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猫は本来の習性により、吐きやすい動物です。
現在のペットとして飼われているイエネコの祖先は、DNA解析によりリビアヤマネコであると判明しています。
リビアヤマネコは、現在も中東やエジプトなどの砂漠地帯に生息している野生の猫種です。
リビアヤマネコは真性(雑食をしない)の肉食獣で狩りをして暮らしていましたが、そのDNAは現在のイエネコにも強く引き継がれています。
リビアヤマネコが獲物として狩るのは、げっ歯類のような 小動物 や 鳥 です。
それらを食料として食べると、毛や骨をはじめ消化しきれないものが消化器官に溜まってしまいます。
溜まってしまったものを吐き出すことは、生きるうえで必要なことでした。
猫はとてもきれい好きな動物として知られています。
これも元々は狩りをして暮らす野生の猫種であったことに強く関係しています。
リビアヤマネコの狩りの仕方は待ち伏せ型の狩りでした。
音を立ててもいけませんし、体臭がしても獲物の動物たちに気付かれてしまいます。
そのため、猫は自分の体をグルーミングして体臭を無くすという習性が身に付いたきれい好きな動物となったのです。
自分の体を舐めてきれいにするということは、舐めとった毛が消化器官に入り込んでしまうことにもなります。
自分の毛といえども、消化器官に溜まってしまうと体に不調をもたらすため、それらを吐き出すことが必要です。
猫の嘔吐には様子見をしても大丈夫な嘔吐と、病気などを原因とする見過ごしてはいけない嘔吐があります。
基本的には、一回吐いただけで元気も食欲もあり、その後に吐くことが無ければ大きな問題のない嘔吐と判断します。
これまでご説明してき通り、猫は元々の習性により吐きやすい動物なので、月に1~2回程度の嘔吐であれば通常の毛玉を吐く行為によるものと考えられることが多いです。
猫の嘔吐が様子見をしてもいいものかどうかを判断するには、猫が吐いた物を観察する必要があります。
猫が吐いた物がヘアボールと呼ばれる毛の塊や毛が混じった胃液である場合は、様子見をしても大丈夫でしょう。
これはグルーミングの際に飲み込んでしまった毛を吐くという正常な行為です。
かえって、毛玉を吐けない方が病気に繋がることがあります。
猫はゆっくりと何回かに分けて食事する子が多いのですが、中にはガツガツと早食いしてしまう子や、あるだけ食べてしまうという子もいます。
猫は一般的に3~5㎏ほどの体格の子が多く、胃も大きい方ではありません。
食事を小分けにして摂る習性があるのは、胃があまり大きくないからというのも一つの理由です。
胃があまり大きくないにも関わらず、一気にガツガツと大量に食べてしまうと、胃が受け付けずに吐いてしまうことがあります。
毛玉や胃液、食べたものなどは出てしまった後は、けろりとして元気であれば様子を見ても大丈夫でしょう。
猫草を猫ちゃんのために用意している場合は、猫草を食べた後は吐いてしまうことがあります。
何のために猫が猫草を食べるのかについては明確になっていませんが、猫は不要物を吐き出す必要があるため、草を食べることによって吐きやすくするという説が有力です。
猫草を与えると猫の嘔吐を促すことになるのかもしれませんが、毛玉などを吐きやすくさせるのは、猫の健康を守るためには必要であると言えます。
※合わせて読みたい: 猫草の効果や必要性とは?おすすめの猫草も紹介!
毛玉や食べた物を吐くのではなく、嘔吐物が白い液体や黄色い液体である場合は、お腹が空いて消化液を吐いていることが多いです。
白い液体は胃液や水、黄色い液体は胆汁で、どちらも食べ物を消化するために必要なものですが、お腹が空いてそれらがたくさん分泌されるのに胃が空っぽだと吐いてしまうことがあります。
すぐ病院に連れて行って治療をしてもらった方が良い場合の嘔吐です。
猫は吐きやすい動物といっても、通常は月に1回か2回程度です。
それが毎日吐く、1日に何回も吐くなど頻繁に吐く様子が見られる場合は、何らかの体の不調が原因と考えられます。
吐き気によりものが食べられない、水が飲めないことにより脱水症状を引き起こす可能性もあり、放置すると命に関わる危険性もあります。
何かを吐き出そうとしても吐けない場合も、何か異常があるサインです。
異物を飲み込んでしまい、吐き出せなくて何度も吐こうとする、毛玉が詰まってしまっているということなどが考えられます。
嘔吐したものが赤黒、緑色っぽい色であるときは、重症であることが考えられます。
赤黒の液体を吐いたときは血が混じっている可能性があり、潰瘍や腫瘍などの出血が原因であるかもしれません。
一方、緑色の液体は胆汁です。
胆汁は、最初はサラサラで黄緑~緑色なので、吐物に緑や黄色が混じる場合には十二指腸からの逆流が考えられます。
内臓に何か異常が起っている可能性も考えられるでしょう。
寄生虫がいる場合には、寄生虫を吐いてしまうことがあります。
また、寄生虫自体を吐かなくても嘔吐や下痢が見られることもあります。
寄生虫による嘔吐や下痢によって体力ない子猫や老猫は、命が脅かされる危険もあるので見過ごすことはできません。
その他、寄生虫は猫の身体を不調に陥らせるだけでなく、人にも感染する可能性があり害が大きいので病院で駆虫してもらいましょう。
寄生虫は自然治癒することはありません。
なお、駆虫薬は市販でも売られていますが、本来は虫の種類によって使用する薬が違いますし、駆虫薬自体が猫の体に不調をもたらす場合もあるため、病院での駆虫をおすすめします。
吐いたものが薬品臭いなど異臭がする場合は、何か毒物を摂取してしまった可能性があります。
かなり危険な状態ですので、早急に病院を受診するようにしてください。
吐いてしまい、食欲がなく、元気もないという状態であれば、原因は何であれ重度の不調があることは間違いありません。
嘔吐だけではなく、下痢も発症しているときは、脱水が進行してしまうので更に状態が悪くなってしまいます。
若い猫に多いのが異物の誤食で、胃腸に異物が引っかかっていたり、部分的に消化管を閉塞している時には下痢という症状も出てきます。
嘔吐と血様の下痢を発症させる病気で一番恐ろしいのが、パルボウイルス感染症です。
パルボウイルス感染症は死亡率がおよそ50%から80%と言われる非常に恐ろしい病気であり、伝染力も強いです。
パルボウイルスから猫を救うには、予防と早期の治療が重要となります。
ふらついてうまく歩けないという症状が出ている場合は、何らかの中毒に陥ってる可能性があります。
猫は特定の植物やアロマオイルなどに対して中毒症状を発症することがあり、命に関わることもあります。
海外では飼い主が買ってきたチューリップをかじってしまい、猫が中毒で亡くなったという事例も報告されています。
猫が嘔吐をして、それが危険な嘔吐であると判断できるときは、早急に動物病院を受診するようにしましょう。
前もって準備していくと病院でも対処がしやすくなります。
受診する際は次のようなことを伝えましょう。
嘔吐する前にどんなものをいつ食べたのかを獣医に伝えましょう。
食べた可能性があるものや食べ残しがある場合は、それを持っていってください。
何回吐いたのか、吐いたときの様子はどうだったのかを詳細に伝えましょう。
ふらつきがある、下痢も発症している、元気がないなど、その他の症状がある場合はそれらも詳しく獣医に説明してください。
できるだけ猫が吐いたものを持っていきましょう。
持って行くのが困難な時は、写真に撮るだけでも少なからず役に立ちます。
猫の嘔吐を予防するための方法をご紹介します。
早食いや食べ過ぎが原因の嘔吐である場合は、1度にたくさんのフードを与えず、何回かに小分けして与えると良いでしょう。
あえて食べ辛くしている早食い防止のお皿を活用しても良いかもしれません。
ひもやおもちゃのかけらなどを誤飲する猫ちゃんは珍しくありません。
猫が飲み込んでしまいそうな紐や輪ゴム、ボタン、ビニール袋などといったものはきちんとしまって、猫が誤飲しないようにしましょう。
誤飲したものを吐き出すことができなかった場合、時には開腹手術をしなければならないこともあります。
猫が吐いた猫草をよく見ると、猫草の他に毛も混じっていることが多いです。
猫草を与えるとかえって吐く回数が増えるかもしれませんが、大量に毛玉を吐くということは減ると考えられます。
猫は毛玉を吐くことは健康上必要なことであり、毛玉を吐き出せないと体調不良になることから、猫草を与えることで大量の毛玉を吐くことを防ぐ効果は期待できるでしょう。
※獣医療的には、吐き気を誘発させる猫草は推奨していません。
猫はストレスに弱い生き物です。
ストレスは特に胃腸に負荷を与えることが多く、嘔吐や下痢などがストレスによって引き起こされることは珍しくありません。
猫は環境の変化などを嫌いますし、不潔な環境でもストレスを感じやすいです。
何らかのストレスがあると考えられる場合は、なるべくそのストレスを取り除いてあげるようにしましょう。
また、原因が思い付かない時は獣医に相談するようにしてください。
※合わせて読みたい: 猫にストレスを与えないお世話の仕方
猫を外に放し飼いにしていると、異物を食べてしまう可能性は高くなります。
また、野生動物に襲われたり、交通事故に巻き込まれてしまう可能性も出てくるでしょう。
室内飼育にしていた方が病気に感染するリスクも低くなります。
猫の安全や健康を考えると、完全室内飼育にすることが推奨されます。
嘔吐や下痢を発症させるパルボウイルス感染症は、根本的な治療法がなく、唯一ワクチン接種をすることが予防となります。
その他の感染症も猫に嘔吐を引き起こす可能性はありますし、命に関わることもあるので、年に1回のワクチン接種をするようにしてください。
猫が吐くことは病気でない限り自然なことですし、猫の健康にとっては必要なことでもあります。
どんなに対策をしてもある程度、猫が吐ことは猫と一緒に暮らす場合には許容しなければなりません。
猫が吐いたものを踏んでしまったりした時はげんなりしてしまうかもしれませんが、吐くことは猫にとって必要な行為ですし、わざとやった訳ではないので絶対に叱ってはいけません。
叱ることで隠れて吐くようになってしまい、異常に気付くのが遅れたり、ストレスを感じてますます嘔吐するようになってしまう可能性も出てきます。
人間であっても、吐き気があって吐いているものを、叱られたからといって止められるものではありません。
嘔吐は意思でどうのこうのできるものではなく、反射によるものと知っておきましょう。
猫の嘔吐には、様子を見て良いものと看過してはならない危険なものがあります。
危険な嘔吐はすぐに病院で診療をしてもらう必要がありますので、本記事を参考に猫の様子を注意深く観察するようにしてください。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/05/30
公開日 : 2018/11/21