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飼い主がいない状態で暮らしている野良犬。
現在の日本においては、人に飼われず長い間生活している犬はあまりいません。
地域によっては野犬と呼ばれる野良犬が多くいる場所もありますが、市街地や住宅地ではほとんど見られないでしょう。
しかし、野良犬=飼い主が不明の犬として迷い犬も含めて考えると、実は日本には多くの野良犬が存在しているのです。
野良犬・迷い犬とされる犬の中には、お家から逃げ出してしまい迷子になってしまった子と、飼い主に遺棄された子がいます。
筆者は保護活動をしているので、迷い犬かもしれない犬、明らかに捨てられた犬など、何匹も保護して里親さんに譲渡してきました。
状況から推測すると飼い主に捨てられたと思われる子でも、犬は事情を話せませんから、保健所では最初は迷い犬として扱います。
さらに犬が脱走してしまった際に飼い主が犬のことを探さず、野良犬となってしまうケースは少なくありません。
環境省によると、令和4年に保健所をはじめとする施設に収容された所有者不明の犬は約2万頭。
野良犬は所有者不明の犬とすると、その辺にウロウロしている犬はあまり見かけなくなっても、現在の日本でもこれだけ多くの野良犬が存在していることになります。
ペットの遺棄は犯罪ですし、何よりも飼い主を信頼している子を裏切り、命を奪うことにも繋がる行為です。
筆者が山に捨てられたと思われる 秋田犬 を保護したときも、空腹と脱水でフラフラになっていました。
保護があと1日遅れていたら命はなかったかもしれません。
食べ物や飲み物を得るすべがあったとしても、長くは生き残れません。
交通事故に遭う危険もありますし、病気にかかるかもしれません。
そして、日本は野良犬がウロウロしていたら、すぐに通報され保健所などに捕獲されることでしょう。
保護犬の譲渡をすすめる保健所であれば、次の飼い主( 里親 )が見つかるかもしれません。
または愛護団体が保健所から引き出してくれれば、新しい飼い主さんの元に行ける可能性もあります。
しかし、そうではなかった場合、保健所(動物愛護センターなどの名称のこともあります)で 殺処分 されてしまうのです。
保健所の対応は地域差があり、殺処分ゼロを達成しているところはまだまだ数が少ないです。
日本でも殺処分を減らそうという機運が高まってはきましたが、いまだ十分ではありませんし、譲渡ではなく殺処分を主業務とする保健所の方が多いのが現状です。
令和4年度の殺処分数は14,457頭、うち犬は2739頭です。
犬の殺処分数は年々減ってきているとはいえ、飼い主みずからが保健所に持ち込む頭数がおよそ2800頭もいるため、身勝手な人間の被害者であることは間違いないでしょう。
筆者は保健所から引き出したこともありますが、捨てられたか迷って放浪していると推測される子を何度も保護しています。
日本ではあまり野良犬を見かけなくなったものの、そのような犬と出会わないとも限りません。
野良犬・迷い犬と出会ったらどうすればいいでしょうか。
交通量が多い場所で犬がウロウロしていたら、交通事故死の危険性があるため、できればすぐに保護してあげましょう。
保健所に迷い犬の連絡をしてもいいですが、保健所がすぐ保護しに来るかどうかは分かりませんし、その間に車にひかれてしまう可能性もあります。
まずは危険な場所から保護した後に、警察署、動物病院、保健所に連絡するようにしてください。
保護された動物は遺失物、つまり落とし物として飼い主が警察に届け出を出している可能性があります。
さらに、マイクロチップの装着が義務化されているために、動物病院で読み取りしてもらうことも可能なケースがあります。
ついでに健康状態もチェックしてもらえると良いでしょう。
ただし、診察や治療費にはお金が発生してしまいますので、その点は注意が必要です。
交通事故に遭うような危険が少ないときは、保健所に連絡をします。
そうすれば保健所が保護してくれるでしょう。
また、地域によっては保健所がすぐ近くにない場合もありますので、そのときは警察に連絡しましょう。
警察は犬を引き取った後に、保健所に連絡をして犬を引き取りに来てもらいます。
保健所では殺処分になるかもしれないので、自分で保護したい、もしくは自分で飼いたいというときはどうすればいいでしょうか。
この子は完全に捨てられたに違いないと推測されても、警察に届け出ましょう。
動物は法律上は財産(所有物)となるため、犬を保護すると拾得物として扱われるので、届け出をする義務があります。
保護した犬が迷い犬で飼い主さんが探している場合、保健所に問い合わせがあるかもしれません。
保健所にも伝えておきましょう。
保健所に犬を届けず、自分で保護する場合、その後どうするのか考えなければなりませんね。
警察や保健所に犬を保護したことを伝えた後、飼い主が現れない場合は、6か月経過した後に保護主が飼い主さんになることができます。
これは物やお金を拾った後に所有者が6か月間現れなかったときに、拾得者のものとすることができることと同じです。
筆者が保護した犬の多くは、犬の様子から飼い主が探していないと推測される犬であったので、飼い主が現れたことはほとんどありません。
しかし、他の保護活動者の事例では飼い主さんが現れたということもあることから、6ヶ月以内だと自分が飼い主になりたいと思っても飼い主に返還しなければならないこともあると考えておいてください。
なお、その間の飼育費用、犬の時価の5~20%を請求することができるため、 ドッグフード などのレシートなどを保管しておきましょう。
大事にされていたような犬の場合、飼い主さんが探していることも大いに考えられます。
保健所や警察からの連絡を待たずに、自分で飼い主さんを探してもいいでしょう。
筆者はあきらかに大事にされていた様子の迷い犬を保護したとき、警察、保健所への届け出の後、自分で保護して飼い主さんを探したことがあります。
迷い犬を預かっている旨のポスターを、犬を保護した近辺に貼りました。
犬は移動距離が長いことがあるので、ポスター掲示の範囲は広めの方が良いでしょう。
ポスターを見た飼い主さんから連絡があり、その子は無事におうちに戻ることができました。
その他、飼い主を探す場合はXをはじめとしたSNSも拡散されやすく、よりスピーディーに見つけられることもあります。
その飼い主さんは保健所にも犬がいなくなった旨を届けていたのですが、保健所の怠慢により筆者の届けた情報とつき合わせが行われておらず、保健所経由では飼い主さんが見つからなかった事例です。
残念ながら地方の殺処分主体の保健所ではこのようなことは起こりがちです。
自分が飼い主になるのは難しいけれど、殺処分になるのが心配で保健所にもやりたくないときは、自分で飼い主さんを探す方法もあります。
ポスター等で里親募集できますし、インターネットの里親探し掲示板を利用することもできます。
インターネットの掲示板の方が、譲渡条件などを詳しく掲載できますし、直接個人情報を開示せずにまずはやり取りできるのでおすすめです。
保護の仕方から里親さんの探し方まで、動物愛護団体が相談に乗ってくれる場合もあります。
ただ、日本で動物保護活動をしている人や団体はほぼ全て任意で行っており、行政から補助金などをもらっているところはごくごく一部のみですし、犬を保護する義務は一切ありません。
命を助けたいという思いだけで、仕事をしながら自分のプライベートの時間と自分のお金を投入して、ぎりぎりのところで活動しています。
自分が保護をするから里親さん探しなどのアドバイスを頂きたいというスタンスで相談してみてください。
自分で犬を保護した場合はどうすればいいでしょうか。
犬を保護したらまずは水と食事を与えましょう。
捨てられた場所にもよりますが、犬は捨てられると水さえも飲めないときがあります。
水を飲ませる場合は、一気に大量に飲むと胃捻転になる可能性があるので、少しずつゆっくり飲ませてください。
エサの与え方も同様です。
偶然に捨てられている現場に遭って犬を保護するのではなく、犬がいる場所に保護へ向かう場合は、水・水入れ・ ドッグフード 、 おやつ ・ 首輪やリード などを持参すると良いでしょう。
おやつをもらえることで犬の警戒心が薄れることもあります。
犬を保護したらざっとでいいので健康状態をチェックしましょう。
上記の事項で1つでも引っかかったものがあれば、できるだけ早く獣医に診てもらいましょう。
概ね健康そうであれば、保護した日は自宅で休ませて、次の日連れて行っても良いでしょう。
野良犬・迷い犬になってしまい、飼い主に探してもらえなかった子は、以前の飼い主に大事にされていなかった子が多いです。
健康そうに見えても、獣医に身体の状態をチェックしてもらいましょう。
特に気を付けるべきポイントは、フィラリア症に感染していないかどうかです。
フィラリア症は蚊が媒介する寄生虫による病気ですが、見た目ではわからず、心臓に寄生するため命に関わります。
フィラリア症の犬の感染率は非常に高いので予防は必須なのですが、犬を捨てるような飼い主は予防をしないこともあります。
野良犬・迷い犬はフィラリア症に感染していることが多いです。
重症化すると完治は難しいのですが、軽症であれば時間はかかっても直すことができます。
エコーなどで分かるために、検査費用はそれほど掛かりません。
ノミやダニなどの外部寄生虫がついていることが多く、それらは人間にも感染するので、なるべく早く動物病院で駆虫してもらいましょう。
ノミやダニから人に移る病気では命に関わるものもあるので、家に保護犬を入れる前に駆虫を終わらせることをおすすめします。
野良犬・迷い犬は、基本的な しつけ ができていない場合も多く見られます。
散歩 もあまりされておらず、リードを着けての散歩が上手くできないこともあります。
まっさらな状態なのでかえってしつけをしやすいこともありますが、基本を1から教える必要があること、しつけは繰り返し忍耐強く行わなくてはならないことを心に置いておきましょう。
野良犬から生まれた野良犬は日本ではあまり見られませんが、迷い犬から野良犬になった子、飼い主に捨てられた子はときどき見かけますし、保健所に収容されたたくさんの子たちが殺処分されている現実もあります。
好きで野良犬になった子はほとんどいないと思います。
もしそのような境遇の子をご自分で飼いたい、もしくは助けてあげたいと思って頂けるなら大変嬉しいです。
そういう子たちはこれまでの犬生の大部分を辛い目に遭いながら生きてきた子が多いです。
そのため、通常よりも怖がりであったり、人の環境に慣れることに時間がかかったり、人にとっては問題行動に感じる部分も多いでしょう。
しかし、できないことがあっても許す心をもって接してあげてください。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/11/16
公開日 : 2018/09/09