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「可愛い!」エナガの姿をみたら思わずそのような言葉が溢れそうになるはずです。
エナガと言うのは見るからに愛らしさに溢れている、小さな 野鳥 です。
その姿・形に、多くの方がメロメロになるほどです。
そっと手を伸ばして触れたくなるようなふわふわの丸っこさ。
綿を丸めたような羽毛に、くっきりと目立つつぶらな黒い瞳。
可愛いとしか表現ができない程の愛らしさを持つエナガの魅力に迫ってみましょう。
スズメ目エナガ科エナガ属に分類されるエナガ。
学名は「Aegithalos caudatus」。
英語では「Long tailed Tit」や「Long tailed Bushtit」のように表記されます。
英名にある「Long tailed」の文字の通り、エナガは尾が長い鳥として有名です。
学名のほうは長い尾をもつ「カラ類」の鳥であることを意味しています。
ちなみに「カラ類」というのは、「 シジュウカラ 」を始めとする、山野の小鳥類の総称を指しています。
エナガもそうですが、他には「 ヤマガラ 」や「ヒガラ」、「コガラ」などが含まれます。
エナガという和名の由来にも、その特徴的な尾の長さが反映されています。
歴史は遡る事、江戸時代。
すでにエナガは日本に生息しており、当時から人々の目を楽しませていました。
当時の人たちは、長いエナガの尾を見て、まるで「柄杓(ひしゃく)」のようだと表現しました。
そのため、エナガはこの時代には「エナガヒシャク(柄長柄杓)」や「オナガヒシャク(尾長柄杓)」などとも呼ばれていたのです。
確かに真ん丸な本体から長く伸びる細い持ち手というフォルムを持つ「ひしゃく」は、エナガに似ています。
上手い例えをしていますね。
そのうち、その長い名前は徐々に省略されていき、最終的には現代の和名となる「エナガ」に落ち着いたのです。
ここまでにお話しした通り、とにかく愛らしい見た目を持つエナガはどのような特徴持っているのか、ご紹介してみましょう。
体長は約14cm。
このサイズは、日本で生息する野鳥の中では最小ではないかと言われています。
大きく羽を広げた状態の「翼開長」ですらたったの16cm程度しかありません。
体重もとても軽く、最大でも10g未満、最小で5gちょっととなります。
この数字には長い尾羽も含まれますので、純粋に体長・体重をみると相当小さなサイズとなります。
同じスズメ目のスズメの大きさと比較すると、体長は同じぐらいの14cm程度ですが、当然尾羽の分エナガのほうが小さくなります。
体重もスズメは平均しておよそ24g程度あるのに対して、エナガは7g程度が平均となりますので、大きさの違いがよく分かります。
とにかく軽い、それがエナガの特徴と言えるでしょう。
冒頭でもお話ししましたが、エナガの見た目的な特徴としてわかりやすいのが「長い尾」です。
まるでひしゃくのようとは、本当によく例えたものです。
エナガの尾がどれぐらい長いかと言うと、全長が14cm程度と言うことに対し、尾だけで7~8cm程度あると言われているのです。
つまり体の半分は尾といって間違いありません。
愛らしさの象徴となる、黒くつぶらな小さない瞳も特徴的ですが、黒くとがった短く小さなくちばしも、何とも愛らしい存在です。
このくちばしの短さは、他の野鳥とエナガを見分ける時にも大いに役立ちます。
また、首の短さも他の野鳥と比べると特徴的なので、見分ける際に活用されています。
ふわふわに見える白い羽毛には、目の上から「眉斑(びはん)」と呼ばれる模様があり、それは背中まで伸びています。
背中まで伸びる模様は太く黒い線状となっています。
肩廻りと尾の下側は薄い茶褐色になっているものが多く、翼と、長く象徴的な尾は黒くなっています。
対照的に額の部分と、胸から腹部にかけては白い羽毛でおおわれています。
エナガはオスもメスも同じ形・色をしているため、見た目で性別の判断をすることは困難です。
一年中その姿を見ることができると言われているエナガですが、一体どこでその姿を見ることができるのでしょう。
生態や、生息・分布についてお話ししましょう。
エナガは一般的に「平地」から「山地」にかけての林に生息しています。
しかし、林のような大掛かりなものでなくても、木が多い公園や街路樹でもその姿を見ることが可能です。
エナガの分布は、ユーラシア大陸の中緯度地方を中心としています。
ヨーロッパや中央アジアから日本にまで、分布は幅広くなっています。
日本では、主に九州以北で生息しています。
ですので、その姿を見ることができる範囲はかなり幅広くなります。
渡り鳥区分は「留鳥(りゅうちょう)」となり、同じ場所で一年中生息し、そこで繁殖や子育てを行います。
固体によっては「漂鳥(ひょうちょう)」のように季節的に移動するものもいます。
「漂鳥」タイプのエナガは、山頂部に生息しているものが、越冬するために低地となる里山に降りてくることがあるので、それを指しているのでしょう。
繁殖期以外は、10羽前後の群れで生活をし、共同の巣となる「ねぐら」を作ってそこで眠りますが、繁殖期にはいるとつがいで行動を始めます。
一般的に繁殖期といえば春先が多くなりますが、エナガは少し早く、2月に入るころにはつがいで行動を開始します。
当然2月ごろといえばまだまだ寒いので、巣の中を暖かくするための工夫をこらします。
外側の材料にはコケやクモの糸を使用。
巣の内側は、温かくするため羽毛で覆います。
これらの材料で巣をつくるので、繁殖期のエナガの巣はとてもやわらかくクッションのようになります。
このような巧みな巣作りをおこなうことから、「タクミドリ」とも呼ばれるようになりました。
1度に7~12個の卵を産み、托卵期間はおよそ12~14日程度です。
そして1か月もすれば、雛の姿を見ることができます。
エナガの雛は、14~17日もすれば巣立ちを行います。
スズメなどもこれぐらいの期間で巣立ちますので、それほど早い期間ではありません。
しかし、エナガの雛は無事に巣立つ確率が大変低くなっているのです。
そこで行われる独特の子育てが「ヘルパー」と呼ばれる存在がおこなう子育てです。
エナガ自体とても小さな野鳥な為、当然雛も小さく弱い存在となります。
そのような小さく弱い個体は、ささいな悪天候でも命の危機にさらされます。
また、カラスや イタチ や ヘビ のような外敵に常に狙われていて、巣の中にいても襲われてしまいます。
それは卵の時代から始まり、雛になっても続きます。
そこで登場する子育てヘルパーたちは、少しでもエナガの雛を長生きさせるために、子育てに参加します。
子育てに参加するエナガは、繁殖に失敗したオスが多く、雛の親となるつがい以外が巣まで餌を運んでくれたりするのです。
つまり、よその子の世話をみんなでおこなう育児方式と言うわけです。
このことから、エナガの子育てには「ヘルパー」が存在するという言い方をする様になりました。
エナガ以外にもシジュウカラなどにも同じ習性があります。
自分たちで種の存続・保存をおこなう大切な知恵をつけているのです。
エナガのさえずりは少し甲高く、「チーチー」、「ツリリ」、「ジュリリ」などと表現されます。
繁殖期以外に発する「地鳴き」は「チュリリ」、「ジュリリ」と表現されることが多いです。
小さな野鳥は、猛禽類の「ハイタカ」や「ツミ」「モズ」などの格好の餌食となります。
それらに捕食されてしまう事を避けるため、外敵を察知すると「ツリリリリ、ツリリリリ」という「警戒発声」と呼ばれる鳴き声を行います。
小さく愛らしい、野鳥界のアイドルですが実は結構勇敢なのです。
体が小さい種は、悪天候や外敵に捕食されてしまい、あっという間に命を落としてしまいます。
そのような野性を生き抜くには「警戒心」はなくてはならないものなのです。
しかも、その愛らしい見た目とは相反して、エナガはなかなかの気性の荒さも持ち合わせています。
人間や外敵がテリトリーに近づくと、先ほどご紹介した警戒発声を開始して、相手を威嚇し始めます。
同族同士の縄張り争いもかなり熾烈なものとなり、エナガ同士が空中でホバリングをしながら体同士を激しくぶつけ合うこともあるようです。
カラ類に属するエナガは、冬になるとその他のカラ類の野鳥と群れを成すこともあります。
「シジュウカラ」「 ヤマガラ 」「コガラ」「ヒガラ」などがカラ類に当たりますが、この時期はカラ類以外となる「 メジロ 」や「コゲラ」「キクイタダキ」のような野鳥とも同じ群れになることがあるのです。
警戒心が強いはずのエナガが、なぜ他の種類の野鳥と群れを成すのか。
これは「混群(こんぐん)」と呼ばれる生態の一つです。
種の垣根を乗り越えて、共に生活をすることで、天敵から捕食されることを最小限にするために「混群」は行われているのではないかと言われています。
絶対数が増えることで、警戒する力も相乗効果で増えていきます。
群れの中の1羽でも外敵に気づけば、すぐさま警戒発声をおこないます。
そうすると、一瞬で群れ全体が警戒モードに入るという仕組みです。
弱い個体が多く、雛の生存率も低いエナガは、自分たちだけでは冬を越すのは難しいと判断したのかもしれません。
また、生きぬくためにはエサが必要になります。
この混群している野鳥たちは、比較的同じ木にいてもエサをとる環境が異なっているのです。
エサをとる環境が少しでも違えば、同じ群れにいてもエサの取り合いを最小限にすることができるのです。
もちろん、それでもエサの取り合いになることはありますが、問題がないレベルと言えるでしょう。
日本に生息するエナガの亜種は4種類と言われています。
他のエナガにはどのようなものがいるのかを紹介してみましょう。
主に北海道に生息するエナガの亜種です。
SNSで大人気の「コウペンちゃん」のお友達である邪な鳥こと「(よこシマ)エナガさん」は、この「シマエナガ」です。
水たまりと邪(よこシマ)エナガさん pic.twitter.com/xKBh8A91Ev
— るるてあ (@k_r_r_l_l_) October 19, 2017
真っ白なその姿は「雪の妖精」と称されるほどで、ファンが多く存在します。
北海道でしかその姿を確認することはできないため、わざわざ北海道まで合いに行く愛好家がいるほどなのです。
ちなみに「シマエナガ」は漢字で書くと「縞柄長」ではなく「島柄長」となります。
この「島」というのは「北海道」を意味しています。
四国と九州でその姿が観測されているのが「キュウシュウエナガ」です。
名前の通りの生息地と言うわけですね。
見た目は普通のエナガと全く違いはありません。
生態や性格、特徴などにも変化は無く、生息地が異なるということぐらいしか分かっていません。
こんなに可愛いエナガを、ぜひペットとして飼ってみたいと思われる方もきっとおられるでしょう。
ですが、野鳥といえば飼育が禁止されているケースが多々あります。
そんな中、野鳥であるエナガはペットとして飼育することはできるのでしょうか。
また、飼育できるとすれば価格や、飼育方法についても気になるところです。
残念ながら、多くの野鳥と同じようにエナガも「捕獲」や「保護」が法律で禁止されています。
飼育や保護が可能なのは、研究目的として然るべき許可を得ている場合のみとなっています。
ですから、ペットとして購入することもできなければ、捕獲してしまうと法律で罰せられてしまいます。
野鳥の保護に関しては大変デリケートな問題で、道端で瀕死になっているエナガを見かけても、無断で保護してはいけないルールになっています。
目の前で苦しんでいるエナガを見ても、すぐになんとかしてあげられないのは心苦しいものです。
しかし、ルールはルールなので、道端や庭などで動けなくなっていても勝手にその場から連れて行かないようにしてください。
保護が必要なエナガを見つけたら、すぐにでもお住まいの市区町村の担当部署に連絡をしてください。
そこで指示を仰いで、保護していいのかどうかを判断することとなります。
この担当部署は「農林担当課」や「環境科」など、市区町村によって異なりますので、代表に電話をして確認をするしかありません。
市区町村の公式サイトなどに、野鳥の保護に関する記載がある可能性もありますので、それをチェックするのも良いでしょう。
飼育も保護もできないとなると、自然と遭遇するしか可能性はありません。
普通のエナガであれば、野鳥園などで飼育されていることもありますので、そこでエナガの姿を見ることが可能です。
しかし、エナガの亜種の「シマエナガ」は、ほとんどの野鳥園や動物園では飼育されていませんので、北海道にバードウォッチングにいくしかありません。
北海道にお住まいの方以外は、シマエナガを見る確率はほぼないと考えておきましょう。
ただ、シマエナガ以外のエナガであればチャンスがないわけではありません。
それが「餌台」です。
「餌台(バードフィーター)」とは、自宅の庭などに自作の餌場を用意し、やってきた野鳥を観察することを目的にするものです。
この餌台を用意することで、飼育や保護が禁止されている野鳥を、身近に観察することができるようになります。
それぞれの野鳥の好みや特性に合わせた餌台やエサを用意することで、野鳥を愛でることができるのですが、いろいろと問題もあります。
鳥 の鳴き声や、糞害などで近所迷惑になることも多々あります。
また衛生管理も徹底しておこなわなければ、野鳥に感染症を広めてしまう可能性もあるのです。
ネットで「餌台」と検索すれば、さまざまな創意工夫を凝らして、お庭でのバードウォッチングを楽しんでいる方が多く出てきます。
それらを参考に、お庭であなただけのバードウォッチングスポットを作成してみることで、エナガに会える確率がアップします。
ですが、エナガは警戒心が強いとことがあるため、餌台を作ってもなかなかその姿を現すことはありません。
冬になると、山からおりてくるエナガもいますので、その子たちが気まぐれでやってくる程度だと考えておきましょう。
それでも可能性はゼロではありませんので、どうしてもエナガに会いたいという方は頑張ってみてください。
運が良ければあなたが作った餌台を、エナガが縄張りにしてくれる可能性だってあるのです。
エナガは体が小さいので、小さな虫や小さな果実をよく食べます。
虫の卵なども好んで食べるようです。
特にアブラムシが好物だと言われています。
しかし現実的に餌台に虫を設置するのは困難を極めます。
ですので、小さくカットした完熟の果物がおすすめです。
秋だと完熟した柿などがうってつけです。
冬場は木から出る樹液が好物と言う習性を利用して、メープルシロップなどもおすすめです。
意外に脂っこい物も好むようなので、冬季限定ではありますが、牛や豚の脂身を置くのも良いでしょう。
くちばしが小さいので穀類や、大きなサイズの果実を噛み砕くことができませんので、与える際は注意が必要です。
小さくて可愛いが大渋滞してしまう見た目を持つ「エナガ」についてお話ししてみました。
こんなにも可愛いのに、警戒心が強く、人間の前に滅多に表れないせいで、認知度が低い野鳥です。
せっかくの愛らしいエナガを知らないなんてもったいないことです。
ペットとして飼育することはできませんが、その姿を見るだけでもかなり幸せな気分になれます。
また北海道に生息するシマエナガなどは最近静かなブームとなり始めています。
可愛いグッズや、写真などが多く出てきていますので、これを機会に森の妖精・エナガについてもっと関心を持っていただければ幸いです。
最終更新日 : 2021/04/08
公開日 : 2017/10/28