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女の子の犬を飼い始めて、ある時犬の陰部から出血があって驚いたという方もいるかもしれません。
実は犬にも生理(ヒート)と呼ばれるものがあります。
「呼ばれるもの」というのは、実はここでいう犬の生理は、人間とは異なる仕組みで発生しています。
人間の生理は、 排卵後に妊娠が成立しなかった際に、子宮内膜が剥がれ落ちて子宮から出血する 仕組みです。
一方、犬の生理の場合は、 排卵前に起きる発情期に見られる出血 です。
犬は発情期になると子宮が膨れていき、膨れる際に血液が染み出してきます。
それに伴い陰部より出血が見られ、これを生理と呼んでいます。
犬の場合は発情期になって出血をしてから排卵という流れになるため、この時の出血は厳密にいうと人でいう生理とメカニズムが異なりますが、一般的には犬も「生理(ヒート)」と呼んでいます。
実際に生理がきてから排卵するまで、犬の体ではどのようなことが起きているのかをご説明します。
陰部が赤く膨れてきて、粘り気のある出血があります。
この時期の出血のことを生理(ヒート)と呼んでいます。
この時期には雄犬を寄せ付けるフェロモンを出していると言われていますが、まだこのタイミングでは雄犬を受け入れることはありません。
発情前期の期間は平均8日程度ですが、それぞれの個体や年齢によって3〜27日間と幅広いです。
発情前期の後に発情期になります。
この時期は膨れた陰部が柔らかくなり、雄犬を受け入れる準備ができて交尾ができるようになります。
発情期は平均10日間ほどと言われていますが、個体や年齢によって異なり5〜20日と幅があります。
発情期は日が経過すると共に出血も徐々に減少していき、出血も濃い出血から薄い色に変化していきます。
出血している期間=発情期ではなく、出血は徐々に減少していくため、出血が見られなくても発情期の可能性もあり、妊娠を希望していない場合は特に注意が必要です。
このタイミングで雄犬を受け入れて晴れて妊娠成立すると、約2ヶ月間が妊娠期間となり、その後出産となります。
発情期に交尾を行い、無事に妊娠が成立するとその後出産へと続きますが、交尾をしなかった場合、もしくは交尾をしても妊娠が成立しなかったにも関わらず、妊娠したような兆候が現れる場合があります。
それが偽妊娠です。
偽妊娠は、発情期を迎えた後、1~2ヶ月後くらいに症状が現れます。
原因は、発情によって妊娠時と同様のホルモンバランスの変化が起こるためです。
具合的な症状は下記の通りとなります。
基本的にはホルモンバランスによって引き起こされる生理的なもので、病気ではありません。
通常1ヶ月前後で症状は治まりますが、症状がひどい場合やいつまで経っても改善されない場合は、掛かり付けの獣医さんに相談しましょう。
犬の生理は、 小型犬 のように早い場合は生後6ヶ月頃から始まり、 大型犬 のように遅い場合は生後1年以上経過してから始まります。
犬種や環境によって差がありますので、 おおよそ6ヶ月ほどで生理が始まる可能性がある と認識しておくと良いでしょう。
犬の生理は、おおよそ6ヶ月〜8ヶ月程度の間隔で来ることが多く、平均して年に2回ほど生理になる計算です。
猫のように季節には左右されません。
なお、バセンジーは不思議な犬で、年に一度しか生理がきません。
また、超小型犬では発情血の量も少なく、飼い主さんが気付かない間に終わっているということもあるようです。
人間の閉経のように生理が終わることは基本的にはないと言われており、生涯生理は続きますが、加齢と共に生理が来る間隔が伸びてきたり、出血量が減ってきたために飼い主が生理に気付かないといった場合もあります。
犬が生理になった時、出血の他には主に下記の症状が見られます。
出血に伴い上記の症状が現れた場合は、生理が始まったと考えて問題ないでしょう。
生理に起因する上記の症状であれば、基本的には様子見で問題ありませんが、上記の症状が異常に見られたり、嘔吐や下痢など明らかに様子がおかしい場合は、他の病気の可能性も考えられますので、掛かり付けの動物病院に相談しましょう。
犬が生理になった時、飼い主の私たちはどのように対応したら良いのでしょうか。
犬の生理は人間の生理と異なり、出血量もそう多くありません。
トイレシートに少し血がつく程度か、ポタポタと少量の血液が床に垂れる程度です。
床に垂れてしまった血液はこまめに掃除をしたり、家具で布製品がある場合は生理期間中は片付けるか、汚れてもいいようにカバーをかけるなどして対応すると良いでしょう。
もしそれでも出血量が追いつかない場合や、犬がひどく陰部を気にする場合は、マナーパンツでカバーしても良いです。
ただ、マナーパンツは嫌がる子も多いですし、長時間履いていると皮膚がかぶれてしまうことがあるので、その子にあったマナーパンツを探してあげたりこまめに交換してあげるなどしてあげましょう。
また、出血によって陰部付近の毛が固まりやすいので、適宜温かいタオルで拭いてあげるようにしてください。
犬の生理中、特に発情期は、雄犬を受け入れる状態になっているため、妊娠の可能性が非常に高いです。
妊娠を希望していない場合は、お散歩中をはじめ外出時は、他の雄犬に注意してなるべく近づけないようにしましょう。
また、 ドッグラン や ドッグカフェ など他の犬がいる場所は避けて、通常の散歩だけで過ごすようにしましょう。
もし多頭飼いで家の中に雄犬がいる場合は、完全に隔離して生活させないと妊娠の可能性が高まります。
多頭飼いの場合は避妊手術を行い、望まない妊娠を避けた方が安心です。
生理中でも、 シャンプー や トリミング を行うことは基本的に問題ありませんが、この期間はワンちゃんも精神的に非常に神経質になってる時期です。
普段はおとなしい子でも、少し怒りっぽくなったりすることもありますし、何かのはずみで他の犬や人を攻撃してしまう可能性もあります。
緊急性のないケアは避けた方が無難です。
せっかく綺麗にしてもまた出血で体を汚してしまいますし、生理が終わってワンちゃんも心身ともに元気になってから連れて行ってあげると良いでしょう。
生理に関連して気を付けたい病気で、もっとも多くかつ危険性の高いのが 子宮蓄膿症 です。
子宮蓄膿症とは、子宮の中に細菌が入り込んでしまい、膿んでしまう病気です。
生理中の免疫力低下により細菌感染しやすい状態になり、その状態で大腸菌などの細菌が子宮内に入ってしまうことで起こります。
高齢になるにつれて発症しやすいと言われていますが、若い犬でもかかる病気です。
主に生理終了後数週間から2ヶ月以内に発症し、 食欲がない・元気がない・嘔吐・下痢・発熱・水をよく飲む・多尿・お腹が張る・陰部から臭いのあるおりものが出る などの症状が挙げられます。
子宮蓄膿症は命に関わる病気ですので、生理後にこのような症状が見られた場合は、早急に動物病院へ行き獣医師の指示を仰ぎましょう。
愛犬が生理を迎える前に考えておくべきことがあります。
それは、避妊手術を行うかどうかです。
先に挙げた生理後の子宮蓄膿症は、避妊手術をすることで防げる病気ですし、避妊手術を行うことにより生理自体も無くなります。
このようにメリットもありますが、反対にデメリットもあります。
避妊手術の一番の目的です。
発情期の時期に気を付けていても、ふと目を離した隙に雄犬に近付いてしまったり、トラブルで脱走してしまって無事に帰ってきたと思ったら妊娠していたなんてこともないとは言い切れません。
もちろん、上記のようなトラブルを未然に防ぐことが第一ですが、避妊手術を行うことで、万が一の場合でも望まない妊娠を防ぐことができます。
また、手術を行うことで出血自体がなくなるので、マナーウェアなどの対処をする必要が無くなり、発情期の症状も無くなります。
避妊手術は、子宮と卵巣を摘出する手術が一般的です。
最近では、卵巣だけの摘出によって、子宮疾患や乳腺疾患の発生リスクも下げるというエビデンス(証拠)が揃ってきているので、子宮を摘出しない動物病院も多くあります。
先ほどの子宮蓄膿症も、卵巣を摘出してあれば発症することはありません。
若いうちに避妊手術をしておけば、体への負担も最小限で、手術金額も数万円で済みます。
しかし、中高齢になってからの子宮蓄膿症で手術をする場合、細菌の毒素によって腎臓や肝臓に多大な負担がかかった状態で、膿の溜まった大きな子宮を取り出す手術になるため、避妊手術よりも3倍は大きな傷になります。
費用も状況によっては避妊手術の10倍(20〜30万円)で、入院期間も7〜10日になることも。
避妊手術と同じように、卵巣と子宮を摘出する手術なのに、子宮蓄膿症になってからの手術では犬への負担は多大になることを知っておきましょう。
避妊手術をしておけば卵巣腫瘍も防ぐことができます。
初回の発情が来る前に避妊手術をすると、性ホルモンが原因と考えられている乳腺腫瘍の発生リスクも減少します。
ただし、二回目の発情期がきてからの避妊手術では、乳腺癌のリスクを下げる効果はないという報告が多いので、避妊手術のタイミングはとても大切なことが分かるかと思います。
当たり前のことですが、避妊手術後にやはり愛犬の子供が欲しいと思い直しても妊娠をすることはできません。
生涯妊娠ができなくなるということをきちんと認識した上で決断する必要があります。
犬の避妊手術は基本的に全身麻酔で行います。
全身麻酔をかける以上、リスクは0%ではありません。
可能性としては低いですが、麻酔が合わずに術後、麻酔から目覚めないといった例も少なからずあります。
少しでもリスクを減らすために、信頼できる動物病院を選んで事前にしっかりと検査してから手術に臨めるようにしましょう。
避妊手術を行うと、性ホルモンの変化のために基礎代謝が低下するため太りやすくなることもあります。
人が更年期以降になると太りやすいのと同じです。
術後の安静期間が終了したら、食事管理や運動をしっかり行って体重管理に気を付けましょう。
以上が避妊手術における主なメリットとデメリットです。
その後の病気の発生リスクを考えると、出産を考えていない場合は避妊手術をすることが望ましいと言われていますが、やはり麻酔のリスクや実際に手術を受けるワンちゃんの身体的精神的負担を考えると決めるのは難しいですよね。
家庭によってそれぞれ考え方も違いますので、家庭内でしっかり話し合っり獣医さんと相談した上で決めてください。
可愛い愛犬のことを思うと、「この子の子供が欲しい」と考える飼い主さんもいると思います。
しかし、出産は母子ともにリスクの高いものでもあります。
小型犬や頭の大きい短頭種のような犬種は、特に難産になることが多いとされています。
また、犬種問わず、出産に体が耐えられなく、母体が亡くなってしまう場合もありますし、子供が無事に生まれてきても、死産だったり未熟児だったりと様々なケースが考えられるため、飼い主の無知による妊娠が結果として大切な愛犬を死に至らしめることもあり得るのです。
その他、掛け合わせも自然交配なのか人工交配なのか、人工交配なら相手はどこから連れてくるのかなど、考えておかないといけないことが非常に多いです。
妊娠中は、発情期と同様にデリケートになりがちな母犬のケアや、出産後に母犬が育児を放棄した場合は代わりに子犬たちのミルクや排泄のお世話も必要です。
一般的に犬は一度に数匹出産するので、出産後の子犬の行き先のことも考えなくてはなりません。
そういったリスクや労力も全て含めて、愛犬に出産させたいかどうかを考える必要があるでしょう。
特に女の子の犬を飼っているご家庭では、必要最低限として知っておくべきことを中心に生理の仕組みや症状、注意点についてご紹介しました。
妊娠や感染症については命も関わることですので、家族全員が理解しておくと良いでしょう。
これから犬を飼いたいと思っているけれど性別を迷っているという方は、女の子の特徴として生理について理解して検討してください。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/08/25
公開日 : 2019/12/30