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一昔前は猫は放し飼いにするのが一般的であり、老猫と言えるほど長生きできる子は少数でした。
しかし、今は完全室内飼育の普及やキャットフードの品質向上、医学の進歩などにより猫も長生きするようになりました。
生きていれば、どんな動物でも歳を取ります。
本記事を通して、猫の老年期がどういうものなのかを知っておきましょう。
猫の寿命は、どのような環境で暮らしているかによって大きく変動します。
飼い主がおらず、外で野良猫として暮らしている子の寿命は短く、平均で4年ほどです。
家の中と外を行き来する放し飼いの場合は10年程度、完全室内飼育だと平均寿命は14年ほどになります。
完全室内飼育と放し飼いの差である4年は、人間の年に換算すると12年にも相当します。
4年の差の原因は、放し飼いの子の場合は交通事故、病気の感染、行方不明、犯罪に巻き込まれるなどの命に関わる危険に遭う可能性が高いことが考えられます。
どのような環境で暮らすかが、猫の寿命には大きく影響していることが分かります。
※合わせて読みたい: 猫の寿命はどのくらい?ネコに長生きしてもらうための飼い方まとめ
一般的に猫のシニア期(中年の年代)は6~7歳頃からとされ、体の不調が出やすくなる時期とされています。
何歳から老猫というかは、その猫が暮らしている環境によって異なります。
猫の老齢と認識される年齢は、平均寿命の半ばを超えた年齢からを指します。
放し飼いにされている猫は6歳以上、完全室内飼育の猫は8歳以上であれば老猫と言えます。
猫が老齢となる年齢の目安をあげましたが、これはあくまで目安であり、老いが出てくる年齢は猫それぞれによって違いがあります。
完全室内飼育であっても、シニアの年齢である6歳ごろから体に不調をきたす子もいますし、10歳以上になっても若々しい猫もいます。
これは人間と同じで、老いる速さはその猫によってそれぞれ異なります。
猫もかなりの高齢になってくると老猫らしい姿になるのですが、人間のようにシワが増えたり白髪が出てきたりするわけではないので、一見すると歳をとっていることが分からないこともあります。
筆者は動物の保護活動をしているため様々な年代の猫と接しますが、体が小さいので生後6カ月くらいかと思ったら、保護してよく調べてみたところ歯の状況などから10歳くらいだったということもあります。
また、猫は自分の不調を隠す傾向があるので、飼い主が猫の老いに気が付かないということも少なくありません。
日ごろから猫の様子を観察して、猫の老いに合わせた快適な暮らしができるようにしてあげたいものです。
シニアの年齢から老猫の初期である8歳くらいまでは、老年期の症状がほとんど見られないこともあります。
猫の体が老年期に入った際は、次のような兆候が見られます。
これらの項目は、下に行くほど猫の体が老齢化していることを示しています。
老猫になっても元気で長生きしてもらうために、飼い主ができることはたくさんあります。
老年期になれば活動量も変わりますし、胃腸の消化力も若い頃に比べると落ちてきます。
現在のキャットフードは、老猫に対応したフードもたくさん発売されています。
どのようなキャットフードを食べさせるかは猫の健康に大きな影響をもたらしますので、その年齢に合った高品質のフードを与えてあげるようにしましょう。
また、猫はあまり水を飲まない動物なのですが、水分の摂取量が少なすぎることは健康にとって良いことではありません。
猫が腎臓病を発症することが多いのは、水分の摂取量が少ないのも一因と言われています。
特に老猫になると、水をあまり飲まなくなる傾向があります。
水飲み場を複数設けるなど、猫が水を飲みやすいようにするとともに、ウェットフードの割合を増やすようにして水分を摂らせるように心がけましょう。
※合わせて読みたい: 安心・安全なキャットフードはどれ?猫の餌の与え方や注意点とおすすめキャットフードランキング!
老猫になると筋力が落ちる、関節痛を発症するなどの理由により、体を動かすのが億劫になって毛づくろいができなくなることがあります。
同じ理由で爪とぎが十分できなくなり、爪が伸びっぱなしになって肉球に食い込んでしまうという症状も見られます。
猫は自分の体を自分できれいにする動物ですが、老猫になると十分にできなくなるため、飼い主が代わって行ってあげるようにしましょう。
老猫になってグルーミングの頻度が減ってきたら、ブラッシングをしてあげるようにし、毛の汚れが気になったときは蒸しタオルで拭いてあげてください。
※合わせて読みたい: 猫のブラッシングの効果と、ブラシの種類やブラッシングの方法を解説
シャンプーすることは猫にとってはストレスの原因となりますので、よほど汚れたとき以外は控えるのが無難です。
蒸しタオルは濡らしたタオルをレンジで20秒ほどチンすればすぐにできますし、それで拭くだけでもふわふわになります。
猫の爪が伸びすぎた状態なると、床に当たってカツカツと音がするようになります。
そういう状態は爪の伸び過ぎですので、爪を切ってあげるようにしてください。
なお、猫の爪には血管が通っているため、血管を傷つけないように注意しましょう。
自分で爪切りすることに自信がない場合は、1回500円程度で動物病院でも切ってくれます。
※合わせて読みたい: 猫の爪のお手入れはどうする?猫の爪とぎ、猫用の爪切り、猫の爪の切り方などを解説
猫の健康を守るために、毎日の健康チェックをしましょう。
健康チェックといっても面倒なものではなく、簡単にできます。
チェックしたい項目は以下の通りです。
排泄物のチェックはトイレ掃除の時にできますし、口や耳のチェックは猫がおひざでまったりしているときにささっと済ませてしまうことができます。
あくびをしたときは口臭チェックのチャンスです。
毎日チェックして変化を発見することが、猫の健康守ることに繋がります。
老猫になると筋力が弱くなり、若い頃のように高い場所に簡単に上がれなくなったり、高い場所でうまくバランスを取るのが難しくなったりします。
そのため、猫が暮らす環境も老猫仕様にする必要があります。
キャットタワー は年齢に合わせて低めのものを用意してあげましょう。
また、高齢になると寝ている時間が長くなるため、寝心地の良いベッドや潜り込めるベッドなど、猫ちゃんが安心して眠れるベッドを用意してあげると良いです。
※合わせて読みたい: 猫がベッドで寝る姿がかわいすぎる!猫ベッドのおすすめ商品や手作り方法を紹介
猫はストレスに弱い動物ですが、老猫になると免疫力も若い頃に比べると低下しますので、なるべくストレスがかからない生活を心がけましょう。
猫が一番苦手なことは、環境が変わることです。
高齢になったら住まいを変える、新しいペットを迎え入れるなどのストレスがかかることは避けるのが良いです。
※合わせて読みたい: 猫にストレスを与えないお世話の仕方
猫は人間の言葉を話せませんし、具合が悪いことを隠す動物ですから、なかなか体調不良に気が付かないことは珍しくありません。
病気の早期発見をするために、定期的に健康診断を受けるようにすると良いです。
ただし、病院に行くこと自体が苦手であったり、採血することが大きなストレスになるような猫の場合は、獣医と相談しながら行ってください。
最初は尿検査から実施するのもおすすめです。
尿を病院に持っていくだけで、腎臓の不調を早期にキャッチできる可能性があります。
尿比重や尿蛋白から腎不全の始まりに気付けます。
前述した通り、室内飼育をするかしないかは猫の寿命に大きく影響します。
もし放し飼いをしている場合でも、老猫になったら室内で飼育してあげるようにしてください。
室内飼育をすれば病気の予防、事故や虐待から猫を守ることができますし、迷子になることも防ぐことができます。
老猫になってから迷子になって慣れ親しんだおうちに帰れなくなるのは、本当にかわいそうなことです。
猫の食欲が減退することは何らかの病気であることも考えられますので、食べる量が減った、1日以上食べない状態が続くという場合は獣医に診てもらいましょう。
口内炎ができて痛くて食べられないということも、猫の老年期にはよく見られる症状です。
猫は食べない状態が長く続くと、肝リピドーシスなどの別の病気を発症する可能性もありますので、出来る限り放置しないようにしてください。
歯が抜ける、歯ぐきが弱るなどの理由で硬い物が食べられないことも考えられます。
老猫でも食べられるフードを用意してあげましょう。
食事や飲み薬でも抑えきれない口の痛みがある場合には、全身麻酔下での歯科処置を実施することもあります。
老齢での全身麻酔は、若い時よりもリスクがあるので、一概に良い面だけではありません。
しかし、歯科処置をした後にはよく食べることができるようになった!という猫さんは多くいます。
口内炎や歯周病の痛みは、軽く考えないようにしましょう。
猫が痩せるということは、多くが何らかの原因で食欲がわかない、ご飯を食べられないという理由からです。
猫は病気になると多く場合は食欲がなくなり体重が減りますので、ダイエットをしていないのに痩せた場合は病気の可能性が考えられます。
老猫がかかりやすい病気で体重減少が見られるのは歯肉炎、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症、がんなど多岐に渡ります。
どれも早期発見と早期治療が大切なので、触ってみて痩せたと感じたり、実際に体重が減っていたりしたときはすぐに動物病院に連れて行きましょう。
老猫が嘔吐や下痢を発症する場合は、胃腸炎のような胃腸の病気を発症している、腎臓病等の病気にかかっている、ウィルスに感染していることなどが考えられます。
いずれも病院での治療が必要になります。
老猫は体力や免疫力も低下しているので脱水症状起こすなど、命に関わる場合もあります。
※合わせて読みたい: 猫が吐く原因は?様子を見ても良い嘔吐と危険な嘔吐の見分け方
老猫になってから夜泣きをするようになったときは認知症が疑われます。
認知症になると昼夜の区別がつかなくなったり、興奮状態が続いたりすることがあり、夜中などでも大きな声で鳴いてしまうことがあるのです。
あるいは、甲状腺ホルモンが多くでている甲状腺機能亢進症という病気の可能性もあります。
超高齢の猫ではなく、10歳前後の猫で夜鳴きがあり、元気でよく食べているのに痩せている時には血液検査を受けましょう。
そのような状態が見られるときには、獣医に相談してみましょう。
効果が高く、副作用が少ないペット用の安定剤も発売されています。
興奮状態になると体力も消耗しますから、適切な投薬は猫のためにもなりますし、介護する際は大変助けになります。
また、隠れた病気として腎臓病があると、多飲多尿の傾向が出て、お水を飲みたい!トイレが汚れている!と訴えている可能性もあります。
やはり高齢になった時には健康診断を受けておくことが大切ですね。
猫のかかりやすい病気や猫の死因として上位にあげられるのが腎臓病です。
シニア以上の猫は、腎臓病を発症する割合が3~4割にも達すると言われています。
猫がかかりやすい腎臓病は慢性腎臓病で、段々と腎臓が機能しなくなってしまう病気です。
一度発症すると治ることはないのですが、進行をゆっくりにするための治療がメインとなります。
猫が水分をあまり摂らないことが腎臓病の一因であるとは言われていますが、なぜ猫が腎臓病になりやすいのかは実のところ明確には分かっていません。
そのため、確実な予防法は判明していないのですが、ストレスのない生活と良質な食事を心がけることが予防に繋がるでしょう。
猫の腎臓病については大学でも研究されており、効果的な治療薬の開発などが期待されておりますので、将来的には腎臓病を発症しても長く生きることが可能になるかもしれません。
現在で報告があるのは、尿蛋白の量が多いほど予後が悪く、高血圧は腎不全の悪化の原因であり、治療食を食べている方が余命が伸びるというものです。
また、体重をどれだけ落とさずにいられるかも余命を大きく左右します。
そのために出来ることとしては下記のようなことがあります。
高齢になると発症しやすいのが、糖尿病や甲状腺機能亢進症などのホルモンの異常が原因の病気です。
ホルモン異常が原因の病気を発症すると、水をたくさん飲んだり、食欲減退のような症状が見られますが、甲状腺機能亢進症は逆に食欲が増進し活発になるなどの症状が見られますので、飼い主が気付かないことも多いです。
しかし、下痢や嘔吐が増える、体重が低下しているなどの症状も同時に見られることが多いです。
早期に治療を始めるためにも、猫の様子を普段から観察しておくことが大切です。
老猫になると消化機能も衰えてくるので、便秘になりやすくなります。
基本的に、老猫は脱水傾向が強くなることも一つの要因です。
消化機能を助けてくれるキャットフードや、適切な食物繊維が含まれている物も発売されています。
ウエットフードの割合を増やすことで、便秘が解消されることが多いので試してみましょう。
ただ、人気のペースト状のフードなども含めて、ウエットフードはあげ過ぎると下痢になることもあります。
ウエットフードは嫌い!というタイプであれば、穏やかな便秘解消薬も存在するので、獣医師に相談してみましょう。
細菌性膀胱炎、膀胱腫瘍等も老猫になると若い頃よりも発症しやすい傾向があります。
ちゃんとおしっこが出ているかどうかやトイレの回数など、猫の様子に気を配ってあげましょう。
若い時から尿路結石予防のフードを高齢期まで食べ続けていると、腎臓に負担がかかっている可能性もあります。
尿路系と言われる治療食は、高齢期の猫に対しては塩分が多かったり、脂肪分が多すぎる傾向も。
尿路系フードを食べていても、年齢に合わせてフード変更をしていくようにしましょう。
猫も歳をとると、筋肉や関節が弱ってきます。
老猫の約半分は、関節炎を患っていると言われています。
関節炎の症状には以下のようなものがあります。
猫の禿げは、関節の痛みに由来していることがあります。
見逃さないようにしましょう。
関節炎を治すことは難しいですが、痛みを和らげる薬を処方してもらうことができますし、関節炎を緩和するサプリメントを活用することもできます。
人間と同じように、猫も歳をとればできなくなることが増えてきます。
粗相してしまうことがあるかもしれませんし、グルーミングができなくなるため飼い主が世話をしてあげなければならないことが出てくるかもしれません。
動物の保護活動をしている筆者は、何回も猫を看取ってきました。
介護というと大変なイメージがあるかもしれませんが、猫は小さい動物ですし、おしっこやうんちの量もそんなに多いわけではありません。
しかも、猫はきれい好きで自分が寝ている場所を汚したくないと考えるので、病状にもよりますが、最後まで自分でトイレまで頑張って行く子は少なくありません。
「辛いならここでしていいよ」と思うのですが、ちゃんとトイレに行き、その数時間後に亡くなった猫もいます。
また、粗相の始末や体をきれいにしてあげるのも、そんなに時間がかかるわけではありません。
そして、これまでの筆者の経験から言えることは、自分で身動きするのが難しい介護状態になった猫は、そんなに長くは生きられないということです。
つまり、介護をする期間はそれほど長いものではありません。
老猫を介護するというと悪いイメージや大変なイメージが先行するかもしれませんが、猫を介護するということは、愛猫との最後の時間を濃密に過ごす大切な時間だと筆者は思っています。
長い間、大切な家族として暮らしてくれた猫の最後を看取るのは、飼い主の責務でもあり、愛情を込めて旅立たせてあげるのがたくさんの癒しを与えてくれた猫ちゃんへの最後の恩返しとなるのではないでしょうか。
何歳でもどんな状況でも、愛した猫に先立たれるのは本当に辛いことです。
筆者も何度見送っても「こうしてあげれば良かった」、「あれが足りなかったのではないか」と後悔しないときはありません。
しかし、最後に心を込めてお世話をしてあげることで、飼い主もペットロスから救われると思います。
そして、猫ちゃんを見送ってあげたら、最期のときのことばかりではなく、楽しく幸せに過ごした時間のことを思い出してあげてください。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/09/27
公開日 : 2018/11/29