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口腔内の疾患がもとになって起こる口臭は、 炎症に起因してニオイが発生 することが多いです。
口腔内の剥がれ落ちた細胞、唾液、歯肉からの滲出液、歯垢の中のアミノ酸などが、口腔内の細菌により分解されます。
その分解される際に発生する、主に 硫化水素などの揮発性ガスがニオイの原因 といわれています。
腎機能低下などの内臓が原因の口臭では、また異なった発生機序になってきます。
猫の口臭は様々なことが原因で起こります。
例えば、お口の病気以外にも、腎臓の病気や肝臓の病気でも起こる可能性があります。
ただし、子猫においてそのような内臓の病気で口臭が発生する可能性は、大人の猫に比べると決して高くありません。
もちろん、中毒を起こしたりひどく栄養状態の悪い環境では、子猫なのに内臓に異常を起こしてしまう可能性はあります。
しかし、一般的には高齢になってきてそれらの病気にかかってしまうことが多いです。
そのため、今回は子猫で特に考えられる口臭の原因について解説します。
歯周疾患を重症化させる因子 として、 口腔トリコモナスという原虫 の関与があると考えられています。
この寄生虫は人獣共通感染症です。
口腔トリコモナス原虫の感染率は、犬が15~ 25% 、猫が19%であったとヨーロッパでの報告があります。
2016年に日本で発表された研究では、検出方法が異なるため単純に比較することはできませんが、口腔トリコモナス原虫は犬が27.7%,猫が10.5%に確認されています。
この研究の対象猫の66%(38頭中25頭)が完全室内飼育でした。
また、他の猫と接触がないことや飼い主が口にしたものを食べたり、人の口を舐めたりする行動が猫では少ないことなどから、犬よりも猫の方が感染率が少なかった理由として推測されています。
口腔トリコモナスに感染すると、免疫グロブリンという免疫に関与するタンパク質が分解され、生体防御反応が消失します。
口腔トリコモナスは、このように歯周炎の誘発と進行に関与しているのです。
また、口腔トリコモナスには赤血球分解能もあり、その分解産物である鉄イオンが歯周病細菌の産生を助けることが知られています。
すでに歯周疾患を起こしてる場合、口腔トリコモナスに感染すると組織の破壊がさらに進むと考えられています。
この研究では、口臭の度合いや歯肉の炎症をスコア化して、口腔トリコモナス確認群と非確認群で比較しています。
その結果、口臭、歯肉炎に関しても、2つのグループで有意差は認められなかったということです。
ただし平均値をとると、確認群の方がいずれもスコアとしては高い値が出ています。
具体的には、口臭レベルとして“悪臭と容易に判定できる程度”、歯肉炎レベルとして“軽度〜中等度の炎症”が確認群の平均値となっています。
そのことから、口腔トリコモナス感染がなくても歯周疾患に罹患している猫は多いですが、口腔トリコモナスに感染しているとより重度の歯肉炎や口臭を起こす可能性が示唆されます。
人間では古い研究になりますが、口腔トリコモナスは50歳以上の男性で多く認められています。
4%〜53%の人の口の中に存在していて、通常は何の症状も起こさないといわれています。
ただし、歯肉の炎症の程度と口腔トリコモナスの検出率の間に関連性が認められ、炎症の程度が強いほど検出率も高いという報告もあります。
肉食動物である猫のフードは、タンパク質の含有量が多いです。
また、日本の猫は魚好きのイメージが強いため、 魚がメインの缶詰が多い と思います。
ささみなどがはいっていても、まぐろやカツオなどの魚も含まれているものがほとんどです。
これらの缶詰タイプのフードは、人間がニオイをかいでもかなり生臭さを感じます。
猫にとってはそのニオイが魅力的なので、缶詰を開けた瞬間から大興奮する猫も多いと思います。
そのため、そのようなフードをメインに食べてる子では、 食べた後に お口の周りやお口の中から 魚の生臭いニオイがする可能性 があります。
通常、お水を飲んだり、しばらく時間が経てばそのようなニオイはやわらいできます。
特に健康面に問題はないですが、気になる方はフードの種類を変更してみるのも良いでしょう。
猫の場合は、もともと祖先が砂漠出身で飲水量が少なく、獲物を血液ごと食べることで水分補給をしていたといわれています。
そのことが原因で、高齢になると腎臓を傷めやすいのではないかともいわれているのです。
缶詰のような ウェットフードは、ごはんから水分をとるという猫の本来の性質にあったごはん なので、 健康面には良い作用が期待できます 。
ただし、 歯はドライフードに比べると汚れやすくなる ので、ウェットフードをメインに食べさせる場合はお口のケアもしっかり行っていきましょう。
歯垢は大人の猫における歯周病の発症原因の一つです。
また、 歯石は症状を更に悪化させる要因のひとつと考えられています。
そのため、歯周病の発生頻度や重症度は、一般的に年齢が高齢になるほど上昇します。
しかし、 稀に歯垢・歯石の沈着が軽度〜中等度の若齢猫において重度の歯肉炎や歯周炎が認められることがあります 。
この病気は若年性歯周病と呼ばれており、 若年性過形成性歯肉炎 と 若年性歯周炎 に大別されています。
発症年齢は生後9ヶ月未満で歯石の沈着は中等度以上です。
痛みを伴うので、ごはんを食べられず体重が減少してしまったり、よだれを垂らすこともあり生活の質を著しく低下させます。
重症例では骨が溶けてしまったり、歯肉が後退して歯根が見えてしまうこともあるのです。
シャム、バーミーズ、メインクーン、アビシニアンなどが罹患しやすいという報告があります。
しかし、他の種類の猫にも発生は認められており、原因は不明です。
潜在する免疫疾患や、猫免疫不全ウイルス、猫白血病ウイルス、猫カリシウイルスなどの関与も疑われています。
治療としては、抗生剤や抗炎症薬の使用、抜歯などが適応になります。
生後3.5〜7ヶ月の永久歯への交換期に認められます。
歯石の蓄積は軽度で、歯垢は軽度〜中等度に蓄積します。
歯肉の過形成が特徴的です。
赤い歯肉が歯にのっかてくるように増殖しています。
その部分が大きいと歯周ポケットのような機能を持ってしまうため、歯垢がたまり歯のトラブルに繋がる可能性があり、切除する必要が出てきます。
歯の生え変わりがうまくいかなかった場合、口腔内の環境に悪影響 を及ぼし、 口臭の原因になる可能性 もあります。
永久歯が生えてきても乳歯が抜けずに、残ってしまった状態です。
猫では比較的稀ですが、 生後6〜7ヶ月を過ぎても乳歯が抜けずに永久歯と同じ場所に残ってしまい 、重なって二枚歯のような状態になってしまいます。
その隣り合った歯の隙間には歯垢が、とても蓄積しやすく口腔内のトラブルの原因になります。
また、乳歯と重なり合って生えてきた永久歯の長さが外見上同じになってから、 2週間以上経過すると咬み合わせが悪くなってしまいます 。
そのため、早期の対応が必要です。
強い力での引っぱりっこ遊びなど、乳歯の時期に歯に強い力が加わったことで途中で乳歯が折れてしまうことです。
歯の中央部には歯髄という毛細血管や神経からなる組織が存在しています。
これが歯が折れてしまうことにより、口腔内に露出していると感染などを起こす可能性があります。
特に 乳歯の場合は、生えてる途中の永久歯に悪影響を及ぼす可能性があるために、動物病院での処置が必要 となってきます、
乳歯が抜けて、永久歯に生え変わる時は口腔内の環境が不安定になりやすいので、それに伴って口臭が発生することがあります。
歯の生え変わりにより、歯肉に軽度の炎症や出血を起こすことで、口臭が発生する可能性があります。
子猫をお迎えすると、歯の生え変わりを経験します。
どういう風に子猫の歯は抜け替わっていくのでしょうか。
猫の乳歯は26本、永久歯は30本あります。
犬では永久歯は42本あります。
猫は犬よりも歯の本数が少ないのです。
一般的に生後2〜4週齢で乳歯が生え始めて、5〜8週齢で乳歯が生え揃います。
その後、生後11週齢辺りで永久歯への生え変わりがスタートし、生後6〜7ヶ月で完了するといわれています。
ただし、生え変わりには個体差があるので月齢で確実に判断することはできません。
そのため、歯の生え変わりの順番を目安に、生え変わりの進行度合いを判断していきます。
歯の生え変わりの順番は下記の通りです。
下顎切歯(前歯)
↓
上顎切歯
↓
下顎前臼歯(奥歯の前の方)
↓
上顎前臼歯
↓
下顎犬歯・下顎第1後臼歯(奥歯の後ろの方)
↓
上顎第1後臼歯
↓
上顎犬歯・上下顎第2、3後臼歯
基本的に一箇所には一本の歯しか存在できないため、永久歯が出てくると乳歯はすぐに抜けてしまいます。
この時に、うまく交換できなくて乳歯が残ってしまうと、動物病院で麻酔をかけて乳歯を抜く必要がでてきます。
子猫の口臭の予防法についてお話します。
餌が原因で口臭が出ている可能性がある場合、餌を変更してみることもひとつの選択肢になります。
ウェットフードを食べていてまだ歯磨きが難しい場合は、 食後に猫ちゃん用の歯磨きスナックや、ドライフードを数粒食べさせてあげる こともおすすめです。
完全に歯の汚れを取るには、歯ブラシで歯磨きをしなくてはいけませんが、ある程度の歯垢や食べかすの除去効果が期待できます。
こちらのキャットフードは歯磨き機能のあるタイプのものです。
粒が大きめなので、猫ちゃんが噛んで飲み込む可能性が高く歯磨き効果が期待できます。
完全に切り替えなくても、普段のフードの後に数粒与えるという使い方もおすすめです。
こちらは歯磨きスナックです。
いろんな味があるので、愛猫のお気に入りを見つけてあげるのも良いでしょう。
猫はとってもかわいので、思わずキスしたり、自分のかじった食べ物を与えたくなってしまうこともあるかと思います。
ただし、人獣共通感染症(ズーノーシス)といって、人にも猫にも感染し合う病原体があります。
前述の口腔トリコモナスもそのひとつです。
お互いの健康のためにも 、 過度なスキンシップをとらないように 注意しましょう。
乳歯が残ってしまっていないか、生え変わりでトラブルが起こってないか、日々確認してあげましょう。
猫の口を開けるのは慣れるまで少しむずかしいかもしれませんが、子猫と一緒に飼い主さんも練習してくようにしてください。
まず、猫の頬骨(目尻の下の指がひっかかる少し膨らんでいるところ)に親指と人差し指を引っ掛けます。
それから下顎の前歯の辺りを逆の手で下げるようにすると、簡単に口を開けることができます。
猫の歯は鋭いので、犬歯に当たらないように気を付けましょう。
また、嫌がる猫を押さえつけて無理やり行うことは、今後口腔ケアができなくなる原因にもなり得るので絶対にやめましょう。
まずは頬骨に触るだけでおやつを与える、嫌がらなくなったら下顎にも触るなど、段階的に慣らしていきましょう。
「乳歯のうちから、歯磨きをしなくてはいけない」とプレッシャーに感じてしまう飼い主さんも多くいらっしゃいます。
乳歯は短期間で抜けてしまう歯なので、頑張りすぎなくても良い時期です。
乳歯の時期は、歯磨きに慣れるためのトレーニング期間 と考えて気楽に行いましょう。
嫌がるのに、無理やり歯磨きを行うことは絶対にやめてください。
嫌な記憶によって口を触らせてくれないようになってしまう可能性があり、今後の健康管理の大きな妨げになる可能性があります。
また、歯磨きシートを誤飲してしまう可能性もあります。
まずは 口に触る練習から始めましょう 。
口に触るだけでおやつを与えてください。
また、ペット用の歯磨き粉は、口腔内の環境を健康に維持する作用の他にも、美味しい味がついているものが多いです。
ペット用歯磨き粉をおやつとして歯磨きトレーニングに使うのはおすすめ です。
指につけたものをなめさせて、味を覚えさせたり口に触るトレーニングをし、今度は歯磨き粉をつけた指を口の中にいれるトレーニングに進んでいきましょう。
いずれも、猫が少しでも嫌がったらやめて嫌がらない段階まで戻り、その段階をまたしばらく続けるというようにしてトレーニングしてください。
同時に歯ブラシにも慣らすことが重要です。
歯ブラシを使わないと、肝心な歯周ポケットに入り込んでいる歯垢は除去できません。
まずは歯ブラシを見せるだけでおやつを与え、少しずつ段階を踏んで歯磨きに到達できるようにしてみましょう。
猫は肉食動物なので、人間と違ってあまり咀嚼をしません。
猫の歯は肉をハサミのように切り裂くことに特化しているため、すりつぶすような噛み方はしないのです。
そのため、現在のような食事ではフードを丸呑みしてしまう子も多く見られます。
しかし、歯はそれほど使っていないから重要ではないと歯のケアを怠ると、将来的に口腔内の病気になってしまう可能性があります。
猫は歯の本数は多くないので、子猫のうちから歯磨きの練習をしてトラブルを予防しましょう。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2021/01/08
公開日 : 2021/01/08