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何気なく見ているカワウソですが、こうした場所で見られるカワウソの多くは「コツメカワウソ」と呼ばれる、カワウソの亜種なんです。
カワウソにもいくつかの種類が存在しており、その総称としてカワウソと呼ばれているのです。
カワウソは主に河川付近に生息する動物で、砂浜や磯など種類によっても若干の生息場所は異なりますが、基本的には河川付近を生息場所としています。
四肢が短く胴長短足の体ですが、泳ぐことが得意な動物で、こうした体型は水中で生活するのにも適した体型なのです。
カワウソは陸地で生活する時間も長いため、水中でも陸地にも適した被毛を持つことが特徴としてあげられます。
水中下では陸地に比べ特に体温も低下してしまうため、カワウソの被毛は2層構造になっており、浮力を高めたり、熱を逃がさないと言った効果を生んでいます。
下毛となるアンダーコートは密集した毛で覆われており、おおよそ6センチ四方に100万本もの被毛が生えています。
オーバーコートは水を弾く長めの被毛に覆われています。
体の構造に関しても、水中にから外の様子を伺いやすいように「目」「耳」「鼻」が一直線上に配置されています。
水中に潜る時には、耳孔と鼻孔を閉じることができ、7〜8分ものあいだ潜水することができます。
胴が長く、短い四肢の動物でお馴染みの「イタチ」。
イタチは陸上で進化を遂げてきた哺乳類の動物ですが、「イタチ科」に分類される動物は他にも存在します。
例えば、深い巣穴を掘って生活する「アナグマ」も同じイタチ科、木の上を主な生活の拠点とする「テン」も同じイタチ科、ペットとして大人気の「 フェレット 」も同じイタチ科の動物です。
そして、主に水辺を生活の拠点としているイタチ科の動物が、カワウソなのです。
一方、カワウソはイタチ科なので、当然イタチに容姿が似ていますが、水族館などでもお馴染みの「ラッコ」にも似ていないでしょうか。
実はラッコも同じ「イタチ科 カワウソ亜科」の動物で、言ってみればカワウソの親戚のような存在。
進化の過程で、海に進出して進化していったのがラッコであり、川や陸にとどまったのがカワウソなのです。
正確に区分すると、ラッコは「イタチ科 カワウソ亜科 ラッコ属」に分類され、英語では「Sea otter(シーオッター)」と呼ばれます。
一方、カワウソは英語で「Otter(オッター)」と呼ばれています。
こうしてみると、小さな体をしたイタチは、実に様々な方法で進化を遂げてきたということがわかります。
カワウソを見に行くとなると、動物園か水族館へ足を運ぶ事となりますが、実はここ日本でも、かつてはカワウソが生息していたのです。
日本に生息していたカワウソは「ニホンカワウソ」と呼ばれる亜種で、その昔は北海道から九州にかけて生息していました。
しかし、野生下のカワウソはその数を減らしていき、1979年の目撃情報を最後に、野生下のカワウソを見られる事はなくなってしまいました。
こうした流れもあり、環境省が2012年にニホンカワウソを絶滅種と認定。
ニホンカワウソは残念ながら、すでに絶滅してしまったと考えられていました。
しかし、国内で38年ぶりとなる2017年の8月、長崎県の対馬でカワウソが発見されたのです。
このカワウソは、琉球大学が「ツシマヤマネコ」の研究のために設置していた自動撮影装置に、偶然通りかかった形で撮影されました。
動画が公開された当初は、動画でもわずか数秒の出来事ですので、どの種のカワウソであるか、ニホンカワウソなのではと期待が高まりました。
ところが、その後の調査でこのカワウソは「ユーラシアカワウソ」であることが採取したフンのDNAで明らかとなりました。
残念ながらニホンカワウソの再来とはいきませんでしたが、調査は今後も続けられていくようです。
カワウソの生息域は非常に広く、一部を除く、世界のほぼ全域に生息している動物です。
しかし、前述のニホンカワウソ同様、世界的にもその数を減らしてしまっている動物でもあります。
その原因となっているのが、「密輸」や「乱獲」「駆除」によるものや、「環境汚染」などによるものです。
カワウソは魚等を餌としているため食害による被害も多く、ニホンカワウソにおいては昭和3年以前まで全国的に、駆除を目的とする捕獲対象動物となっていた時もありました。
カワウソの亜種に関しても、それぞれの地域で抱えている問題もあり、その多くの種類が絶滅の危機に近づいている動物なのです。
カワウソは5つの属に分類され、「カワウソ属」「カナダカワウソ属」「オオカワウソ属」「ツメナシカワウソ属」「ラッコ属」の5属に分けられます。
ラッコ属を除いた「カワウソ」としては4属からさらに13種類に分類されます。
では、カワウソの種類と保全状態(レッドリスト2001年版:IUCN3.1)の評価と合わせて見てみましょう。
・ユーラシアカワウソ
保存状態:準絶滅危惧種(NT:Near Threatened)
・ニホンカワウソ(剥製)
保存状態:絶滅種(EX:Extinct)
・ノドブチカワウソ
保存状態:低懸念(LC:Least Concern)
・スマトラカワウソ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
・ビロードカワウソ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
・カナダカワウソ
保存状態:低懸念(LC:Least Concern)
・ミナミウミカワウソ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
・オナガカワウソ
保存状態:準絶滅危惧種(NT:Near Threatened)
・チリカワウソ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
・オオカワウソ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
・ツメナシカワウソ
保存状態:準絶滅危惧種(NT:Near Threatened)
・コツメカワウソ
保存状態:危急種(VU:Vulnerable)
・コンゴコツメカワウソ
保存状態:準絶滅危惧種(NT:Near Threatened)
・ラッコ
保存状態:絶滅危惧種(EN:Endangered)
「レッドリスト」とは、「国際自然保護連合(IUCN)」が作成している、絶滅の危機に瀕している動物たちをリスト化し、ランク付けされたものです。
地球には、約2万種の動物が絶滅の危機に瀕していますが、カワウソもこの中の1種なのです。
こうした動物たちの状況は日々変わっているため、レッドリストも数年おきにリストが更新されていきます。
◎絶滅種(EX:Extinct)
◎野生絶滅種(EW:Extinct in the Wild)
◎絶滅危機種(Threatened)
・近絶滅種(CR:Critically Endangered)
・絶滅危惧種(EN:Endangered)
・危急種(VU:Vulnerable)
◎準危急種(LR:Lower Risk)
・近危急種(NT:Near Threatened)
・低危険種(LC:Least Concern)
◎情報不定種(DD:Data Deficient)
日本に生息していた「ニホンカワウソ」は絶滅種となる「EX」ですが、他の種においても絶滅危惧種の「EN」のランクが付けられているカワウソもいます。
上記のように、どの種も可愛らしい容姿をしたカワウソですが、取り巻く状況は深刻なものとなっています。
ここからは動物園や水族館で多く見られる、コツメカワウソの特徴について解説していきたいと思います。
愛くるしい容姿で人気のコツメカワウソですが、その名前の由来となっているのが「爪」です。
「コツメ」と名付けられている由来には、コツメカワウソの前足の「爪」が小さいことに由来しています。
小さいというよりも、ほとんど意味をなしていないようにちょこんと付けられています。
そして、カワウソには水かきが付いていますが、コツメカワウソの水かきは他の種よりも小さめです。
ややむちっとした指を持ち、爪も小さいので、見ようによっては人間の手のようにも見えます。
コツメカワウソは、上記に挙げたカワウソの亜種の中でも、最も体が小さい種類でもあります。
体の大きさは65cm〜90cmほど、体重はおおよそ3kg〜6kgとなります。
また、国内で見られる個体では、体長が40cmほどのコツメカワウソもいます。
一方、カワウソの中でも一番大きな種(ラッコを除く)となる「オオカワウソ」は、体長がおおよそ1.8mほど、体重は32kgにもなる大型のカワウソです。
コツメカワウソの小ささが、いかに小型であるかがわかります。
自然界では色々な動物と共存していますが、中には天敵となる動物も存在します。
カワウソの天敵に挙げられるのは、「ワニ」や「 ヘビ 」といった、同じく水辺でも生活する動物たち。
しかし、カワウソは水中では非常に俊敏な動きで逃げ回ることが出来ますので、その殆どは逃げてやり過ごす事となります。
また、カワウソが抱える問題には餌の枯渇や生息環境の悪化、乱獲などの問題がありますので、カワウソにとって最大の天敵とは、残念ながら人間かもしれません。
コツメカワウソの性格は、遊ぶことが大好きでフレンドリーな性格です。
野生下では濡れた斜面を滑り台のようにして滑り降りたり、水中に潜って遊ぶなど、可愛らしい一面が沢山見られます。
また、カワウソのフレンドリーな性格を活かし、東南アジアの一部ではカワウソを使った魚漁も行われておりました。
その方法とはカワウソが水中に潜り、魚の群れを網まで追い込むという追い込み漁でしたが、現在ではこうした伝統猟法も衰退してしまっているのだとか。
カワウソは、こうして人間ともコミュニケーションを図れる動物なのです。
そのため、ペットとして飼われている際には、まるで犬や猫のような懐き方をし、見ているだけでも和ませてくれるような存在となります。
短い手を器用に使い、手で物を食べるコツメカワウソの動作が、多くの人に好かれるポイントの一つとも言えるでしょう。
まるでその様子は、2〜3歳児がご飯を食べるようにも見えます。
カワウソは一夫一婦の動物で、相手を決めると浮気はしない動物です。
また、家族や仲間の繋がりを大事にする動物でもあり、他の親の子でも育てると言った行動も見られます。
そして、カワウソのお父さんは非常にイクメンであることでも知られます。
子供の世話は基本的にメスの仕事となりますが、オスも巣作りや餌運びなど、育児に積極的に関わっていきます。
自然界において、カワウソは10頭前後の群れを作って集団生活を送っており、しっかりと役割分担もされているのだそうです。
カワウソは肉食性の動物で、野生下では主に魚や カエル 、そして ザリガニ といった甲殻類などの生き物も餌としております。
そのため、カワウソの歯は貝なども砕いて食べることができるほど、非常に丈夫に作られております。
こうして様々な生き物を餌としているため、時には水田等にも入り込んでしまうこともあります。
食性が時として害獣扱いされてしまう事もあるのです。
また、コツメカワウソをペットとして飼われてている方や水族館等では、主に主食として「 キャットフード 」や「フェレットフード」を与えていることが多いようです。
カワウソにとって必要なのは動物性蛋白質であるため、同じ肉食の 猫 や、同じイタチ科のフェレット用のフードが栄養素的にも似ているのです。
カワウソの寿命は、約10年〜15年ほど。
平均すると12年程となりますが、長生きしているカワウソは20年以上生きている例もあります。
そんな長寿のカワウソが、実は日本にいるのです。
大阪の「海遊館」にいるコツメカワウソのニッキは、なんと23歳というご長寿カワウソ。
バックヤードで生活しているため、普段はお目見えする機会も無いようですが、長生きしている所をみると、飼育状況がとても良いのでしょう。
また、ニッキの息子であるオリーブも、なんと19歳の長寿カワウソ。
オリーブもバックヤードで生活していますが、親子で長寿とは素晴らしい家系です。
TVでもペットとして飼われている様子が放送されるなど、カワウソをペットとして飼育したいと考える方は多いでしょう。
しかし、カワウソをペットとして飼育するには、犬や猫を飼育する事よりも、更に大変であるということを理解しておきましょう。
その一つが、カワウソの相場価格についてです。
日本国内でのカワウソの値段は、おおよそ60万〜100万程と言われています。
また、カワウソを販売しているペットショップも非常に稀で、全国的にも数えるほどしかないはずです。
カワウソは前述の通り、絶滅の危機に瀕している動物で「ワシントン条約」の対象にもなっている動物です。
ですので、あくまで国内で販売されているカワウソに関しては「国内で繁殖された個体」のみが販売の対象とされています。
近年のカワウソのブームに対し、海外から密輸を行う例が後を経ちません。
直近では2017年6月に、10匹のカワウソを密輸しようとしてタイのバンコクで日本人が逮捕されました。
その前には、2017年の2月に同じくタイで、カワウソやフクロウを密輸しようとし、日本人が逮捕されています。
これらの事件は共に、スーツケースにカワウソを入れて密輸しようとしていました。
こうして短期間で2件の密輸が見つかっていることから、カワウソの密輸はもっと行われているのではないかと見られています。
また、密輸が行われるのは、あくまでも子供のカワウソです。
親のカワウソは、捕獲される時点で殺されていると考えられており、殺された親カワウソに関しては「毛皮」が売買されていると考えられます。
こうした理由から、カワウソを日本で飼育するのには金銭面での大きなハードルと、飼育の難しさに加え、大きな責任が問われることを理解しておきましょう。
カワウソの繁殖は非常に難しく、絶滅していく要因にも挙げられます。
そのため、カワウソの赤ちゃんが流通することは無く、基本的にはある程度月齢が進んでいる個体が流通されます。
仮に、赤ちゃんのカワウソが販売されているようであれば、その個体は恐らくは密輸ルートによるものと考えて良いかもしれません。
そのため、カワウソを迎え入れる際には十分にショップの経営状態や、カワウソの入荷ルート・繁殖状態に関して調べる必要があります。
また、実際にカワウソを飼育するとなると、万が一体調を崩してしまった時の保険として、カワウソを受診することのできる動物病院を探しておくことも必要になります。
もちろん、カワウソは一般的な動物ではありませんので、カワウソを見られる獣医もかなり稀です。
こうした点を考えても、カワウソを飼育するのは、動物全般においての上級者でなければ、非常に困難なものであるといえます。
カワウソがその数を減少させている要因には、カワウソが生息している湿地帯の減少や劣化、または餌となる食物の減少や枯渇、そして密漁や狩猟による問題があります。
特に、アジアではカワウソの毛皮が高額で取引されており、不法に密漁されています。
そして前述の通り、近年ではペットとしての需要も高まっており、同じく不法に密漁され、取引されているのが現状です。
日本の税関のポスターには、前項でご紹介したタイで摘発したカワウソの写真が使用されています。
ここ日本ではカワウソに関しての情報にも疎く、テレビでも簡単に飼えるようなイメージで取り上げられているような状況です。
カワウソに記念日がある事をご存知でしょうか。
「世界カワウソの日(World Otter Day)」と名付けられたこの日は、毎年5月の最終水曜日に制定されており、イギリスの「国際カワウソ生存基金(The International Otter Survival Fund / 以下IOSF)」によって作られた記念日です。
世界カワウソの日は、世界各国で絶滅の危機に瀕しているカワウソの現状を多くの方に知ってもらい、カワウソの保全や環境保護について考えてもらう目的で作られました。
IOSFでは現在、アジアやアフリカ、ヨーロッパにおけるカワウソの保護が行われています。
またアメリカやカナダでは、ハンティングや毛皮の売買を目的として、年間40,000頭以上のカワウソが犠牲になっている現状を変えようと活動しています。
カワウソが可愛くて飼育したいという気持ちはわかりますが、今一度、カワウソの置かれている状況に関して理解してみても良いかもしれません。
学名:Aonyx cinerea
英名:Oriental Small-clawed Otter、Clawless Otter、Short-Clawed Otter、Small-Clawed Otter
体長:40cm〜90cm
体重:3kg〜6kg
原産・生息域:インド南部〜東部エリア、ミャンマー北部、インドシナ半島、中国南部、フィリピン、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島など
食性:魚類、甲殻類、貝類
性格:フレンドリー、集団で行動・生活する
値段:60万円〜100万円
カワウソを迎え入れるには、しっかりと正規で繁殖を行っている業者・ペットショップから迎え入れることが重要となります。
しかしながら、その前にしっかりとカワウソに関しての理解を深め、カワウソを飼育する必要はあるのかどうかを考えてみましょう。
カワウソは動物園や水族館でも会うことは出来ます。
まずはカワウソを「飼う」という考えよりも、カワウソを「守る」ために出来ることを考えてみましょう。
またカワウソをペットにしたい!という方には下記の記事も参考になります。
是非、合わせてご覧下さい。
最終更新日 : 2021/11/02
公開日 : 2017/08/28