本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
キリギリスという名前を聞くと皆さんはどのようなイメージを思い浮かべますか?
多くの人はイソップ童話のアリとキリギリスの童話のような、冬に備えてせっせと準備をするアリに対してのんびりと歌を歌って過ごした結果冬に餌がなくなり餓死してしまう怠け者のイメージを思い浮かべた人が大多数でしょうか?
本当にキリギリスは童話のような怠け者なのか、本当はどんな虫なのか詳しく知りたくはありませんか?
キリギリスはバッタ目キリギリス科キリギリス属に分類される昆虫です。
日本の青森県から岡山県にかけて生息するヒガシキリギリスと、近畿地方から九州地方にかけて生息しているニシキリギリスの総称としてキリギリスと呼称する場合と、ヒガシキリギリスとニシキリギリスを区別せず、近似種などを存在しないものとして扱い、すべて同一の種としての認識する際の呼称としてのキリギリスがあります。
現在の日本における総称としてのキリギリスの分布に対する認識は先述の通り、青森県から岡山県にかけて分布するヒガシキリギリスと近畿地方から九州地方にかけて分布しているニシキリギリスをあわせて本州から九州にかけてとなります。
近似種も含めて21世紀初頭では、日本列島に少なくとも4種のキリギリス属が生息すると考えられています。
ですが、北海道に生息するハネナガキリギリスと沖縄に生息するオキナワキリギリスを除外した、青森県から鹿児島県の地域に分布するヒガシキリギリスとニシキリギリスを合わせたものを20世紀末まで1種であると考えられていました。
その際にキリギリスという呼称は標準和名として用いられていました。
そして、1990年代に日本でバッタ目の研究が盛んになり始め、それまで一つの種類としてまとめられていたものの中にも、地域によってそれぞれ特徴をもつ個体群が存在することが認知されました。
その中でも東西の日本に別れる広い分布域をもつ2群を明確に別種として、1997年にヒガシキリギリス、ニシキリギリスと呼称されるようになりました。
成虫の体調は25mmから40mmでヒガシキリギリスよりニシキリギリスの方が相対的に大きく、どちらの種も雄より雌の方がやや大きい傾向があります。
体色は生活環境によって緑を基調としたものと、褐色を基調としたものに別れており、それぞれの生活環境で保護色として機能しています。
ヒガシキリギリスとニシキリギリスの差異としては、ヒガシキリギリスは翅が比較的短く、側面に黒斑が多く存在します。
それに対してニシキリギリスは翅がヒガシキリギリスよりも長く黒斑は1列程度、もしくは全く存在していません。
ヒガシキリギリス、ニシキリギスともに触角は長く、前脚には捉えた獲物を離さないようにするための脚の直径より長い棘が列生しており、鳴き声をあげる虫に共通して雄はは前翅に発音器を、雌は腹に長い産卵を有しています。
キリギリスの一生は1年間で、1年毎に世代が更新されていきます。
キリギリスは地中にて卵の姿で越冬し、3月から4月にかけての春に孵化し、地中から這い出します。
初齢の幼虫はイネ科の植物の種子や花粉を食べて成長していき、成長するに従って肉食性が強くなり、小型の昆虫や、自らの仲間も捕食の対象とするようになります。
そして、夏にかけて成虫となり、秋から初冬にパートナーを見つけて産卵し、冬が本格的に始まる頃には死んでしまいます。
寿命としては童話のアリとキリギリスのようにキリギリスの成虫は冬を超えることは出来ずに死んでしまいますが、彼らは決して怠けていたわけではなく、しっかりと命を次代につなぐための営みを行っているのです。
キリギリスは卵の姿で休眠し、冬を越えて春まで待つのですが、キリギリス亜科の孵化にはまだまだ不明な点が多く存在しています。
卵の姿での休眠期間が適切な温度の上下が適切な回数加わらないと完了されず、孵化することがありません。
そのため、孵化するのが産卵の翌年のこともあれば、最長で4年後にもなるのです。
キリギリスの雄がパートナーに求愛する際に発する鳴き声は「ギーチョン、ギーチョン」という鳴き声の繰り返しとなっており、他の虫とも聴き分けやすいのではないでしょうか。
キリギリスは日のよく当たる草むらや河原、山間部の茂みなどに生息していることが多いです。
自らの縄張りを持つ習性があるためあまり群生はせず、縄張りを侵す仲間は容赦なく捕食の対象として共食いしてしまうことすらあります。
共食いからもわかることですが、キリギリスは雑食性の昆虫ですが、非常に肉食性が強い性質です。
この肉食性は成長や産卵には不可欠で、不足してしまうと成長不全や産卵不全、卵の不健康化を招いてしまうこともあるのです。
飼育の際は動物性タンパク質と生き餌をしっかりと与えないと共食いを誘発してしまうだけではなく寿命を減らしてしまうことになるので注意が必要になります。
キリギリスも脱皮を繰り返して成長するのですがどうやらこの脱皮が得意ではないようで脱皮に失敗したり、脱皮に時間がかかりすぎて天敵に襲われて命を落としてしまうこともあるようです。
キリギリスは臆病な性格で、人間に捕まりそうになると死んだフリをしてポトリと落下して草むらや落ち葉の奥深くへと逃げ込んでしまいます。
それにも関わらず、キリギリスは強力な顎を持っており、手で掴もうとすると噛みつかれて痛い思いをしてしまうかも知れません。
捕獲の際に脚が折れてしまいやすいこともあり、素手での捕獲はあまりおすすめできないでしょう。
探す際にはもともと鳴かない雌はもちろん、雄も前脚の耳で人の足音を感知すると鳴きやんでしまうため、保護色の彼らを見つけることはなかなか困難になるかもしれません。
前述の通り、キリギリスは非常に共食いを行う傾向が強いため多頭飼いには向きません。
それに加えて卵の休眠期間終了のプロセスが不明瞭なことも相まって世代を重ねてのキリギリスの育成と繁殖は非常に難しいものとなっております。
ですが、適切な飼育方法で根気強く育成すれば必ずやあなたの手元で繁殖してくれることでしょう。
ここではおすすめの飼育方法を紹介していきます。
プラスチック製の飼育容器や水槽など、蓋付きの容器が適切です。ホームセンターで扱っているもので問題ないので高さのあるものを用意しましょう。
(プラスチック容器の例)
洗って乾かした砂、バーミキュライト、新聞紙
キリギリスは コオロギ と違ってプラスチック面を登ったり歩いたり出来るため足場は世話のしやすいものを選ぶ方が良いです。
乾燥と清潔を維持しやすい新聞などが特におすすめです。
(バーミキュライトの例)
砕いた乾燥ドッグフード、削り節
キリギリスは雑食性ですが、非常に肉食性が強い昆虫なので動物性タンパク質を多く含むものを多く与えましょう。
手軽に入手できて乾燥しているため痛みにくく掃除もしやすい乾燥 ドッグフード や、削り節を基本の飼料として採用すると飼育が比較的容易になります。
少数を単数世代で飼育する際にはほぼこの餌で問題は無いでしょう。
しかし、世代を重ねて行くために必要になる餌については次に説明します。
バッタ等のキリギリスの体長より小さな昆虫、小さく切ったミールワーム
幼虫からの健康な育成や、産卵、孵化を行っていくためには生き餌の存在が不可欠のなってくるので必ず用意しましょう。
生き餌を与えることで共食いの防止にとなるので良質な栄養源として活用してください。
(ミールワームの例)
ジャイアントミルワームは こちら から!
※グロいです。虫が苦手な方は要注意。
イヌムギ等のイネ科の植物、水を入れた小瓶
イネ科の植物をよく齧るため水を入れた小瓶に、根本のすぐ上で刈り取ったイヌムギ等のイネ科の植物を、小瓶に花瓶に挿す要領で挿して入れてあげましょう。
スズメノカタビラを浅い容器に土ごと植え替えたもの、タンポポの花を水を入れた小瓶に挿したもの、細かく砕いた乾燥ドッグフード
1齢幼虫(孵化した幼虫)から3齢幼虫(2度脱皮した幼虫)はまだ捕食性が高くないため植物性の餌となるスズメノカタビラ等の背の低いイネ科の植物を与えましょう。
タンポポは花粉を食べるので花の咲いたものを入れます。
また、小さな幼虫については直接手でつまむと潰れる恐れがあるので、紙をはけのように使いちりとりなどに優しく掃くように移しましょう。
綺麗に洗ったフィルムケース等のきつく蓋のできる容器、脱脂綿、キリ
フィルムケースの蓋に穴を開け、そこに底面まで届き先端が飛び出るように脱脂綿を通して水を入れ蓋をして横に倒して設置します。
この時、水がこぼれたり、溢れないようにしましょう。
キリギリスは突き出ている脱脂綿に染みた水を摂取できるので、溺れることを回避して水分を供給できます。
・飼育容器は日の当たる場所に設置しましょう。
・共食いを防ぐため、生き餌を与え、狭い容器での多数飼育はやめましょう。
・食べ残しの餌、糞はこまめに掃除し床材を取り替えましょう。湿気を吸い、手軽に取り替えて掃除できる新聞紙がオススメです。
・水を絶やさないよう管理しましょう。
・幼虫は優しく扱いましょう。
・植物性飼料も与えましょう。
・黴を呼ぶ湿気に注意しましょう。
・世話の後は手を洗いましょう。
キリギリスは湿った土に産卵管を突き立てて産卵するのでそのための環境である産卵床を準備します。
産卵管の1.5倍程の長さにペットボトルの底部を切り、そこに洗った砂、砕いたバーミキュライト、薄く剥がした脱脂綿を層状に重ねたもの、トイレットペーパーを層状に重ねたもののいずれかを湿らせて敷き詰めます。
この産卵床に産卵するため交尾を確認した際、秋には設置してあげましょう。
産卵を確認したら採卵に移りましょう。
産卵床が砂やバーミキュライトの場合は水に移して撹拌する事で、卵と砂土を分けることができます。
潰してしまわないように気をつけて掬いとるなどして、湿らせた脱脂綿に移してあげましょう。
トイレットペーパーや脱脂綿に産卵されたものは、そのまま採卵が行えます。
また、餌として入れたイネ科の植物の茎の隙間や、水やり用の脱脂綿に産卵される場合もあるため確認しましょう。
密閉可能な瓶などの容器に充分に湿らせた脱脂綿とともに入れましょう。
乾かすと死んでしまうので、水に浸ってしまうことのない程度に充分に湿らせておきましょう。
カビなどの発生に関しては、少しなら気にしなくても卵は育ちます。
しかし、未受精卵や、既に死んで変色した卵や、変色しカビに覆われた卵はほかの卵のために取り除いてください。
瓶の保管場所は冷蔵庫など0以上で度10度以下になる場所で冬の間保管し、春になると孵化の適温である15~20度の環境に調節してあげると良いでしょう。
孵化しなかった卵は休眠を維持しているはずなので、日の当たらない涼しい場所などで冬が来るまで常温で管理し、冬が来たら再び0度以上で10度以下の環境で保管しましょう。
長ければ4年間休眠するのですぐ孵らなくても安心してください。
適切な回数温度の変化を経ると3月から4月に孵化が始まるので、よく観察して孵化を見守ってください。
そして孵化したものは飼育容器に移してあげましょう。
また、卵を土とともに瓶や植木鉢に入れ、土に埋めてあげることで自然の温度変化を経験させる方法もあります。
人の管理の下で生まれた命は必ず責任をもって最後まで面倒を見てください。
童話のイメージが強いキリギリスですが、この記事でみなさんの中のイメージに少しでも変化はあったでしょうか?
もしも興味を持った方にも無理に育てろとまでは言いません。
生き物の育成には大きな責任が伴います。
ですので、気が向いた時には夏から秋に草むらへと赴いて「ギーチョン、ギーチョン」という鳴き声を探してみてください。
公開日 : 2017/02/10