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砂漠の天使。
その姿を見た人は口をそろえてこう呼びます。
それほどまで愛らしいと言われている「スナネコ」は、砂漠の天使と言う名を持つとおり、砂漠エリアに多く分布しています。
中東の砂漠のある場所にスナネコありと言わんばかりの集中型の分布となっています。
スナネコは和名となっており、英名はそのま英語にして「Sand cat」、学名は「Felis margarita」とされています。
食肉類の食肉目ネコ科ネコ族に分類されています。
体長は約45~57cm、平均的な体長は50cm程度で、一般的な猫と比べると小さめの 猫種 です。
体重は1.8kg程度の物から、大きなもので3.6kgとやはりこちらも一般的な猫と比べるとかなり軽量タイプと言えます。
尻尾の長さは平均するとおよそ20cmとなります。
ちなみに一般的な猫の尻尾の平均サイズが30cm程度となりますので、ミニマムな体格どおり尻尾も少し短めと言えるでしょう。
ただし、生息エリアが西から東のほうへ進むにつれ、サイズが大きくなる傾向があるようです。
見た目は背中部分が明るい灰色がかった黄色をしている「灰黄色(はいこうしょく)」をしており、8~9本の横じまが入っています。
この横しま模様が、スナネコの愛らしさをアップするトレードマークの一つと言えるでしょう。
毛の色は基本的には茶色っぽい黄色ですが、よくみると青白い線がいくつも走っています。
しかしこの青白い線は、はっきり出ている子もいれば、ほとんど見えない子もいると言われています。
尻尾の先端は黒くなっていて、先端に近づくと黒いわっか状の模様が入っています。
スナネコのもっとも大きな特徴が、頭部のつくりです。
スナネコの頭部はとにかく幅広く、耳が大きくとがっていて、まるでキツネのような印象を受けることでしょう。
外に飛び出している耳の部分(耳介)は、大きな三角形でこちらも幅広いのが特徴です。
またその耳は頭の両脇の低い部分に離れて位置することから、ますます愛らしさが際立ちます。
ただ、このように離れて耳がついていることから、キツネとは異なった印象をうけるようです。
耳の内側はフサフサで長い体毛でおおわれています。
これは砂漠で生きるスナネコならではの特徴で、この長い体毛があることで、耳の中に砂が入ってくるのを防ぐ役割を果たします。
ちなみに、足の裏も長い体毛でおおわれており、暑くなる砂漠での活動に適応するためにそうなったと言われています。
なにせ砂漠の砂は日中摂氏80℃にもなるので、このような適応した特徴がないと、歩くだけで大やけどをしてしまいます。
また、足裏の毛があることで、砂場を歩く際足が砂の中に沈み込むのを防ぐ役割も果たしているのです。
赤ちゃんの頃のスナネコの体には斑紋(はんもん)と呼ばれるぶち模様がはっきりと表れています。
まるでチーターやヒョウのようなその模様は、なぜか大人になるにつれ薄くなっていきます。
やんちゃそうな見た目と相反し、実はスナネコはとてもおとなしい性格だと言われています。
またかなり臆病なところももっています。
そのせいか人間にはほとんど懐くことは無く、野性味の強い性質をもっています。
一般的なネコ科の動物と同じく、繁殖期以外は単独で行動するスナネコですが、繁殖期に入るとつがいを探すため甲高い声で鳴くようになります。
この甲高い声でオスが鳴くことで、メスに自分の居場所を伝えます。
その声を聴いたメス猫はオスの元へ現れるというのが繁殖までの流れです。
ここで注目したいのがスナネコの類まれなる高い聴力です。
スナネコは聴力が大変優れていることで有名です。
ですので、メスのスナネコはかなり遠く離れたオスのスナネコの声をはっきりと広い、場所を的確に突き止めることができるのです。
ちなみにこの聴力は繁殖期以外でも役立てており、地中にいる獲物の些細な音を聞き取るなど、狩りの際にも役立てています。
スナネコの妊娠期間は、一般的な猫と同じく59~67日程度、おおよそ2か月間です。
繁殖期も春先となる3~4月ごろが最も多くなりますが、地域の変異などで1~4月と変動があるようです。
あまり詳しい生態が分かっていないため、繁殖期は年に2回あるのではないかと言う説も出ています。
1度の出産で3匹程度産まれますが、多い時は8匹近く産まれる場合もあるようです。
野生環境で生きる動物はあまり 寿命 が長くありません。
しかし、性格的に人に慣れることがほぼないスナネコですから、飼育下での寿命などのデータはまだまだ不足しているようです。
その中で見えてきたスナネコの成長・寿命に関してお話ししてみましょう。
野生下で生きるスナネコの成長は早く、生後9か月から14か月には成熟した大人になります。
飼育下では最大14年以上生きたものもいますが、おおよそが生後10年を過ぎるまでに死亡しているようです。
これは飼育下で育てられた700頭程度の個体から得たデータによるもので、生後30日までの死亡率が約30%、そこからさらに13%が1年以内に死亡しています。
それを越えられると生後10年までの死亡率は10%と低くなるのですが、飼育下でもここまでたどり着くのは至難の業のようです。
やはり小さい個体と言うのは短命であることが、この数字から見えてきます。
スナネコの生態を見た時、砂漠の猫であることが如実に表れるのが、活動する時間帯です。
砂漠に生息するスナネコは、暑い時間帯となる日中は活動を行いません。
それは熱された砂漠の砂が命取りになるからです。
もちろん、すさまじいまでの日光も危険です。
そのため、スナネコは基本的に夜に活動を行います。
ネコ科の動物は夜行性であるので、砂漠の 猫 だからというわけではありませんが、スナネコが夜行性であることは理にかなっています。
暑い日中は自分たちで作った巣穴や、岩陰に身をひそめ暑さや外敵から身を守ります。
巣は自分たちで作ることもあれば、キツネやヤマアラシの仲間たちが作り、その後使われなくなった古巣を再利用することもあります。
過去には、カラクム砂漠で入り口が1つ、奥行きが3mにも達するスナネコの巣が見つかったこともあります。
肉食獣となるスナネコは、砂漠に住む「げっ歯類」をメインに食べて生活しています。
時にはケープノウサギの幼獣を食べることもあるそうです。
またスナヒバリや、ハシナガヒバリなどの鳥類、サバクオオトカゲやヘリユビカナヘビ、スナトカゲ、スナクッリヘビなどの爬虫類や昆虫も食べます。
小型の種であるため、食べられるものは何でも食べていかないと体力を温存できないのでしょう。
生息エリアによって、メインになる食べ物は異なるようで、「カクラム砂漠」では半数以上をオオスナネズミなどのげっ歯類が占め、「キジルクム砂漠」に生息するスナネコたちは、その8割以上が「オオスナネズミ」のみを食べて暮らしているという報告例もあります。
砂漠に住む生き物の食事で、最も気になるのはやはり「水分」です。
水分の摂取量の多い少ない関係なく、すべての生き物は水分なくしては生きていくことはできません。
スナネコも当然水が飲める環境にいれば、その水を飲み水分補給を行います。
しかし、砂漠にそうそう水が飲める場所があるわけではありませんので、基本的には水分は食物から摂取することとなります。
これは砂漠に住む生き物、すべてに共通することです。
スナネコの敵となるのは、同じ行動時間帯に活動する大型の猛禽類や食肉類系の哺乳類などがあげられます。
また、同じように大型の ヘビ などにも狙われやすくなっています。
小型のスナネコは、大型のヘビを前にすると、ひとのみされてしまうと言っても過言ではないのです。
スナネコの子どもに至ってはさらに小さな固体となるわけですので、これらの敵に狙われやすくなります。
子猫 たちは「アカギツネ」や「ワシミミズク」などにも襲われるリスクがあります。
その姿を見つけるだけでも至難の業であるスナネコは、絶滅危惧種として登録されています。
世界中に絶滅の危機にさらされている猫の種は30種類近くおり、スナネコもその中の一種となっています。
放牧などから起こった生息地の破壊や、それに付随してスナネコの食料となる獲物が激減してしまったことや、内戦などが絶滅に至る大きな原因としてあげられています。
とくに1990年後半に行われた「地下核実験」のせいで、スナネコ達の生息地が大きなダメージを受けました。
また、人為的に移入してきた犬や他の種の猫から捕食されてしまったり、感染症を伝搬されてしまったこと、キンイロジャッカルと言うキツネ類の動物を捕獲するための罠につかまってしまうなども、絶滅への影響になり兼ねないと懸念されています。
当然、密猟も絶滅に至る原因の一つになりえると言われています。
環境の変化に適応できずイエメンやイスラエルなどでは、ある時より生息した記録がなく恐らく絶滅したのではないかと言われています。
イエメンが1952年以降、イスラエルでは2000年以降、中央アジア南西部に位置する共和国「トルクメニスタン」のカラクム砂漠ではすでに25年以上その姿を観測することはできていません。
スナネコの存在自体、世界中を全て見ても、120匹程度しか生息している記録がありません。
これはあくまでも保護下での個体数なので、実際はもう少し生息しているのかもしれませんが、数の少ない貴重な動物であることがわかります。
現在はアラビア半島にある「アラブ首長国連邦」を構成する首長国「アブダビ」にある、「アル・アイン動物園」が中心となり、保護したスナネコの繁殖活動に精を出しています。
しかし、絶滅危惧種、希少種であることから、生態があまり分からず、その繁殖は大変困難を極めているのも実情です。
ちなみにこの「アル・アイン動物園」には4,000頭以上の動物がおり、そのうち30%となる180種類の動物が絶滅危惧種にあたる動物たちだと言われています。
それだけ、絶滅の危機にさらされている動物が多いということです。
野生のスナネコを発見することは、大変難しいことと周知されてきた中、なんとも嬉しい・素晴らしいニュースが飛び込んできました。
フランスの調査チームによって、モロッコ南部の砂漠地帯でスナネコが発見されたのです。
スナネコが見つかるだけでも奇跡に近い事なのに、なんと今回発見されたのは「子猫」のスナネコだったのです。
野生のスナネコの保護・繁殖に力を入れているアブダビの調査チームは、同国の西部にある「自然保護区」に定点用の監視カメラを設置しており、そのカメラには2015年に、10年ぶりに生きている状態のスナネコの姿を捉えたという報告がありました。
その時の映像は残念ながら公開されていません。
ですので、今回の発見はとてつもないビッグニュースとして世界中を駆け巡ったのです。
現地時間、9月20日に公開されたスナネコの映像には、生後6~8週間程度の可愛いスナネコの子猫の姿が映し出されていました。
深夜2時ごろ、いつものようにランドクルーザーの上から観察を行っていたところ、暗闇の中に静かに光る3対の瞳を発見したそうです。
それが映像に収めることに成功した3匹の子猫たちでした。
ラッキーなことに近くにその子猫たちの母猫も発見し、母猫に発信器付きの首輪を装着させることに成功。
これは奇跡としかいいようのない、出来事なのです。
今回の大発見・偉業を果たしたフランスの野生動物調査チーム「パンテラ」に属する、「グレゴリー・ブレトン」さんがサハラ砂漠でスナネコの調査を開始したのは遡る事4年前、2013年のことでした。
スナネコを求め、モロッコの砂漠へ足を運んだのはすでに今回で4回目となっていました。
しかしいずれもスナネコの影も形も見つけることはできず、常に空振りで調査は終わっていました。
失望の中、それでもあきらめずグレゴリーさんはスナネコを求め、モロッコに足を運び続けたのです。
そして起こった奇跡。
それは5回目のモロッコ滞在のことでした。
滞在9日目。
すでに9日が経過しているのに何の兆候も見えません。
今回もダメかと諦めかけていた時に、砂漠の天使が舞い降りたのです。
素晴らしいことに、この親子のスナネコをきっかけに、この後立て続けに29匹ものスナネコの生存を確認することができました。
奇跡に次ぐ奇跡。
諦めずに調査を続けてくれたグレゴリーさんには、感謝の言葉しか見つかりません。
生存が確認できた29匹のうち、13匹に発信器付きの首輪を装着させることに成功。
これが、謎の多いスナネコの生態を解明する大きな一歩となるのです。
先にご紹介した通り、スナネコの分布をみると、基本的にはナイル川以西にはスナネコは生息していないといわれてきました。
しかし、今回の発見でナイル川以西であるモロッコでスナネコが確認されたことにより、分布図も大きく変化していくことでしょう。
謎に満ちたスナネコの生態解明はこれからです。
どのような生態が分かるのか、今から楽しみです。
冒頭でもお話しした、人気アニメ「けものフレンズ」にも「スナネコ」が登場します。
先日の野生のスナネコ大発見も相まって、スナネコ人気に加速がついています。
「けものフレンズ」とはアニメとスマートフォンのアプリで楽しめるメディアミックス作品です。
動物が女の子に擬人化したキャラクターとして登場することで有名です。
ちなみに「スナネコ」の声を当てているのはアニメ版が「みゆはん」さんで、アプリ版は「斉藤佑圭(さいとうゆか)」さんです。
アニメ版のストーリーの中では、第4話となる「さばくちほー」でスナネコは初登場を飾ります。
キャラクターの特徴は
ちゃんと、本家スナネコと生態が同じになっている所が憎いです。
この辺りも人気の秘訣となっている要因なのです。
スナネコ
— けもフレ図鑑 (@kemonozukan) October 10, 2017
【学名】
Felis margarita
【種類】
哺乳綱 ネコ目 ネコ科
ネコ属スナネコ
【レッドリスト】
IUCNによる保全状況(Ver.3.1)
LC:軽度懸念 pic.twitter.com/FTR66Xfos7
一人称は「ボク」で、自分で「砂漠の天使」だということを自負しています。
とても世話焼きな性格で、砂漠での共同生活をするさいは色々とお世話をしてくれます。
むしろ、自信満々にお世話できることをアピールしてくれるという、憎めない愛すべきキャラクターです。
そんな可愛く愛らしいキャラクターなのに、「自慢の料理を『捕ってきて』あげるね♪」と、本来のスナネコ特有である、「ハンター」の一面も垣間見ることができるのも魅力の一つです。
まさにギャップ萌えの王道といったところです。
本家スナネコをしのぐ愛らしさと可愛さは、アニメやアプリになっても変わらず、人々の心を鷲掴みにしてしまうのです。
絶滅危惧種であり、ワシントン条約の附属書IIにも掲載されているスナネコ。
現在日本では、那須どうぶつ王国と神戸どうぶつ王国でその姿を見ることができます。
また、スナネコの飼育例は海外においても少ないなかで、両園では赤ちゃんも誕生しています。
砂漠の天使スナネコを一目見てみたい、という方はぜひ那須どうぶつ王国と神戸どうぶつ王国に足を運んでみてください。
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最終更新日 : 2021/01/18
公開日 : 2017/10/12