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ゲンゴロウ (別名 ナミゲンゴロウ タダゲンゴロウ オオゲンゴロウ)
ゲンゴロウの具体的な生態の説明に入る前に、現在ゲンゴロウがどんな状況に置かれているのか説明しておく必要があります。
本来ゲンゴロウは、日本各地の池や水田に普通に生息していました。
「ゲンゴロウ」という親しみやすい名前からわかるように、古くから田んぼに棲んでいる生き物の代表格として愛されてきました。
しかし、ゲンゴロウが姿を消し始めたのは、戦後まもなくの頃・・・なので、ほとんどの人は田んぼ等で普通に泳いでいる姿を見たことはないことになります。
なぜゲンゴロウは急速に姿を消してしまったのでしょうか?
原因はいくつか考えられます。
かつての水田は田んぼの境にある畔道が泥土で造られていたため、ゲンゴロウが蛹化するには最適な場所でした。
しかし、畦道のコンクリート化されていく過程により、ゲンゴロウはその場を失いました。
また、「土用干し」といって、稲の成長を促すために田んぼの水を抜く慣習が、幼虫の乾燥死を増加させたといわれます。
水田と並んで、ゲンゴロウの主要な生息場所だった池や沼が宅地化などのため埋め立てられたことで、生息地を失っていきました。
ゲンゴロウに限ったことではありませんが、戦後の高度成長期による深刻な水質汚染も生息地を失う原因となりました。
ゲンゴロウの餌となる生物の減少や、幼虫は特に水質の悪化に対応できず、生存することが困難な状況が続きました。
1950年代から、強毒性の農薬が水田に散布され、1970年代初頭まで続きました。
その結果、ゲンゴロウを含む多くの田んぼに生息する生き物が大きなダメージを受ける羽目になりました。
ゲンゴロウの生息域に、ブラックバスや アメリカザリガニ などの外来生物が無差別に放流された結果、食害により大きく数を減らす結果となりました。
ゲンゴロウの愛らしさが再評価され、特に1990年代位からペットとしての需要が高まりました。
その結果、限られた生息地で細々と生きながらえてきたゲンゴロウが大量採集されることになり、個体の激減に拍車がかかりました。
以上様々な原因が複合して、ゲンゴロウは私達の前から姿を消してしまったわけです。
現在、ゲンゴロウの仲間のほとんどが、環境省による 「レッドデータリスト」 絶滅危惧種~準絶滅危惧種に指定されています。
最も標準的なゲンゴロウの仲間である、ナミゲンゴロウについては、東京都、神奈川県、千葉県、大阪府、和歌山県では完全に絶滅したと考えられております。
現在は西日本の山里の湖沼にスポット的に生息地がある程度、東日本では青森・秋田両県および長野・山梨両県の一部の地域で多産の生息地が残っている他、わずかに生きながらえている程度の現状です。
その他のゲンゴロウの仲間もほぼ同様の状況下にあり、最も数が多いとされる 「クロゲンゴロウ」 についても、準絶滅危惧種(NT)に指定されているほどです。
今や、幻の昆虫となってしまったゲンゴロウ、いったいどんな昆虫なのでしょうか?
その生態について、詳しく説明していきましょう!
皆さんがゲンゴロウと聞いてまず思い浮かぶイメージは、たまご型で黒っぽい体で、縁のあたりが黄色い扁平な昆虫・・・長い後ろ脚で水の中をスイスイ泳ぐ姿だと思います。
この典型的なゲンゴロウの姿は、通常「ナミゲンゴロウ」もしくは、「オオゲンゴロウ」という名前の種類で、ゲンゴロウの中では最も標準で、最も大きくなるものなのです。
ゲンゴロウとは、専門的には昆虫綱コウチュウ目オサムシ上科に属する水棲昆虫の総称を指し、世界的には 130属4000種が確認されており、うち 37属130種が日本国内に生息しています。
しかし、それではあまりにも範囲が広すぎるため、ゲンゴロウ科に属する種類のみに特定する場合もありますが、一般的には先ほどの代表格たる「ナミゲンゴロウ」のことを指しています。
そのため、ナミゲンゴロウよりも小型のゲンゴロウの仲間には、コガタゲンゴロウ某とか、マメゲンゴロウ某とか、チビゲンゴロウ某とか別名がつけられています。
さらには、同じゲンゴロウの仲間なのに、ゲンゴロウモドキだの、ゲンゴロウダマシだのひどい名前をつけられている種類まで存在します。
いずれにしても、ゲンゴロウの種類の区分は複雑で、よほどの専門知識がないとわからないのが現状です。
そこで、これからご紹介するゲンゴロウについては、ペットとしても人気の 「ナミゲンゴロウ」 を標準種とし、それ以外のゲンゴロウをご紹介する際には、「ヒメゲンゴロウ」など、正式和名で区分けすることにします。
この昆虫がなぜ「ゲンゴロウ」という、人の名前のような・・・奇妙なネーミングになったのでしょうか?
これには諸説ありますが、最も知られているのが、下記のエピソードです。
~昔、病気の母親と親孝行の息子が暮らしておりました。
2人の暮らしは貧しく、息子は懸命に看病しておりましたが、母親の病状は良くなりませんでした。
もはや薬を買うお金もないほど貧窮していたのです。
ある時、息子の前に木の精霊が表れて、息子に「小槌」を授けました。
この小槌は、人を助ける目的であれば、振ればどんどんお金が出てきますが、己の欲望のために使ったら、お金が出ると同時に身体が小さくなってしまうという代物でした。
正直者で、欲のない息子はこの小槌の力で、いっぱいの小判を手に入れ、その小判で母親の薬を買って、病気を治してあげました。
その話を聞き及んだ悪代官の源五郎、欲に目がくらんで、小槌を息子から取り上げてしまいました。
・・・しばらく経って、源五郎の姿が見えないと心配した村人たちが代官屋敷で見たものは・・・いっぱいの小判に埋もれている一匹の虫でした。
欲に取りつかれた悪代官の源五郎は、小槌の魔力によって、どんどん身体が小さくなり、とうとう虫になってしまったのでした。
それ以来、源五郎が変貌してしまったこの虫を、「ゲンゴロウ」と呼ぶようになったとのことです。 ~
なんかゲンゴロウが悪い因果を背負っているみたいで、気の毒になるような話ですね!
ゲンゴロウの成虫の大きさは、 34-42センチ 位です。
この昆虫は幼虫(最終段階)の期間の方が体が大きく、 63-78センチ 位と成虫の倍近くあります。
ゲンゴロウの寿命は、2-3年といわれています。
寿命が1年以内と短い種類が多い昆虫のなかでは、比較的長生きする昆虫です。
ゲンゴロウの体型は、水の抵抗の少ない流線型です。
またブラシ状の毛の生えた太く長い後ろ脚は、水を掻きわけて泳ぐのに最適な構造になっております。
空気を体の中にため込むこともできるので、長時間潜水することも可能なわけです。
そのため、驚くほど速いスピードで遊泳することができるのです。
意外に思えますが、ゲンゴロウは飛ぶこともできます。
特に夜間は餌を求めて、水系間を活発に移動しています。
電灯などに飛来してくることも観察されています。
ゲンゴロウの天敵は鳥類をはじめ、水中にもブラックバスやアメリカザリガニなどが存在しています。
ゲンゴロウは、天敵に襲われそうになると、背中や肛門、口から強烈な悪臭を発する白い液体を分泌するのです。
その悪臭で天敵がひるんだ隙に、逃げることができるのです。
人間でも、うかつに触れると、この恐ろしい攻撃を受ける場合があるので注意が必要です。
ゲンゴロウは光沢のある濃い緑色、あるいは暗褐色の体色をしています。
また体表の外周部分は黄色くなっているのが特徴で、この昆虫のシンボルカラーになっております。
しかし、よく観察すると微妙な変化があることに気が付くと思います。
下記の違いによって、ゲンゴロウの性区分は比較的にわかりやすくなっております。
オス : 光沢が強く、ハネの部分にうっすらと点刻列 (小さな穴が連続した模様) がある。
メス : 光沢が弱く、全体的に表面がざらついていて、点刻列がない。
また前脚の形態にも特徴があります。
オス : 吸盤状になっている。
メス : 通常の甲虫と同じような形をしている。
これは、オスは交尾の際にメスの体に密着する習性のためです。
ゲンゴロウの成虫は基本的には肉食ですが、積極的に生きた生物を襲うことはありません。
魚やカエルなどの死骸や、生きている生物でもかなり弱った個体、また水面に落ちた昆虫などが中心です。
しかし、幼虫の時期は獰猛な肉食性で、生き餌しか食べません。
ドジョウや小魚、昆虫やオタマジャクシなど目の前を通る生物を積極的に捕食します。
ゲンゴロウの幼虫は細長く、一見トンボのヤゴのような形態ですが、非常に大きなアゴを持っております。
完全な肉食性で、自分よりも体の大きな獲物を襲うこともあります。
その狩りの手法は、狙った獲物にこっそり近づき、射程圏内に入ると・・・素早く飛びついて大アゴで噛みつくのです。
本当の恐ろしさはそれから・・・大アゴは注射針状になっており、獲物に噛みつくと、毒と消化液を注入し、麻痺させます。
この消化液で獲物の体組織を破壊させ、消化して吸引するのです。
液体の威力は強力で、人間が噛まれた場合でも激痛に襲われて細胞が壊死し、最悪のケースでは、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を発症し入院が必要になる場合があります。
素手で触れるのは、とても危険です。
最近ではすっかり見る機会が少なくなってしまったゲンゴロウ。
自然界では、いったいどんな生活をしているのでしょうか?
ゲンゴロウの生息域は日本全土~北海道から沖縄県まで広く存在することになっています。
代表種であるナミゲンゴロウの学名は、「Cybister japonicus」 。
日本固有種のようなイメージがありますが、日本国内だけでなく、台湾や朝鮮半島、中国やシベリアなど東アジアに幅広く生息していることになっています。
かつては、水田の代表的な昆虫であったゲンゴロウは、前述の理由により激減して、もはや水田で見かけることはほとんどありません。
現在において生息が確認される場所は、水生植物が豊富な池沼や湿地帯の限られた場所のみとなっております。
ゲンゴロウが生息できる場所とは、まさに日本の古き良き原風景が残り、生態系も維持されている貴重な場所と考えてもよいでしょう。
ペットとしての人気の高いゲンゴロウの生息地は、マニアにとって聖地と崇められるほど憧憬の場所になっております。
ネットの掲示板等で情報交換も頻繁に行われ、たとえ遠方の地であっても採集に赴く人も多いようです。
いずれにしても、こうした情報では、やや人里離れた秘境的な池や湖沼の湿地域がほとんどで、マニアの冒険心をそそります。
生息地では、春~夏 (4月~7月位)にかけて出産シーズンを迎えます。
この時期盛んに交尾しますが、交尾に費やす時間は非常に長く、平均160分程度かかるといわれています。
交尾の期間が長い為に酸欠状態を起こし、死亡するメスも少なくないとのこと。
まず、 水草 の茎を齧って穴を開け、茎の内部に1-2個の卵を産卵します。
この卵は、幅が約1mmで、長さは約13mmの細長いカプセル状をしており、 約2週間 で孵化します。
ちなみに、ゲンゴロウのメスは繁殖期の1シーズンに、 20-30個 の卵を産むといわれています。
交尾は繁殖期に2回程度ですが、オスの精子を体内に貯蔵できる機能があるため、シーズン中いつでも受精卵を産卵できるのです。
ゲンゴロウの幼虫期間は、およそ 40日程度 です。
幼虫は、蛹になるまでの間、水中での生活を営みます。
成虫と違い、幼虫は繁殖期間である春~夏場にかけてしか目撃することができません。
ゲンゴロウの幼虫は、ユーモラスな成虫からは想像できないほど異様な姿をしています。
細長く、トンボのヤゴをエイリアン化したような不気味な姿・・・特徴的なのは クワガタ のような大きなアゴを持っています。
幼虫は完全な肉食性で、しかも獰猛、目の前に動く生き物であれば、自分より体の大きな生物まで獲物にしてしまいます。
幼虫同士での共食いは日常茶飯事に行われています。
前述したように、大アゴには注射針状になっており、そこから毒と消化液を獲物に注入して麻痺させ、消化捕食してしまうのです。
孵化したばかりの頃は ミジンコ やボウフラなど比較的小型の獲物を食していますが、最終齢になるとオタマジャクシや カエル 、あるいはフナなども捕食するようになります。
この最終齢の時の体長は最大8センチ・・・成虫の2倍近くなっています。
ゲンゴロウの幼虫は肺呼吸を行います。
尻尾の部分にある気門とよばれる部分を水面から出して、空気を取り込みます。
ゲンゴロウの幼虫は昆虫を食べないと、成虫になれる確率が低くなるというデータがあります。
昆虫類のタンパク質が、羽化率 (成虫になれる確率)に影響しているともいわれています。
そのため、水面に落ちてきたバッタやコオロギなどの昆虫・・・ときには仲間まで食べるのです。
ゲンゴロウが蛹の状態でいる期間は、およそ 10-14日程度 です。
幼虫の最年齢を迎え、いよいよ蛹化の時期を迎えると、餌には全く興味を示さなくなってきます。
日没後1-2時間が経過して辺りが暗くなってきたら上陸を開始します。
水際近くの土に穴を掘って潜り込み、蛹として暮らす予定の蛹室(ようしつ)をつくり始めるのです。
その中で、 7日程度 の前蛹期間を経て、蛹として地中生活を営むのです。
そして10-14日後、いよいよ羽化の準備が始まります。
蛹室内で、 2時間位 の時間をかけて羽化を行い成虫になるのです。
成虫になったばかりのゲンゴロウは、まだ体が柔らかく外での生活を行うことができません。
蛹室の中で、体が硬くなるまで過ごすのです。
この期間はおよそ 7日間程度 ~そして体が硬く立派になるのを待って土中から姿を現し、成虫デビューを果たすのです。
成虫期の寿命は 2-3年 といわれています。
新成虫は、初夏から夏にかけて地上に姿をみせます。
成虫になったゲンゴロウは主として水中生活を行い、飛行しながら棲み処を移動することもあります。
食性も変わり、幼虫時にような生き餌よりも、死んだり弱ったりした生物を主に食するようになります。
性格も幼虫時の獰猛さは影を潜め、温和になってきます。
ゲンゴロウの成虫の特徴にひとつに 「甲羅干し」 があげられます。
亀のように日光浴するのです。
甲羅干しには、体温調節および体表の殺菌効果があるといわれています。
もしゲンゴロウが甲羅干しを怠った場合、水カビによる感染症に罹り、死に至る場合があります。
ゲンゴロウは冬眠しないで、冬を越すことができるといわれます。
凍結した田んぼの中で泳いでいたなんて目撃情報もあるくらいです。
多くの昆虫が冬を越すことができないで死んでしまうなか、冬眠もしないで越冬できることは、この昆虫の長寿の秘訣なのかもしれません。
ゲンゴロウの成虫も肺呼吸です。
ハネの下に空気を貯める器官が備わっており、長時間の潜水にも耐えられるわけです。
このように水中・空中・陸上とあらゆる空間で生活し、天敵を避けながら子孫を残し、寿命を全うしていくのです。
ゲンゴロウの自然界でのライフスタイルについて理解していただけたと思います。
どんな生き物にも共通していることですが、飼育するにあたっては自然界での生活環境を尊重することが大切であることはいうまでもありません。
身近に存在していない未知の生き物であることに加え、完全変態であることから幼虫時から飼育する場合と、成虫だけを飼育したい場合とは全く異なってきます。
ゲンゴロウは、ほとんどの都道府県で絶滅状態にある希少な生き物のため、簡単に採取することは難しい状況にあります。
そこで、ペットショップなどで購入するか、飼育者から譲ってもらうか、困難を伴いますが自分で採取するかのいずれかになってきます。
なかなか普通のペットショップや、ホームセンターのペット売り場などでは目にすることは少ないかもしれませんが、一番手っ取り早い方法です。
ネット通販などでは、比較的多く販売されているので最も入手しやすいですが、
1. 自分の気に入った個体が選べないこと
2. 輸送が個体のストレスとなり、弱ってしまったり死着する危険性があること。
などの問題点は発生します。
ナミゲンゴロウの場合の購入単価は、平均して一匹あたり 2000-3000円 が相場のようです。
幼虫を購入する場合も、ほとんど同じ購入価格となります。
クロゲンゴロウなど、小型の種類の場合、 300-900円位 で購入することは可能です。
あまり一般的な入手方法ではありませんが、譲ってもらう方法もあります。
この場合はあくまでも個人間の交渉となるため、無償か有償かは話し合い次第ということになります。
もっとも、交渉する相手の人が信頼できる人がどうか見極めることが一番重要であることは間違いありません。
ネット上などで、ゲンゴロウの生息場所の情報交換がされていますが、具体的な場所は特定していない場合がほとんどです。
知り合いで生息地の場所を知っている人がいれば別ですが、大方の場合は上記の情報をもとに手探り状態で生息地を探すことから始まります。
ゲンゴロウは基本的に夜行性の昆虫であることに加えて、このような状況下での採取は困難を極めることは覚悟しておいてください。
運よくゲンゴロウが生息している場所を発見できた場合、水草の中や土手近くが採取のポイントとなります。
ゲンゴロウは臭いに敏感なので、網の中に刺身など餌となりそうなものを入れておくと、自分から入ってくる場合もあります。
しかし、幼虫の採取となるとますます困難を極めます。
基本的に繁殖シーズンの初夏~夏場にかけてしか存在しないうえ、水中下で個体を特定することは難しいと思います。
幼虫を採取した場合には、噛みつかれることを防止するため決して素手でつかむことは避けてください。
この自然採取する場合に一番気を使わねばならないことがあります。
ゲンゴロウは今のところ、天然記念物に指定されているわけではないので、採取自体は違法ではありませんが、絶滅危惧の希少生物です。
必要以上に採取したり、転売しようと考えたり、生息地を特定して公開するようなことは最低限のルールとして絶対に守るようにしてください。
ゲンゴロウの成虫を飼育することは難しくはありません。
例えば
1. 常温で飼育できるため、特に冬場などヒーターを設置したり冬眠の準備をする必要がない。
2. 常に生き餌が必要なわけではなく、人工餌や残り物にも餌付くため、餌代もリーズナブル。
3. 水質の変化にも対応できるため、それほど神経質になる必要がない。
4. 寿命が2-3年と長寿 (飼育下では5年近く生きた例もあり) のため、長い期間ペットとして楽しめる。
5. 条件が揃えば繁殖も容易にできる。
などのメリットがあり、水棲昆虫を飼う入門としても最適の生き物といえるかもしれません。
しかし幼虫から飼育するとなると、多少飼育難易度が高くなってきます。
例えば
1. 幼虫は獰猛で共食いをするため、単独飼育が基本。
2. 生き餌しか食べないため、餌代が高くつく。
3. 水質の変化に敏感かつ、毎日の水替えが必要。
4. 脱皮および蛹化のための上陸のタイミングが難しい。
5. 蛹~成虫に至るまでの管理も大変。
など難しい面が発生します。
しかし、ゲンゴロウの一生に立ち会え、様々な形態の変化を楽しむ醍醐味があります。
天塩にかけて育てたゲンゴロウの幼虫が、成虫に羽化した瞬間は感動ものでしょう!
大きめのものを準備しましょう。
60センチ程度の容量がある水槽が理想的ですが、45センチ位の水槽は準備しておきたいものです。
ゲンゴロウの遊泳能力は非常に優れており、小さな水槽では壁に激突する危険があります。
また、水槽が大きめの方が水質が悪化に対応しやすいといったメリットもあります。
脱走防止のため、しっかりしたフタの閉まる水槽を選びましょう。
金魚などの観賞魚飼育セットを購入すれば、水槽のほか、濾過機、エアレーションなど必要最低限度の機材が揃うので便利です。
水質の安定を保つ役割があり、より自然状態に近い環境を整えるため水槽の底に敷き砂を敷きます。
観賞魚用のソイルと珪砂を用意し、底から珪砂 → ソイルの順に敷くようにします。
合わせて、暑さ7-8センチになるようにします。
市販の流木で対応可能です。
水槽の底から、木が水面上に出るようなレイアウトにします。
1 0センチ位の高さが 水面から出ていれば問題ありません。
これは、ゲンゴロウの足場となると同時に、生きていくために必要な甲羅干しに必要になってくるのです。
アク抜きは必ず行ってから水槽に入れるようにしてください。
水槽と単品で揃える場合必要になってきます。
肉食性といった餌の関係もあり、水質が悪化しやすいため濾過機は必需品です。
エアレーションは緩やかな設定にします。
流れのはやい設定にしますと、ゲンゴロウが疲労して弱ってしまうおそれがあります。
必ずしも必要なものではありませんが、水草を飼育する場合、成長を促すために必要になります。
足場用には、 オオカナダモ、マツモ
産卵用には、 ホテイアオイ、オモダカ、セリ などを複数植えておくようにします。
成虫の餌は必ずしも生き餌を準備する必要はありません。
刺身、煮干しなどを与えますが、慣れてくると鑑賞魚用の人工ペレット餌、クリルなども食べるようになります。
成長を促すために、時々 コオロギ など昆虫を与えるようにすると理想的です。
冷凍アカムシなどは、昆虫の成長抑止ホルモンが含まれていることがあるので、緊急以外は与えないようにします。
餌は一日1回を目途にします。
あまり与えすぎると水質の悪化につながります。
ゲンゴロウは1週間程度の絶食に耐えられるといわれますが、空腹の場合共食いをする場合があるので注意が必要です。
他の観賞魚飼育の場合と、同様に水道水をそのまま使用しないでください。
観賞魚用の中和剤を使用して、瞬間カルキ抜きをするより、自然カルキ抜きした方がゲンゴロウの調子はよいようです。
水道水を汲み置きし、1日以上置いておきます。
ゲンゴロウを投入する前に、充分なエアレーションも忘れずに行ってください。
ゲンゴロウは水中内で活発に活動する生物ですので、多数飼いしすぎて過密状態になるとストレスの原因になります。
45-60センチの水槽で多くても 4-5匹、ペアなら2ペアくらいが理想的な飼育化数といえます。
また、ゲンゴロウの成虫は、積極に生き餌を捕食する習性はないので、他の生物との混泳は可能ではあります。
メダカ など小型の生物、あるいは底生魚のドジョウ、タニシなどの貝類を一緒に飼育することはできます。
ヌマエビなど小型の エビ を入れておくと、ゲンゴロウの食べ残しを食べてくれるので重宝します。
しかし、ゲンゴロウの餌が不足すると、こうした同居者を捕食してしまうおそれがあるため、餌切れには注意する必要があります。
ゲンゴロウの成虫は飛翔能力があります。
脱走防止のため、水槽のフタは確実に閉めておく必要があります。
注意しなければならないのは、エアチューブなどを伝って脱走する危険があること。
フタとエアチューブの隙間は、ゲンゴロウの成虫の大きさより狭く目張りする必要があります。
ゲンゴロウの成虫は冬の期間でも、ヒーターなど使用せず常温で飼育可能です。
逆に注意しなければならないのでが、夏期対策。
ゲンゴロウは寒さには比較的強いのですが、暑さには弱い生物です。
換気がよく、直射日光が当たらない場所に水槽を設置して水温が上昇しすぎないようにしなければなりません。
飼育環境が整い、オスとメスの相性がよければ繁殖させることは難しくありません。
交尾を確認し、ホテイアオイやオモダカなど産卵用の水草に齧ったあとか見つかれば、その中に卵を産み付けているかもしれません。
やがて卵が孵化して、幼虫が確認できれば、今度は幼虫をうまく育てる準備をしなければなりません。
前述のようにゲンゴロウの幼虫を自然採取することは困難を極めます。
ショップ等で幼虫段階のゲンゴロウを購入するか、飼育している成虫の繁殖を待つのが、一般的な入手方法となります。
ここでは、飼っている成虫は卵を産んだ場合からの幼虫の飼い方を説明しましょう。
ゲンゴロウ成虫が交尾したことを確認し、水草に齧ったあとが見つかったら、その水草に産卵している可能性が高いかもしれません。
ゲンゴロウの卵は、通常2週間位で孵化しますので、その間注意深く見守りましょう。
ゲンゴロウの卵は細長いカプセル状をしていますが、植物の茎の中に産み付けるので外からは確認することができません。
15mm位の小さな幼虫が孵化して、水草の周辺に漂っているのを発見したら、即座に網ですくい上げます。
ゲンゴロウの幼虫は産まれてすぐに、持ち前の獰猛さを発揮して共食いを始めるか、若しくは親の餌になってしまいます。
ゲンゴロウの幼虫は共食いをするため、単独飼育が基本です。
400ml程度のプリンカップを準備し、1個当たり1匹ずつ移動します。
蛹になるまでの40日位の期間、幼虫の単身個室となります。
孵化してすぐの幼虫には必要ありませんが、幼虫が蛹になるために必要となります。
無農薬の黒土かピートモスが、ホームセンターなどで販売されています。
蛹の期間の居住空間として必要になります。
幼虫は蛹化の際には深く潜るので、深さが、100mm以上あるものを準備してください。
代用できるものがあれば、プランターでなくても問題ありません。
上記プリンカップに充分中和した水を入れ、マツモなど足場となる水草を少量入れておけば準備完了です。
幼虫は蛹になるまで、2回脱皮して成長します。
その脱皮時の大きさによって、通常 1齢~3齢(最終齢)幼虫と呼んでいます。
幼虫は生き餌しか食べす、その適齢時期によっても食べる獲物が異なってきます。
1齢期 : ミジンコやボウフラを捕食する時期ですが、飼育下ではアカムシの生餌を与えるようにします。
2齢期 : 上記、アカムシの他ミルワーム、コオロギなどを与えます。
3齢期 : 自然界ではカエルやフナなど大型の獲物を捕食する時期ですが、飼育下では上記コオロギなどのほか、メダカや 金魚 などを適時与えるようにします。
1. 幼虫は大食漢のため、一日2回(朝と夜)は餌やりを行うようにします。
2. 生き餌しか食べないため、飼育容器の水質は悪化しますので毎日の水替えが必要になってきます。(空気呼吸するため、水面が汚れると呼吸困難を起こします。)
3. 幼虫は毒を持つ危険生物のため、決して素手では触らないようにします。
ゲンゴロウの幼虫は脱皮を重ねることによって成長していきます。
加齢の脱皮の兆候として
1. 1-2日前から餌を食べなくなる。
2. 体が透き通ってくる。
3. 動かなくなる。
などの様子の変化があるのでわかります。
この間は、むやみに触れることなくそっとしておきましょう。
最終齢を迎えた幼虫は、いよいよ蛹になるための準備をします。
自然状態とは違い、人工飼育化で行うことになるため、タイミングを誤ると幼虫が死亡して今までの苦労が水泡になってしまいます。
ゲンゴロウの幼虫飼育の最大の難関になってきます。
1. 1-2日前から餌を食べなくなる。
2. 活発に動き回る。
上記脱皮の場合とは違って、動きが活発になることが特徴です。
このまま放置していおくと溺死してしまう可能性が高いので強制上陸させます。
上記のような兆候が見られたら、ピンセットなどで幼虫をつかみ、強制上陸させます。
蛹用に準備したプランターに、園芸用の土を水を含ませて入れておき、その中の幼虫を放します。
幼虫が蛹化の準備ができたのなら、 20-30分位 で地中に潜っていきます。
もし土に潜っていく様子がみられなければ、まだ準備が蛹化の準備ができていない場合もあるので、もとの飼育用容器に戻して様子を見ましょう。
やがて地中で蛹化に成功していれば、40-50日程度で成虫になって、自力で土から這い出してきます。
新成虫はそのまま、成虫を飼育している水槽に移しはなりません~ まだ体ができていない状態のため他の成虫の餌食になってしまう危険性があるからです。
1 週間程度 、もとの飼育容器で体の硬化を待ってから、水槽に移すようにしましょう!
これまで、ゲンゴロウ=ナミゲンゴロウの紹介をしてきましたが、ゲンゴロウの仲間には他にもユニークな種類がたくさん存在します。
何しろ、国内だけで約130種類・・・絶滅危惧に瀕している種多いのが現実ですが、ナミゲンゴロウとは違った魅力のあるものがいます。
そんなゲンゴロウの仲間たちを紹介しましょう!
真っ黒な光沢のあるボディが特徴のクロゲンゴロウ。
体長は、 20-25mm とナミゲンゴロウよりかは小型です。
日本国内では、北海道では確認されておりませんが、本州、四国、九州の池沼、湿地帯、水田に生息しています。
本種も最近では見かけることが少なくなり、環境省のレッドデータリストで、準絶滅危惧種(NT)に指定されています。
生息状況は、ナミゲンゴロウより多少はマシといった感じです。
飼育方法や生態は、ナミゲンゴロウと変わりません。
根気よく探せば、自然採取も可能ですが、ショップなどで購入した場合、1匹 600-800円 位が相場です。
ナミゲンゴロウを一回りコンパクトにしたようなゲンゴロウで、見かけはナミゲンゴロウとほとんど変わりません。
基本的に南方系の昆虫で、北海道には生息せず、本州でも関東以北には存在しないと考えられています。
主な生息地は、四国や九州、南西諸島のため池などの止水域です。
本種も最近激減しており、環境省レッドデータリストでは、絶滅危惧Ⅱ類 (VU)に指定され、多くの都道府県から姿を消しました。
体長は、24-29mmで、まさに「小型のゲンゴロウ」です。
ヒメゲンゴロウの仲間も多くの亜種が存在し、ペットとしても人気の高い種類です。
体長は、10-12mmと、これまでのゲンゴロウの仲間と比べてかなり小型になります。
北海道から沖縄県まで全国広い範囲に生息しています。
黄褐色のボディに、黒い点刻がちりばめられていて、とても美しいです。
本種はゲンゴロウの仲間としては、生息状況は良好で、比較的見つけやすい種といえます。
また、本種の幼虫の食性の特徴として、獲物を集団で襲う現象が報告されています。
そのため自然採取も可能ですが、ショップで購入した場合は、200-400円と安価で入手できます。
ゲンゴロウの仲間のなかでは、最も飼育が容易な入門生物とされています。
亜種には、ヒメゲンゴロウをひとまわり大きくした、「オオヒメゲンゴロウ」が存在し、体長13-14mm位です。
コガタノゲンゴロウときて、ついにチビゲンゴロウの登場!
大きさは、2mmとまさに米粒程度です。
亜種も多く存在し、 「マルチビゲンゴロウ」など一部は絶滅危惧種に指定されています。
北海道から沖縄県までの広い範囲のため池や水田などに生息していますが、小さすぎて採取するのは極めて難しいです。
小さな水槽で飼育できるため、飼育は容易で、さらに寿命も2-3年と長生きです。
体長12-14mmの小型のゲンゴロウの仲間。
多くの亜種が存在しますが、本種(準絶滅危惧種)を含めて、多くの種類が激減しており、レッドデータリストに名を連ねています。
北海道から九州までのため池、水田に生息しており、冬の間は陸上にあがり冬越しをすると考えられています。
黒っぽいハネに、薄黄色の4本の縞模様、頭の後ろのハネに2個の点があるのが特徴です。
ナミゲンゴロウの場合と同様に生息地が限られているために自然採取は難しく、ショップで購入した場合、600-1000円くらいです。
ゲンゴロウの仲間には名前もユニークなものが多数存在し、そのバラエティの豊富さには驚かされます。
それだけ、かつての日本では身近な存在であり、人々に愛されてきた証拠なのかもしれません。
体 長 : 35-42mm
生息地 : 北海道~沖縄県
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 絶滅危惧Ⅱ類 (VU)
体 長 : 20-25mm
生息地 : 本州 四国 九州
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 準絶滅危惧種 (NT)
体 長 : 24-29mm
生息地 : 本州(関東以南が中心) 四国 九州、南西諸島
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 絶滅危惧Ⅱ類 (VU)
体 長 : 10-12mm
生息地 : 日本全土
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 危機的状況ではない
体 長 : 2mm
生息地 : 日本全土
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 危機的状況ではない
体 長 : 12-14mm
生息地 : 日本全土
食 性 : 肉食性
寿 命 : 2-3年
保全状況 : 準絶滅危惧種 (NT)
最後に、ゲンゴロウと同様にかつては 「田んぼの昆虫の代表種」とされながら、同じように絶滅危惧にさらされている 「タガメ」についても簡単に触れておきましょう!
日本最大の水生昆虫で、日本最大のカメムシの仲間です。
成虫の体長は、60mm以上になるケースもあり、北海道を除く日本全土の田んぼや池沼に生息しています。
かつてはゲンゴロウと同じく、各地で普通に生息していましたが、農薬や護岸工事などの影響で大幅に数を減らしました。
きれいな水質と豊富な餌がある環境でないと生存が難しいため、現在は山間部の池沼などに生息地が限られています。
性格は肉食性で、きわめて獰猛~魚やカエル、時にはヘビやネズミなどを捕食します。
鎌状になった前脚で獲物を狙い、ゲンゴロウの幼虫のように消化液を注入して、溶かした獲物の肉を食します。
めったに飛翔しませんが、繁殖期には盛んに飛び回り、交尾相手を探します。
「水中のギャング」の異名をもつタガメも、人間相手では逆に食用にされ、現在でも東南アジアなどでは貴重な食材になっています。
自然界での寿命は1年とされています。
体 長 : 50-65mm
生息地 : 北海道を除く日本全土、台湾、朝鮮半島、中国 (近縁種は世界中に存在)
食 性 : 肉食性
寿 命 : 1年
保全状況 : 絶滅危惧Ⅱ類 (VU)
かつては田んぼに普通に存在していたゲンゴロウが、今や幻の昆虫になってしまいました。
しかし、そのユーモラスな生態が多くのマニアの心をつかみ、愛好家が多い昆虫のひとつです。
絶滅の危機になった原因は人間のエゴからであり、さらにペットとして人気が出たことで数少ない生息地も乱獲の危機にさらされている現実は皮肉なことです。
ゲンゴロウの生息域を見守りながら、この貴重な生き物の生態を知ることは大切なことです。
ゲンゴロウを飼育することで、この昆虫の特性について知り、絶滅の危機から守っていきたいものです。
最終更新日 : 2021/10/29
公開日 : 2016/12/12