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冬になると、どこかからその声や姿を見かけることがありませんか?
木の枝と枝の間をちいさくぴょこぴょこと跳ねるように飛びまわっている 鳥 がいたら、それは「メジロ」かもしれません。
美しい形容しがたい緑色のボディは、冬の澄んだ空気やまぶしい朝の光によく映えます。
緑色というよりは「うぐいす色」と表現するほうが適切でしょう。
特徴の一つである、目の周りを縁取る白い輪は、なんともいえない愛らしさで、見ているだけで心が和んでいくようです。
今回はそんなメジロの生態や歴史などについて詳しく見ていきましょう。
メジロの体長はおよそ12cm程度で、実はスズメよりも小さな鳥です。
翼を最大限に広げても18cm程度が平均というのですから、かなり小さめのサイズといえるでしょう。
顔から背中に掛けては緑色で、お腹の部分は灰色がかっており、羽は黒味を帯びた褐色をしています。
メジロというと緑色のイメージが強いですが、実はパーツによって色の差がかなりあるのです。
基本的にオスもメスも色に大差はありませんが、少しだけ違いがあります。
オスは顔の前側の部分と、羽の付け根の部分にある「下尾筒(かびとう)」の黄色味がメスよりも強く出ています。
お腹の中央あたりに黄色い線があるのもオスの特徴ですので、見分ける時に役立ちますよ。
目の周りの白い部分も、細かな羽毛の集合体となっています。
しかし、この部分は自分では掻くことができないので、一緒にいるパートナーに掻いてもらうようです。
「パートナー」というキーワードも、メジロを語る上では重要な存在です。
メジロは夫婦愛が大変強いと言われており、基本的につがいで常に行動します。
一緒に餌を探したりしている姿は、なんとも微笑ましいものです。
片方が 餌 を食べているときは交代で周囲を警戒したりして、互いを労わりあい助け合って生きています。
一度つがいになると、その関係は生涯続くこととなり、まさに運命共同体となるのです。
見た目の特徴としてさらにあげられるのが、鋭くとがった細長いくちばしです。
このくちばしは花の蜜を吸うのに最も適しています。
日本での歴史は室町時代までさかのぼり、当時からすでに「メジロ」の愛称で親しまれていました。
漢字で書くと「繡眼児」となるそうです。
英名では「Japanese White-eye」と呼ばれており、「White-eye」とは、目の周りにある白い輪の部分が由来しています。
これは中国での呼び名となる「繡眼鳥」も同じ由来となっているので、メジロの特徴として世界中で認識されていることを表しています。
うぐいす色のボディのせいか、ウグイスと間違えられることが多いようです。
しかし実際のウグイスはメジロとは似ても似つかない姿をしています。
どちらも美声が魅力的ではありますが、その鳴き声も全く異なるのです。
ウグイスは「ホーホケキョ」や早い時期だと「チャッチャッ」と鳴くのに対し、メジロは「チーチー」や、「ピーピー」のように愛らしい声でさえずります。
体の色もウグイスは「ウグイス色」と形容されるような深みがある独特な緑色ではなく、どちらかといえば緑色がかった茶色なのです。
それでもなぜかメジロはウグイスと間違えられてしまいます。
その理由はひとえに和菓子の「ウグイス餅」の色味から来ているようです。
パートナーとの話の中で、片方が食事をしているときは、もう片方が周囲を警戒することに触れました。
このことからもわかるように、メジロは大変「警戒心」の強い鳥なのです。
体が小さいメジロは、自分たちより大きいヒヨドリなどに迫害されがちです。
せっかく落ち着いた場所を見つけても、追い出されてしまうこともしばしばなのです。
猛禽類に狙われることも多いため、警戒心が強いだけでなく、自分たちを守るために他の鳥たちと群れをなすこともあるようです。
冬の間などは「エナガ」や「シジュウカラ」、小さなキツツキである「コゲラ」などと群れをつくっていることがあります。
このようなさまざまな鳥が群れをなすことを「混群」と呼びます。
小さくか弱い鳥たちは、混群することで、警戒心を高め、周囲への注意をおこなう目を増やしていきます。
こうして協力しあい、仲間と共に生活しているのです。
メジロは基本的に「雑食」とされていますが、花の蜜などを好むことでも有名です。
花の蜜はどちらかといえばメジロの大好物にあたるため、花が咲く時期に合わせて活動をします。
梅や椿の花が咲くころから姿を見せ始め、ソメイヨシノが咲き始めると、スズメやヒヨドリと共に一斉に集まってきます。
群れで行動することがメインですが、繁殖期には基本はつがいで行動することが増えてきます。
非繁殖期には、山地から平地に移動している姿を見かけますが、繁殖期になると2羽で花の間を飛び回る姿が目撃されます。
体が小さく、狙われることが多いメジロは、眠るときも集団で固まって枝にとまる習性を持っています。
これがなかなかのギュウギュウ具合で、この状態から「目白押し」という言葉が生まれたと言われています。
少しでもくっつくことが大切なのか、夕方ごろになると、我先にとかたまりの真ん中に陣取ろうと割り込んでくるメジロを見ることができますよ。
あの特徴的な尖ったくちばしで、上手に花の蜜を食べます。
くちばしから蜜を吸うために出る舌は、まるで書道の筆の先端のようになっているので、その舌を花蜜に差し込み、含ませるように蜜を味わいます。
甘い蜜を好むという点から、庭などにエサ台を設置する際は砂糖水などの甘い液体を置いてやると、よく集まってくるでしょう。
こんなにも花の蜜を好むことから、一部の地域では「はなすい」や「はなつゆ」などの別名で呼ばれることもあるようです。
メジロの分布図は幅広く、日本では寒冷地を除けば全国でその姿を確認することができます。
しかも、低地から山地までと、幅広いエリアで生息しています。
基本的に花が咲くところにメジロありと考えておくと間違いなさそうです。
市街地の自然豊かな公園などでもその姿を観察することができます。
メジロの渡り区分は、季節により移動をすることのない「留鳥(りゅうちょう)」となっています。
ですので、一度メジロを見かけた場所には、再度メジロを確認できる可能性が大変高くなります。
ただし、暑さや寒さによって低地や山地を移動する習性もありますので「漂鳥(ひょうちょう)」な部分も持ち合わせています。
暑い夏場は山地で子育てなどをおこない、気温が下がり始めると温かさを求めて平地に下りてきます。
しかしその距離はそう遠く離れているわけではないということです。
世界的に視野を広げて生息地を見てみると、日本を含む「東アジア」一帯~東南アジアにまで分布しています。
ハワイ諸島でもメジロの姿が目撃されているようなのですが、こちらは日系の移民の方がペットとして持ち込んだものが逃げ出したのではないかと言われています。
メジロの美しい鳴き声は、江戸時代から人々を魅了してきました。
その鳴き声を競わせるかのように行われていたのが「鳴き合わせ」というものです。
メジロの甘く愛らしい鳴き声を競わせて遊ぶと聞くと、なんとも雅な香りがしますね。
しかしその美声が、人々を驚くほど魅了してしまったのです。
話はさかのぼること、2015年に愛知で起きた事件でした。
その事件では22人ものメジロを飼育していた愛好家が書類送検されたのです。
メジロを飼育している愛好家たちは一体何をして書類送検される事態になったのでしょう。
それが先ほどお話しした「鳴き合わせ」なのです。
読んで字のごとく、メジロの鳴き声を競う競技を「鳴き合わせ」といいます。
まず「サシコ」と呼ばれる竹かごにメジロを入れ、かごごと黒い布で覆います。
そのまま競技を行う台の上に置き、両者一斉に覆っていた布をはぎ取ります。
一定時間内に自分のメジロが何回鳴き続けることができるかで勝敗は決まります。
勝ち上がっていくメジロには、まるで相撲の番付のように「横綱」「大関」などと決めていくことも有名です。
当然「横綱」級になると、何百万という買値がつくことになり、高額売買されていました。
この高額売買などを含み、鳴き合わせ会は賭博要素が強い遊びとして、つい最近まで行われてきたのです。
22人は「鳥獣保護法違反」の疑いで書類送検されました。
メジロは現在「野鳥」として認定されており、捕獲することも、ペットとして飼育することも法律で禁止されています。
それが「鳥獣保護法」で定められているルールなのです。
書類送検された22人は、鳴き合わせで勝てるよりよいメジロを求めて、メジロの捕獲を繰り返していたのです。
この鳴き合せの会で過去に優勝したメジロは、3分間でなんと700回も鳴いたと言われています。
みんながみんな、そのように甲乙つけがたい鳴き声を奏でてくれればよいのですが、そうはいきません。
勝てないメジロやあまり鳴かないメスは、処分されるという悲しい出来事も起こっていたのです。
この時保護されたメジロたちは、京都市にある「全国野鳥密猟対策連絡会」などがきちんと鑑定をおこない、その後、事件のあった愛知県内の野鳥園で離されることとなりました。
メジロのような、見た目や鳴き声などから、ペットとして飼育をしたいと考える人は少なくはないでしょう。
しかし、メジロは野鳥として認定されているため、捕獲や飼育は原則禁止とされています。
野鳥の捕獲や飼育がだめな理由は、自然の生態系を守るのが第一の目的です。
人の手がむやみやたらに自然の中に入ってしまうことは、共存するうえであまり望ましいことではありません。
また、捕獲しすぎることで適正数が減ってしまい、最悪の場合絶滅への道をたどる可能性も出てきてしまいます。
もちろん、あくまでも「原則禁止」と掲げていますので、研究目的である場合や、メジロなどの野鳥による生活被害を防止するなど、正当な理由があれば、各都道府県知事の許可を得ることで、捕獲をすることは認められています。
ですが、やはり愛玩目的での捕獲は環境省の基本指示に基づき、密猟などを防ぐためにも、おこなってはいいけないことになっています。
メジロは野鳥として認定されていますので、許可なく捕獲や飼育をおこなうことは「鳥獣保護法」により禁止されています。
しかし、ケガなどで問題が起こっている場合に、そのメジロを保護することには問題はあるのでしょうか?
結論から先にお話しすると、どのような状況であれ、メジロなどの野鳥を無断で保護することは禁じられています。
もし、道端で身動きが取れないなど、不測の事態に陥っているメジロなどの野鳥を見つけたら、まずは各都道府県の役所にある「鳥獣保護課」に連絡をしてください。
これは「動物愛護管理法36条」に基づき決められているルールなのです。
36条の文章そのままですと、各都道府県の知事に連絡してからとありますが、実際は先ほどお話しした役所の「鳥獣保護課」で問題ありません。
ケガなどの不測の事態が起こっているメジロを、助けてやりたい一心で保護して自宅に連れて帰ることは、自己の「支配下」にメジロをおくこととみなされます。
これは保護ではなく、無許可の「捕獲」になってしまうのです。
メジロが可哀そうだと思い、保護して助けてあげたいという気持ちは素晴らしいことだと思います。
そのような人の優しさが、彼らが絶滅するに至るのを防ぐ結果に導いてくれるのです。
しかしルールはルールなのです。
許可なき捕獲には、それ相当の罰則もありますので、まずは役所に連絡いれることから始めましょう。
メジロなどの野鳥を、しかるべき許可を得ることなく「捕獲」すると以下の罰則が適用されます。
それは「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」です。
かなり重い罪ですね。
また、許可がないのに飼育していた場合は、「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に処せられます。
無断で保護をしてはいけないのには、私たち人間を守るためでもあるのです。
もし、その怪我をして弱っているメジロなどの野鳥が「鳥インフルエンザ」などの感染症をもっていたらどうなるでしょう?
100%感染するわけではありませんが、全く感染しないわけではありません。
少しのことがきっかけで、パンデミックに陥った歴史は少なくはないのです。
私たち人間と、メジロたちのような野鳥が共存していくためには、未然に防ぐためのルールも必要なのです。
ここまでお話ししてきたとおり、メジロは「野鳥」なので、捕獲・飼育することはできません。
もちろん、ペットショップなどでも売られていませんので、基本的に正式なルートで手に入れることは不可能なのです。
では、どうすれば、メジロと暮らすことができるのでしょう?
それは「観察」です。
飼うことはできませんが、ご自宅の庭に遊びに来てもらって、それを見て楽しむぐらいなら問題ありません。
もちろん、この方法もやりすぎは禁物です。
限度と節度を守って、メジロたちに庭へ遊びに来てもらいましょう。
「バードハウス」と呼ばれる、野鳥の餌場となる場所を提供してあげることで、できるだけ自然に近い形にすることがポイントです。
しかし、メジロ専用とするのはやはり難易度が高く、メジロのために用意していたエサをヒヨドリなどの他の野鳥に取られてしまうのです。
そのためにメジロ愛好家の方々は、あの手この手と試行錯誤を繰り返しながら、メジロを招くエサ台を作成しています。
メジロは蜜が大好きなので、果物をエサとして設置しておくとよいでしょう。
そのためには、テーブル型の平たい台を設置し、その上に置くのがベストです。
しかし、他の野鳥がやってきて、メジロのための果物を横取りされてしまうかもしれません。
それはそれで自然の営みのなせることなので、仕方ないと言えばそうなのですが、できればメジロにとお考えの方にはこんな方法はいかがでしょう?
木の枝や竹ひごを使い、鳥かごのような形のものを、平たいエサ台の上に設置する形はいかがでしょうか。
中に果物を置いても、他のメジロより大きめの野鳥が入れないような間隔にして竹ひごを並べるのがポイントです。
もっと簡単な方法だと、細かい木の枝や、竹ひごの先端に果物を指しておく方法や、数mmレベルの細かい網目のネットを用意し、その中に果物を入れて吊るしておくのも有効です。
コチラの場合は、「メジロ専用!」とはいいがたいですが、ある程度は小さめの野鳥向けにエサを与えることができるでしょう。
メジロの場合は、リンゴやミカンなど、蜜の多い果物が喜ばれます。
カットしたものをそのまま置いておくのもよいですが、すりおろしたものを容器に入れて設置するのもオススメです。
100均で購入できるような「ザル」2つを上下にくっつけて、片方にメジロが入るための入り口を作って吊るすなど、お手軽な材料で作成できるので、お庭のある方はぜひ一度試してみてください!
くれぐれも注意すべきことは、やりすぎないことと近隣への配慮です。
鳥の鳴き声や糞の問題などもありますので、くれぐれも注意するようにしましょう。
メジロの生態や、歴史、捕獲や飼育について、詳しくご紹介してみました。
野鳥であるからこそ、無理に手に入れるのではなく、ありのままの姿で花の間を飛び回っている姿を観察することに意味があるのです。
昨今では、中国から輸入された「ヒメメジロ」を飼育する方もいるようですが、ヒメメジロも立派な「野鳥」です。
ルールの隙間をかいくぐってまで、捕獲・飼育することはしてはならないことなのです。
可愛い鳥たちを、人間のエゴで配下におかないことも、愛鳥家のやるべきことではないでしょうか?
あるべき姿、それこそが、本当のメジロたちの魅力を堪能できること以外には他ならないのです。
公開日 : 2017/08/21