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イモリは有尾目イモリ科に属する両生類の仲間です。
仲間は北米・アフリカ大陸の地中海沿岸およびユーラシア大陸、日本に生息しています。
我が国に生息しているイモリは3種類。
北海道を除く本州・四国・九州とその周辺島嶼に広く分布している アカハライモリ 、南西諸島に分布しているシリケンイモリ・イボイモリです。
森林や河川・湖沼など幅広く分布していて、泳ぐことのできない完全な陸棲種、専ら水中で生活している水棲種、陸上と水中を行き来する両棲種と様々なタイプが存在していますが、我が国に生息する3種は両棲種の仲間です。
肉食性で、自然界では昆虫、甲殻類、ミミズ、 カエル などを食べています。
毒を持っている個体が多いことも特徴のひとつに挙げられます。
名前が似た生き物に「 ヤモリ 」がおりますが、「ヤモリ」と「イモリ」の違いはヤモリが爬虫類であることに対し、イモリは両生類に分類されます。
ともに古くから日本人の生活に深くかかわりあってきた生き物で、ヤモリは人家に棲みつき、有害な昆虫などから家を守ってくれることから「家守」と呼ばれ、飲料水であった井戸の近くに棲んで、有害な生き物から大事な井戸を守ってくれることから「井守」のネーミングになったと伝わっています。
ここからは、イモリの中でもメジャーなペットであるアカハライモリを中心に、イモリの特徴をご紹介します。
実際にイモリを飼う際の参考にしてください。
イモリの仲間は毒を持つ種類が数多く存在します。
外国産のイモリの中には、外敵に向かって毒を発射するという恐ろしい習性を持ったものまでいるのです。
日本国内にいるアカハライモリもシリケンイモリも、例外なく毒を持っています。
耳の後ろにあるコブから毒素を分泌しますが、この毒はフグ毒と同じテトロドキシンという猛毒。
なんと300℃で加熱しても分解させず、人が口から摂取した場合の致死量は1~2mgほどだそうです。
しかしながら、イモリの毒は細菌などから身を守るためのごく微量なもの。
例えば、イモリを食用にしているサギなどの天敵も中毒死したりすることもありません。
ただ、イモリを触れた場合は必ず、手を洗うようにしてください。
手を洗わないで目をこすったりすると、炎症を起こす危険性があります。
ちなみに、ペットショップなどで販売されている個体は養殖物が多く、ほとんどが無毒か微量なので安心してください。
養殖物の毒が弱い理由は餌となる対象によって、毒の強弱が関係するためです。
そもそもイモリは変温動物であるため、人に必要以上に触られすると体温調節が困難になり弱ってしまうことがあります。
イモリに触れるのは、水替え時など必要最低限度にとどめ、触れた場合は必ず石鹸で手洗いをすれば特別恐れる心配はありません。
植物の世界では 「美しいバラには棘がある」との慣用句どおり、綺麗だからといってむやみに近づくなと言われますが、動物界でも同じです。
例えば、同じ両生類であるカエルの仲間には黄色や赤などの派手な体表の種類がいて、毒を持っています。
イモリの腹部の赤と黒のマダラ模様は、天敵に対し「私を食べると大変なことになるよ!」という警戒色なのです。
いざ外敵に襲われそうになると、ひっくり返って腹部を強調するような行動をとることが知られています。
ところで、日本固有種のアカハライモリは、自然界では生息する場所によって体表が異なると言われています。
色が真っ赤だったり、オレンジだったり、斑模様が多かったり少なかったりと、体表の色や模様で大まかに出身地がわかるのは面白いですよね。
ただ、注意しておきたいのは、その生息地によって持っている毒の強さが異なるということ。
普段食べている食事の内容によって影響を受けると言われています。
爬虫類のトカゲは外敵に襲われると尻尾を切って逃げますが、また再生することで知られています。
しかし、トカゲの場合は尻尾は再生できても、尻尾の骨まではさすがに再生することができません。
それに比べて、イモリの再生能力は凄いです。
尻尾を切断しても骨まで再生してしまい、さらにはしっぽだけでなく、手足も同様に完全再生してしまうのです。
イモリの仲間は長寿です。
アカハライモリは、自然界では25~30年近く生きると言われています。
飼育下でも、うまく育てれば10年以上生きることが可能です。
長くお付き合いできるペットなので、飼うときは責任をもって育てるようにしましょう。
ちなみに、両生類は意外に長生きするのものが多く、外国産イモリである「ファイアーサラマンダー」は10年位、ツメガエルなどカエル類でも10年以上生きる種類も珍しくありません。
オオサンショウウオ類に至っては、なんと50~60年ほどの寿命があります。
アカハライモリの体長は全長10cmほどで、それ以上大きくなることはほとんどありません。
そのため、成長に従って住み替えしたり、住み替えに伴う設置場所に頭を悩ます必要はないです。
基本的にペットショップなどで売られている個体は成体なので、購入時の大きさで水槽を選択すれば良いでしょう。
同じ国産種のシリケンイモリは、成長すると15~18cmほどと少し大きくなりますので、アカハライモリと一緒に飼う場合は大き目の水槽を準備するのが無難です。
イモリの仲間は肉食性です。
自然界では昆虫、ミミズ、甲殻類、自分より小さな魚類や両生類を食べて生活しています。
飼育下では、イトミミズ、アカムシなどの生餌が良いとさせていますが、慣れてくれば乾燥アカムシも好んで食べてくれます。
成長に伴って餌を変える心配がなく、乾燥アカムシなら保存も簡単で安価であり経済的であると言えます。
イモリは自然界では川の淀みや田んぼ、湖沼や池など流れのない水の近くに住んでいます。
ずっと水中に住んでいるわけではなく、森の中など陸上でも生活しているため、飼育下では水陸両用の環境を作ることが大切です。
アカハライモリと比べて陸上での生活時間が長いとされる南方系のシリケンイモリでも、ペットショップではアカハライモリと同じ環境で販売されている場合が多いため、アカハライモリと同じ環境設定で問題ないと思われます。
イモリの仲間には胎生の種類(ファイアーサラマンダーなど)も存在しますが、国産のアカハライモリやシリケンイモリは卵から誕生します。
卵から孵化した幼生は、ウーパールーパーのように外鰓があるオタマジャクシ状で、成長に従って前脚から先に生えてきます。
この点はカエルとは逆です。
やがて後脚が生え、外鰓が消滅すると一旦陸上生活を送り、3年くらいで成体となって水辺に戻ってくるという成長パターンです。
尻尾の形で雄と雌の区別をすることができます。
雌の尻尾は剣先のように尖っており細目で、雄は丸味を帯びていて太目です。
アカハライモリの場合は雄と雌の大きさがほとんど同じなので、それだけけでは判断できません。
イモリも生活環境が悪いと体調を崩します。
通常の動物病院では、イモリの診察をするところは非常に少ないと思われますので、予防が第一と言えるでしょう。
具体的には水質悪化に伴う水カビ病、皮膚に白点が発生するモルチベストという病気に注意が必要です。
これらの病気の確実な治療法は確立されていないようですが、もし病気の個体を発見したら隔離し、塩浴をさせるようにしましょう。
自己治癒力もあって、治るケースも多いです。
また、肥満や腹下し等の症状が出ることがありますが、人間の場合と同じで、餌を与え過ぎないなど食生活を改善する必要があります。
他に脱皮不全で身動きが取れなくなっていたり、喧嘩でケガを負う場合がありますが、脱皮不全の場合はピンセットで古い皮を取り除き、ケガの場合は塩浴させて傷を癒してあげるようにしましょう。
イモリは自然界から採取することも可能ではありますが、ペットショップかホームセンターのペット売り場で購入するのが一般的です。
アカハライモリの場合、店舗によって違いがあるものの、おおよそ1匹あたり200~500円の範囲内で購入することができます。
沖縄・奄美産のシリケンイモリは、流通量が少なくあまり商品として扱っている店舗は少ないのですが、アカハライモリより割高で700~1,000円位が相場です。
また、縁日やイベントなどで行うことがある「イモリすくい」で入手するのもひとつの方法です。
「イモリすくい」のイモリにはアカハラとシリケンが混在しているケースが多く、500円位のゲーム代で、2匹お持ち帰りの設定になっている場合が多いので、希少なシリケンイモリを格安で入手できるチャンスです。
余談ながら自然界から採取する場合、地域の条例で持ち出しが禁止させている場所(例:埼玉県)があるため注意が必要です。
国産イモリの飼育方法は簡単です。
水質や温度管理に神経質になる必要もなく、餌を食べなくて困るということもほとんどありません。
しかし、基本的な飼育方法は把握しておきたいものです。
これから、国産イモリの代表格であるアカハライモリの飼い方を中心に説明します。
前述した通り、アカハライモリの場合は購入時の体長より大きくなることはほとんどないので、飼う予定の個体数に応じた大きさで検討してみてください。
参考までに45~60cmの水槽なら2~3匹が妥当で、プラケースでの飼育も十分可能です。
参考価格:2,664円(税込)
メーカー名:ジェックス
サイズ (幅X奥行X高さ) :60×30×26cm
重量:5.5㎏
生産国:インドネシア
陸地の設置は、両棲種のイモリにとって必要不可欠です。
小さな水槽であれば、市販されている亀用の陸地を購入するのも良いですし、浮島タイプのものを使用しても問題ありません。
水槽のレイアウトに応じて選択すると良いでしょう。
参考価格:1,680円(税込)
メーカー名:リトルスワロー
サイズ (幅X奥行X高さ) :17×11.5×15cm
市販されている金魚用の敷き砂で充分です。
参考価格:991円(税込)
メーカー名:ジェックス
内容量:5kg
生産国:中国
陸地に空洞があって、イモリが休憩できるスペースがあればベストですが、ない場合は陸地の上に置けるタイプの小さなものを設置しておきましょう。
その他あると便利なものとして、濾過フィルター(あると掃除の回数が減る)、エアレーション、水草、水苔などがあります。
水槽のレイアウトを考えて随時設置すると良いです。
参考価格:1,175円(税込)
メーカー名:スドー
サイズ (幅X奥行X高さ) :9.3×4.7×11cm
重量:220g
上記で簡易な飼育準備ができました。
この設備で充分ですが、濾過機やエアレーションを設置する場合は水槽を購入した時の説明書に従って設置してください。
水槽の水は餌の食べ残しやイモリの糞尿などでかなり汚れます。
夏場は3日に1回、冬場でも最低1週間に1回は水替えをするようにしたいものです。
水槽の大きさにもよりますが、プラケースや45cm位までの小型水槽の場合は、一旦カルキ抜きした水を入れたバケツにイモリを避難し、敷き砂ごとゴシゴシ洗いましょう。
大きめの水槽の場合は水量を1/3程度残してポンプ(灯油などを入れる時に使うポンプが安価で使い勝手がよい)で水を吸い上げ、カルキ抜きした新しい水を補充します。
水温は常温で問題ありません。
飼育下での理想的な餌は活アカムシやイトミミズが理想ですが、水質を悪化させ、頻繁な水替えが必要です。
そこで、イモリが慣れてきたら乾燥のアカムシやイトミミズに切り替えてみましょう。
慣れてくれば結構食べますし、栄養分も豊富です。
1回の餌やりはイモリが食べきれる量を与えましょう。
乾燥アカムシの場合、付属しているスプーン1杯が理想です。
1日1回程度の餌やりで大丈夫です。
温度管理は基本的に常温で大丈夫です。
問題は夏場で、イモリは暑さが苦手なため、風通しが良く直接日の当たらない場所に水槽を設置し、水温が極端に上がるようなことのないようにしてください。
逆に冬場は、室内で飼育する場合は水温が極端に低下することがないのであまり心配いりません。
定期的な水替えをしていれば問題ないと思います。
南方系のシリケンイモリについては、特に冬場にはヒーター等で若干高め(20℃前後)に水温にしておいた方が健康を保てます。
自然界のイモリは冬場に冬眠をしますが、屋内での飼育下では水温が極端に下がることもないため冬眠しません。
しかし、春~秋期と比べて動きが鈍くなりますので、餌は控えめに。
また、冬眠をさせると繁殖しやすいと言われていますので、繁殖を考えた場合、冬場はしっかりと冬眠させた方が理想的です。
水槽内に水苔をしっかり敷き、水槽を屋外に置いて徐々に外気の低温に慣らします。
低温すぎて凍結させることのないように気を付けてください。
そうすれば、イモリは水苔に隠れて冬眠を始めることでしょう。
当然の事ですが繁殖を考えた場合、雄雌のペアがいる必要です。
イモリ同士の相性もありますので、複数のペアを飼うことが理想でしょう。
イモリは卵を水草に産み付けるので、水草を水槽に入れておきます。
水草は金魚用のもので問題ありません。
自然界では冬場の冬眠明けが繁殖期になりますので、しっかり冬眠させることも必要です。
もしイモリの卵を見つけたら、水草のまま水槽から取り出し、別のプラケースに移動させます。
なるべく風通しのよい場所に置き、新鮮な水の中に入れてください。
卵はだいたい2週間程度で孵化します。
孵化して2~3日たったらブラインシュリンプなどを与えましょう。
3年もすれば成体になります。
これまでペットとしてもおすすめの種類であるアカハライモリに関して詳しく解説しました。
ここからは、イモリの飼育初心者には余りおすすめ出来ませんが、レアで人気も高いイモリの海外在住種をご紹介します。
ギリシャ語で「火のトカゲ」を意味するサラマンダー。
ヨーロッパでは古代より「火の精霊」と崇められ、紋章などに正義や勇猛の象徴として描かれてきました。
中央ヨーロッパおよび南ヨーロッパ全域の薄暗い森林の中に、広範囲に生息しています。
真っ黒な体表に黄色のまだら模様がいかにも不気味で、大きさは20cm前後、大きな個体になると30cmを超えることもあります。
このイモリの最大の特徴は、敵に襲われると体表から猛毒の毒液を発射すること。
秒速300cmと高速で、的中率は抜群。
毒液を浴びると筋肉の痙攣や血圧の上昇を伴い、死に至る危険性もあるほどです。
この恐ろしいイモリはペットとして意外にも人気があり、1匹およそ10,000円以上で購入することができます。
飼育するにあたっての注意事項は、通常は森の中に生息しているため、アカハライモリのように水槽に水を入れる必要はありません。
水槽の下水苔などを敷き湿度を保ち、浅めの皿などに水を入れたものを水飲み場として設置します。
餌は コオロギ やミールワームなどの生き餌を好みます。
涼しい環境に住んでいる生き物なので、温度管理に気を付けてください。
真夏でも25℃以上にならないような、涼しくて風通しのよい場所で飼育するようにしましょう。
ちなみに、毒液の噴射はよほど生命の危険がないとせず、飼い主に対して噴射したことも過去に実例はほとんどはないため、過度に神経質にならなくても大丈夫です。
茶色い体表に頭、足、尻尾、背中のイボが鮮やかなオレンジ色をした見るからに古代恐竜のような姿のミナミイボイモリ。
原産は中国南部 雲南省の標高1000~2000mの高地にある水辺です。
夜行性で、繁殖期以外はほとんど水辺に姿を現さないという完全陸棲のイモリです。
体長は18cm前後、原産地では昆虫や 小動物 を食べて生活しています。
この種も比較的高価で、1匹あたり7,000円~が相場です。
飼育にあたっては、やはり高山性の生き物のため温度管理に注意を配りましょう。
特に夏場は25℃を下回る涼しい環境で育てるの必要があります。
冬場も10℃を下回らないよう室内で飼育するようにしてください。
餌は生き餌を好み、コオロギやミールワームを好みます。
完全な陸棲性のため、水飲み場の設置と、水槽の敷き砂に水苔などを敷いて湿度を保つようにすれば充分です。
生息地:本州、九州、四国とその周辺島嶼
大きさ:10cm前後
寿命: 10年以上(25~30年生きた例もあり)
主な餌: アカムシ、イトミミズ、自然界では昆虫、小動物
購入価格 :200円~
生息地:沖縄県、鹿児島県奄美諸島
大きさ:
雄 14cm
雌 18cm程度
寿命:10年以上
主な餌:アカムシ、イトミミズ、自然界では昆虫、巻貝
購入価格:800円~
生息地:沖縄県、鹿児島県奄美諸島
大きさ:13~19cm程度
寿命:10年以上
主な餌:昆虫、ミミズ、巻貝
特記事項:沖縄 鹿児島両県指定の天然記念物に指定されたため、採取および飼育不可。
生息地:南~中央ヨーロッパ、アフリカ大陸地中海沿岸
大きさ:15~25cm(稀に30cm超の個体あり)
寿命:5~8年(記録では飼育下で50年生きた例もあり)
主な餌:コオロギ、ミールワーム
購入価格:10,000円~
生息地:中国 雲南省
大きさ:12~18cm
寿命:10~20年
主な餌:コオロギ、ミールワーム
購入価格:7,000円~
不思議な力をもった神秘的な動物であるイモリの魅力をご紹介しました。
知れば知るほど奥の深いイモリという生物。
ペットとしては決してメジャーな存在ではありませんが、飼育も比較的容易で長生きするため、かけがえのない存在になってくれるはずです。
公開日 : 2016/08/15