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イルカは 「クジラ目 ハクジラ亜目」 に属する、海や川などの水中で生活する海棲哺乳類です。
多くの 水族館 で飼育されているため、1度はその姿を見たことがある方が多いでしょう。
日本では古くから食材としても扱われ、現在でも一部の地域ではイルカ肉が販売・消費されています。
しかし、知能が高いイルカを捕らえることは残酷だとして、一部の動物愛護団体から批判を受けています。
世界各国で賢くて特別な動物という扱いをされることが多い不思議な動物“イルカ”。
そんなイルカについて、まずは名前の由来や祖先、体の特徴について説明していきます。
イルカという名前の由来には諸説があり、どの説が正しいのか今でもわかっていません。
以下にどんな説があるのか、いくつかの説を取り上げます。
まず1つ目は“魚のような食用獣”という意味の、「イヲカ」という単語が転じたという説です。
「イヲ」は魚、「カ」は食用獣を表す単語で、この説が有力ではないかと考えられています。
2つ目は「行く」を意味する単語、「ユルキ」が転じたという説。
3つ目はよく入り江に入ってくるために「イルエ」(入江)と呼ばれ、その呼び名が転じたという説です。
普段何気なく口にしている単語でも、その由来を調べてみると面白いものですね。
なお、イルカを漢字で表現すると「海豚」「鯆」となります。
“海に生息する豚のような生き物”ということで、海豚と表現されるようになったようです。
ところで、イルカとクジラにはどのような違いがあるかご存知でしょうか。
クジラ目に属するイルカとクジラの仲間は、 「鯨類」 (げいるい)という総称で呼ばれています。
そして、鯨類は 「ハクジラ亜科」 と 「ヒゲクジラ亜科」 の2グループに分かれています。
ハクジラ亜科の動物はその名前の通り口の中に歯があり、その歯を使って魚を捕獲して食べています。
一方、ヒゲクジラ亜科の動物には歯がなく、口の中にあるヒゲと呼ばれる器官でプランクトンなどをこしとって食べています。
実はイルカは「クジラ目 ハクジラ亜目」の仲間で、生物学上クジラとの違いはありません。
ハクジラ亜科に属する動物のうち、体長が大体4m以下のものがイルカ、4mを超えるものがクジラと呼ばれています。
ただし、この大きさの基準も厳密ではなくあいまいなもので、例外も多数存在しています。
例えば、シロイルカは成体になると多くの個体が体長4mを超えますが、イルカという名前が付いています。
逆にゴンドウクジラは成体でも4~7mほどですが、小型のクジラと表現されることがほとんどです。
ですが日本語だけでなく、英語でもイルカ(Dolphin)とクジラ(Whale)は呼び分けられています。
国内外を問わず、イルカとクジラは別の動物として表現されるのが面白いですね。
なお、別名・海のギャングと呼ばれる「シャチ」も、イルカやクジラと同じハクジラ亜科の動物です。
生物学の観点から見ると、イルカもクジラもシャチも同じ仲間ということになります。
哺乳類の祖先は海で産まれ、何億年もかけて陸上生活に適応していきました。
イルカの祖先も陸で暮らす哺乳類でしたが海での生活を選び、今の姿になったと考えられています。
以前イルカの先祖は、 「メソニクス」 という肉食動物だと考えられていました。
メソニクスは現在の オオカミ のような見た目で、地上で生活をしていたようです。
しかし、動物を分類する技術が進歩するにつれて、その説は疑問視されることが増えてきました。
現在ではイルカは偶蹄目(ひづめの数が偶数の動物)と共通の祖先から進化したという説が有力です。
その祖先からまずは ラクダ が、次にイノシシが、そしてウシやカバの仲間が次々に分かれていきました。
そして、カバからイルカの祖先と考えられている、「ムカシクジラ」の仲間が分かれたと考えられています。
そんな経緯を持つことから、現在イルカに一番近い動物はカバであるといわれています。
一見カバとイルカは似ても似つかない、全く別の動物のように見える方も多いことでしょう。
しかし、両者とも水中で生活すること、ほとんど体に毛が生えていないことなど多くの共通点を持っています。
イルカの名前の由来や祖先について知った後は、その体の特徴を見ていきましょう。
この項目ではイルカの目や耳などそれぞれの器官に注目して、その秘密に迫っていきます。
イルカの体は頭の先から尻尾の先まで、水の抵抗を減らし早く泳ぐことに特化しています。
まずはその体型に秘められた、海で暮らすイルカならではの特徴を見ていきましょう。
イルカの体は前と後ろが細く、中央が太い 「紡錘形」 (ぼうすいけい)と呼ばれる形をしています。
紡錘形は水の抵抗が少なく、早く泳ぐという目的にぴったりの形です。
次に注目するのは、イルカの 「背びれ」 です。
多くのイルカには背びれがありますが、スナメリやシロイルカには背びれがありません。
背びれは泳ぐ時にバランスを保つ、空気中に出して体を冷やすなどの役割があるといわれています。
しかし、先述の通り背びれがないイルカもいることから、本当の役割については詳しくわかっていません。
背びれの次は、 「尾びれ」 について見てきましょう。
イルカの尾びれは魚と違い、水面に対して水平についているのが特徴です。
尾びれには骨が入っていませんが、その代わりに尾びれ周辺は非常に筋肉が発達しています。
イルカたちは尾びれを上下に振るように動かして、海中を非常に力強く素早く泳ぎます。
背びれと尾びれの次は、 「胸びれ」 について説明します。
イルカの胸びれは、陸で暮らす動物の前足に当たる位置についています。
胸びれには舵のような役割があり、イルカが水中で方向を変える時に使われています。
前足が変化したものであることから、他のひれと違い胸びれの中には5本の指の骨が入っています。
なお、後足は早く泳ぐために必要なかったようで、ひれにならず退化しました。
しかし、イルカには今でも「骨盤骨」と呼ばれる、後足を支えるための骨の名残が残っています。
イルカの目は人間と異なり、顔のやや横についています。
動物の目は前にあるほど物を立体的にとらえることができますが、その代わり視野が狭くなります。
逆に横にあるほど視野は広くなりますが、物を立体的に見る力が弱くなります。
一般的には肉食動物は目が前に、草食動物は目が横についている傾向にあります。
では、なぜイルカは肉食動物であるにも関わらず、目が正面についていないのでしょうか。
イルカの暮らしを見ていくと、その答えがわかってきます。
海で暮らす動物の目が正面についていると、泳いだ時に目に水が入ってしまいます。
しかし、目が完全に横についていると、魚を捕まえる時にうまく距離感をつかむことができません。
そのため、イルカの目は水が入らず、物を立体的にとらえられる顔のやや横についているようです。
ちなみに、イルカの視力はバンドウイルカで0.08~0.11ほど、カマイルカで0.09ほどといわれています。
イルカの体は全体的に凹凸がなくつるりとしていますが、彼らの耳はどこにあるのでしょうか。
イルカの耳は目の後ろにある、ごく小さな穴(くぼみ)です。
耳たぶがあると水の抵抗を受けてしまうため、今のような形になったようです。
しかし、イルカの耳は耳垢で塞がっているうえ、音をとらえる器官(鼓膜)がありません。
では、イルカたちはどうやって音を聞いているのでしょうか。
実はイルカたちは耳ではなく、下あごを使って音を聞いています。
音の振動を下あごの骨や脂肪に通し、そこから中耳や内耳へと伝えて音を感知しています。
実はイルカたちには、私たち人間のような声帯がありません。
鳴き声のように聞こえている音は、呼吸孔(頭の上にある穴)の近くから発せられています。
発した音は額にある、 「メロン」 と呼ばれる脂肪でできた器官を通じて前方に発射されます。
脂肪は音の通りが良く、レンズで光を集めるように効率よく音を集められるのです。
そして、イルカは発した音が物に当たり、跳ね返ってきた音を聞いて物の形や大きさを把握できます。
この能力のことを 「エコーロケーション」 といい、100m先にある物の大きさも把握できるそうです。
イルカの他には、 コウモリ がこのエコーロケーションを使えることで知られています。
イルカが口をあけると、意外と鋭い歯がびっしりと生えています。
歯の数は種類によって異なりますが、バンドウイルカは上下合わせて80~100本ほどの歯が生えています。
イルカの歯は獲物である魚やイカを捕まえ、逃がさないようにするために使われています。
捕まえた食べ物は丸飲みするため、歯で食べ物を切ったりすりつぶしたりする必要がありません。
そのため、イルカの歯には犬歯や臼歯といった種類がなく、犬歯のような歯が1種類だけ生えています。
なお、産まれたばかりのイルカには歯が生えておらず、成長に伴って少しずつ歯が生えてきます。
そして、イルカには乳歯が存在せず、最初から永久歯が生えてくることでも知られています。
最初から永久歯では、虫歯になった時に困るのでは?と思う方もいることでしょう。
しかし、イルカは獲物を噛まずに丸ごと飲み込むため、虫歯になることがありません。
そのため、最初から永久歯で歯が生え変わらなくても特に問題はないようです。
イルカは哺乳類ですが、水中で早く泳ぐことに特化しているため毛が生えていません。
胎児や生まれて間もない赤ちゃんイルカには毛が生えていますが、毛は成長に伴って抜け落ちます。
また、イルカの皮膚は一見ゴムのように見えますが、なめらかで柔らかく、弾力性に富んでいます。
その独特な触り心地は、一度触ると忘れられないなんともいえない感触です。
実はこの独特な質感の皮膚は、イルカがより早く泳ぐための秘密兵器の1つです。
そうというのも、物が水中や空気中で動くと、物の表面に水や空気の“うず”が発生します。
どんなにツルツルな物でも表面にうずができて、それが抵抗となって動きが阻害されてしまいます。
しかし、イルカの皮膚は弾力性があるため、早く泳いでも水のうずがほぼ発生しないのです。
このような仕組みを持つことによって、イルカは水の抵抗をほとんど受けることなく泳げます。
バンドウイルカは時速30~40Km、イシイルカは50Kmものスピードで泳ぐといわれています。
イルカは大切な皮膚を常に良い状態に保つため、非常に新陳代謝が早いことでも知られています。
動物には生命を維持するために細胞を常に作り、古い細胞と入れ替える仕組みがあります。
この仕組みのことを 「新陳代謝」 と呼び、全身のあらゆる細胞が日々新陳代謝を繰り返しています。
皮膚も常に新陳代謝を繰り返していて、常に新しい皮膚を作り、古い皮膚と入れ替えています。
私たち人間の場合は皮膚が作られて落ちるまでの期間は、約28~40日だといわれています。
それに対してイルカの皮膚(表皮)はなんと2時間に1回作られ、入れ替わっているといわれています。
イルカは1日に12回という驚異的なスピードで皮膚を作り、常に早く泳げる状態を維持しているのです。
イルカは海に棲む動物ですが、肺を使って呼吸をしています。
魚はエラを使い水中で呼吸ができますが、イルカは定期的に息継ぎをしなければなりません。
イルカの呼吸には口ではなく、頭の上にある 「呼吸孔」 (噴気孔)と呼ばれる器官を使われています。
これは私たち人間でいうところの鼻に当たる器官で、穴は1つに見えますが、中で2つに分かれています。
イルカは1回息継ぎをすると、しばらくの間呼吸をせずに水中に潜り続けることができます。
無呼吸のまま潜水できる時間はバンドウイルカで12分、カマイルカで6分、同じハクジラ亜科のマッコウクジラはなんと138分という記録があります。
では、なぜイルカたちはこれだけ長い間、水中に潜り続けることができるのでしょうか。
実はイルカたちの体には、水中生活に適応するためのさまざまな仕組みが備わっているのです。
イルカは血液中の酸素が減ると酸素を節約し、必要な器官にだけ酸素を送れる能力を持っています。
酸素を使い分ける能力に加え、血液中には酸素を運ぶ機能がある色素 「ヘモグロビン」 が、筋肉中には酸素を貯蔵する機能がある色素 「ミオグロビン」 が多く含まれているため、長時間の潜水ができると考えられています。
イルカの体が“海で泳いで生活すること”に特化している、ということがよくわかりますね。
ところで、 “イルカは非常に賢い動物である“ というイメージが強い方も多いのではないでしょうか。
実際にイルカの脳は非常に大きく、重量があることで知られています。
バンドウイルカの脳の重さは約1.6kgで、 「脳化指数」 (脳の重さが体重に占める割合)は0.64です。
犬 (0.14)や ネズミ (ラット・0.04)の脳化指数と比較すると、圧倒的に指数が高いことがわかります。
ちなみに、人間の脳の重さは1.4kg、脳化指数は0.89で、イルカの脳化指数は人間に次いで高いそうです。
ただ、これはあくまで脳の重さを示す値であり、数値が高い=知能が高いということにはなりません。
しかし、数々の実験の結果、イルカはとても高い知能を持っていることがわかっています。
まず彼らはショーにおいてトレーナーの指示を理解し、高度な技を繰り出すことができます。
そして「数」や「物の順序」も理解できるということがわかっています。
また、イルカは鏡を見た時、そこに映った姿を自分だと認識できている可能性が高いといわれています。
鏡に映る姿が自分だと認識するためには高い知能が必要で、認識ができるのは人間やオラウータンなどの一部の動物だけだといわれています。
イルカの脳はただ大きいだけではなく、さまざまな不思議が詰まっています。
イルカの脳は人間と同じく、右脳と左脳の2つに分かれています。
私たち人間の脳は右脳と左脳の間がしっかりと繋がっており、情報が共有されています。
しかし、イルカの脳は右脳と左脳の繋がりが弱く、それぞれが独立して働いていると考えられています。
そのため、人間と物の見え方が違うと考えられていますが、詳しいことはわかっていません。
また、イルカは右脳と左脳を片方ずつ眠らせる、 「半球睡眠」 をすることで知られています。
半球睡眠中は半分眠り半分起きている状態になるため、周囲に気を配りつつ脳を休めることができます。
これは隠れるの場所ない海に棲み、また定期的に呼吸をする必要があるイルカたちが身に付けた面白い能力だといえるでしょう。
イルカはその高い知能を使い、仲間とさまざまなコミュニケーションを取っていると考えられています。
コミュニケーション手段には音が用いられることが多く、「ピューイ」という笛のような音(ホイッスル)や「ギリギリ」という歯ぎしりのような音に加え、人間に聞こえない音(超音波)などさまざまな音を活用しています。
イルカたちはこの音を使い、仲間同士で会話をしているのではないかと考えられています。
水槽の近くで耳を澄ましていると、イルカたちが発する音が聞こえてくるかもしれません。
なおイルカは音だけではなく、コミュニケーションの一環としてボディランゲージも使用しています。
水しぶきをあげる、ジャンプをする、口を開け閉めするなどの行動にも、何かしらの意味が込められているのではないかと考えられています。
ここまではイルカたちの持つ秘密について、1つ1つ説明してきました。
イルカが海での生活に適応した、面白い動物であるということが伝わったでしょうか。
この項目では野生イルカの生態について、食べ物や寿命といった項目に分けて解説していきます。
イルカは魚類や頭足類(タコ、イカなど)、カニなどの甲殻類を捕食する肉食の動物です。
バンドウイルカは1日に10kg程度、カマイルカは1日に5kg程度のエサを食べています。
獲物は噛まずに丸飲みにしますが、魚を食べる時は必ず頭の方から飲み込みます。
なぜなら頭から飲み込めば、魚のヒレが喉や食道に刺さることを避けられるからです。
安全に食事をするために、尾の方からくわえてしまった場合も必ず向きを直してから飲み込みます。
イルカは海に生息していますが、積極的に海水を飲むことはありません。
なぜなら海水は塩分が多く、飲み込むと体のあらゆる臓器に影響を及ぼすからです。
では、イルカたちはどのようにして水分を確保しているのでしょうか。
実はイルカの食べ物には水分が多く含まれているため、水を飲む必要がないそうです。
体脂肪から水分を作り出すこともできるため、水を飲まなくても脱水症状を起こすことはありません。
イルカは基本的に群れで行動する動物です。
群れの単位は2~3頭の小規模なものから、数千頭の大規模なものまでさまざまです。
ときおり単独で行動するイルカもいるようですが、なぜ彼らは基本的に群れで行動するのでしょうか。
それは群れで行動すれば、その分天敵(シャチなど)や餌を見つけやすいからだと考えられています。
イルカの群れが協力して獲物である魚を見つけ、追い込んで上手に狩る姿がよく目撃されています。
また、イルカは違う種類同士で群れを作り、行動することもあります。
生活リズムや食べるものが違う種類同士が一緒に生活して、お互いに助け合うこともあるようです。
イルカの繁殖期や妊娠期間は、種類や生息地によって大きく異なります。
例えばバンドウイルカの妊娠期間は約12か月で、1回に1頭の仔を産みます。
イルカの仲間は全体的に妊娠期間が長く、1回に1頭の仔を産む傾向にあります。
出産時は赤ちゃんイルカが溺れないように、尾から生まれることが多いです。
イルカの子育て期間は種類によって異なりますが、おおよそ生後半年~数年ほどと考えられています。
赤ちゃんイルカは生まれた時から自力で呼吸し、母イルカの側で泳ぎ始めます。
最初はうまく泳げないため、母イルカに泳ぎや呼吸を助けてもらうことも多いです。
赤ちゃんイルカの世話は、基本的に母イルカが行います。
しかし、イルカの群れには、育児をサポートしてくれる乳母役ともいえるメスのイルカがいます。
母イルカが餌を食べに行く時は、乳母役のイルカが赤ちゃんイルカの面倒を見てくれます。
イルカは哺乳類なので、産まれてからしばらくの間、赤ちゃんイルカは母イルカの乳を飲んで育ちます。
ただ、よく考えてみるとイルカたちが暮らしているのは、塩分がたっぷり含まれた海の中です。
赤ちゃんイルカは海の中でどうやって海水を飲み込まず、乳だけを飲んでいるのでしょうか。
実は母イルカのお腹には「乳溝」と呼ばれる溝があり、その中に乳首が収まっています。
赤ちゃんイルカはその乳溝に口を突っ込んで、舌を筒のように丸めて乳首に吸い付きます。
舌には「フリンジ」というひだもあり、しっかりと吸い付ける仕組みになっています。
この仕組みのおかげで赤ちゃんイルカは海水を飲み込むことなく、乳だけを飲めるようになっています。
なお、イルカの乳は非常に脂肪分が多く、その濃さは人や牛の乳の5倍ともいわれています。
イルカの赤ちゃんは栄養分たっぷりの乳を飲み、すくすくと成長していきます。
イルカの寿命は種類や体の大きさ、性別によって大きく異なります。
代表的なイルカであるバンドウイルカの寿命は、野生下で最長40~50年といわれています。
しかし、広大な海を自由に泳ぎ回るイルカたちの寿命を、正確に測定することは困難です。
これはあくまで“最長の数値”であり、成体になる前に命を落とす個体も多いです。
なお、多くの動物は飼育下の方が長生きしますが、イルカは飼育下の方が短命な傾向にあります。
日々イルカたちの飼育環境を改善する試みが行われていますが、本来広大な海で生活する動物を水槽で長期間飼うのは簡単なことではありません。
ここまではイルカの体に秘められた力や生態について、説明してきました。
突然ですが、イルカにはどのくらいの種類がいるかご存知でしょうか?
今のところ、 地球上にはイルカの仲間が80種類ほどいる といわれています。
そして、日本の周辺ではその半数にも上る、40種類ものイルカの仲間が観察されています。
この項目では80種類のイルカのうち、7種類の生態や飼育している水族館を紹介します。
最も数が多い 「マイルカ」 の仲間。
マイルカの仲間は非常に数が多く、またイルカらしい姿形をしているものが多いのが特徴です。
バンドウイルカやカマイルカ、そしてシャチなどがマイルカの仲間に含まれています。
バンドウイルカは温帯から熱帯にかけた世界中の海に生息している、最も有名なイルカの一種です。
特徴としては全身が灰色で口先が太いこと、口元が笑っているように見えることが挙げられます。
バンドウイルカは国内の水族館における飼育数が最も多く、全国の水族館でその姿が見られます。
イルカショーにもよく登場するため、一度は見たことがある方が多いのではないでしょうか。
なお、資料によっては 「バンドウイルカ」 ではなく、 「ハンドウイルカ」 と表記されることがあります。
名前が2つある理由は定かではありませんが、どちらの名前で呼んでも間違いではありません。
水族館では「バンドウイルカ」、書籍や文献では「ハンドウイルカ」と表されることが多いです。
学名:Tursiops truncates
英名:Bottlenose Dolphin
生息地:世界中の海(温帯~熱帯域)
体長:2.2~3m
白と黒のはっきりとした模様が特徴のイロワケイルカ。
体の配色がジャイアントパンダに似ていることから、 「パンダイルカ」 と呼ばれることもあります。
イロワケイルカは地球の反対側、南米大陸の南端周辺の海域に生息している小さなイルカです。
とても活発で海面を高速で泳ぐ姿や、大きくジャンプする姿がよく目撃されています。
国内では三重県の「鳥羽水族館」、宮城県の「仙台うみの杜水族館」で飼育されています。
学名:Cephalorhynchus commersonii
英名:Commerson's dolphin
生息地:南米大陸南端周辺の海域
体長:1.3~1.5mほど
次に紹介するのは、 「ネズミイルカ」 の仲間たちです。
マイルカの仲間と比べると体が小さく、警戒心が強くて人馴れしにくい傾向にあります。
ネズミイルカやスナメリ、イシイルカなどがネズミイルカの仲間に含まれています。
ネズミイルカはくちばしが短く、つるりとした顔をしている小型のイルカです。
背中から側面にかけてはネズミ色、腹は白色で色の入り方は個体によって異なります。
マイルカと仲間と比べると性成熟が早く(3~4年)、出産をする回数が多いのが特徴です。
比較的寿命が短く(約20年)、人にも懐きにくいことから野生下での生態はあまり知られていません。
国内では北海道の「おたる水族館」、千葉県の「鴨川シーワールド」で飼育されています。
学名:Phocoena phocoena
英名:Harbor porpoise、common porpoise
生息地:北半球の温帯~寒帯の海岸沿い
体長:1.6~1.8mほど
スナメリはくちばしが短くて背びれがない、全体的に凹凸の少ない体型が特徴のイルカです。
笑っているような顔や体型はシロイルカに似ていますが、全身が明るい灰色で大きさも異なります。
野生のスナメリはインド~日本にかける、アジア地域の沿岸に生息しています。
国内では瀬戸内海から紀伊水道、北九州や富山湾、有明海などで観察されています。
スナメリは山口県の「海響館」、三重県の「鳥羽水族館」などで飼育されています。
学名:Neophocaena phocaenoides
英名:Finless porpoise
生息地:アジア地域の沿岸
体長:1.6~1.7mほど
3つ目に紹介するのは、海ではなく川で暮らしている 「カワイルカ」 の仲間たちです。
カワイルカたちは海のイルカと比べるとくちばしが長く、視力が悪いという特徴があります。
カワイルカの仲間は環境破壊や密猟の影響で数を減らし、全ての種類が絶滅危惧種に指定されています。
アマゾンカワイルカは南米のアマゾン川に生息している、カワイルカの一種です。
彼らはイルカの一種ですが、他のイルカたちとは大きく見た目が異なります。
皮膚がピンク色でくちばしがとても長く、目が小さいため、初めて見た方はイルカの仲間だと思えないかもしれません。
以前は「鴨川シーワールド」で飼育されていましたが、現在国内でその姿を見ることはできません。
学名:Inia geoffrensis
英名:Amazon river dolphin、Boto、Boutu、Pink river dolphin
生息地:南米のアマゾン川
体長:2.3~2.8mほど
ヨウスコウカワイルカは中国の長江(揚子江)に生息していた、カワイルカの一種です。
皮膚は灰色でくちばしが長いのが特徴で、平和と繁栄の象徴として 「長江の女神」 と呼ばれていました。
そんなヨウスコウカワイルカは、現在は実質絶滅したものとして考えられています。
ヨウスコウカワイルカは漁師の網に入って死亡してしまうことが多く、また川の汚染やダムの建設で生息地の環境が破壊されたことから数を減らし、2006年には種を存続できない数になってしまいました。
私たちの生活がイルカを脅かし、絶滅に追い込む可能性があることを忘れないようにしたいものです。
学名:Lipotes vexillifer
英名:Chinese river dolphin, Yangtze River dolphin, whitefin dolphinなど
生息地:中国の長江
体長:2.3~2.7mほど
最後に紹介するのは、 「イッカク」 と呼ばれる少し変わった鯨類です。
イッカクを漢字で書くと「一角」となり、名前の通り最大3mにもなる巨大な牙を持っています。
イッカクの仲間はイッカクとシロイルカの2種のみが分類されています。
ただしイッカクはクジラとして扱われることが多いため、ここではシロイルカのみ紹介します。
シロイルカは「イッカク科シロイルカ属」に分類されている唯一の動物です。
その名前の通り全身が白いことと、頭にあるメロンが非常に大きいことが特徴です。
また、体が大きいことから 「シロクジラ」 、ロシア語で“白い”を意味する 「ベルーガ」 、多彩な鳴き声を持つことから 「海のカナリア」 と呼ばれるなど、別名が多いこともシロイルカの特徴といえるかもしれません。
シロイルカは北極をはじめとした寒い海域に生息しているため、多くの皮下脂肪を蓄えています。
その皮下脂肪は10~20cmにも達するため、触り心地は非常に柔らかく、ぷよぷよしています。
国内では千葉県の「鴨川シーワールド」、神奈川県の「八景島シーパラダイス」などで飼育されています。
学名:Delphinapterus leucas
英名:Beluga、White whale
生息地:北半球の寒帯~亜寒帯
体長:4~6mほど
本記事では多くの人に愛される水族館のアイドル、イルカについて説明してきました。
1つでもイルカに関する新しい知識や発見が得られたなら、そして興味を持ってもらえたら幸いです。
イルカはその愛らしい見た目から、ファンがとても多い動物です。
しかし、その生態については意外と知られておらず、明らかになっていないことが多い動物でもあります。
もしイルカに興味が沸いたら、ぜひ最寄りの水族館に行ってみてください。
野生のイルカが気になったら、ドルフィンウォッチングやドルフィンスイムに参加しても良いでしょう。
そして、イルカが置かれている状況や、人間との間で起きている問題を調べてみてください。
イルカの生態がさらに明らかになり、人間とよりよく共存できる日が来ることを願いたいものです。
最終更新日 : 2020/10/31
公開日 : 2017/12/20