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ツバメは東南アジアなどで越冬し、暖かい季節になると日本へ渡ってくる渡り鳥です。
九州では2月から3月、関東では3月から4月頃に姿を見せるため 「春告げ鳥」 と呼ばれています。
この項目ではそんなツバメの生態を解説していきます。
なお、日本では全6種類のツバメが見られますが、特に記載がない限り最も身近な 「ツバメ」 の生態についての説明となります。
ツバメは北半球の広い範囲に分布しています。
日本には主に夏鳥として飛来し、北海道から鹿児島県に渡る広い範囲で繁殖します。
繁殖を行った後、9~10月になると越冬のために東南アジア方面へ渡り始めます。
しかし、飛来した地域によっては渡りをせず、国内で越冬するツバメも見られます。
このツバメたちは 「越冬ツバメ」 と呼ばれ、民家の屋根裏や軒下などの暖かい場所で冬を過ごします。
ただ、冷え込みが厳しくなるとエサの昆虫がいなくなり、そのまま命を落としてしまうこともあります。
なお、近年日本へ渡ってくるツバメが減り、以前と比べるとその姿が見られなくなっています。
理由ははっきりしていませんが、エサの昆虫や巣を作る環境が減っているためだと考えられています。
そのため、ツバメは神奈川県では減少種、千葉県では要保護動物に指定されています。
ツバメの体長は15~18cm、体重は16〜24g程度です。
空を飛びながら生活することに特化しているため、非常に華奢な体型をしています。
参考までに、同じく日本で見られる野鳥・スズメの体長は14~15cm、体重は18~27g程度です。
ツバメは 「チュリチュリ」「ジュリリ 」といったさまざまな声で鳴きます。
古くはその鳴き声を 「土食て虫食て口渋い」 と聞きなし(※)したそうです。
これは“土を食べて虫を食べたら口が渋くなった”という意味で、ツバメの生態を反映した面白い言葉だといえます。
(※動物の鳴き声を人間の言葉やフレーズに当てはめ、覚えやすくしたもの)
ツバメは昆虫を食べる、肉食性の鳥類です 。
野生のツバメの主食は空を飛んでいる昆虫や、糸にぶらさがっている昆虫です。
エサの一例としてはトンボ、カゲロウ、ガ、ハエ、アリ、アブなどが挙げられます。
ツバメは地面に降りることなく、空中でこれらの昆虫を器用に捕まえて食べています。
ツバメの大きな特徴は長くて二又に分かれた尾と、喉元と頭にある赤色の模様です。
特に尾の形はとても特徴的で、この形はツバメにちなんで 「燕尾形」 とも呼ばれます。
男性の礼服 「燕尾服(えんびふく)」 は、裾がツバメの尾のような形をしていることからこの名前が付けられました。
また、他の鳥と比べると翼が大きくて足が短く、飛ぶことに特化しているという点も特徴的です。
歩くことが苦手なので、飛んでいるエサを空中で捕獲して食べ、また水も飛びながら飲みます。
ツバメが地面に降りるのは、巣を作るための材料(泥や植物など)を集める時だけだといわれています。
なお、ツバメが飛ぶ平均時速は35~50kmほど、最高速度は200km近くだといわれています。
ツバメは暖かくなって昆虫が姿を見せると、繁殖のために日本へ渡ってきます。
オスはメスを見つけると盛んに鳴いてプロポーズしますが、番を決める権利はメスが持っています。
ツバメのオスは尾羽が長ければ長いほど魅力的で、尾羽が短いと見向きもされないそうです。
なお、ツバメは番の絆が強く、1度番になるとどちらかが死ぬまで関係が解消されることはありません。
ツバメは4~7月の間に1日に1個、3~6個(平均5個)の卵を産みます。
卵を温めるのは主にメスの役割で、その間オスは巣の周辺を警戒しています。
卵は13~18日ほど温めるとふ化し、ヒナはふ化してから20日ほどで巣立ちます。
ヒナが無事巣立つと、多くのツバメは2回目の産卵と子育てを始めます。
9月から10月に2回目のヒナが巣立つと、ツバメは越冬のために東南アジア方面に渡り始ります。
そして翌年の春になると、また繁殖のために日本に渡ってくるのです。
野生下におけるツバメの寿命は2~3年、平均して1.1~1.6年程度だといわれています。
ツバメは天敵の ヘビ や カラス 、 ネコ などに捕食されて一生を終えることが少なくありません。
巣立つ前に食べられてしまうことも多いため、野生下での寿命は非常に短いものとなっています。
しかし、中には経験を積み、野生下で16年近く生きた個体もいるそうです。
なお、飼育下では野生下より長生きできる傾向にあり、10年以上生きることが多いです。
ただ、ツバメは鳥獣保護法で保護されているため、基本的にペットとしての飼育はできません。
分類:鳥綱 スズメ目 ツバメ科
別名:玄鳥、ツバクロ、ツバクラ、ツバクラメ
英名:Barn swallow
学名:Hirundo rustica
分布:北半球の広い範囲(日本では北海道~九州にかけて)
大きさ:
体長…15~18cm
体重…16~24g
鳴き声:「チュリチュリ」「ジュリリ」など
食性:肉食性
繁殖:
産卵数…1回に3~6個(平均5個)
抱卵期間…13~18日ほど
寿命:
野生下…2~3年(平均1.1~1.6年)
飼育下…10年以上
ツバメといえば、軒下に巣を作るイメージが強い方が多いのではないでしょうか。
この項目ではそんなツバメの巣について、掘り下げて解説していきます。
ツバメは番が成立すると、オスとメスが協力して子育てをするための巣作りを始めます。
巣の外側は泥や枯草を唾液で固めたものでできていて、内側には植物や羽毛が敷かれています。
巣はオスとメスが協力して作りますが、オスが外側を、メスが内側を担当することが多いです。
なお、ツバメは前年使った巣が無事に残っていれば、補修してその巣を再利用します。
自分が作った巣が残っていなかった場合は、近くにある他の個体の巣を使うこともあります。
巣を1から作った場合、完成するまでには8~10日かかるといわれています。
ツバメは野生動物ですが、昔から人工物や人の住みかの近くに巣を作ることで知られています。
これは天敵から身を守るため、あえて人間の側を選んでいるものと考えられます。
今のように農薬がない時代、ツバメは作物につく害虫を食べてくれる益鳥として大切にされていました。
そのような背景から、ツバメは「ツバメが巣を作る場所=人の出入りが多い場所」として商売繁盛のシンボルとされたり、雷や火事から家を守ってくれる存在とされたり、あるいは子を産み育てる縁起の良い存在とされたりと人々に愛されてきました。
そんなツバメが巣を作る場所は、主に雨風を防ぐことのできる軒下です。
しかし、軒がある家が減ったため、玄関の上やガレージの中に巣を作ることもあります。
(株)シーアイシーの支援で制作しているツバメのフン受けの2020年バージョンが完成。ポスターも新作になりました。どちらも小川美奈子さんのデザインです。4月からバードリサーチのツバメかんさつ全国ネットワークのWebサイトで配布するほか、ツバメに優しい道の駅、サービスエリア、鉄道の駅などで利用していただいています。http://tsubameblog.bird-research.jp/?1584500400
Posted by Japan Bird Research Association on Tuesday, March 17, 2020
ツバメの巣ができるとヒナの鳴き声がやかましいうえ、巣の下がフンで汚れてしまいます。
不快に思うかもしれませんが、もし可能であればヒナが巣立つ日まで見守ってあげてください。
フンが気になる時は巣の下に段ボールを敷くか、NPO法人バードリサーチが配布しているフン受けを使うと良いでしょう。
余談となりますが、ツバメの卵やヒナがいる巣を撤去すると鳥獣保護法で罰せられる可能性があります。
生活に支障をきたす場所に巣ができて卵も産まれてしまった場合は、管轄の自治体に相談してください。
卵を産む前の巣を撤去すること、巣を作られないように対策をすることは法律上問題ありません。
ここまで説明した通り、ツバメは人の近くで巣を作る習性をもっています。
身近なところで暮らしているため、ヒナが地面に落ちている場面に遭遇することもあるかもしれません。
この項目ではそんな時はどうしたら良いのか、どう考えれば良いのかを説明していきます。
ツバメのヒナが巣から落ちてしまう理由には、さまざまなものが考えられます。
(※「子殺し」と呼ばれる行動で、番が作れなかったオスがこのような行動に出ることがあります。)
どんな理由でも巣から落ちたヒナは、全身を打って即死するか弱ってしまうことがほとんどです。
仮に無事でも天敵に襲われる、あるいは親からエサをもらえずそのまま命を落としてしまいます。
ヒナのうちに死んでしまうのはかわいそうにも思えますが、強いものが生き残るのは自然の摂理です。
本来は巣から落ちてしまったヒナの命に関して、人間が介入すべきではありません。
なぜ人間が介入すべきではないのかというと、ツバメのヒナを無事に育て上げることが難しいからです。
また、それ以上に野生で生きていく術を教えることがほぼ不可能だからです。
ツバメは親鳥に育てられる間、エサの取り方や飛び方など生きていくために必要なことを学びます。
しかし、人間の手で育てた場合、これらを教えることは難しいものです。
仮に元気に成長したとしても、野生で生きる術を知らない個体は野生下で長生きすることはできません。
“人の手で育てたツバメを野に放つ” ということは、 “子どもを丸腰のまま敵地に送り込むようなもの” と考えてもらうとわかりやすいのではないでしょうか。
それでも落ちているヒナを見殺しにできないという方は、ヒナを保護する方向で考えましょう。
ただし、ツバメのヒナを保護する前に、必ず注意して頂きたいことがあります。
それは「巣立ちの直前の雛は絶対に保護しない」ということです。
ツバメのヒナは巣立ちの前になると、親鳥と一緒に飛ぶ練習をします。
ヒナは最初のうちは上手く飛べず、練習の最中に地面に落ちてしまうことがあります。
そのため、地面にツバメが落ちていても、羽がある程度生え揃っていて少しでも飛べるようであれば、飛ぶ練習中のヒナである可能性が高いと考えられます。
ヒナが落ちていたらまずは冷静になって周囲を見渡して、親鳥がいないか探してください。
親鳥が近く(電線や木の上など)にいてヒナの様子を見守っていたら、保護する必要はありません。
人間の気配を察した親鳥が逃げてしまうこともありますが、多くの場合人がいなくなればその場に戻ってきます。
まだ羽が生え揃っていないヒナを見つけた場合は、保護を考えても良いでしょう。
その場合はいきなり連れて帰るのではなく、まずは巣の場所を確認し、ヒナを巣に戻してください。
野生動物は子に人間の臭いが付くと飼育を放棄してしまう、といわれることもあります。
しかし、ツバメの場合はヒナを巣に戻した後無事に育ち、巣立っていったという実例は多数存在します。
そのため、ヒナが落ちていた場合は、まずは巣に戻すことを第一に考えてください。
巣に戻すときは親鳥を刺激しないように、親鳥が巣から飛び立ったことを確認してから戻しましょう。
巣が壊れている場合や壊れそうな場合はカップラーメンの容器を半分に切ったもの、あるいはカゴなどを使って補強してあげると良いでしょう。
巣が見つからない、何度戻しても落ちてしまうなどの理由でどうしても巣に戻せない時に限り、人の手で育てることを考えます。
ただし、善意であってもツバメのような野生動物を許可なく飼うことは法律で禁止されています。
緊急の場合以外はまず管轄の野生鳥獣保護窓口に連絡し、保護する必要があるか判断を仰いでください。
行政の許可を得てヒナを育てることになった場合は、ただちにヒナを育てる環境を作りましょう。
ヒナの巣箱としては、タオルを敷いた段ボールが使いやすく衛生的でおすすめです。
そして、タオルの下にお湯を入れたペットボトルをタオルで巻いたもの、カイロなどを入れて保温します。
特に羽が生え揃っていないヒナは自力で体温の調整ができないため、保温しないと命に関わります。
定期的にペットボトルやカイロを交換し、体温を維持できるように心がけてください。
ツバメの生態の項目でも書きましたが、ツバメの主食は生きた昆虫です。
保護直後はミルワームや コオロギ 、すり餌(5分もしくは7分)を与えて体力を付けさせましょう。
ミルワームは頭を潰してから、コオロギは足や羽を取り除いてから与えます。
これらのエサが手に入らない場合は、動物性たんぱく質が多い食品を一時的に代用品として与えます。
代用品には水でふやかした ドッグフード や卵の黄身、火を通したササミやマグロの刺身などが使えます。
ただし、代用品は圧倒的に栄養素が不足しているため、速やかに昆虫を用意して与えてください。
ある程度羽が生えてきたら野生のツバメのエサである、トンボやハエ、ガなどを与えます。
口が小さいうちは昆虫の頭をつぶし、ぶつ切りにしてから与えた方が良いでしょう。
巣立ちが近くなってきたら生きた昆虫と同じ空間に入れて、自分で狩りができるように訓練します。
なお、野生のツバメの習性を考えると、地面に潜る虫やミミズ、赤虫などは食べていないと考えられます。
よほどの事情がない限り、これらを与えるのは避けてください。
ヒナがどうしてもエサを食べない場合、脱水症状を起こしている可能性があります。
その場合はスポーツドリンクや砂糖水など、糖分が含まれている水分を少量与えます。
人肌より熱めに温めた水分をくちばしの端に1・2滴つけ、自分でなめとらせましょう。
ツバメのヒナは本来、必要な水分のほとんどをエサから摂取しています。
そのため、水分を与えすぎると下痢を引き起こし、最悪の場合死に至る可能性があります。
この方法はあくまで応急処置として使用し、とにかくエサを食べさせることを最優先に考えてください。
何かと身近な野鳥であるツバメですが、実は日本国内では6種類ものツバメを見ることができます。
この項目では日本で見られる、「ツバメ」以外のツバメの仲間5種を紹介していきます。
イワツバメはツバメより一回り小さい、小型のツバメです。
特徴としては喉元に赤い模様がないこと、腹が白一色であることが挙げられます。
もともとは崖や岩壁に巣を作ることから、“イワツバメ”という名前が付けられました。
しかし、現在では市街地へ進出し、岩壁の代わりにコンクリート壁に巣を作る個体が増えています。
いつかイワツバメではなく、コンクリートツバメと呼ばれる日が来るかもしれません。
日本には主に夏鳥として飛来しますが、九州では越冬するものもいます。
学名:Delichon urbica
英名:House martin
生息地: ユーラシアからヨーロッパ、アフリカ(日本では北海道から九州)
大きさ:体長14.5cmほど
コシアカツバメは日本で見られるツバメの中でも、最も大きな体を持ったツバメです。
特徴としては名前にある通り腰が赤褐色(レンガ色)であること、ツバメよりも翼と尾が太くて濁った声で鳴くこと、腹部に黒い点線状の模様があることが挙げられます。
ツバメと同様、巣は自然物ではなく人工物に作ります。
巣はとっくりを縦で半分に割り、天井に付けたようなとっくり型をしています。
日本には夏鳥として九州以北に飛来しますが、暖かい地域では越冬するものもいます。
学名:Hirundo daurica
英名:Red-rumped swallow
生息地:アジア東南部から地中海沿岸(日本では九州以北)
大きさ:体長18cmほど
ヒメアマツバメはもともとインドや東南アジアに生息し、日本には生息していないツバメでした。
しかし、1960年頃に台湾から生息地を広げ、鹿児島県や高知県などでその姿が見られるようになりました。
その後、1967年には静岡県で繁殖していることが確認され、以降生息域を広げています。
巣の形は半球状で、繁殖だけでなく生活の場としても使用しています。
自力で巣を作らずに、イワツバメやコシアカツバメが作った巣を利用することもあります。
現在は留鳥として、関東地方以西で局地的に分布・繁殖しています。
学名:Apus nipalensis
英名:House Swift
生息地:アフリカからアジアにかけて(日本では鹿児島県や静岡県など)
大きさ:体長13cmほど
ショウドウツバメは漢字では「小洞燕」と表現され、かつては「ツチツバメ」とも呼ばれていました。
土の壁に穴を掘り、その中に巣を作ることからこの名前が付けられたといわれています。
見た目上の特徴は背面が黒ではなく赤褐色であること、そして尾の切れ込みが浅いことです。
また、胸にネクタイのようにも見える、T字模様が入っているのも大きな特徴の1つです。
日本には夏鳥として北海道にのみ飛来し、繁殖をすることで知られています。
学名:Riparia riparia
英名:Bank swallow、Sand martin
生息地:北半球の温帯以北(アフリカ、東南アジアなど)(日本では北海道)
大きさ:体長13cmほど
リュウキュウツバメは太平洋の広い範囲に生息しているツバメの一種です。
ツバメに似ていますが一回り小さく、尾が短くて切れ込みが浅い、尾の下側に白いうろこ状の模様があるという点で見分けることができます。
巣の形はツバメと似ていますが、ツバメよりも洞窟などの自然物に巣を作ることが多いです。
日本では留鳥として奄美大島から屋久島、西表島などに生息しています。
学名:Hirundo tahitica
英名:Pacific swallow
生息地:太平洋の広い範囲(日本(奄美大島以南)、台湾、フィリピン、オーストラリアなど)
大きさ:体長13~14cm
当記事では身近だけど意外と知らない、ツバメの生態や寿命、保護の方法について説明してきました。
ツバメは多くの国でその姿が見られるうえ、益鳥であることから日本以外の国でも広く愛されています。
そんなツバメは童話 「幸福な王子」 に登場するほか、東京ヤクルトスワローズのキャラクター 「つば九郎」 や茨城県筑西市や新潟県燕市の 「市の鳥」 など、さまざまなモチーフや象徴にされてきました。
エストニアとオーストリアにおいては、 国鳥 にも指定されています。
ツバメは身近な春の風物詩であり、また幸運を運ぶといわれている動物でもあります。
人間の近くで生きることを決めたツバメたちと、人間が長く共生できることを願いたいものです。
街中でツバメの姿を見かけたら、驚かさないようにそっと観察してみてください。
公開日 : 2017/11/20