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ヤマカガシは北海道や南西諸島を除いた地域に分布する日本固有種の毒蛇です。
毒を持つことから特定動物(人に対して生命や身体に害を与えるとされる脊椎動物)に指定されています。
山に入ると、マムシ、ヤマカガシに注意!の看板や張り紙が貼ってあるのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
ヤマカガシは最近毒がある蛇だとわかったため、もしかしたらマムシに比べると注意を促す看板は少ないかもしれません。
持っている毒がマムシよりも強いため、出会ってしまった際には注意が必要です。
しかし、大人しい性質とその顔つきは毒蛇らしからぬ愛嬌を感じさせる。ヤマカガシはそんな蛇です。
今回はそんなヤマカガシについて、詳しく説明していこうと思います。
カガシ(カガチ)は昔の言葉で蛇を表しています。
つまりヤマカガシとは、山で良く見られる蛇という意味を持っています。
しかし、山が名前の中に含まれていますが、ヤマカガシが良く見られるのは田んぼや河川敷などの低地や水が豊富な場所です。
都市部では中々見かけることのない蛇だとは思いますが、地方では比較的メジャーな蛇だと言ってもいいでしょう。
ヤマカガシは関東、関西、近畿地方から中部地方にかけての体色がそれぞれ違います。
そのため、ぱっとみただけではすぐにヤマカガシかどうかがわからないことも多いです。
体色の分布としては、関東の個体は体の横部分に赤色と黒色の斑点が交互に入っています。
関西の個体は斑点が不明瞭に入おり、近畿地方から中部地方にかけては青色の個体も確認されているそうです。
ヤマカガシには、顎下から腹にかけて黄色の帯が存在します。
この特徴も個体や分布によってはまちまちで、さらに成体になるとくすんできてしまうため、蛇を見たときにすぐにヤマカガシだとわかるわけではないようです。
しかし黄色の帯が入っている個体は多いようなので、もし山で顎下が黄色に染まっている蛇を見かけたら近づかないことをお勧めします。
また、ヤマカガシの最大の特徴はキールと呼ばれる鱗です。
キールとは鱗の一枚一枚に存在している盛り上がりのことです。
ヤマカガシは特にこのキールが強く、触るとざらっとした感触が手に残ります。
一説ではこの強いキールは、ヤマカガシが水辺によく生息していることから、泳ぎのために発達したのではないかと言われているそうです。
ヤマカガシのざらざらとした鱗は、遠目で見てもすぐにわかるほどです。
もし野生の蛇を見かけた場合でも、触ろうとは思わずに遠目で判断するかもしくは近づかないようにしてください。
勿論すべての蛇が人間にとって有害なわけではありませんし、有害な個体だとしても、外来種を除けば立派な生態系の一部です。
無闇に殺めることだけはやめましょう。
ヤマカガシは日本に生息しているマムシやハブなどの毒蛇よりも強い毒性を持つ出血毒を持っています。
20グラムのマウスに対する半数致死量(LP50)が確認されており、数値に直すと、なんとマムシの4倍、ハブの8倍もの強さです。
更にヤマカガシの毒は、強力な血液凝固作用があります。
凝固と言っても血を固めてしまうことが目的ではありません。
血管の中に毒を送り込んで小さな血栓を作り出し、血栓をなくすためにフィブリノーゲンと呼ばれる血漿たんぱく質と血をとめるための血小板を体の中で消費させることが目的です。
そのためヤマカガシに噛まれても、その毒の効果はすぐに表れるわけではありません。
フィブリノーゲンと血小板が体の中で消費されつくしてから、初めて症状として表れます。
具体的には皮下出血や内臓出血、皮膚が薄い鼻の粘膜や歯茎などからも出血が見られるそうです。
全身に及ぶ出血現象から、ヤマカガシの毒は「溶血毒」と呼ばれることもあります。
噛まれてしまった場合はすぐに病院へ行き、血清を打ってもらうことで溶血減少を少しでも早く止めるようにしてください。
また、ヤマカガシの毒線は口先ではなく、口の奥に存在しています。
そのため噛みつかれても、深く噛みつかれなければ毒が体に入ってしまうことはありません。
基本的には捕まえようとしなければヤマカガシが人間に噛みつくことはありませんから、その点には注意をしましょう。
ヤマカガシは泳ぎが得意なので、水の豊富な地域では川の中を泳いでいる姿を見ることができます。
ヤマカガシが水場を好む理由は、 カエル を主食としているためです。
アマガエル やトノサマガエルだけではなく、なんと毒をもっているヒキガエルも食べることができてしまいます。
毒蛇を含めた他の 蛇 は毒をもっているヒキガエルは敬遠して食べないことのほうが多いのですが、ヤマカガシにとっては全く問題がないようです。
そのほかにもネズミや カナヘビ 、ドジョウや 金魚 などの魚も食べます。
ヒキガエルを食べる理由としては、毒を持った生き物を食べることで自分の体の中にその毒を蓄えるためであることがわかっています。
頭と胴体部分をつなぐ場所(頸部)の皮下にその毒が蓄えられており、その部分を強くつかむとそこから毒が飛び散ります。
目に入ったときに結膜炎などの病気になってしまう可能性が非常に高いので、捕まえたヤマカガシを顔の前に持っていくのは避けましょう。
ヒキガエルが生息しない場所にいるヤマカガシは、頸部の毒を持っていないためその心配はありません。
また、ヤマカガシの天敵は私たち人間、蛇を食べる イタチ やタヌキ、ワシだけではなく、なんと蛇も含まれています。
ヤマカガシは日本の中では中型に分類される蛇です。
ですので、大型に分類されるシマヘビやアオダイショウなどにとってはヤマカガシは絶好の餌になってしまいます。
そのため大型の蛇が多い地域ではヤマカガシの姿を見ることは少ないそうです。
昼行性であるヤマカガシは夜に活動することは少ないです。
基本的におとなしい性格の個体が多いこと(凶暴な個体もいます)、かついきなり攻撃してくるのではなく、まずは威嚇行動を取ってこちらを寄せ付けないようにするので近くにいたとしてもよくわかるとは思いますが、山や河川敷でハイキングやバーベキューをする際にはヤマカガシがいないかを注意しながら楽しみましょう。
また、近年は開発による水田の減少、それにともなうカエルの減少により、ヤマカガシの個体数は以前に比べれば少なくなっていると言われています。
ヤマカガシは2006年に発表された法律により、無許可での飼育が禁止されている蛇です。
たとえ保護目的でも、飼育する前に必ず許可を取らないといけません。
攻撃的な性格の個体はあまりいないと言われていますが、蛇なので動作はとても素早いです。
強い毒を持つこと、動きが俊敏なことから、個人での飼育にはどちらかと言えば向いていない蛇ですから、今回は一時的な保護などで入手した場合の飼育方法を解説していきたいと思います。
基本的には、ヤマカガシの飼育はほかの蛇の飼育方法と違いはありません。
紫外線ライト、バスキングライトに床材(新聞紙可)、水入れを用意してあげてください。
蛇は水を口から飲むので、少し深いものがお勧めです。
また、飼育ケースが小さいと餌を与える際に噛みつかれてしまう可能性が高まるので、大き目の衣装ケースなどで飼育したほうがいいかと思われます。
ヤマカガシの餌は少し特殊です。
野生下の個体はカエルや魚を主に主食としているからでしょうか。
他の蛇がピンクマウスなどで餌付けできるのに対して、ヤマカガシはマウスの食いつきがあまりよくないと言われています。
生餌が一番食いつきが良いのですが、かといってカエルのストックには沢山のお金がかかってしまうのは間違いありません。
勿論、マウスで餌付けができれば問題はないのですが、保護をしたヤマカガシが何も食べてくれない状態になってしまったときはペットショップなどで金魚やメダカを買ってきて生きたまま与えるのがお勧めです。
水入れの中にそのまま放してもいいですし、別の場所に餌場を作るのでも大丈夫です。
生きた餌を与えると、ヤマカガシが上手に狩りをしている姿を見ることができます。
ヤマカガシの繁殖は冬眠前の10月から11月にかけてだと言われています。
この際、冬眠前に交尾ができなかった個体は春先に目覚めてから交尾を行うようです。
産卵は6月から8月にかけて行われるので、その時にヤマカガシやほかの蛇の卵をみつけてもそっとしておいてあげてください。
土の中だけではなく落ち葉の下や、石の隙間、藁の間などにも産むことがあるようです。
多くて25個ほど、少なくて5個ほどの平均13個程度の卵を産みます。
一か月半ほどで孵化し、20センチ程度の幼体が生まれます。
幼体は顎下の黄色い線の発色が強く、一目でヤマカガシだとわかる色をしています。
大きさに関係なく毒を持っているので、小さいからといって不用意に触れることは避けましょう。
北海道や南西諸島など、ヤマカガシにとって寒すぎたり暑すぎたりする場所には生息していませんが、東京の都市部などを除いたほぼ全ての場所に分布していると言われています。
餌となるカエルや魚、 トカゲ などが多く生息しているため、ヤマカガシはよく水の近くにいます。
泳ぎも得意なため、場合によってはヤマカガシが水中を泳いでいる姿が見られることもあります。
蛇が水中をゆらゆらと泳ぐ姿はとても優雅で美しいものですが、近づいてみないとどのような蛇かはわからないことが多いため近寄ることはお勧めできません。
ですので、そうした場所に近寄る場合は厚いゴム長靴を履いたり、蛇が噛みつきやすい足部分を露出しないなどの対策を行いましょう。
昼間に行動する性質から、ヤマカガシがそうした場所で人間と出会う可能性はそう低くありません。
ヤマカガシは凶暴性が低いため、自分から人間にかみつきに行くことは滅多にありませんので、近寄らないだけでも十分に対策として有効です。
勿論個体によっては凶暴性が高いものもいます。
ヤマカガシはこちらが近づくとゆらゆらと首を持ち上げたり頭を揺らして威嚇を始めるので、あまり近づいていないのに威嚇を始めるような個体の傍にいくことは危険です。
ヤマカガシの毒はすぐに症状として現れる毒ではありません。
マムシやハブのように、噛まれた場所が腫れあがらないということもあり、一見毒蛇に噛まれたとは思わないかもしれません。
ヤマカガシがつい最近まで毒蛇として認識されていなかった原因の一つがそこにあります。
しかし、時間がたつにつれて毒の症状はひどくなっていきます。
数時間から一日のうちに症状が現れると言われていますが、症状が現れてからでは重症化してしまうことのほうが多いです。
重症になることを防ぐためにも、ヤマカガシと思われる蛇に体を噛まれてしまった場合はすぐに病院へ行きましょう。
2006年の法改正により保護、飼育には許可が必要となっています。
事故を防ぐためにも許可を出さずに飼育することは避けましょう。
ヤマカガシはアオダイショウやシマヘビ、マムシと同様に、私たちの身近な場所にいる蛇です。
そのため、事故を防ぐためにもヤマカガシが生息していそうな場所に行く際にはその知識をある程度つけてから向かうことが望ましいと言えます。
写真だけではよくわからない、と思われる方は、群馬県にジャパンスネークセンターという蛇を飼育している研究所があるので、そちらに行ってみるのもお勧めです。
日本に催促するさまざまな蛇だけでなく、コブラやウミヘビ、ニシキヘビなどの外国の蛇の姿を見ることもできます。
そうした蛇だけではなくヤモリやトカゲ、 リクガメ などの 爬虫類 の姿を楽しむこともできますので、蛇だけではなく爬虫類に対しての知識を深める、という意味でもお勧めの施設です。
ここまで読んでいただき有難うございました。
この記事がヤマカガシへの知識を深めたいと思っている方の参考になれば幸いです。
公開日 : 2017/10/25