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犬がくしゃみをするのは、感染症やアレルギーなど、人間と同じような理由の場合もありますが、思いも寄らない原因が隠れていることもあります。
ここでは、犬のくしゃみの意外な原因について見ていきましょう。
「心理的な要因でわざとくしゃみをする」というように、人間にはあまり考えられない理由で起こるくしゃみや、人間にはない種類の「逆くしゃみ」など様々なものがあります。
タバコや香水、柔軟剤など、飼い主にとってはあまり気にならない臭いであっても、嗅覚が人の1000倍~1億倍とも言われる犬にとっては、強い刺激臭として感じられることがあります。
寒暖差アレルギーというものがあり、急激な気温の変化に対して知覚神経が過敏に反応することでくしゃみが出てしまう人がいます。
犬も同様にアレルギーやストレス、体質などで知覚神経が過敏になっている場合、急に寒いところへ出たなど気温差による刺激でくしゃみが止まらなくなることがあります。
犬は興奮を落ち着かせるために、わざとくしゃみをすることがあります。
これは「カーミングシグナル」と呼ばれるもので、ストレスを感じたときにそれを和らげるために行う行動の一つです。
また、嫌なことだけではなく、嬉しいことがあって興奮し過ぎたときにも、自分を落ち着かせるためのくしゃみをする犬もいます。
くしゃみを連発した後、首をぶるぶる振る行動が頻繁に見られる場合は、ストレスを感じているサインです。
ストレスを強く感じている場合は、わざとくしゃみをするだけでなく、自律神経の乱れで鼻の毛細血管が拡張しっぱなしになり、鼻水やくしゃみが出ることもあります。
草むらに顔を突っ込んだあとくしゃみを連発していたら、草の種が詰まっている可能性があります。
人間にはないくしゃみの種類として、逆くしゃみというものがあります。
普通のくしゃみは、鼻で感じた刺激が脳に伝わり、鼻から息を急激に出す呼気の反射ですが、逆くしゃみは逆に刺激によって急に息を吸い込む吸気運動です。
一見すると、ガーガーと咳のような音を出し、とても苦しそうで心配になってしまうかもしれませんが、ほとんどが数分で治まり、その後に影響することはありません。
逆くしゃみはしゃっくりのようなものです。
くしゃみはどの犬種にも見られますが、逆くしゃみは パグ 、 ペキニーズ 、 シーズー 、 フレンチブルドッグ などの短頭種、腫瘍性のくしゃみはコリー、シェットランド・シープドッグ、ゴールデンレトリバーなど長頭種に多く見られます。
くしゃみは一時的なものなら心配ありませんが、長期間続いたり、頻繁に起こったりする場合には病気の可能性があります。
たかがくしゃみと思われるかもしれませんが、重大な病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。
ジステンパーなどのウイルス感染症により、くしゃみが出ることがあります。
ウイルス性の場合、鼻の両側からくしゃみと共にサラサラした鼻水が出るのが特徴です。
副鼻腔炎や蓄膿症など細菌感染によって鼻水やくしゃみが出ることがあります。
鼻の中に傷が出来て、そこから細菌感染が起きることもあります。
細菌感染の場合は鼻の片側のみから鼻水が出ることも多いです。
また、膿状の黄色~緑色の鼻水が出ます。
アレルギーによる炎症が続いたり、ウイルス感染から細菌感染に移行したりする二次感染が起こることもあります。
ウイルスと細菌の混合感染でよく見られるのが犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)です。
二次感染の場合には、両方の鼻から膿状の鼻水が出ることもあります。
今や国民病とも言われる花粉症ですが、犬も人と同様にスギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉症を発症することがあります。
アレルギーになりやすい犬種は柴犬、ゴールデンレトリバー、ウエストハイランド・ホワイトテリア、シーズー、ブルドッグなどです。
鼻の長い犬によく見られます。
鼻に出来る腫瘍のほとんどは悪性です。
腫瘍の原因として、タバコや柔軟剤などの環境物質が関連しているという研究報告もあります。
意外に思われるかもしれませんが、重度の心臓病になると、血液の循環が上手くいかなくなり、鼻水の量が増えることによってくしゃみが出ることがあります。
寄生虫症の一種であるフィラリア症や老犬に多い心臓弁膜症による肺水腫で見られる症状です。
心臓病と同様に想像しにくいかもしれませんが、歯と鼻は部位が近いため、歯周病菌によって鼻にも感染が起こることがあります。
シーズー、ポインター、ブルドッグ、スイス・シープドッグなどに多い先天性疾患で、鼻と口の仕切り部分の形成が不十分なため、ミルクなど液状のものが鼻へ逆流することでくしゃみも誘発されます。
犬がくしゃみを連発しても、それが一時的なもので、ほかに症状がなければ心配ありません。
しかし、場合によってはすぐに動物病院を受診した方が良いこともあります。
ここでは、緊急的なものではないときに家庭で出来る対処法と動物病院を受診すべき症状についてお伝えします。
くしゃみをすぐに止める方法やくしゃみを起きにくくする対処法をご紹介します。
一時的ですぐに治まるものであっても、「最近くしゃみが多い」と感じたら、周りの環境に少し目を向けた方が良いかもしれません。
ちょっと気を付けるだけで、ワンちゃんも飼い主さんも快適に過ごせるようになりますよ。
犬の近くで香りの強いものを使用することは控えましょう。
タバコは犬のいないところで吸う、香水のついた服は家に帰ったら着替えるなど、なるべく香りによる刺激を与えないようにすることでくしゃみが出にくくなります。
ホコリにはアレルゲンとなる花粉やダニの死骸などが沢山含まれています。
飼い主さんのアレルギー対策のためにも、こまめに掃除をしましょう。
逆くしゃみはしゃっくりのようなもので、大抵の場合は自然に止まりますが、早く止めたいときには、犬が唾液を飲み込むような状況を作ってあげると止まることがあります。
一番簡単にできるのは、犬の鼻に息を吹きかけるという方法です。
息を吹きかけることで犬が自分の鼻を舐めるため、その拍子に唾液を飲み込みます。
くしゃみが長く続く場合や頻繁に起こる場合には、病気が隠れていることもあります。
気になるときは動画をとっておくと、動物病院を受診したときに診断がつきやすくなります。
次のような症状が見られるときには早めに動物病院を受診しましょう。
くしゃみが連続して起こり止まらないときは、病気の可能性が高いです。
また、病気ではありませんが、草むらに顔を突っ込んだ後、くしゃみが止まらない場合、草の種が詰まって取れなくなっていることが考えられます。
自然に取れることもありますが、場合によっては内視鏡を使わないと取れないこともあります。
詰まった部分に炎症が起こってしまう可能性もあるので、しばらく経っても鼻を気にしていたり、くしゃみが止まらなかったりする場合には、動物病院を受診しましょう。
鼻水が垂れてくる場合、ウイルス感染症やアレルギーなどが考えられます。
また、老犬の場合、心臓病の可能性もあります。
鼻の中を怪我したときや腫瘍がある場合に見られる症状です。
傷や歯周病、ウイルス感染症の二次感染など原因は様々ですが、膿のような鼻水が出る場合は、細菌感染を起こしています。
薬を投与しないと長引くことがあります。
鼻以外の症状がある場合、緊急性が高い病気の可能性もあり、早めの受診が必要です。
仔犬がミルクを飲むときに、いつもくしゃみをしている場合も受診した方が良いでしょう。
先天性疾患である口蓋裂の可能性があります。
犬のくしゃみには様々な原因があることがお分かりいただけたと思います。
犬のくしゃみはどの病気も症状が似ているため、見分けるのが難しいこともあります。
そんなとき、役に立つのは飼い主さんからの情報です。
「専門家ではないから」などと遠慮しないでください。
ワンちゃんのことを一番よく知っているのは飼い主さんです。
草むらに顔を突っ込んでいた、こんな季節によくくしゃみをしているなど、気になること、気付いたことがあったら、些細なことでも良いので獣医師に伝えてください。
それが結果的にワンちゃんを救うことに繋がるかもしれません。
執筆・監修:獣医師 近藤 菜津紀(こんどう なつき)
原因不明の難病に20年以上苦しみながらも、酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師免許を取得。
小動物臨床や、動物の心理学である動物行動学を用いたカウンセリング、畜場での肉の検査(公務員)など様々な経験を経て、現在は書籍の執筆や講演活動などを行なっている。
車椅子生活をしながら活動する、日本で唯一の「寝ながら獣医師」。
最終更新日 : 2020/10/23
公開日 : 2020/10/23