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「保健所」という言葉は多くの人が聞いたことのある言葉だと思います。
野良犬や野良猫が連れていかれるところ、飼い主が連れていくところ、営利目的の生体販売業者が連れていくところ。
そんなイメージでしょうか。
もちろん、保健所に連れていかれた犬にとって、そこは安寧の地ではありません。
運良く動物保護団体や新しい飼い主に巡り会えた犬猫もいるでしょう。
しかし、多くの犬や 猫 にとっては苦しい死が待つ場所。
このページでは、日本における保健所や 殺処分 などペット業界の裏側のお話など、ペットを愛する人たちにぜひ知っておいて欲しいことをまとめました。
日本は先進国としては、殺処分数が多いとされています。
28年度、保健所に引き取られた犬は約41,000匹。
譲渡会に訪れた新たな飼い主や動物保護団体などに巡り会えた犬以外の、処分された犬は約10,000匹にも及びます。
月に800匹が全国の保健所や動物愛護センターで殺処分されている計算です。
これらの犬の中には、野良犬の他にも、問題行動に手を焼いた飼い主や引越しなどで飼えなくなった飼い主、「売れなかった」ことを理由に持ち込む生体販売業者により持ち込まれた犬たちも含まれています。
26年度の法改正により、保健所の引き取り基準が厳しくなったものの、無責任な飼い主や悪質なブリーダー、販売業者の持ち込みは続いています。
保健所に連れてこられた犬の命の猶予は、多くの場合7日間。
地域やセンターによって異なりますが、1〜7日目までの部屋がそれぞれあるところが多く、1日目の部屋に始めは入れられることになります。
2日目、3日目と、犬たちは移動していきます。
その環境は決してどこも綺麗なものとはいえません。
病気の犬やケガをしている犬も全て一緒くたに入れらる場合がほとんど。
7日目までに譲渡会向けに選ばれる犬や動物保護団体に引き取られる犬は幸運ですが、その他の犬は 殺処分 されます。
誤解している人が多いところですが、殺処分は決して安楽死ではありません。
苦しんで苦しんで死んでいきます。
これも地域や愛護センターにより異なりますが、7日目の部屋が終わると壁が迫って犬たちを殺処分の部屋に追い込むというところが多いようです。
殺処分は、密閉された個室に二酸化炭素を流し込み、窒息死させるもの。
死亡させた後は焼却室にそのまま自動で送られるか、職員の手によって運ばれます。
二酸化炭素によるこの殺処分を安楽死として解釈する人もいますが、犬猫たちは、苦しみに悶えながら死んでいきます。
犬にとっては、突然見知らぬところに連れてこられ、壁が迫って暗い部屋に押し込まれ、息ができなくなる恐怖しかありません。
麻酔薬注射や薬剤投与による本当の安楽死を行う保健所やセンターも出てきましたが、コストが安い二酸化炭素を使う地域の方がまだまだ多いのが現状です。
前述した通り、日本は先進国でありながら動物愛護後進国。
一部の外国の動物愛護主義者からは「動物虐待大国」と揶揄されてきました。
これは日本のペット産業の在り方や家畜の動物福祉、動物実験などのシステムが背景にあります。
欧米では犬や猫は ブリーダー から直接購入するのが一般的であり、日本のペットショップのようにショーケースに入れて並べられた 子犬 や 子猫 はまず見られません。
良質なブリーダーから直接譲り受ければ、早すぎる月齢で親や兄弟から離され社会化不足であったり、病気がちであったりという個体を購入してしまったということはまずありません。
さらに良質なブリーダーはある程度の しつけ も済ませてくれるので、飼ってからの問題行動に悩むことが少なくなるのです。
そんな動物先進国の保健所はどのようなものでしょうか。
犬大国ドイツには「ティアハイム(Tireheim: 動物の家)」と呼ばれる愛護センターがあります。
ここは日本の保健所と同じく、捨てられたり事情によって飼えなくなったりというペットたちが集められる施設。
ただし、日本の殺処分のようなものはなく、引き取り手がなければ、生涯をその施設で過ごすことができます。
ブリーディングの本場、イギリスでは「アニマルシェルター(animal shelter)」が日本でいう保健所または動物愛護センター。
殺処分 はあるものの、本当の意味で苦しみのない安楽死の方法がとられています。
苦しんで死ぬ犬や猫を減らし、殺処分ゼロにするにはどうすれば良いでしょうか。
日本の場合、ドイツをマネただけでは意味がなさそうです。
なぜなら、犬に対してのしつけと税金が義務化されているドイツに比べ、日本では安易に犬の飼育ができるから。
もし、しつけ不足により問題行動のある犬に手を焼いていて、「殺されない」保健所があれば、簡単にペットを持ち込む飼い主が増えることは想像に難くありません。
また、日本のペットショップに見られる産業の構図は、流行の子犬を大量に仕入れる販売業者と並べられた犬猫の可愛さで思わず飼ってしまう消費者というものが多く、極端に悪い例なら、悪質な業者のブリーディングや販売の仕方で売られたしつけしにくく病気になりやすい犬猫を、飼育知識も覚悟もない消費者が購入するという構図が成り立ってしまいます。
ブリーダーから手に入れるより倍手のかかる可能性がある犬を、覚悟のない飼い主が飼ったら起こり得ることは想像がつきますね。
保健所の実態や殺処分の現状について描かれた書籍や映画もいくつかあります。
これらを知っておくことも「私たちのできること」。
より深く動物愛護について知るために役立つ書籍と映画をご紹介しましょう。
日本一の動物愛護センターを目指す愛媛県動物愛護センター職員たちの奮闘を描いたノンフィクション。
捨てられる命を一頭でも減らす社会をつくるために、私たちが知っておかなければいけないことを、子どもでも分かりやすく書いています。
命の尊さを考えることができる一冊です。
2013年公開の実話を元にした堺雅人主演の邦画。
宮崎県の保健所で働く神崎彰司が捕獲した、山の中で子育てをする柴犬のメスと子犬たち。
母犬と子犬たちのタイムリミットは一週間。
保健所に連れてこられた動物たちの末路を隠すことなく映像化。
動物を愛する主人公の奮闘に感動し、命について考えさせられる作品です。
日本の殺処分数は多いといえ、昔に比べればその現状は幾分マシになってきました。
犬猫を引き取る団体や、 里親 として犬猫を引き取る運動が多くなり、譲渡数や迷い猫・犬の返還数もかなり増えてきました。
今後の課題は蛇口となる悪質なペット販売業者と無責任な飼い主を減らすことでしょう。
それには社会全体やペット業界の変革が必要です。
それ以外に、私たち個人では何ができるでしょうか。
私たち個人で始められることといえば、動物愛護センターや動物保護団体のボランティア。
そのボランティアは多岐に渡ります。
施設の動物たちのお世話や一時預かりとして犬や猫を受け入れること、譲渡会のお手伝いや募金を募るお手伝いなどなど。
どんな形であれ、動物たちへの想いと少しの時間があれば、誰でもその門戸を叩くことはできるでしょう。
もちろん、一時預かりや動物のお世話については命に対する責任感が必要です。
保健所や動物愛護センターから犬を引き取ること、動物愛護団体から譲り受けることも私たちができること。
保健所から引き取れば、そのまま殺処分されるはずだった犬の命を救うことに繋がります。
また、愛護団体から譲り受けることで、その愛護団体はまた新たな命を救うことができるため、間接的に命を救うことができます。
ただし、一度人間に裏切られた犬や猫を譲り受けるのはペットショップで購入するよりずっと多くの手間がかかります。
それは、その飼い主がこれから動物を長く可愛がってくれるかきちんと判断するから。
本来なら、ペットショップでもそうあってほしいものです。
犬が飼えない、仕事で時間もない、という方もできることはあります。
金銭面での支援も動物愛護団体にとって非常にありがたいものです。
多くの活動団体はボランティアによるもので、財源は寄付によるもの。
寄付の中から保護した犬猫の食事や生活費、病院代、施設運営費などを捻出しているのです。
お金の支援は最も身近な「私たちにできること」ではないでしょうか。
非暴力を唱えたインドの偉人・ガンジーは言いました。
「 国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方で判る」
この言葉で計るならまだまだ日本は偉大な国とはいえません。
殺処分された犬たちがそのまま焼却場に送られる様子は、ナチスドイツのホロコーストさえも連想させます。
アウシュビッツやダッハウのユダヤ人収容所に残る、ガス室と隣り合わせとなった焼却施設という殺しをシステム化したものと同じです。
この記事をご覧のあなたは、おそらくはそんな現状に憤り、悲しみを持たれる慈悲深い人であることと思います。
そんなあなたにできることがたくさん。次の世代のために、一緒に本当の意味で道徳的に発展した社会を目指しましょう。
公開日 : 2017/10/06