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コウモリは 鳥 のように空を飛べますが、卵生ではなく、哺乳類のように子供を産んで育てます。
その鳥とも獣とも見える姿から、昔は「空を飛ぶネズミ」と称されてきました。
イソップ童話の「鳥と獣と蝙蝠」という話でも、コウモリはどっちつかずなキャラクターとして描かれています。
コウモリは翼を使って空を飛ぶことができます。
しかし、鳥とは違い、翼に羽が生えていないことが特徴です。
薄い体毛は生えていますが、コウモリが空を飛ぶために使っているのは「飛膜」と呼ばれる薄い膜のような翼です。
モモンガ やムササビにも飛膜はありますが、コウモリは飛膜を滑空のみに使うのではなく、それを使って空を自由に飛ぶことができるのです。
コウモリの飛膜には細く伸びた指がついています。
親指のみかぎ爪のようになっていますが、人差し指から小指まではすべて皮膜と繋がっています。
カエル の水かきをイメージしていただけると想像しやすいでしょうか。
この構造によって、水を掻くように空気を捉え、自由に空が飛べるのです。
なお、飛膜の先にある唯一かぎ爪になっている親指は、体を支える時に使用しています。
コウモリは休憩する時、後ろ脚で天井にぶら下がって休みます。
当然ですが、その状態で排泄すると自分の体についてしまいます。
その時は親指で体を支え、その状態でぶら下がって排泄するのです。
また、コウモリの後ろ脚は弱く、立ち上がったりはできませんが、親指のかぎ爪と後ろ足で移動することも可能です。
そんなコウモリにはどんな種類がいるのでしょうか。
現在コウモリには1000種近くが存在し、なんとその数は哺乳類全体の4分の1を締めます。
哺乳類の中ではげっ歯類に次いで種類の多い、広く繁栄した動物なのです。
ここでは世界中のコウモリ達を紹介します。
コウモリの種類を大きく分類すると以下の3種類に分けることができます。
昆虫を食事にするコウモリは、主に「ココウモリ」と呼ばれています。
夜行性なため目が発達しておらず、体が軽くて小さな個体が多いのが特徴です。
超音波を使って、エコーロケーション(反響定位)を行うことで獲物の位置を察知します。
昆虫だけを主食にしているわけではなく、花の蜜や肉も食べる、雑食性のコウモリがほとんどです。
約1000種のコウモリの中で一番多いのが、この昆虫食のコウモリです。
また、魚を食べるコウモリもいます。
魚のみを食べるわけではありませんが、その習性から、ウオクイコウモリと呼ばれているコウモリです。
捕食の動画はこちらです。
このコウモリは体長が15cmほどと、かなり大きなコウモリです。
群れで移動し、水面の小魚を大きなかぎ爪でとらえて食べます。
頬袋があるため、そこに捕らえた魚を入れて住処にもっていって食べることが多いですが、捕らえた時に食べてしまうこともあります。
一日に30匹から40匹ほどの魚を捕まえる時もあるほどの、とても大食いなコウモリです。
動物の血を主食にするコウモリは「ナミチスイコウモリ」の2種類だけです。
森林に生息し、アフリカからヨーロッパ南部にかけて分布しています。
小さな群れでも100匹ほど、大きな群れになると1000匹を超えることもあります。
大きさは5cmから9cmほどで、あまり大きくはありません。
このコウモリの特徴は大きな鼻と鋭い牙です。
昆虫食のコウモリのようなエコーロケーション機能がないため、多種のコウモリと比べると随分と大きな鼻で獲物の赤外線(熱)を感知していると考えられています。
鋭い牙はカミソリのような鋭さをもっているため、動物の皮膚に傷をつけることに適しています。
親指が長く後ろ足も発達しているため、歩行が得意なコウモリとしても有名です。
獲物に忍び寄る際もそうですが、食事を終えた後は体が重くなってしまうため地面を歩いて移動します。
また、他のコウモリと比べて社会性が高く、空腹状態の仲間に血を分け与える「利他行為」を行います。
毛づくろいなどをして仲が良くなった個体に対して見かけられることが多いです。
昆虫や血を主食にするコウモリが「ココウモリ」と呼ばれるのに対して、果物を主食にするコウモリは「オオコウモリ」と呼ばれています。
別名として、フルーツコウモリとも呼ばれます。
果物を主食にするため、エコーロケーションでの狩りが必要ないからでしょうか。
フルーツコウモリは他種のコウモリと違い、目が大きくモモンガにも似ています。
とても愛らしい顔をしたコウモリが多いです。
また、手のかぎ爪はフックの形をしていて、その爪で植物のツルや枝を抱え、果物を食べやすくしています。
紐に果物を結び付けておくと、器用にかぎ爪を使って果物を食べる様子を見ることができます。
大きさは、20cm程度の手のひらサイズの固体が多いです。
小さな個体に限られますが、フルーツコウモリはコウモリの中でもペットにも比較的おすすめな種族。
フルーツコウモリの中には2mに達するサイズに成長する種類のものもいます。
しかし、フルーツコウモリ(オオコウモリ)はエボラ出血熱ウイルスの宿主でもあります。
そのため、食べることは禁止されているのですが、体の大きなフルーツコウモリは手軽な食料としてとても魅力的な生き物です。
西アフリカでのエボラ出血熱流行の発生源の一つでもあるギニアでは、エボラ出血熱ウイルスの媒介動物になっている、「ウマヅラコウモリ」と「フランケオナシケンショウコウモリ」がよく食べられていたそうです。
もしアフリカの現地でコウモリ料理を食べる機会があったとしても、口にしないことをおすすめします。
また、フルーツコウモリは主に熱帯に生息しているため、日本でも小笠原諸島や琉球列島で見かけることができます。
「オガサワラオオコウモリ」「オキナワオオコウモリ」「クビワオオコウモリ」の3種が確認されているようです。
天然記念物になってしまっているため、野生のものを見かける可能性は少ないと思われますが、資料館などでその姿を確認することができます。
※合わせて読みたい: オオコウモリの実態!知られざるオオコウモリの生態を徹底解説
また、フルーツコウモリの中でもココウモリ程度の大きさのとても小さなコウモリがいます。
「シロヘラコウモリ」と呼ばれるフルーツコウモリです。
白くてふわふわの体毛を持っており、大きさは5cmほどしかありません。
ヘリコニアと呼ばれる熱帯に生息する植物の裏を住処にし、夜に果物を探すという生活をしています。
写真のように、ぎゅっと固まってヘリコニアの葉の裏で過ごします。
ハーレムを形成する性質を持っており、この写真の中のシロヘラコウモリの群れは一匹を除いて他はすべて雌です。
残念なことに、森林開発でのヘリコニアの伐採による影響から、年々個体数が減少しており、今ではあまり見ることのできないコウモリなのです。
国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストの絶滅危惧種一覧にその名前が載っています。
昆虫を食べるもの、フルーツを食べる物、動物の血を吸うものと、それぞれの食性によって食べ物の捕え方も違います。
また、その食性に必要な行動によってそれぞれの機能が発達したり、衰退したりしていることがわかります。
超音波を出し、それが何かにぶつかって返ってきた反響を利用したエコーロケーション(反響定位)で獲物の位置を判断します。
ココウモリが主に使っている機能です。
様々な方向からの反響を受信することで、自分と周囲の物体の距離、または位置関係を知ることができます。
その特性により、聴覚でありながら視覚のような役割も果たしています。
ココウモリの目が小さく発達していないのは、エコーロケーションによって聴覚と視覚を併用しているからです。
そのため、コウモリの目を塞いでも意味はありませんが、耳を塞ぐとコウモリは上手く飛べなくなってしまいます。
フルーツコウモリは昼間でも活動する種類がいます。
エコーロケーションの機能がない種類のコウモリは、視覚を使って餌を探すのです。
一方、夜行性のフルーツコウモリにはエコーロケーションの能力があります。
匂いを辿って果物をたべるためか、鼻が大きな個体も多いです。
また、甘い果物のほかに、ヤシなどの葉っぱや花の蜜を食べる種類もいます。
コウモリが花の蜜を食べやすいように進化した植物なども存在します。
フルーツコウモリは果物のみを食べる可愛らしいコウモリですが、やはり地元のフルーツ農家さんたちには嫌がられているようです。
コウモリにとっては果物畑も野生で生っている果物も違いがありません。
そのため、甘い香りの強いバナナやマンゴーといった果物を食べられるという被害が多いです。
チスイコウモリは、獲物となる動物が眠っている際に吸血します。
捕食する動物は豚や牛など、大型のものが多いです。
吸血すると聞いて真っ先に思い浮かぶのは、海外で伝承として語られる吸血鬼でしょうか。
しかし、吸血鬼伝説は東ヨーロッパ独自のものですが、チスイコウモリの分布はアフリカとヨーロッパ南部のみなため、直接的な因果関係はないようです。
また、血を吸うといっても彼らチスイコウモリが血を吸う量はほんのちょっぴりです。
皮膚が薄く、血管が見える耳を食事場所に選びます。
そこに牙でほんの少し傷をつけて、にじみ出てきた血を舐めてとります。
唾液に血液を凝固させない作用があるため、舐めている間に血が固まることはありません。
吸血鬼のように、獲物を殺してしまうようなことはありませんが、何匹ものチスイコウモリが一匹の獲物を襲って衰弱させてしまうことはあるそうです。
それだけではなく、狂犬病のウイルスやその他伝染病を傷口から媒介することもあるため、チスイコウモリが分布している場所では害獣として扱われています。
コウモリが住処にしている場所は、洞窟や洞穴が多いです。
適度に湿っていて、温かく、暗い場所に集まります。
森林で暮らすコウモリは樹洞の中や、木の上を寝床として選びます。
コウモリが住処にしている場所を見分けるのは簡単です。
細長くて黒いコロコロとした糞が落ちていたら、その場所にコウモリがいると考えても良いでしょう。
しかし、コウモリが住んでいそうな洞窟や洞穴に入ることはおすすめしません。
コウモリの体から落ちたダニやノミ、コウモリの糞を食事にしているゴキブリや、それを餌にしているゲジゲジなどの益虫だけではなく、乾燥した糞が粉末状になって洞窟内を漂っている可能性が高いです。
日本では狂犬病を発症する可能性は非常に低いと考えられますが、別のウイルスや感染症にかかってしまう可能性は決して低くありません。
空気の入れ替えが頻繁に起こる家屋や、外に落ちている少量の糞ならば問題にはなりませんが、それでも手で触ることはやめた方が良いでしょう。
もしコウモリの住処を見つけても、あまり近くには寄らず、マスクなどをして離れた位置から観測することをおすすめします。
日本国内で見かけるコウモリはココウモリが多いです。
「アブラコウモリ」「クロホオヒゲコウモリ」「カグヤコウモリ」などが日本の固有種とされています。
日本で一番大きなコウモリは「オヒキコウモリ」と呼ばれています。
尻尾が長く、引きずって歩くことがあるのでそう名付けられたそうです。
こちらも昆虫を主食とするコウモリなため、体長は大きくても8cmほどになります。
この中で、私たちがよく見かけることのできるコウモリは「アブラコウモリ」です。
屋根裏に住み着くことから、イエコウモリと呼ばれることもあります。
夜行性なため、昼間は住処で休み、夕方から夜にかけて空を飛び回ります。
また、日が沈んでから2時間ほどが最も活発に行動する時間だと言われています。
辺りが暗くなってきたと感じたら上を見上げてみると、コウモリが飛んでいる姿が見られるかもしれません。
なお、多くのコウモリと同じように「アブラコウモリ」も冬眠をします。
冬になると住処で冬眠をはじめ、春ごろに目覚めます。
しかし、住処にしている場所が温かいと目が覚めてしまうこともあります。
もし冬にコウモリが家の中を飛び回ることがあったら、慌てて叩き落とすのではなく壁に張り付くまで待ってあげましょう。
翼に傷がつくと飛ぶことが大変になってしまいます。
最も、目が覚めてしまうといっても日中にコウモリが動き回ることはほとんどありません。
夜中にコウモリを捕まえたら、そっと外に出してあげてください。
近くに木があったらそこにぶら下げてあげるのも良いでしょう。
十分に日が沈んだら、元の住処に帰ってくれます。
様々な種類のコウモリたちの中で、一番飼育に適しているのはフルーツコウモリです。
しかし、手に入れることが難しい上にペットショップなどで購入すると、初期費用だけで8万円ほどかかる高価なコウモリでもあります。
そのため、今回は私たちの身近なところにいる「アブラコウモリ」の飼育方法をご紹介します。
日本に住むコウモリは保護動物に指定されています。
このため、住んでいる県の保健所や自然保護課に確認を取ってから飼育を始めてください。
飼育といっても、基本的には保護(1ヶ月程度)の扱いとなります。
ただ、お母さんのお腹から落ちてしまった赤ちゃんのコウモリや、ケガをしてしまって飛べないコウモリは、保護ではなく飼育が可能な場合が多いです。
特に、落ちている赤ちゃんコウモリは母親に拾われることなく、育児放棄されてしまいます。
巣の下に落ちてしまっているのを見かけたらすぐに保護してあげましょう。
弱ってしまっているコウモリを保護した場合は、まず体温の維持に気を付けてください。
コウモリのような小さな生き物は、体温が少し低くなっただけで命の危機に晒されてしまいます。
温めたお湯を入れたペットボトルにタオルを巻いて温度調節などをし、水分補給をしてあげるのが良いでしょう。
餌を食べるようでしたら、餌もあげた方が良いです。
アブラコウモリの餌は、先述した通り蚊やユスリカなどの昆虫です。
しかし、それをいちいち捕まえて与えるには大変な労力が必要となります。
コウモリは色々な昆虫を食べることができるので、小ぶりのコオロギやミルワームを与えると良いでしょう。
コオロギ やミルワームは、爬虫類を扱っているペットショップの多くで購入することができます。
ミルワームは魚釣りの餌にも使われるので、近くにペットショップがない場合は釣り具店でも購入可能です。
もしそれらが手に入らない場合は、生の鶏肉を細かくしたものや、牛や豚のひき肉を食べさせるという手もあります。
主食は昆虫ですが、雑食性な一面もあるため、それらを餌にしても問題はありません。
また、赤ちゃんコウモリの場合は牛乳を人肌程度に温めて飲ませてあげてください。
牙が生えてきたら昆虫を食べられるようになりますので、牙が生えてきたことがわかったらそちらに餌を切り替えると良いでしょう。
コウモリは水を口から飲むので、餌だけでなく水も用意してあげてください。
コウモリは飛んでいないときは常にぶら下がって休憩しています。
そのため、飼育する際には大きな鳥籠が必要です。
糞を沢山するので、小まめな掃除が必須となります。
鳥のケージ の下に新聞紙などを敷いておくと、掃除が簡単です。
また、コウモリには運動をさせてあげることも必要です。
1日に1時間程度を目安に、部屋の中を飛び回らせてあげましょう。
コウモリは夜行性ですから、その際には部屋を暗くすることを忘れないでください。
ただし、コウモリは飛んでいる最中にも糞をします。
運動をさせてあげる際はあまりものを置いていない部屋がいいかもしれません。
野生のコウモリは 狂犬病のウイルスを持っている可能性 があります。
幸いなことに、日本では1956年以降狂犬病の発症例はありません。
したがって、日本のコウモリが狂犬病ウイルスを持っているとは考え難いです。
ただ、万が一のこともありますし、ウイルスを持っていなくともダニやノミが体についているときがあります。
そうした面も考え、 コウモリを触る時は手袋をするか、触った後にしっかりと手を洗う ようにしてください。
基本的に、私たちの身の回りにいる蚊やユスリカなどの昆虫を食べてくれるコウモリは、益獣に分類されます。
ノミやダニを媒介することもありますが、野生の動物でノミやダニをつけていない動物はいないといっても良いでしょう。
それについて汚いと思うことなく、羽虫を食べてくれる良い生き物だと考えてください。
もちろん、家にコウモリが住み着いたことで糞やノミなどの害虫の被害が表れてしまったら、業者に頼むのが一番良い選択です。
しかし、コウモリを保護した場合は、できれば日が暮れてから自然に戻してあげてください。
飼育する場合は、上に記した情報を参考にしてもらえればと思います。
本記事が、少しでもコウモリに対する知識を深められることのきっかけになれば幸いです。
最終更新日 : 2021/05/04
公開日 : 2017/09/29