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猫 は水の少ない乾燥した地域から派生した動物であり、犬や人に比べれば下痢はしにくい傾向にあります。
犬であれば軟便と評価する硬さの便でも、猫であれば下痢と判断します。
猫は下痢にはなりにくいものの、食べ物の変更やストレスなどによって下痢になることがあります。
飼い猫が頻繁に猫用トイレに駆け込むときには、下痢を患っている可能性が高いでしょう。
ほとんどの場合は、自然と数日で治まる下痢が多いものの、中には病気が関係していることもあります。
一般的に、猫が下痢になると灰色や黄色の緩い便が出ます。
その他、猫が下痢を患っている場合には、脱水や発熱、嘔吐や食欲減退、そして体重減少などが見られます。
猫はきれい好きでグルーミングを頻繁にするため、初期段階の下痢の兆候は見逃しやすいとされていますから、下痢に伴う症状が見受けられたなら容態に十分注意を払いましょう。
下痢には、小腸が関係しているものと大腸が関係しているものの2種類があります。
小腸の下痢では、水っぽい便を大量にするので脱水症状や電解質の不均衡を起こしやすくなります。
一方、大腸の下痢には下部腸や結腸が関係しており、小腸が関係している下痢よりも不快感が大きく、ひどい場合には血便が見られます。
どちらのタイプの下痢の場合も、猫の容態に注意してください。
もし下痢をしている猫の様子が普段と変わりなく、食欲もあり遊ぶ元気があるのであれば、それほど心配する必要はないかもしれません。
次に、猫が下痢をする主な原因についてご紹介します。
猫が下痢をする原因の一つに、寄生虫が挙げられます。
一般的に寄生虫の数は老猫よりも若い子猫に多く、寄生虫が胃腸を刺激することで小腸および大腸の下痢を引き起こします。
下痢を引き起こす原因となる寄生虫には、回虫、条虫、猫鉤虫・コクシジウムなどの種類があります。
寄生虫の駆除薬を一定期間飲むことで、体内の寄生虫を殺して下痢の原因を取り除くことができるでしょう。
ウィルス性もしくは細菌性の感染症も、猫の下痢を引き起こします。
免疫力の低い老猫や子猫はもちろん、若い猫でも感染症による下痢になる可能性が高く、下痢以外にも発熱などの症状が見られます。
消化器官がまだ未熟な子猫や消化能力が低い猫は、 キャットフード を替えただけで下痢をすることもあります。
キャットフードを切り替える際には、徐々に新しいキャットフードを従来のフードに混ぜるようにしましょう。
また、どんなに猫が欲しがったとしても、安易に人間の食べ物を与えないようにすることで下痢を防ぐことができます。
人間と同じく、猫もストレスを感じる生き物です。
居住環境が変わったり、 トイレ が汚れていたり、しつこく撫でられたりなど、猫のストレスになる要因は様々です。
ストレスを感じると、胃腸に影響が及び下痢を引き起こす場合もあります。
炎症性腸疾患とは、大腸や小腸などの消化管に慢性的な炎症が起こっている状態を指しますが、猫も免疫の異常によって下痢症状を出すことがあります。
人間の場合の炎症性腸疾患と同様、炎症性腸疾患を患っている猫は長期間の下痢に悩まされます。
タンパク質が消化吸収できないタイプの下痢では、猫の命に関わることが多いために早急な検査と治療が必要です。
難治性であることも多く、食餌の厳密な制限や、生涯に渡る免疫抑制剤が必要になります。
中高齢の猫で多いのは、甲状腺ホルモンの出すぎによる下痢です。
甲状腺機能亢進症によって代謝は亢進(こうしん)し、過度に消化管が活動してしまい、吐き気や下痢を起こすことがあるのです。
元気で食欲も驚くほどあるのに、吐く回数や下痢になることが多くなった、痩せてきた、夜中にも声高に鳴くという時には、甲状腺機能亢進症を疑いましょう。
「下痢の原因が便秘だなんて、そんなことあり得るの?」と思う方もいることでしょう。
相反する症状の便秘と下痢ですが、中には便秘と下痢を繰り返す辛い症状に悩まされたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、高齢の猫ほど結腸の運動性の低下により、便秘を起こしやすくなります。
便秘になるとなんとか便を押し出すために腸が活発に動こうとし、水分を貯め込み始めます。
そのため、硬い便が出た後すぐに液体状の便が大量に出るということが起こり得ます。
ほとんどの場合、猫の下痢の原因は消化器官と直接関連していることが多く、炎症性腸疾患や感染性疾患、腫瘍性疾患に起因することが最も多いと言われています。
最近では若い猫の食物アレルギーへの研究も進んできており、低アレルゲン食にすると良化するという猫も見かけるようになりました。
中高齢の猫の下痢が長期間に渡る場合や下痢を繰り返す場合には、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能亢進症、腎臓または肝臓疾患、神経学的異常やウィルス感染、そして免疫系異常やリンパ腫などが疑われます。
また、乳製品や他の食品不耐性が原因だったり、フードが腐っていたり、特定の医薬品への反応などから、下痢になることもあります。
下痢のときには胃腸を休ませた方が良いので、水分さえ与えておけば大丈夫だという話をきいたことがあるかもしれません。
しかし、最近では自然治癒力を高めるためにも猫の体は栄養を必要としているので、フードを与えるべきであるとの見方が強まっています。
いずれにせよ、猫自身が「食べるか、食べないか」を決定するでしょう。
猫が下痢のときには、できるだけ消化の良い食べ物を与えましょう。
猫が好むのであれば、消化の良い食べ物として低脂肪の猫用ヨーグルトなどを与えてみても良いかもしれません。
また、瓶詰入りのお肉ベースのベビーフードも消化が良いので、猫に与えることができます。
しかし、何が原因で下痢になっているのか分からない状態で、新規の食餌を与えるのも怖いところです。
まずは動物病院で重症度を確認してからにしましょう。
※ヨーグルトの関連記事: 【獣医師監修】猫はヨーグルトを食べてもいい?栄養効果と上手な与え方
人間が服用する下痢止めの薬を、猫に服用させることだけはやめましょう。
薬を服用させなければと思うほど猫の下痢がひどい場合には、即獣医師の診察を受けるべきです。
止めてはいけないタイプの下痢というものもあるためです。
また、下痢がひどく脱水症状が心配なのであれば、水分補給として人間用のスポーツドリンクを薄めて与えることもできますが、できればペット用の経口補水液を用意する方が良いでしょう。
飲むと下痢が出てしまうという時は、経口で補水するのは諦めて、点滴を受けるのがおすすめです。
猫の下痢が血の混じった黒い便を伴う場合には、胃や小腸の内部出血が疑われます。
そのような場合には、できるだけ早く動物病院に連れて行きましょう。
また、下痢をしているのが子猫や老猫の場合、そして下痢以外に健康上の問題を抱えている猫などの場合には、自然に治るのを待つのではなく、獣医に相談した方が良いかもしれません。
健康な成猫で、下痢の症状があるものの普段通りに食べたり飲んだりできているのであれば、1日や2日ほど下痢をしていても心配することはありません。
しかし、下痢の症状が2日以上続き食欲不振や嘔吐があり、ぐったりとしんどそうにしているのであれば、早めに獣医師のもとを訪れるようにしましょう。
猫が下痢をしていても、普段と変わりない様子で一過性ならそれほど心配する必要はないでしょう。
排泄物の状態と共に、猫の様子をよく観察してみていつもと様子が違ったり、具合の悪そうな様子をしていたりするのであれば獣医に相談すべきです。
室内飼いの猫でない限り、猫が下痢になっていることに気づくのは難しいかもしれません。
もし食欲不振や嘔吐などの症状が見られ、いつもより元気のない様子をしているのであれば、下痢をしていないかチェックするようにしましょう。
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・ 子猫の飼い方マニュアル。子猫の食事やケアの仕方、飼育にかかる費用、注意点
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/14
公開日 : 2017/09/13