本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
最期に、一度飼ったエンマコオロギは必ず責任をもって世話しましょう
最期に、生まれてくるエンマコオロギにも責任をもって世話すること
日に日に過ごしやすい気候となり、見事な月が目を楽しませてくれる秋。
そんな秋の夜長にはぜひ外へ出て耳を澄ませてみてください。
近所の畑や野原、公園、庭の草木やはたまた道路の植え込みなどから様々な主たちの鳴き声が耳を楽しませてくれます。
しかし、鳴き声はすれども姿は見えず……と、いざどんな虫なのかと聞かれると答えに詰まってしまうのではないでしょうか。
そんな秋の虫の中で今回ご紹介したいのは秋の虫の代名詞、コオロギです。
虫たちのコーラスの中に「コロコロコロ……」もしくは「ヒヨヒヨヒヨ……」といった声が聴こえてきたらそれがコオロギの鳴き声です。
美しい鳴き声について知っていただいたところで、これから順を追ってコオロギについて、そしておすすめの飼育の仕方について知っていこうではありませんか。
直翅目(バッタ目)剣弁亜目(キリギリス亜目)コオロギ上科に属する昆虫の総称です。
簡単に言ってしまうとバッタのように後脚が大きく発達し跳び跳ね、それに加えて キリギリス のようによく鳴く虫の仲間ということになります。
日本においてはエンマコオロギ、オカメコオロギ、ミツカドコオロギなどが代表的で体長は10mmから国内最大のエンマコオロギで40mm程度の大きさです。
そして、コオロギの印象としてまず浮かぶのは雄が雌への求愛行動として鳴き声を発するということでしょう。
さて、それではお待ちかねの見た目に関するお話へと参りましょう。
体色は黒や茶色が多数を占め地味な色合いに円筒系の体をしていて頭には体より長い触覚、尾部には尻毛という二種類のセンサーを備えています。
そして何より特徴的なのが後脚です。人間でいうところの太腿のような部位が大きく発達し、ここから生み出される脚力で前述の通りバッタのようによく跳び跳ねるのです。
強力な後脚の陰に隠れて目立たない前脚ですが、実この前脚の脛には鼓膜を備えた進化的な耳が付いていてこの耳で周りの音や仲間の声を聴く非常に重要な器官なのです。
雌は雄のラブコールを脚で聴いているんですね……と、話を戻しまして次がコオロギをコオロギたらしめる重要な器官の翅についてです。
コオロギは同じ種類の中でも長く伸びた半透明の翅を持ち飛ぶものと、四枚すべての翅が鱗上に短く退化してしまっているものがいます。
しかし、どちらにせよ飛ぶよりも跳ぶ方が断然に速く小回りも効くのであまり重要ではないそうです。
そしてこの翅に備えられた最大の力はあの美しい鳴き声を生み出すことです。
雄の成虫は翅にやすり状の発音器と音を響かせるための共鳴室を持っていて、発音器をこすり合わせることで鳴き声を発します。
虫には人間のような肺と喉と声帯が存在しないのでまるで楽器のヴァイオリンのような方法で鳴き声を出しているんです。
雌の尾部には長い産卵管が存在します。
そのため雄雌の見分け方は容易で、雄は尾部に尻毛の二本の長い棘があるのに対し、雌は産卵管も含めて三本の棘があり一目だ判別できます。
田畑や草原、森林、人家の近くなどの色々なところでコオロギを見ることができますが、気候や他の環境によって生息する種類は様々です。
コオロギの多くは夜行性で、日中は草地や石の下、穴など暗いところを好んで潜むことが多く、触角、尾毛、耳や鳴き声は目に頼ることの難しい環境で有利に生きていくために備わったと言えるでしょう。
基本的には雑食で、植物の他にも 小動物 の死骸などを食べています。
小さな昆虫や、場合によっては自分の仲間を食べてしまうことがあるので複数の個体を飼育する場合には注意が必要となります。
逆に、コオロギを捕食する主な天敵はカマキリなどの肉食昆虫、クモ、ムカデ、 カエル 、トカゲ、 鳥類 などです。
繁殖行動についてですが先ほどから話題に上っている通り雄が鳴く種類は雌との接触に鳴き声を利用しており、交尾が終わると雌は土中や植物に産卵管を使って一粒ずつ産卵を行います。
コオロギは不完全変態の昆虫で卵から成虫を小さくしたような幼虫が孵り、芋虫や蛹の姿にならずに脱皮してそのまま大きくなって成虫となります。
日本に住む多くのコオロギが卵で越冬し、春に幼虫が孵り夏の終わりから秋の終わりまでに成虫として活動して卵を産んで子孫を残すという一世代一年の命のサイクルをもっています。
日本では古くからその鳴き声が秋の夜の風物詩として親しまれてきました。
現代においては飼育の容易な種類を他の昆虫を食べるペットの餌として飼育している人も存在し、市販もされています。
しかい、東南アジアなど、一部の地域では高タンパクな食品としてのコオロギが流通するという関わり合いもあるのです。
ひとえにコオロギといえど種類によって敵視生活環境があり、間違った方法で飼育すればすぐにに死なせてしまう……と、いったことになりかねません。
コオロギに適した環境で飼うことがコオロギにとっても人間にとってもベストな選択となるのです。
そうは言っても、あまり複雑な飼育方法では世話ができるか心配になってしまうでしょう。
そんなあなたにおすすめなのがエンマコオロギの飼育です。
なぜエンマコオロギがおすすめなのかですが、キーワードは二つ。
「地上生活」し、「乾燥に強い」コオロギだということです。
まず、「地上生活」についてですが、これの対として「樹上」と「草上」が挙げられます。
後者の二つは単純に広さや手間の関係で好む環境を整えることが難しいことが一番の要因でおすすめできません。
次に「乾燥に強い」ことがどんなメリットかというと、詳しくは後述しますが手入れや活況の維持が容易でにおいやカビも発生しにくいことです。
湿気を好む種類を飼うとなると糞や食べ残したエサ、足場の土が腐敗しやすくカビの温床になりやすく、どうしても手入れや掃除の手間が多くなってしまいます。
以上の点からも「地上生活」を好み「乾燥に強い」エンマコオロギがおすすめなのです。
エンマコオロギは日本最大種のコオロギで26mm~32mm、大きいと40mm近くまで成長します。
前述の飼いやすさに加えて北海道の北部と南西諸島を除く日本全国に広く生息している非常に身近なコオロギであり、捕獲しやすいこともおすすめの理由です。
エンマコオロギは12~4月頃まで卵のまま越冬、5,6月に幼虫が孵化して成長し8~11月頃に成虫として活動し産卵をする一年の一生を送ります。
ではここからはエンマコオロギの飼育の方法の紹介です。
何を目的として飼育するかを基準に初級、中級、上級の三段階の難易度ごとに紹介させていただきます。
初級のテーマはずばりこれです。
エンマコオロギの生活する環境をそのまま再現し、自然に近い姿を観察することが目的です。
「え?そんなことが初級でできるなら手入れの手間とか、乾燥に強いとかの話は何だったの?」と思われるかもしれません。
あなたのその感覚は非常に正しいです。
この方法はあくまで捕まえたエンマコオロギを一晩や2,3日といったごく短い期間の間観察し、また元の場所に還すリリース前提のプランなのでその点には重々承知してください。
・市販の昆虫飼育用の蓋付きのプラスチック容器・エンマコオロギを捕獲し、一時的に入れる虫篭・虫取り網・スコップ・スポンジ(水飲み場とする)・ジャム瓶などの蓋・割れた植木鉢等の破片数個・餌用の野菜くず(ニンジン、大根、ナス等たいていは食べる)
・エンマコオロギ数匹・現地の土適量・現地の小石数個・現地の背の低い草
まず、事前にプラスチック容器をよく水で洗い乾燥させておきましょう。
また、エンマコオロギの採取を行う場所が他人の私有地などの場合は必ず事前に連絡し、許可を得ることを怠ってはいけません。
次はエンマコオロギの捕獲です。
今回は成虫を狙うため時期は8~11月、大きさは3cmを基準に捕まえましょう。
岩陰や石の下、草陰など日の当たりにくいところを探し、捕獲の際は両手でやさしく包み込む。
網を用いる場合は無理に網から外さずに籠に自ら入るよう誘導しましょう。
充分な数が集まったらプラスチック容器に2,3cmほど土を入れ、数個の石と見栄えのために草を入れます。
自宅に戻ったらさらにエンマコオロギの隠れ家となる植木鉢の破片、餌の野菜くず、ビンの蓋の上に湿らせたスポンジを乗せたものを入れてエンマコオロギを入れて蓋をする。
ここまでくれば完成です。
野菜くずが無くなったら少しずつ追加してあげること、給水用のスポンジを常に湿った状態にすることにに気を付けて玄関先などで観察しましょう。
この方法は自然の土を用いるため自然な様子と風流さを感じられますが、小さな生物や菌を持ち込んでしまう事態が避けられないことが問題点です。
エンマコオロギを短期間観察する手段であることを念頭に入れて管理し、必ずエンマコオロギと土を元の場所に還し、容器を洗浄してください。
続いての目的は長期の飼育です。
自然さと風流さを重視した初級と異なり、効率重視な面が目立ちますがこれも長くエンマコオロギを飼育するためなのです。
・市販の昆虫飼育用の蓋付きのプラスチック容器・エンマコオロギを捕獲し、一時的に入れる虫篭・虫取り網・エンマコオロギの足場(後述)・紙製の卵容器・底の浅い容器・スポンジ・乾燥餌(後述)・餌用の野菜くず(ニンジン、大根、ナス等たいていは食べる)
まずは容器を洗浄し、乾かしてからエンマコオロギの足場を敷きます。
エンマコオロギはつるつるした面を歩けないため敷物が必要になるのです。
乾かしたバーミキュライト、もしくはよく洗浄し乾かした砂を床が見えない程度敷き詰めてください。
より安価で手軽な方法として古新聞をしいても問題はありません。
次にエンマコオロギの隠れ家となる紙製の卵容器を設置します。
これを用いる利点は汚れたら容易に取り換えられて余分な水分をよく吸うことで、通販も行われており非常に便利ですが鉢植えの破片や丸めた新聞紙でも代用可能です。
そして給水所としてエンマコオロギが登れる高さの浅い容器に湿らせたスポンジを入れ、エンマコオロギが水面で溺れず給水でき、足場を濡らさない状況を作りましょう。
容器が高い場合は割り箸などで坂を作ってあげるとよいでしょう。
ここまでくればエンマコオロギを入れていげることができます。
この方法では幼虫からの飼育も可能なので成虫と幼虫、好きな時期に捕獲してみてください。
ここからは日々の世話、餌やりと衛生管理についてです。
まず容器の置き場についてですが、エンマコオロギは夜行性なので容器はあまり日当たりの良い場所を避けた風通しの良い場所に置くようにしましょう。
次に餌についてです。
エンマコオロギは雑食で人が食べるものはたいていは食べるので野菜などで問題ないのですが、清掃の都合上乾燥飼料を主として生の餌を加える形が好ましいです。
乾燥飼料には専門のものもありますが、金魚の餌を砕いたもので代用可能です。
餌を与える際に気を付けるのはあげすぎて残った餌が痛むことです。
食べ残しがあるのに追加の餌を与えることがないよう、無くなったら少量ずつ追加していく形が好ましいでしょう。
過度な湿気と食べ残しに気を付けた餌やりをこころがけてください。
また、動物性の栄養が不足すると共食いの原因になるので時折鰹節などを与えると予防になります。
水に関してはいくら乾燥に強いとしても不可欠なものなので、スポンジは常に湿った状態に保ちましょう。
清掃に関してですか最も手軽なのは容器を二つ用意し、清潔な足場新聞紙と隠れ家の卵容器を入れた新たな容器にエンマコオロギたちを移して空いた容器の足場や隠れ家を廃棄して容器を洗浄する方法です。
必ず足場は定期的に清潔なものに交換してあげましょう。
中級は長期間の飼育に適した効率重視の方法で幼虫の成長を観察することも可能ですが、自然の姿からは離れてしまうため風流を味わう目的としてはおすすめできないでしょう。
だからといって、飽きて世話せず死なせてしまうなんてもってのほかです。
小さくても命。
他のペットと同様に責任をもって世話しましょう。
最期となりました上級の目的はエンマコオロギに産卵してもらってその卵を孵化させ、繁殖させることです。
基本的な飼育環境は中級をそのまま活用できます。
しかし変わってくるのが産卵期の対応で、適切にエンマコオロギが卵を産んでくれる環境を整えなければなりません。
・タッパー・砕いたバーミキュライトかトイレットペーパー・霧吹き・ティッシュ・割りばし
エンマコオロギの産卵のために必要なものは産卵床です。
通常エンマコオロギは湿った土に産卵するのでそれに近い環境を作ってあげる必要があります。
エンマコオロギの産卵管より少し長い高さのタッパーに砕いたバーミキュライトかトイレットペーパー(ちぎったものとそうでないものを交互に)を敷き詰め、浸らない程度に十分に湿らせます。
準備ができたらエンマコオロギが登りやすいよう割り箸で坂を作って飼育容器に設置してあげましょう。
雌雄がそろっていて、交尾を行った雌がいれば卵を産み付けてくれるので三日ほど設置しておきましょう。
この間は湿り気を保つことが必要で、乾燥すると産卵してくれないどころかすでに産み付けられた卵が死んでしまいます。
産卵を確認した産卵床を引き上げたら湿り気を再度確認してからタッパーで密封してしまってください。
卵は乾燥が大敵なので封をしてしまいましょう。
産卵床や死んだ卵にカビが発生しることがありますが健康な生きている卵は問題なく育ちます。
前述の通りエンマコオロギは卵で越冬するので卵を室温で置いて冬に孵してしまっては大変なので休眠させる必要があります。
産卵後すぐの卵は寒さに対応する準備ができていないので3週間程度暖かい温度においてください。
その後、日が当たらず十分な低温になる屋外において春まで保管するか、まだ温かいようなら2か月程度10度前後の冷蔵庫に保管してから屋外に置く方法で来春まで保管してください。
春になり気温が上がるころになると自然に孵化が始まります。
ふたを開けた産卵床のタッパーを飼育容器に入れて水分を保ちながら待ちましょう。
また、無事に孵った幼虫は非常に小さいうえに水分が十分に必要なので溺れてしまわないようにスポンジを湿らせたティッシュに切り替えて対応してください。
繁殖まで見据えたこの方法は非常に長期間にわたるため、投げ出さず、エンマコオロギを大切にできる人にしかおすすめできませんので実行前によく考えることを忘れないでください。
名前や鳴き声は知っていても姿や生活の様子は意外に知らない、身近な秋の風物詩ともいえる魅力的な昆虫、コオロギを紹介させていただきましがいかがだったでしょうか。
美しい鳴き声はもちろん、その姿にも興味を持った方がいらっしゃいましたらぜひとも草や石の陰を覗いてコオロギの姿を探してみてください。
公開日 : 2016/11/06