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猫 の鼻は生活する上で重要な役割を果たしています。
人間の鼻も重要な器官ですが、どちらかというと視覚に頼る方が多いですよね。
猫の目は暗闇でも物が見えたり動体視力に優れるという人間にはない能力があるものの、実は視力はよくありません。
人間でいうと猫の視力は0.1〜0.2ほどと言われています。
そのため、猫は耳や鼻からも多くの情報を収集する能力があります。
猫は人間の何十倍もの嗅覚を持っています。
どんなに厳重にしまっていても、 おやつ や キャットフード を見つけられてしまったという方もいるのではないでしょうか。
猫にとって匂いは重要なもの。
お尻以外にも頭や足などに臭腺と言われる匂いを出す器官があり、それをこすりつけることで縄張りを主張したり、それを嗅ぎ合うことで相手の情報や状態、感情までも読み取るのです。
もちろん、食べ物を探す時にも使われます。
「嗅覚受容体」という器官が刺激されることにより匂いを感じるのですが、人間が約1000万個あるのに対して、猫はあの小さい鼻になんと6500万個もの嗅覚受容体を持っているのです。
猫がいかに鼻に頼って生活しているかが分かりますね。
そのために猫の鼻水は、「たかが鼻水」とは侮れないのです。
猫に鼻をくっつけられた時に「冷たい」と感じたことがある方は多いでしょう。
それは猫の鼻が通常時でも濡れているからです。
湿っていた方が匂いの分子がくっつきやすく、嗅覚を刺激しやすくなります。
そのため、寝ているときや寝起き以外で猫の鼻が乾燥しているのは脱水や病気の可能性があります。
このように濡れているのが当たり前なのですが、それが「鼻水」である時は注意が必要です。
猫の鼻にはにおいを嗅ぐという役割の他に、「細菌やウイルスの侵入を防ぐ」という役割もあります。
これは人間も同じですよね。
鼻水によってにおいを嗅ぐという能力が十分に発揮できなくなることもあるのです。
鼻が濡れている状態と鼻水が出ている状態とはどう違うのでしょうか。
通常、濡れている状態は「触ると冷たい」、「湿っているのが分かる」という程度です。
猫が通常ではない鼻水を垂らしている状態は以下の通りです。
また、猫がご飯を食べないときは見た目にはよく分からなくても、「鼻水が詰まってしまっている」ためかもしれません。
猫の鼻水が出る原因にも様々なものがあり、一時的な要因の様子を見て良い鼻水と、病院の受診が必要なものがあります。
人間は寒かったり辛いものを食べた時にも、病気でなくても鼻水が出るときがありますね。
猫も人間と同じように何らかの刺激が原因で鼻水が出てしまうことがあります。
猫は寒さに弱い傾向があるので、空気の入れ替えなどで急激に寒さを感じた時にも鼻水が出ますし、鼻にほこりが入ってしまったなどの原因でくしゃみが出た時に鼻水が出てしまうこともあります。
猫がくしゃみをした時に、鼻水が飛んできたという経験がある飼い主さんもいるでしょう。
このように、一時的な原因による鼻水であると判断できるときは様子を見ても大丈夫です。
ただし、鼻水がずっと続くようであれば要注意です。
筆者は保護活動をしているので、鼻水が出てしまっている猫のお世話をすることは珍しくありません。
筆者の経験では、猫の鼻水の原因の多くは通称「猫風邪」と呼ばれるものです。
鼻水や発熱などの症状が人間のひく風邪と似ているので猫風邪と呼ばれますが、正確には何らかのウィルスに感染して病気を発症している状態です。
症状を引き起こす代表的なウィルスや細菌は、猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどです。
これらのウィルスは感染力が非常に強く、特に幼い子猫や老猫などの免疫力が強くない猫は感染しやすい傾向にあります。
猫風邪の症状としては以下が挙げられます。
猫風邪はこれらの症状の全てを発症するわけではありませんが、鼻水は高確率で現れます。
鼻水や涙目は重症化すると猫風邪が治った後も慢性化しやすいので、早期に獣医を受診しましょう。
猫風邪は猫の命を奪ってしまう危険がある怖い病気ですが、早期の治療ができればあまり時間がかからず完治できる場合も少なくありません。
猫風邪が疑われたらすぐに獣医を受診してくださいね。
早期受診の方が医療費も安く済みます。
※合わせて読みたい: 猫風邪は油断禁物!命の危険があることも
クリプトコッカス症とは、クリプトコッカス属の真菌(カビ)が原因の感染症です。
鳩 のフンから検出されることが多いとされていますが、自然界に多く存在しているので珍しいものではありません。
ただ、真菌の感染症の多くがそうであるように、発症するケースは多くありません。
風邪症状(鼻水やくしゃみ)があっても、すぐにこの病気を疑うことは無いでしょう。
この菌には猫も人も感染する危険があるのですが、健康な状態であれば感染することはほとんどないと言わわれています。
猫がエイズや白血病などの何らかの病気を患っており、免疫力が弱っていると感染したときに症状を発症してしまいます。
クリプトコッカス症は、くしゃみ・鼻水が出る、潰瘍ができて猫の鼻を塞いでしまうといった症状が見られます。
重症化すると神経も侵され、運動障害やけいれんやまひなどのリスクもあるので注意が必要です。
鼻水が出るだけではなく、鼻の気道がふさがることによっていびきをかいたり、息苦しそうにするなどの症状が見られるので、猫の様子を十分に観察する必要があります。
これらの症状が確認されたら早急に獣医を受診しましょう。
人間と同じように、猫もアレルギー反応により鼻水が出ることがあります。
アレルギーの元となるものはハウスダスト、食べ物、花粉、ノミ・ダニなどの虫など様々です。
猫のアレルギー反応に関する細胞は、実は肺に最も多く存在しています。
そのため、アレルギー症状は呼吸器に出やすい傾向にあるのです。
アレルギーが原因である鼻水は完治が難しいのですが、症状を軽減させることは可能なので、まずは何のアレルギーであるのかの原因を探り、アレルゲンをなるべく取り払うようにしましょう。
食べ物の場合はアレルゲンを除いたフードにするなど、対処法がそれぞれ異なりますから獣医へ相談することをおすすめします。
※合わせて読みたい: 猫アレルギーの症状、原因、治療法
鼻炎とは鼻水が出続ける状態を言いますが、副鼻腔に炎症が起こって腫れた状態になることを副鼻腔炎(蓄膿症)と言います。
鼻水が出るといった鼻炎を放置すると慢性化して膿がたまり、副鼻腔炎になることがあるのです。
猫風邪の症状が長引いたときなどによく見られるので、筆者は保護した子が風邪を引いてなかなか治らない時は副鼻腔炎になることをいつも心配しています。
副鼻腔炎になると鼻水や膿が常に鼻にたまっている状態になるので、息苦しくなります。
筆者は過去何度か猫風邪から副鼻腔炎になってしまった子の面倒を見ましたが、ご飯を食べることができない、常に息苦しそうであるなど見ているだけでも気の毒な状態になるので、悪化しないうちに治療されることをおすすめします。
膿が溜まるということは、だいたいが細菌が原因と考えられます。
そのため、治療は抗菌薬の投与がとても大切になります。
緑膿菌が原因菌になってしまうと、成猫になっても治りきらずに治療を継続することもあるため大変です。
鼻水にも色々な種類がありますが、透明でさらさらしているものは一時的な原因のものが多いです。
黄色や緑色の鼻水は注意が必要なものがほとんどでしょう。
鼻水が黄色や緑色になるのは、体に入ってきた細菌やウィルスを追い出そうと白血球などの免疫細胞が大量に排出されるからです。
免疫細胞とウィルスの死骸によって粘液が黄色に濁り、さらに進むと緑色に変化したりします。
緑色の鼻水のときは治りかけであるという説がありますが、これは誤りです。
鼻水が濁ってネバネバしている状態の時は、免疫細胞が活発に排出されている状態で、体は戦っている最中なのです。
「鼻水の予防=病気の予防」です。
まずは完全室内飼育をしましょう。
外に出して飼うのと比較すると、ウィルスや菌、ダニやノミなどの鼻水の原因となるものから守ることができる確率は上がります。
完全室内飼育をしても、人間がウィルスを持ち込む場合があります。
特に猫風邪などの重篤な症状を引き起こすウィルスや菌は、感染力が強いので注意が必要ですが、細菌は目に見えないので防ぐことが難しいですよね。
1年に1回ワクチン接種を受けることで軽症になるように予防できるため、ワクチン接種をおすすめします。
治療法がなく、ワクチンでしか予防できない病気もあります。
ただ、ワクチンは完全に病気を予防するものではなく、発症させない、あるいは軽症にするものだと把握しておきましょう。
アレルギーにより猫の鼻水が出てしまうこともあります。
放置すると蓄膿症に発展してしまうこともあるので、放置せずアレルゲンを取り除くことが大切です。
アレルゲンで多いのがハウスダスト。
猫にも人間にもアレルギーを発症させないためには、住空間を清潔に保つことが大切です。
掃除機で掃除するとハウスダストを含むほこりが舞い上がってしまうので、拭き掃除をすることをおすすめします。
使い捨てのお掃除シートなどを活用すると良いでしょう。
しかし、完璧を目指さないことも大切です。
アレルギーは体質なので、完璧に掃除や食べ物では抑えきれないもの。
毎日の掃除や食餌で、疲れ果ててしまう飼い主さんも多いので、それではノイローゼになってしまうことも考えられます。
アレルギー体質の場合は、お薬や療法食も必ず併用して、猫さんを快適に過ごすお手伝いをするというのが一番です。
猫は鼻が詰まるとご飯を食べることができなくなり、体が衰弱します。
また、鼻水を放っておくと慢性化して治らなくなることもあります。
保護活動をしていると、鼻水を垂らした猫にたびたび遭遇するのですが、ガリガリに痩せていることが多く、お腹が減っているはずなのにご飯を食べることができません。
そのような時は、衰弱させないために流動食などを強制給餌しなければならない時もあります。
強制給餌は慣れていないと噛まれてしまう危険もありますし、誤嚥の危険もあるので、獣医師に相談してください。
そして、可愛い愛猫であればそうなる前に鼻水の症状が軽減するよう病院を受診させましょう。
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・ 子猫の飼い方マニュアル。子猫の食事やケアの仕方、飼育にかかる費用、注意点
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/05/09
公開日 : 2018/06/13