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現在では愛玩犬として広く親しまれているヨークシャー・テリア(YorkshireTerrier 学名:Canis lupus familiaris)ですが、作出当時は別の目的で生み出された 犬種 です。
ヨークシャー・テリアは、19世紀のイギリス・ヨークシャー州のウェスト・ライディング地方で、倉庫や工場などの家屋に住むネズミを狩れるように生み出された犬種です。
命名当初は「ブロークン・ヘアード・スコッチ・オア・ヨークシャー・テリア」と長い犬種名で、被毛も現在のような滑らかな直毛ではなく、ボサボサしたワイヤー・ヘアで体重も5kg以上ある固体も多かったようです。
ネズミを退治するために生み出されたヨークシャー・テリアですが、その小ささと被毛の綺麗さから、労働者階級だけでなく上流階級の人の間でも人気となり、次第に狩猟犬ではなく愛玩犬として扱われるようになりました。
この頃から長い犬種名も短く略されることが増え、「ヨークシャー・テリア」と呼ばれるようになりました。
ヨークシャー・テリアが日本にやってきた正確な年代はわかっていませんが、第二次世界大戦以降に入ってきたと言われています。
当時のイギリスでは、「動く宝石」とも呼ばれるほど貴重な愛玩犬であったこともあり、現在のように手軽に入手できるような犬種ではなかったことが推察されます。
また、日本では1960年代から1970年代の高度経済成長期に人気に火がつき、 ポメラニアン 、 マルチーズ 、ヨークシャー・テリアは「座敷犬御三家」と称されました。
ヨークシャー・テリアは、JKC(ジャパンケネルクラブ)が公認している犬種の中で、 チワワ に続き2番目に小さい犬種です。
基本的なヨークシャー・テリアの体重は2~3kg程度ですが、近年では成犬になっても体重が1.8kg未満である「ティーカップヨーキー」という非常に小さいものも登場してきています。
「ティーカップヨーキー」というのは正式な犬種ではなく、あくまで通称であり身体が小さい分、病気やストレスに弱い場合も多いようです。
日本国内での人気の高いヨークシャー・テリアですが、光沢のある絹糸のような非常に細い被毛を持ちながらも、シングルコートであり抜け毛が少ないなどの特徴があります。
被毛の分け目は左右対称に鼻から尻尾まで綺麗に分かれており、ヨークシャー・テリアの長い被毛が醸し出す気品を引き出すのに一躍かっています。
一時期は引きずるほど長く伸ばされているのが流行っていた被毛ですが、近年では短めにカットされていることが多いようです。
ヨークシャー・テリアの毛色は、一生の内に7回変化するとも言われており、子犬から成犬になるまでだけでなく、成犬になってからも毛色の変化を楽しめる犬種です。
生まれた当初は黒っぽい色合いをしており、どちらかというとブラック&タンに近いです。
成長と共に色は変化し、ブラックだった毛色はシルバーのような光沢を持つようになり、赤みを帯びていたタンは徐々にゴールドのように黄褐色になっていきます。
毛色の変化具合によって、毛色には様々な種類があるように思われがちですが、日本で公認されているスタンダードカラーはダーク・スチール・ブルー&タンの1色だけです。
近年ではチョコレートやチョコレート&タンのヨークシャー・テリアも販売されていますが、公認されたカラーではなく、本来の色合いであるダーク・スチール・ブルー&タンの色素が定着しなかったミスカラーです。
ミスカラーの犬種は内臓などに疾患を持っている場合もありますが、全てのミスカラーの犬の身体が弱いわけではなく、スタンダードカラーを健全な血統として守っていくという意味合いで公認されていません。
ヨークシャー・テリアは、活発な性格で遊びが大好きなエネルギッシュな犬種です。
典型的な「テリア種」の気質を持ち、好奇心が旺盛で退屈が耐えられません。
その分、遊んでもらうことが大好きで人懐っこい性格をしており、散歩をしないとストレスを抱えてしまうかもしれません。
できるだけ毎日の散歩は欠かさないようにした方が良いでしょう。
元々ネズミを捕るために生み出された犬種であり、獲物を追いかける本能的な欲求が強く粘り強い頑固者なので、甘やかすとわがままに育ってしまうので注意が必要です。
すぐに噛みつくというヨークシャーテリアは少ないので、攻撃性は低い犬種と言えるでしょう。
初心者でも飼いやすい犬種です。
「テリア気質」の特徴としてよく言われるものが次の4つです。
ヨークシャー・テリアを飼う際には特徴的な性格を理解し、しつけを行っていきましょう。
ヨークシャー・テリアのしつけで1番重要なことは、“リーダー”をしっかりと認識させることです。
犬は順位付けを行う生き物なので、飼い主が“リーダー”であるということを理解させなければ、なかなか思うようにしつけをすることが出来ません。
ヨークシャー・テリアは賢い犬種ということもあり、甘い態度をとってしまうと人間を下に見てしまう場合があります。
可愛い見た目についつい甘くなってしまうかもしれませんが、しつけをする場合は、しっかりと“リーダー”らしい振る舞いを飼い主がする必要があります。
また、忍耐強い性格でもあるヨークシャー・テリアは、「この人には敵わない」と思うまで何度でも立ち向かってきます。
一度や二度しつけただけではなかなか諦めてくれないので、飼い主側もしつけをする際には我慢強く取り組む必要があります。
ヨークシャー・テリアは元狩猟犬ということもあり、じゃれ合う際に噛み癖が出ることが多く、噛んだ状態で首を振り回すので、手を噛まれた際には傷になってしまう場合も多いようです。
噛んだ状態で首を振り回す動作は、ねずみの息の根を止めるための本能的な行動なので、そのままにしていると噛み癖がいつまでも残ってしまいます。
そのため、じゃれていた際に甘噛みのような感じで、噛んでくる際には無視などの対応を取って、噛んでも良いことが無いと繰り返し教えましょう。
人の手や足を噛むというタイミングを極力減らす必要があります。
これをすると噛まれる、というタイミングが飼っていると分かってくると思うので、その状況にならないようにします。
顔付近を触られると噛みたくなってしまう、興奮してくると噛みたくなってしまう、動いていて噛むと声をかけてもらえるので噛みたくなってしまうなど、日頃から噛むことを誘発しないようにしましょう。
ヨークシャー・テリアの特徴である被毛を美しく保つためには、毎日の手入れが重要です。
被毛をただ伸ばすだけではなく、定期的なトリミングも行うことで、伸びた被毛が目に入ってしまうことで生じる角膜炎や結膜炎などを防ぐことも出来ます。
シングルコートの被毛は換毛期がないため、延々と伸び続けてしまいます。
放置していると毛玉になってしまったり、ほつれてしまったりしてしまう可能性があり、皮膚疾患に繋がる恐れがあります。
シングルコートは抜け毛が少ない分、被毛に対する手入れが必要になります。
定期的にブラッシングを行いましょう。
伸び続けた被毛は衛生的とは言えません。
ブラッシングだけではなく、定期的な シャンプー も美しい被毛を保つためには必要です。
特に長い被毛にはおしっこがかかっている場合もあり、そのままの状態にしておくと、非常に不衛生で臭いを発する場合もあります。
また、被毛が長いため、濡れていると体温が奪われてしまって風邪などを引いてしまったりする恐れがあります。
そのため、自宅でシャンプーをする際は、タオルとドライヤーを用いて十分に乾かしてあげることが重要です。
被毛を伸ばし続ける場合はラッピングを行い、長い被毛をひとまとめにくくる必要があります。
特に顔周辺の被毛が長くなり目に入ってしまうと危険ですので、頭部周辺はリボンなどを使ってラッピングしてあげましょう。
ただ、ラッピングは素人がやるのは難しいので、上記写真のようにトップノットを作って前髪を上げているヨーキーさんがほとんどですね。
ヨークシャー・テリアの相場は15~40万円程度です。
子犬の方が成犬よりも高い場合が多く、安ければ5万円程度で売られている場合もあります。
その反面、50万円以上する固体も存在するので、それぞれどういった理由で価格付けされているのかを、購入前に販売者から説明を受けておく必要があります。
相場からずれて大幅に安い個体などは、先天的な弱さや病気を持っている場合も多く、治療費が嵩んだり、あまり長生きできなかったりする場合もあります。
ヨークシャー・テリアの基本として、オスよりもメスの方が高い傾向があります。
メスはオスと比べて気性も優しく飼育向きであり、子犬を産むこともできますので、需要が高いためです。
オスのヨークシャー・テリアであまりにも気性が荒い場合には、虚勢が必要となるケースもあり、元狩猟犬としての気質が表れています。
どんな犬種でもそうですが、血統書付きの固体は価格が高くなる傾向があります。
血統書はただ他の犬種の遺伝子が混ざっていないということを証明するものではなく、犬が先祖と同じ性質を引き継ぐことが多いために、先天的な疾患のリスクや成犬となった際の毛色などを知ることができるためです。
他の犬種に比べて比較的かかりやすい病気の代表例をご紹介します。
小型犬に多い膝蓋骨脱臼は、後ろ足のひざのお皿(膝蓋骨)が正常な位置から外れてしまった状態を意味し、歩行障害を引き起こします。
膝蓋骨脱臼を予防するには、早いグレードでの発見が重要です。
普段から歩行方法に注意し、いつもと違う歩行をしている場合や膝がガクガクしているなどの症状が見られる場合には、獣医師に相談しましょう。
膝蓋骨脱臼は小型犬が先天的に持っている場合も多く、完全な治療が難しい場合もあります。
そのため、普段から体重管理に気を付け、太らせすぎることで膝への負担を増やしてしまわないように注意が必要です。
首の気管がつぶれた状態になり正常な呼吸が難しくなってしまう病気を気管虚脱と言います。
気管虚脱はチワワやポメラニアンなどの小型犬にも多く発症する病気で、ヨークシャー・テリアでも十分に注意が必要です。
気管虚脱では、興奮した際にガチョウのような「ガーガー」という乾いた咳をする場合が多いので、もし通常と違う咳をしている場合は獣医師の診察を受けましょう。
気管虚脱の代表的な原因は、遺伝的要因・老化・肥満と言われています。
遺伝や老化が原因の場合、予防は難しいかもしれませんが、肥満については予防が可能です。
肥満による気管虚脱では、脂肪が気管を押しつぶしてしまうことが直接的な原因です。
日常的な健康管理をしながら定期的な健康診断を受けるなどして、肥満にならないように気を付けましょう。
一般的に「門脈シャント」と呼ばれる門脈体循環短絡症は、本来肝臓にいくハズの栄養が短絡血管によって全身にまわってしまい、肝臓が正常に成長しない病気です。
解毒されるべき体内の毒素(アンモニアなど)の濃度が高くなってしまい、全身に回ってしまうことで神経症状などが出ます。
門脈体循環短絡症にかかった場合、食後に症状が悪化するケースが多くあります。
食事後の様子には特に注意が必要です。
また、アンモニアが正しく代謝されなかったことで、尿路結石や膀胱炎を併発させることもあります。
門脈体循環短絡症の主な原因は先天的なものが多く、予防は難しいと言わざるを得ません。
そのため、早期発見と早期治療が重要となります。
定期健診を受けたり、食後の状態をチェックしたりするなど、普段から異変に気付ける体制を作っておくことが重要です。
名称:ヨークシャー・テリア
原産国:イギリス
値段:15~40万円
毛色:ダーク・スチール・ブルー&タン
寿命:13歳〜16歳ほど
体重:2.5kg〜3.5kg
体高:22.5cm〜23.5cm
特徴:長い被毛、小さい身体
性格:賢く勇敢、好奇心が強い、負けず嫌いなテリア気質
かかりやすい病気:膝蓋骨脱臼、気管虚脱、門脈体循環短絡症
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/04
公開日 : 2017/07/04