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「耳ダニ」とは、その名の通り 猫 の耳の中にダニが寄生することで発症してしまう病気です。
正式には「耳疥癬症(みみかいせんしょう)」と言います。
猫の耳に寄生するダニは、耳ダニ、ミミヒゼンダニ、耳疥癬虫などと呼ばれる0.3〜0.4mmほどの白く小さなダニの一種です。
外に出る猫や捨てられてしまった猫などには寄生していることが珍しくありません。
筆者は保護活動をしているので、猫を保護したら必ず耳ダニに感染していないかを確認します。
耳ダニはマダニなどと比べるととても小さいのですが、かなり活発に動き回るので、感染力が非常に高いです。
一般的なダニやマダニのように表面から血を吸っているわけではなく、ヒゼンダニの仲間は皮膚にトンネルを掘って細胞や浸出液を食べて繁殖します。
皮膚を荒らすため、痒みはとても強いことが多いです。
耳ダニは猫の耳の中に寄生するので、外見を見ただけでは寄生していることが分からないこともありますが、激しいかゆみを伴うことから、耳をかきむしる様子が見られます。
また、かゆみだけではなく、その他にも様々な症状が現れます。
放置するとどんどん症状がひどくなり、中耳炎などを発症して完治に時間がかかってしまいますし、かゆさや痛みにより食欲や元気がなくなる場合もあります。
また、ダニやノミに寄生されることで貧血状態になってしまうこともあるので、放置してはいけない病気です。
症状が悪化すれば、聴力を失うことすらあり得るのです。
筆者が保護した耳ダニの症状がひどかった猫は、やはり中耳炎も発症しており、そのせいで目からも涙が出てしまうという症状も併発し、完治にかなり時間がかかりました。
早期に受診すれば治療は難しくありませんし、治療費も安く済みます。
猫は健康であれば耳垢はたまりません。
猫の耳に垢があったり、匂いがしたりするときは、耳に異常が起きていると思った方が良いでしょう。
マラセチアというカビ(真菌)に感染しても耳垢がたまります。
マラセチアに感染した場合は湿っている耳垢が多く、耳ダニが原因の耳垢は乾燥しているものが多いですが、どちらも色は濃い茶色~黒で一見して見分けがつきにくいです。
野良猫など外で生活している猫は汚れが耳についていることもありますが、猫の耳に耳垢がたまっているのは何かしらの異常がある場合なので、素人判断せずに動物病院へ行きましょう。
耳ダニは猫だけが感染するものではなく、 犬 などの他のペットも感染します。
耳ダニはかなり活発に移動して歩くため、多頭飼育をしていると他の猫にも感染が広がります。
さらに、人間の耳にも入ってきてしまうことがあるのですが、猫が感染する耳ダニは人間の耳には長く寄生することができず、少し違和感があるという一時的な症状が出ることがある程度で、猫のように耳ダニが人間の耳に感染することはまずありません。
耳ダニの治療は早期であればそれほど難しくありません。
現在は、首筋にたらすだけで耳ダニを駆除できる駆除薬がありますので、動物病院で診察してもらったときに首筋に着けてもらえばおしまいです。
皮膚から吸収された駆除液が耳ダニを駆除してくれます。
ただし、駆除薬は成虫と幼ダニは殺すことができますが、卵は殺すことができないので、1回だけの投薬や診療ではなく、継続して耳ダニを根絶するまで治療することが大切です。
耳ダニの症状がひどい場合は、洗浄液などで猫の耳の掃除を行います。
また、炎症がひどいときは抗生剤などの投与も行われます。
耳ダニ症は、自然治癒はしません。
放置すればダニが繁殖して、症状がひどくなるだけです。
耳ダニによって体調まで悪化することもあるので、放置せずに病院で診てもらいましょう。
早期に受診すれば、治療費も安く済みますし、数回の通院で完治できます。
素人判断で市販薬を購入し、耳掃除を行うなどの行為はやめましょう。
耳はとても繊細な器官で傷つきやすいので、飼い主さんが耳掃除をするときは外耳の部分を優しく拭く程度にとどめておいてください。
耳垢が出る、かゆみがあるといっても、必ずしも耳ダニではない可能性もあります。
正しい診断と正しい治療が、結果的には猫の健康のためにも経済的にも良かったりします。
猫が耳ダニに感染する原因は大きく分けて2つ考えられます。
耳ダニは猫の血の他に、耳垢も栄養源としています。
そのため、不衛生な環境で猫を飼育し、猫の耳に耳垢がたまってしまうと、耳ダニが繁殖しやすい環境になってしまいます。
耳ダニの感染経路で一番多いのが、耳ダニに感染している猫から移ってしまうということでしょう。
1匹でも感染している猫がいれば、次々と耳ダニは感染が拡大し、あっという間に多くの猫が耳ダニに感染してしまうのです。
母猫が耳ダニに感染している場合、ほぼ100%子猫全員に感染してしまいます。
兄妹で遺棄されていた猫を保護すると、兄弟全部が耳ダニに感染していることは珍しくありません。
外に出る生活をして、耳ダニに感染している猫に接触する可能性がある猫は感染しやすいと言えるでしょう。
耳ダニは感染すると厄介ですが、予防はそんなに難しくありません。
耳ダニの感染経路で一番多いのは、感染した猫に接触すること。
やはり放し飼いされている猫や 野良猫 には耳ダニがいる確率は低くはないので、そういった猫と接触しないようにするのが一番の予防法です。
猫は キャットタワー を設置してあげるなど、室内の環境を整えてあげれば、十分室内だけで生活できます。
耳ダニや病気の予防、事故に遭う危険性を回避するには、完全室内飼育が一番効果的です。
不衛生な環境はダニが繁殖しやすいです。
猫が生活する空間を清潔に保ちましょう。
週に1度程度、耳掃除をしてあげましょう。
ただし、外耳部分だけを専用のクリーナーを使用し優しくコットンで拭く程度にし、猫も耳に異常がないかチェックしてみましょう。
内耳部分は、飼い主さんは触らないようにしてください。
猫の耳を傷付けてしまう恐れがありますし、猫も嫌がると思います。
完全室内飼育が望ましいですが、どうしても難しい場合は、定期的に駆除薬を付けてあげてください。
現在では首にたらす駆除液が一般的ですので、飼い主さんも使用しやすいです。
猫の耳ダニ症は珍しくはありません。
特に外に出る生活をしていると、耳ダニに感染する確率はかなり高くなってしまいます。
はじめはかゆがるというのが主な症状ですが、放置すると体調の不良も招きかねません。
保護活動をしていると、耳ダニやノミに感染した猫を保護することは少なくないのですが、それにより炎症や食欲不振などの他の症状も発症してしまうこともあるので、実は侮れない病気です。
飼い主さんが定期的に耳の状態をチェックし、愛猫の様子を観察するなどして予防に努めてあげると良いでしょう。
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・ 子猫の飼い方マニュアル。子猫の食事やケアの仕方、飼育にかかる費用、注意点
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/05/09
公開日 : 2018/07/27