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猫は便秘になりやすい動物です。
しかも、その便秘を放置すると大変な病気に繋がる危険性があります。
猫の祖先はリビアヤマネコであることがDNAの解析で判明しています。
リビアヤマネコは、中東からエジプトにかけての砂漠地帯に現在も住んでいる野生の猫です。
砂漠地帯に住んでいるために、あまり水を飲まずに生きていけるような体になっています。
人と一緒に暮らすイエネコになった現在でもそのDNAは受け継がれていて、猫はあまり水を飲まない動物なのです。
人間も水分の摂取が足りないと便秘になってしまいますよね。
また、猫は自分で体を綺麗にするのですが、グルーミングの際には自分の毛を飲み込んでしまいます。
通常は飲み込んだ毛を吐き出すものの、それが上手くいかず消化器官に溜まってしまうことがあり、それが便秘の原因になることもあります。
野生時代には水をあまり飲まなくても、狩りで得た獲物を食べることによって水分を得ていました。
ただ、現在のペットとして飼われている猫の主食はドライフードが多いでしょう。
ドライフードは手軽で栄養的にも優れていますが、水分の量は非常に少ないです。
このように、現在の猫はより便秘になりやすい面があるのです。
猫の排便回数は通常1日に1回程度です。
猫が2日うんちが出なかったら便秘と判断していいでしょう。
人間は腸が長いので2~3日排便がなくても便秘ではないという方もいますが、猫は肉食獣なので腸はさほど長くありません。
そのため、2日以上うんちが出なかったら便秘の可能性があります。
猫が3日間うんちが出ない状態であれば、病院を受診するようにしてください。
3日分のうんちが溜まっているということは、猫の短く小さい腸にかなりうんちが詰まっていることになります。
4日、5日とうんちが出ないようであれば重症です。
軽度の便秘であれば、整腸剤や療養食などで改善します。
もしも脱水などの症状が見られるときは、輸液の処置がされることもあるでしょう。
筆者は2日間、猫が排便する様子がなかったらすぐに病院に連れていきます。
何日もうんちが出ておらず、もはや自力で出すことが困難になると、浣腸や下剤を用いた治療が必要になってしまいます。
猫の浣腸は病院でしてもらえますが、脱水症状に陥るなどリスクがないわけではありません。
下剤を用いてもうんちを出すことができないと、摘便という処置が必要になることがあります。
摘便とはうんちを腸の中から掻き出すという処置ですが、ストレスが強い場合には鎮静や麻酔が必要になることがあり、リスクが高い治療になります。
できればそのようなリスクがある治療を施す前に、便秘を改善した方が良いですね。
猫が便秘であるかどうかを確認するには、まず排便の回数やうんちの様子を確認する必要がありますが、それ以外の症状が出ることもあります。
水分摂取量が少ない、繊維質が足りない、もしくはキャットフードの品質が猫にあっていないなどの理由によって、うんちが硬すぎて排便が困難になり、便秘になってしまいます。
何らかのストレスがかかることにより、胃腸の動きが悪くなったり、なかなかトイレに行けない、トイレが気に入らないという状況から便秘を発症します。
猫はストレスに弱い動物なので、ストレスによる便秘は珍しくありません。
※合わせて読みたい: 猫にストレスを与えないお世話の仕方
老猫は水分を摂らない、腎機能お低下によって脱水傾向になる、食事の量が減る、胃腸の動きが悪くなるなどの理由により、若い猫よりも排便が困難になりやすい傾向があります。
便秘を放置すると大変な病気を発症してしまう可能性が高いです。
この病気は1度かかってしまうと自然治癒することは無く、生涯不自由な思いをすることになってしまいます。
便秘によってうんちがが溜まりすぎると、腸が伸びきった状態になり巨大化してしまいます。
伸びきってしまった腸は元の大きさに戻ることができず、ぜんどう運動などのうんちを排出する動きが弱くなってしまうのです。
巨大結腸症を発症してしまうと、腸は元に戻ることはありませんので、その後の猫生をずっと病気を抱えたまま生きていくことになってしまう場合もあります。
巨大結腸症になってしまった場合、まず自力で少しでもうんちを排泄できるように下剤や浣腸液の投与が行われますが、前述した通り伸びきった腸は元に戻ることはありませんので、ずっと便秘と戦っていくことになります。
症状が重篤な場合は手術が行われることもありますが、その手術自体がリスクが高い上に手術しても完治しない場合もあります。
便秘が治っても上手く排泄をコントロールできなくなり、うんちが垂れ流し状態になってしまうこともあるのです。
このように巨大結腸症を発症してしまうと治療は困難ですし、その後の飼い主さんのお世話もかなり大変になってしまいます。
猫の便秘を見逃さず、早期に治療することがとても大切ですね。
毎日の生活を少しずつ気をつけることによって、猫の便秘を予防改善することは可能です。
便秘の大きな原因の1つに、水分量の不足が挙げられます。
猫は水をなかなか飲まない動物なので、水を飲ませる工夫をしましょう。
猫は砂漠出身なので、冷たい水をあまり好みません。
猫が好きな水の温度は38度程度で、猫がお風呂のお湯を飲みたがるのは、猫が好きな温度だからです。
特に気温が下がる冬場は猫が水を飲まなくなる傾向があるので、ぬるま湯を与えるなどして水を飲むように猫に勧めてみましょう。
筆者は猫に水を飲んでもらうために数箇所の水飲み場を用意しています。
筆者が観察したところでは、猫が好んで水を飲む場所があります。
猫が好む水飲み場は日当たりの良い高い場所です。
窓際に置いてあるケージの2段目に置いてある水入れは、筆者宅では人気の水飲み場。
猫が水を飲むことを嫌がらないように、綺麗な水をおうちの中に数箇所用意してあげると良いでしょう。
また、トイレや食餌の近くに置いてある水は、匂いの問題で猫にとっては腐った水と判断されることがあります。
お水を置くときには、トイレや食餌の場所からは離すようにしましょう。
また、猫は本来は直接水を飲むよりも、自分で狩った獲物から水分を摂る生活をしていました。
ドライフードだけではなく、ウェットフードもあげることによって水分を摂らせることができます。
※合わせて読みたい: 安心・安全なキャットフードはどれ?猫の餌の与え方や注意点とおすすめキャットフードランキング!
猫は便秘になりやすい動物なので、消化をサポートするためのキャットフード(療法食)もたくさん発売されています。
筆者も便秘の症状がひどい子には療法食をあげています。
療法食を適切に与えることによって、高い効果が期待できるでしょう。
療法食も様々な種類がありますし、その子に合ったフードを与えることが大切なので、獣医に相談してみてください。
腸内環境を整えるための善玉菌が増えることは、猫にとっても便秘解消になります。
整腸剤を与えることによって症状が改善するかもしれません。
整腸剤も様々なものがあるので、獣医に相談してみましょう。
猫の便秘に悩む飼い主さんは少なくないので、排便を促すサプリメントもたくさん販売されています。
筆者も獣医から便秘に悩む愛猫のためにオリーブオイルの摂取を勧められたことがあります。
オリーブオイルは滑りを良くして排便をスムーズにする効果があります。
猫は油を好むので、オリーブオイルも難なく食べてくれることが多いのですが、カロリーが高く与える量に気を付けなければなりませんし、肥満気味の子には与えない方が良いでしょう。
筆者は動物の保護活動をしており、捨てられて車にひかれた結果、自力排泄が困難になってしまった猫の面倒を見ています。
筆者が保護するまでうんちをすることができず、腸が伸びて軽度の巨大結腸症になってしまっていました。
療養食や整腸剤も用いていますが、それだけでは排便が難しいためサイリウムも処方してもらっています。
サイリウムとは、オオバコ属の植物の種子から精製した植物繊維のこと。
水溶性の食物繊維と少量の不溶性食物繊維から成り、排便を促進する効果が高いです。
サイリウムが配合された療養食もあるのですが、サイリウム自体を直接食べさせた方が頑固な便秘には効果があると言われています。
筆者宅では、サイリウムのおかげで排便困難な子も手術をせずに現在まで暮らせています。
頑固な便秘で悩んでいる猫がいるときは、獣医に相談してみてください。
ストレスは便秘の大きな原因に成り得ます。
猫はストレスに弱い動物であり、胃腸に不調が出やすいので便秘になってしまいます。
何らかのストレスがあるときはそれを取り除いてあげるようにしてください。
猫はきれい好きな動物です。
汚れているトイレは大嫌い。
トイレが汚いとおしっこやウンチを我慢してしまいます。
排泄をがまんすることは、便秘だけではなく他の病気の原因にもなってしまいますよね。
猫のトイレはいつも清潔にしてあげるように心がけましょう。
システムトイレなどの掃除がしやすい猫トイレにすることも、猫のトイレをきれいに保つことに効果的です。
※合わせて読みたい: 猫のトイレについて、しつけ方や掃除方法、オススメの猫砂や猫のトイレなどを紹介!
猫は便秘になりやすいのですが、毎日の生活を少し気を付けるだけで予防や改善は可能です。
老猫になって排便が困難になっても、療法食などを積極的に活用することなどによって、なるべく手術などのリスクの高い治療をしないで済むようにしてあげたいですね。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/15
公開日 : 2018/11/08