ファンシーラットは「ファンシー」と可愛らしい名前がついていますが、実はドブネズミが家畜化されたネズミです。
ネズミとしては体が大きな方に分類されますが、よほど大きな個体でない限り片手にすっぽりと入る程度のサイズになります。
また、野生のドブネズミとは違って安全な環境で繁殖しているため、病原菌などの心配も不要です。
人に一度慣れてしまえばスキンシップをたくさんとってくれる個体が多いことから、その可愛らしさに虜になってしまう方が多いペットとも言えます。
ファンシーラットがペットとして扱われるようになったのはなんと18~19世紀から。
日本ではさほど普及が進んでいませんが、初めにファンシーラットをペットとして扱い始めたイギリスなどではメジャーなペットにもなっています。
ラット愛好家による団体も世界各地にあるほどです。
ではそんなファンシーラットはどのような生き物なのでしょうか。
今回はファンシーラットの生態、特徴、飼育方法について解説させていただきます。
ファンシーラットの起源は18~19世紀のイギリスで、ドブネズミを捕えるネズミ狩り屋と呼ばれる人々から始まりました。
最初はただ害獣として狩られていたドブネズミの中でも、珍しい色をした個体を飼い慣らしペットとして売り始めたことから、現在では多種多様な色の毛並みをもったファンシーラット達がペットとして販売されています。
基本的な生態はハツカネズミ(マウス)と変わらず、そのため研究室では「ラット」とも呼ばれています。
実験動物として使用されているラットはマウスと同じくアルビノ個体が多いことも一つの特徴です。
ファンシーラットは群れで活動するネズミです。
そのため社交性が高く、多頭飼いをすることもできますし何より人になつきやすいという性質を持っています。
ハムスター は群れる生き物ではないため一頭個別飼育が基本となっていますが、ファンシーラットは一匹だと寂しがってしまう場合が多いです。
勿論個体同士の相性が悪ければ喧嘩だってしますし、つがいを同じ飼育ケースにいれてしまうと増えてしまうという問題もあります。
同腹の兄弟であればお互いが怪我をするような喧嘩をしたりすることはないと言われていますが、多頭飼育を行いたい場合はその点に注意をすることが必要です。
また、何世代にも渡って人間の手で繁殖・管理されていることから野生のドブネズミと比べると性格もとても温和です。
人に慣れると常に一緒にいようとする個体もいます。
そうした 犬 や 猫 のような一面もあること、急激な環境の変化にそこまで敏感ではないことからファンシーラットは非常に飼いやすい生き物です。
野生の個体は保護色である茶色~褐色の毛並みをもっていますが、ファンシーラットは多種多様な毛並みをしていることも大きな特徴といっても良いでしょう。
動物実験によく使われているアルビノの個体、シナモン色をした個体、時にはヘアレスと呼ばれる無毛のファンシーラットもいます。
どのような毛並みをもったラットを選ぶのかというのも、ファンシーラットを購入するときの楽しみでもあります。
ただ、ファンシーラットの寿命はそう長くありません。
長生きをした個体でも3年ほどと言われています。
ファンシーラットを購入した際には是非、大事に育ててあげてください。
ファンシーラットは現在爬虫類専門店や繁殖をしたラットを里子に出している方などから手に入れることができます。
ではファンシーラットを飼育するにはどのような設備を整えればいいのでしょうか。
絶対に必要なものは
の5つです。
ラットは最大で25cmもの大きさになるネズミです。
そのため、ケージはある程度大きなものを買わないといけません。
ファンシーラット飼育によく使われているのはフェレット用やうさぎ用などのケージですが、水生生物用の水槽や衣装ケースなどでも代用することができます。
フェレット用などのケージはケージ自体の大きさや排泄物の処理など、ラットを飼育するための設備がある程度整っていますが、水槽や衣装ケースで飼育する場合は掃除に関してすこし工夫が必要です。
ラットはトイレを覚える可能性はあまりない生き物です。
そのため、水槽や衣装ケースを使う場合は床にペットシーツを敷くなどして排泄物の受け口にすることをお勧めします。
脱臭効果が強いことから、猫砂も十分に使えます。
ラットの排泄物の匂いは中々強いため、新聞紙はあまりお勧めできません。
毎日手に入る手軽な床材として新聞紙を使う場合は、近くに無臭の脱臭剤を置いたほうが良いです。
微生物の力で糞尿を分解することを目的として、土を使うという手もあります。
動物用の土はペットショップに必ず売っていますので、そちらを使うと良いでしょう。
微生物によって分解されるといっても勿論定期的なメンテナンスは必要です。
初めてファンシーラットを家に迎えた時、ラットが安心して落ち着く場所が必要です。
慣れたラットでも寝床は必要ですし、最初は隠れ家としての役割もかねて必ず購入してください。
入り口はちょっと狭めが好きな個体が多くみられます。
ラットは巣作りも得意です。
藁や新聞紙などを床材として敷いてあげると、寝床の中にちゃんとした巣を作ります。
鳥の巣にも似た巣はとても可愛らしいので、ファンシーラットを飼育する際は是非巣作りの様子も確認してみてください。
水入れはハムスターやうさぎ用のボトルタイプのものか、深めの水入れを使います。
ラットは賢いので一度ボトルタイプの使い方を教えてあげれば理解してくれる子が多いとは思いますが、覚えてくれなかった場合は水入れを使ってください。
飼育できるネズミとして一番メジャーなのはハムスターですが、ラットがハムスターと違う点の一つに水を大量に飲むという点があります。
ハムスターは元々乾燥地帯に生息しているため、乾燥に対応している生き物ですがラットは違います。
水分の多い野菜を与えるだけでは水分量が足りなくなってしまうので、水はたっぷりと用意してあげましょう。
また、水をよく飲むので尿もそこそこ多めです。
床が尿で湿っているとラットの健康にも悪いですし匂いも強烈なものとなります。
吸水性の高いペットシーツを使う、 猫砂 を敷く、床材を毎日掃除するなどの対処をしてください。
ファンシーラットは雑食性です。
そのため大抵のものは食べてくれますが、それでは栄養が偏ってしまいますし、人の食べ物は基本的に厳禁です。
ファンシーラットの餌としてよく使用されているのが ニッパイハード と呼ばれる俵型をしたペレットです。
その他にも オリエンタル酵母MF と呼ばれるペレットもあります。
この二つはげっ歯類(マウス、ハムスター、ラット等)の栄養バランスを考えて開発された餌ですので、何を与えるか迷った場合はこの二つのどちらかを選ぶことをお勧めします。
しかし、ラットはずっと一つの餌を与え続けるとその餌に飽きてしまいます。
そうした時はハムスター用のドライフルーツや生の果物(柑橘類はあまり好まないみたいです)を少しあげてみてください。
その他茹でた野菜も食べますし、お米も食べます。
ドッグフード が好きなラットもいますが、犬のために作られているフードなので与えすぎは厳禁です。
ペレットをメインにしつつ、時々野菜やおやつを与えるような食生活にするのが良いでしょう。
ファンシーラットは人慣れをする生き物ですし、運動のためにも室内での散歩は不可欠です。
最初こそ初めての場所に怯えるようなそぶりを見せるかもしれませんが、慣れてしまえば問題ありません。
ただ、強い恐怖を感じる出来事があった時はこちらをも威嚇してくるなど、ちょっとデリケートな性格になってしまうことがあります。
散歩のときはラットへの危険物がないように注意をしてから散歩をさせてあげてください。
飼い主に慣れるとラットは散歩の時に膝や肩の上に乗ってきたり、手をぺろぺろと舐めて毛づくろいをしてくれたりします。
移動をしようと立ち上がるとその後をついてくる個体もいるのです。
頭が良い生き物なので仕込めば芸もしてくれますし、粗相をしてしまうことも滅多にありません。
トイレはケージの中、と決めている子が多いので、粗相を防ぐためにも散歩は短時間にしてください。
ただ、嬉しすぎたりびっくりしたりするとお漏らしをしてしまう子がいます。
雄は少量ですがマーキングを飼い主にする場合もあります。
生理的な反応ですからその場合も怒ったりせずに、優しくラットに接してあげてくださいね。
ラットの繁殖は他のネズミと同じように、条件が整ってさえいれば容易です。
一度に生まれる数は6匹から15匹程度と多産ですので、 ペットとして繁殖をさせる場合は責任を持った繁殖を心がけましょう。
爬虫類 や フクロウ などの餌用としてラットを飼育していない方は、恐らくメスとオスとを別々のケージで飼育していると思います。
この時重要なのが、つがいとして成立するかです。
二匹とも仲が良いと感じた場合、何日か一緒に飼育していると妊娠してくれます。
出産間近になったら赤ちゃんを産むための巣材になる新聞紙やキッチンペーパーを入れてみると、メスが巣作りをし始めます。
殆どのネズミが20日程度で出産する例にもれず、ラットも20~25日程度で出産をします。
この時注意してほしいのが、 産後のメスは安静にさせること、生まれたばかりの子ラットに素手で触れないこと です。
育児放棄をしてしまうことや、最悪食い殺してしまうことだってあります。
育児放棄や子殺しは本能であって、親ネズミのせいではありません。
そうした悲しい事故を防ぐためにも、出産間近、出産後のメスにストレスになるような刺激を与えることは避けてください。
産後のメスは非常に疲弊しているので栄養がある食事(ひまわりの種やミルワームなど)を食べさせてあげてください。
きれいな水もたっぷり用意してあげると更にベストです。
ファンシーラットは群れで生活するという特徴のため、オスも子育てに参加します。
家族そろっての子育ての様子は中々微笑ましいものがあります。
しかし、ラットのメスは出産後すぐに発情するという性質があるのです。
子育てをしているけど妊娠してしまった・・・という可能性を防ぐために、一度の繁殖で十分な方はオスのラットを去勢させる、もしくはケージを移すことをお勧めします。
ファンシーラットは18世紀ごろのイギリスでドブネズミがペット化されたことが始まりです。
種類はドブネズミですが、野生の個体と違って清潔なので安心して飼育してください。
野生の個体は寄生虫やダニやノミなどに寄生されている可能性が非常に高いので見かけても触れないようにしましょう。
犬や猫のようにスキンシップを好む個体が多いです。
頭もよいため、仕込めば芸を覚えてくれることもあります。
最初は人に怯えてしまう子もいるとは思いますが、時間がたてば自然に慣れてくれます。
ラットの嫌がることをせずにいればそう時間はかかりません。
また、毛皮が濡れることをあまり好まないので、余程汚れてしまったとき以外に温浴をさせることはあまりお勧めできません。
温浴が好きな個体もいますから、一概には言えませんができるだけ避けたほうが良いでしょう。
残念ながら、長く一緒に暮らすことのできる生き物ではありません。
ファンシーラットを飼育するときは寿命のことを念頭に置いて大事に飼ってあげてください。
一度痛いことや恐怖を覚えるようなことがあるとラットは飼い主にも怯えてしまいます。
粗相をした、マーキングをしたといっても犬や猫のように大量に尿をするわけではありません。
寛大な心をもって接しましょう。
ファンシーラットは日本ではまだまだマイナーなペットです。
しかし、最近ではファンシーラットを飼育している方の数も増えつつあります。
寿命が短いことからどうしても ペットロス を頭に入れながらの飼育となりますが、一度一緒に暮らしてみるとその高いコミュニケーション能力に2,3年という時間もとても濃密なものになると思います。
この記事がこれからファンシーラットを飼育したいと考えている方や、飼育を始めた方の参考になれば幸いです。