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結論から言うと、 レッサーパンダ は国内か海外かに関わらず、ペットショップやインターネットの販売サイトで購入することはできません。
個人が飼育することや、商売を目的として販売されることが禁止されています。
そのため、レッサーパンダの市場価格や値段の相場は存在しないと言って良いでしょう。
レッサーパンダはワシントン条約で保護されているため、ペットとして飼うことができません。
毛皮にするための乱獲・密猟や、生息・繁殖していた森林を伐採されてきたことにより、野生化でのレッサーパンダの個体数は著しく減少してしまったのです。
ワシントン条約は、正式名称を「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」と言い、その名の通り、絶滅する危険性がある野生の動植物を保護するために、1975年に発効された国際ルールです。
国際取引で規制する対象となる動物や植物は、ワシントン条約において「附属書」というリストに掲載されており、現在、約5,000種の動物および約30,000種の植物が該当しています。
規制する内容は、絶滅する可能性の度合いによって「附属書Ⅰ」「附属書Ⅱ」「附属書Ⅲ」の3タイプに分類されるのですが、 レッサーパンダはその中でも最も危険度の高い「附属書Ⅰ」に掲載されているのです。
ワシントン条約の「附属書I」は、すでに絶滅の危険性がある生き物として定義づけられており、レッサーパンダの他に、ジャイアントパンダや ゴリラ 、オランウータン、 トラ 、ウミガメなどの約1,000種の動植物が登録されています。
附属書にリスト化された生物は、生きている個体のみならず、 肉・骨といった体の部分や、毛皮を使用する製品などについても規制内容が定められています。
「附属書I」の動植物については、商業のための輸入・輸出が禁止されている他、動物園や学術的研究のために輸出入を行いたい場合であっても、輸入国および輸出国双方の政府が発行する許可書が必要になります。
なお、 レッサーパンダはIUCN(国際自然保護連合)が作成する「絶滅のおそれのある種のレッドリスト(通称:レッドリスト)」にも、正式に絶滅危惧種として登録されています。
「レッドリスト」も、絶滅の危険度に合わせてカテゴリー分けされており、絶滅(EX)/野生絶滅(EW)/絶滅危惧IA類(CR)/絶滅危惧IB類(EN)/絶滅危惧II類(VU)/準絶滅危惧(LR)などの種類があり、レッサーパンダは
この内の「絶滅危惧II類(VU)」とされています。
レッサーパンダは主に、中国南部・ミャンマー・ネパール・インド北東部・ブータンなどの山地や森林地帯、竹やぶに生息していますが、 中国の甘粛省、青海省、貴州省、陝西省といった地域ではすでに絶滅したと考えられています。
現在、全世界にいるレッサーパンダの個体数は、野生下では約5,000〜7,000頭と推測されており、動物園などで飼育されているのは約800頭です。
レッサーパンダは2種類存在し、ネパール・インド北東部・ブータンに生息する「ネパールレッサーパンダ(ニシレッサーパンダ)」と、中国・ミャンマーに生息している「シセンレッサーパンダ」に分けられます。
「ネパールレッサーパンダ」は、鼻がやや前に突き出ており、全体の毛の色は淡く、顔の毛の色が白いという特徴があります。
一方、「シセンレッサーパンダ」は全体的な毛の色は赤茶や黒で、日本でポピュラーなタイプです。
実は飼育されているシセンレッサーパンダの約半数が、日本の動物園で生活しています。
現在、国内の動物園で飼育されているレッサーパンダの数は、約250頭です。
世界の動物園で飼育されている「ネパールレッサーパンダ」と「シセンレッサーパンダ」の数を合わせると、その内の約7割以上の数値を日本の動物園が占めており、 世界中から見て、日本のレッサーパンダの飼育数は断トツでトップを誇ります。
元々、日本にいるレッサーパンダは1980年代より中国から輸入されてきた歴史があるのですが、ワシントン条約による規制が厳格化していき、1995年に「付属書Ⅰ」として登録されて以降はほとんど輸入されなくなりました。
ただ、2005年5月に千葉市動物公園の「風太くん」の二本足で立つ姿が注目された影響もあり、レッサーパンダの育成に力を入れる施設も増え、日本での飼育・繁殖技術が向上していきました。
今や国内のほとんどのレッサーパンダは繁殖に成功して生まれた子達であり、風太くんの子孫も20匹近く生存しています。
日本の動物園の間では、繁殖のためにレッサーパンダの移動も頻繁に行われています。
レッサーパンダも人間と同様で、血縁の近いペアの交配によって生まれた子供は体が弱くなってしまう可能性があるため、別の動物園との交流は不可欠です。
なお、国内のレッサーパンダは、ワシントン条約や、環境省の「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称:種の保存法)」に基づいて飼育管理されています。
基本的に同一の国の中での移動も厳しい規制はあるのですが、国内で繁殖させた個体の場合は例外的に、環境省に申請して許可を得られたら、他の動物園へ受け渡すことが可能です。
また、日本で繁殖したシセンレッサーパンダの一部は、台湾・カナダなどの諸外国にも引っ越しをしたという記録もあり、日本での飼育研究の成果が、世界のレッサーパンダの絶滅を防ぐ役割を果たしつつあると言っても過言ではありません。
そうとは言え、まだまだ絶滅危惧種であるレッサーパンダは、簡単に飼育・繁殖させられる動物だとは決して言い切れません。
レッサーパンダの平均寿命は、野生であれば8~10年、動物園で飼育された場合は13〜20年前後です。
この限られた時間の中で、レッサーパンダの発情期は6~8月、そして12~2月頃にしか訪れません。
オス・メスともに複数の個体とペアになりますが、 一度に出産できるのは1~4頭で、たいていの場合は2頭しか生まれないため、子どもがたくさん増えていかないというのが現状です。
また、主に山地や森林といった冷しく湿潤な環境で生息するレッサーパンダにとっては、過ごしやすい場所が限定されます。
夏は屋内の冷房が効いた部屋で生活させている施設もあるほどです。
飼育するための知識や技術が上がってきたという事実はあるものの、これからも注意深く観察してあげることが大切です。
以上のような理由から、この先もレッサーパンダをペットとして家庭にお迎えするのは、現実的ではありませんよね。
しかし、懸命に努力を重ねてレッサーパンダを健やかに育て続けている施設が、日本にたくさんあることも確かです。
やはり動物園に赴き、元気なレッサーパンダ達を温かく見守ってあげることが一番です。
国内では、 那須どうぶつ王国 や、 長野市茶臼山動物園 、 千葉市動物公園 、そして 東京都多摩動物公園 など多くの動物園でシセンレッサーパンダに会うことができます。
国内でニシレッサーパンダ(ネパールレッサーパンダ)に会える動物園は、2023年現在では熱川バナナワニ園が唯一ですので、レッサーパンダ好きの方はぜひ会いに行ってみてください。
愛らしく、そして力強く生きているレッサーパンダの姿を皆が目に焼き付けることによって、再び人間達のために命や生息場所を奪われてしまうことがないよう、より深く意識してあげられるようになるのではないでしょうか。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/05/25
公開日 : 2018/08/03