コブラは同類のヘビの中でも獰猛で、より強い神経毒を持つヘビです。
その神経毒に関しても、人間が噛まれてしまうとほぼ100%死に至るもので、人間よりも遥かに体の大きなゾウですら死に至るほどです。
そんな恐ろしいコブラの神経毒ですが、ラーテルはこの神経毒に耐性を持っているため、余程のことがなければ死に至ることはありません。
ラーテルの体内にコブラの神経毒が回っても、一時的に体が痺れ、気を失ったような状態になりますが、それもわずか数時間のこと。
時間が経てばケロッと起き上がり、普通の状態に戻ります。
そんなラーテルですが、意外にもコブラに噛まれて神経毒が体内に回ることもあれば、コブラを捕食したことで神経毒が体内に回ることもあるようです。
この他にも、ラーテルは非常にガッシリとした四肢をしており、発達した鉤爪を持ちます。
この発達した鉤爪は、木登りや穴を掘る事を可能にしており、地面に3m程の穴を掘って巣穴にすることもあります。
ラーテルはこの巣穴に潜み、コブラや 小動物 を捕獲するのです。
イタチ科ではありませんが、お尻から強烈な臭いが付いた液体を放出する動物と言えば「 スカンク 」が有名です。
実はラーテルもスカンクと同じように、危機が迫ると肛門腺から悪臭のする液体を放出することがあり、この液体で敵を一蹴させることもあります。
液体を放出する際には、敵の顔面を目掛けて放出するため、放出された敵はその強烈な悪臭で戦意喪失するのでしょう。
ラーテルの生息地は、乾燥した熱帯の地域です。
主にアフリカ大陸〜中央アジアにかけて生息しており、「サバンナ」や「岩石地帯」「森林」「草原」「湿原」といったように、様々な環境にも順応することができる動物です。
中には標高4000mの高山に生息するラーテルを見かけることがあるようです。
主に単独で行動するラーテルは常に移動しながらの生活を繰り返しており、日によっては10km〜25kmほどの距離を移動します。
また、ラーテルは基本的には夜行性の動物ですが、人間が少ない地域などにおいては日中も活動します。
こうして様々な環境に順応できる理由が、ラーテルが雑食の動物であるということが挙げられます。
ラーテルは主に「動物」や「昆虫」などの動物性蛋白質だけでなく、「果実」といった植物性の食べ物も食料とする雑食性の動物です。
目に入ったものはとりあえず捕食すると言ったように、食に関してのこだわりはあまり無く、多くのものを食料として摂取することができます。
ラーテルに捕食される動物には、「ネズミ」や「 リス 」などのげっ歯類の動物、「 ヘビ 」や「 トカゲ 」「 カエル 」等の両生類が挙げられます。
中でもリスは木の上で生息する動物ですが、ラーテルは木登りも得意なため、リス以外にも木の上で生息する「 鳥 」やその卵も捕食してしまいます。
また、ラーテルは肉だけでなく、骨までもしっかりと食することのできる強靭な顎を持っており、硬い甲羅を持つ「 カメ 」も捕食することが可能です。
主に雑食であるラーテルの好物は「ハチミツ」。
その他、ミツバチやミツバチの幼虫も好物としています。
ラーテルの英名は「Honey badger」と呼ばれますが、まさにこのハチミツ好きであることから「Honey」の名前が付けられています。
また、かつては日本でも「ラーテル」の名ではなく「ミツアナグマ(蜜穴熊)」と呼んでいた時代もありました。
学名では「Mellivora capensis」と表記されますが、これに関しても「ケープ地方の蜜食い」という意味があるのだそう。
ハチミツが大好きなラーテルですが、自然界でラーテルと共にハチミツを共有する「ミツオシエ科」の鳥が存在します。
アフリカ大陸に生息する「ミツオシエ科」の「ノドグロミツオシエ」や「ウロコミツオシエ」もまた、ラーテルと同じようにハチミツを好物とする鳥です。
このミツオシエは蜂の巣を発見すると、蜂の巣を攻撃するのではなく、代わりに鳴き声をあげるのです。
すると、ミツオシエの声を頼りに、ラーテルは蜂の巣を簡単に発見することができるのです。
ラーテルはハチミツもミツバチも好物にしているため、蜂の巣を攻撃するのは容易いこと。
こうして蜂の巣が破壊された後に、ミツオシエはラーテルの残したハチミツにありつくことができるというわけです。
自然界の中で共生している、ラーテルとミツオシエの不思議な連携プレーなのです。
イタチ 科のラーテルには、12種の亜種が存在すると考えられています。
しかし、現在は遺伝子解析が行われておりますが、実際には亜種でなく生息地等による変化であると言われ始めています。
すでに1属1種として紹介するところもあり、さらに今後の研究によっては、ラーテルには亜種が存在しないという結論になることもあり得るかもしれません。
1.Cape ratel(学名:Mellivora capensis capensis)
2.Ethiopian rate(学名:M.c.abyssinica)
3.Turkmenian ratel(学名:M.c. buechneri)
4.Lake Chad ratel(学名:M.c. concisa)
5.Black ratel(学名:M.c. cottoni)
6.Nepalese ratel(学名:M.c. inaurita)
7.Indian ratel(学名:M.c. indica)
8.White-backed ratel(学名:M.c. leuconota)
9.Kenyan ratel(学名:M.c. maxwelli)
10.Arabian ratel(学名:M.c. pumilio)
11.Speckled ratel(学名:M.c. signata)
12.Persian ratel(学名:M.c. wilsoni)
ラーテルの性格は、前述の通り非常に気性の荒い動物です。
ラーテルの敵となるのは「ライオン」や「ヒョウ」、「ハイエナ」といった肉食の動物たち。
「世界一恐れ知らずな動物」と言われるラーテルですが、単に肉食獣に立ち向かうだけではありません。
ラーテルは巣穴を掘って生活することもありますが、その巣穴から飛び出して動物を襲うこともしばしば。
襲う動物に関しても小動物だけではなく、馬や水牛といった、ラーテルよりも数十倍も大きな体をした動物にも襲いかかることがあります。
また、人間が生活する地域に生息するラーテルに関しては、人間が飼っている家畜を襲うこともあるため、ラーテルは害獣として扱われる地域もあるほどです。
ラーテルが武器としているのは、背中の分厚い皮膚で身を守る事ですが、それ以上にラーテルの攻撃的な性格が「恐れ知らずな動物」と言わしめているのです。
ラーテルの寿命に関しては、自然界においてはおおよそ7〜8年ほどと考えられています。
一方、飼育下においては20年程の寿命となっています。
ラーテルは性格も獰猛で恐れ知らずと言われ、ライオンなども手出しができないというイメージもありますが、武器となる頑丈な背中の皮膚も体を裏返されてしまうと全く役に立たなくなります。
お腹の部分の皮膚は、背中のように硬く作られているわけではありませんので、ラーテルと言えどお腹を見せた状態で攻撃されると、簡単に傷つけられてしまうでしょう。
前述の通り、ラーテルは家畜や蜂の巣を襲うこともあるため、農家や養蜂業者からは害獣として認識されています。
また、住宅街などにも出没することもあるようです。
そのため、ラーテルは駆除動物の対象とされている地域もあり、多くの罠が仕掛けられ、駆除されているのです。
日本では珍しくもないミツバチですが、西アフリカに位置するニジェール等の地域においてはミツバチが絶滅危惧種と言われるため、ラーテルのような動物は害獣にあたるのです。
また、一部の地域においてはラーテルの肉を食用としている国もあったり、他の地域ではラーテルの皮膚や内臓、手足等が薬用としての効能があると考えられています。
ラーテルは絶滅危惧されている動物ではないものの、他の絶滅危惧が懸念される動物達と同じく、現在の状況が続くといずれはその数も減らしていくことになるでしょう。
ラーテルはこれまでの説明でもある通り、決してペット向きの動物とは言えません。
そのため、国内でもラーテルに会えるのは 動物園 のみとなっており、さらには国内に一箇所しかラーテルを飼育している動物園が存在しません。
そんなラーテルですが、実は購入することは可能となっています。
そうとは言ってもペットショップで販売されているわけではなく、特殊な動物を扱う会社から購入することとなります。
値段に関しては140万円という価格。
この値段から見ても、あまりペットとして飼育する動物とは言えないことがわかります。
実際に飼育するとなると、ラーテルを飼育するための檻も必要になりますし、ラーテルが十分に行動できるスペースも必要となります。
また、ラーテルが逃げ出さないような厳重な設備も必要になります。
その他、ラーテルの食事に関しては主に「肉」となるため、食費もかなりのものになるでしょう。
140万円という価格も去ることながら、飼育していく上でのランニングコストも相当な価格となることでしょう。
ラーテルはペットとして飼育すると言うよりかは、動物園で見る動物であると言えます。
その実力はギネス級!みなさまご存知でしょうか?” ラーテル”に清き一票を! 『愛嬌たっぷり!他の白黒仲間には負けないぞ!』 #人気動物ベストテン
Posted by 東山動植物園 on Thursday, October 27, 2016
日本で唯一ラーテルに出会うことができるのが、名古屋にある「東山動植物園」です。
日本では気候も合わず、ラーテルの飼育事態も大変なためでしょうか。
あまりラーテルを飼育・展示している動物園はありません。
そういった意味でも、日本で唯一見られる東山動植物園は貴重な場所と言えるでしょう。
住所:愛知県名古屋市千種区東山元町3丁目70
マップ: Googleマップ
電話番号: 052-782-2111
入園時間:9:00〜16:50(チケット販売は16:30まで)
休園日:毎週月曜日
入園料:大人 500円、小人(中学生以下) 無料
一般的にはあまり知名度のないラーテルですが、実はNHKのキャラクターとしてラーテルがモデルになっていたことがあります。
2016年3月までの5年間に渡って、NHKのEテレで放送されていた「ポコポッテイト」。
このポコポッテイトの主人公「ムテ吉」は、ラーテルの少年という設定で、「ムテキのムテ吉だーい」という挨拶をする元気なキャラクター。
「世界一恐れ知らずな動物」と言われるラーテルらしく、名前も「無敵」にかけて「ムテ吉」という、獰猛なラーテルとは打って変わってなんとも可愛らしいキャラクターでした。
商品名:NHK ポコポツテイト ムテ吉 S ぬいぐるみ 座高14cm
メーカー:サンアロー
参考価格:1,944円
名称:ラーテル(Ratel)
英名:Honey Badger
学名:Mellivora capensis
価格:140万円
体長:約60cm〜70cm
尾長:約20cm〜30cm
全長:約80cm〜110cm
体重:約8kg〜14kg
生息地:西アジア、アフリカ
寿命:約20年(飼育下)
「世界一恐れ知らずな動物」であるラーテル。
お目にかかれる機会は少ないですが、ライオンにも立ち向かう「イタチ」がいるということに驚きです。
また、ペットとして飼育することも難しく、その価格にも驚きでした。
日本では「東山動植物園」で会うことができるので、機会があればぜひ一度会いに行ってみてはいかがでしょうか。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/11/27
公開日 : 2017/12/07