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猫 の しゃっくり も、人間と同様に 横隔膜の痙攣 が原因だといわれています。
横隔膜は呼吸に関与する主要なお腹の筋肉です。
猫が息を吸うと、横隔膜が収縮して下方に移動し、胸腔内に肺が拡張するためのスペースが増えます。
そして猫が息を吐くと、横隔膜が弛緩して上方に移動するのです。
この働きにより、呼吸をすることができます。
通常、横隔膜の動きはスムーズで規則的ですが、けいれんすることにより声門が突然閉じます。
これにより、「ヒック」というしゃっくり特有の音が発生するのです。
また、猫のしゃっくりが起こるメカニズムに関しては、いくつかの研究結果が出ています。
猫に対する実験で、 背側上咽頭(鼻の奥の突き当り辺り)への機械的な刺激や舌咽神径咽頭枝への電気刺激 で、 しゃっくりに似た反応を引き起こす ことができることが証明されたそうです。
しゃっくりは 脳の延髄網様体に電気刺激をすることでも誘発 できます。
そのため、 しゃっくりの中枢は脳幹部 にあると考えられています。
実際の生活において猫にしゃっくりが起きる原因には、どのようなことが考えられるのでしょうか。
合わせて予防法も解説するので、今のところ猫がしゃっくりをしていなくても、思い当たる行動をしている場合は、改善してあげるよう対策してください。
猫の歯は本来咀嚼することよりも、肉を引き裂いて食べることに特化しています。
そのため、よく噛まずに丸飲みするようにごはんを食べることが多く認められるのです。
丸飲みしながら勢いよくごはんを食べると、たくさんの空気を飲み込んでしまいます。
食後に猫が定期的にしゃっくりをする場合は疑わしいかもしれません。
早食いを予防するためには、時間をかけてごはんをたべさせる工夫と、少量ずつ頻回にごはんをあげることがおすすめです。
パズルフィーダーや知育トイを使用して、 ごはんを長時間かけて食べられるように工夫 してあげましょう。
このタイプのおもちゃは起き上がり小法師のようになっているので、前足でツンツンすると数粒ずつフードが出てきて、猫も楽しみながらごはんを食べることができます。
色々なタイプの知育トイがありますが、最初は簡単なものから試してください。
最初から難しいものを使うと猫が諦めてしまいますので、少しずつ難易度を上げていきましょう。
また、500mlのペットボトルやガチャガチャのプラスチック容器の側面に穴を開けることで、転がすとフードが出てくる おもちゃを自作することも出来ます 。
切り口で怪我をしないように、ライターなどで炙ってなめらかにしましょう。
その他、タイマーで留守中に自動的にフードを出してくれる給餌器もあります。
おもちゃで遊んでくれない、知育トイの導入は難しいという方は、 タイマー式給餌器を利用して少量頻回でごはんを与える ようにしましょう。
※合わせて読みたい: 猫はどのくらい留守番できる?留守番をさせるときに必要なものや注意点を解説
ごはんを過剰に食べて胃が膨らむことが、横隔膜への刺激になってしゃっくりを起こすことがあります。
食べすぎは、猫にとって良いことではありません。
食べすぎて肥満になることにより、糖尿病、膵炎、関節炎などの病気のリスクを上げることに繋がります。
フード をしっかりと測ることが重要 です。
まずは、フードに記載されている目標量から始めてみましょう。
目標量はあくまで目安です。
個体の活動量や体格によってフードの必要量は様々 です。
猫の体型を定期的に評価して、フードの量を調整してあげましょう。
猫の体型評価は少し難しいので、自分で判断することが難しい場合はかかりつけ医に尋ねてみると良いと思います。
猫は下腹に脂肪がつきやすいことから、標準体型に見えても下腹が動く度に左右にブルンブルン揺れているならば、ぽっちゃりさん以上の可能性が高いです。
人工哺乳を行っている子猫は、ミルクを飲むときに空気を飲んでしまいやすいので、しゃっくりを起こすこともよく認められます。
人間の赤ん坊のように、飲み終わった後に軽くトントンと背中を叩いて、飲み込んだ空気をゲップで吐き出させてあげると良いです。
猫で多く認められるしゃっくりの原因として、 毛玉 の喉への刺激 があります。
猫は非常にきれい好きで、起きている時間の大半を毛づくろいに費やす子もいます。
喉に毛が引っかかることが刺激になり、しゃっくりが出る可能性があります。
毛玉を飲み込むことで、便秘になったり嘔吐の原因になったりと、お腹の不調を引き起こす可能性があります。
毛の長さにもよりますが、 最低でも週に一回は ブラッシング の時間をとってあげたい ものです。
あまりにも ブラッシングが嫌いな場合は、無理やり行うことはおすすめしません が、最近はグローブにブラッシング機能が付いているものも市販されています。
猫になでてると思わせつつ、実はこっそりブラッシングできちゃうという優れものです。
長毛種の猫の場合、ブラッシングの頻度は短毛種の子よりも多くしてあげましょう。
毛玉もできやすく、皮膚炎の原因にもなります。
また、 毛玉対策用の高繊維フードや毛を排出しやすくするサプリメント などの使用もおすすめですので、時々毛玉を吐くという猫さんは試してみても良いでしょう。
不安やストレスなどの精神的要因で、猫がしゃっくりを起こしてしまう可能性もあります。
飼い主さんがいないとすごく鳴いてしまう猫や、不安が強い猫には気を付けてあげましょう。
まずは猫のことをよく観察して、 不安やストレスの原因を特定し、取り除けないか検討 してみましょう。
自力では難しいという場合は、 行動診療という動物の精神科の適応 になります。
一般の動物病院の獣医さんでは診ることが難しい専門分野ですので、行動診療が可能な獣医さんを探して相談してください。
状態によっては、薬物治療が適応になることもあります。
少しでも不安やストレスなく暮らすことは、猫だけでなく飼い主さんにとっても重要なことです。
一人で悩まず、専門家に相談してみてください。
お腹の中にいる人間の胎児は、頻繁にしゃっくりをしているといいます。
お母さんのお腹の中にいるときからしゃっくりをすることによって、呼吸筋を伸縮させ、呼吸器が適切に機能できるように調節しているという説があります。
他にも、両生類の呼吸の神経パターンがしゃっくりの神経パターンと非常によく似ていることから、進化の過程で起こった名残なのではないかという説もあります。
しゃっくりをすることで急激に声門を閉じるため、肺への液体の流入を防いでいるのです。
子猫でしゃっくりが多いのは、母猫のお腹の中で呼吸の訓練をしていた名残なのかもしれません。
また、子猫の内臓は発達途中なので、それもしゃっくりの頻度が高い原因の一つではないかといわれています。
この場合予防することはできませんが、苦しそうな様子がなければ基本的には見守ってあげてください。
しゃっくりは、寄生虫感染、呼吸器、消化器の異常、脳の異常や腫瘍など病気のサインの可能性もあります。
これらの 疾患の場合は、しゃっくりだけが症状として出る可能性は高くありません 。
他にふらつきが出る、呼吸が苦しそう、元気がない、下痢や嘔吐があるなど、異常が起こっていないか十分に注意して猫の様子を見てあげましょう。
少しでも異常があると思う場合は早めに動物病院を受診 してください。
また、しゃっくりが数時間以上続く、年をとってから急によく出るようになった、頻発するなどの場合は、一度しゃっくりの動画を撮影して獣医師に相談しましょう。
しゃっくりをしているけれど、元気で特に異常がない場合は、まず給餌方法・量の見直しや、毛玉対策を行ってみるのもおすすめです。
「これはしゃっくり?」と猫の仕草を見て疑問に思ったことのある方もいるかもしれません。
猫のしゃっくりは、人間のしゃっくりとは少し違って音があまりでません。
他の嘔吐、咳、くしゃみやゲップなどの仕草との見分け方に悩まれる方も多いので、その違いについて解説します。
動物病院だと上手く説明できないという飼い主さんもたくさんいますので、よくわからない場合は動画を撮影して受診することがおすすめです。
基本的には 猫のしゃっくりは声や音を出さないことがほとんど です。
耳を澄ますと、すごく小さい音で「ック」と聞こえるかもしれません。
まれに人間のような大きい音で「ヒック」という声を出す猫もいますが、一般的には音がしません。
しゃっくり中は、 小刻みに一定のリズムで猫の腹部がピクッピクッと震えている のが確認できると思います。
苦しそうな様子にみえるというよりは、おとなしくジッとしている子が多い と思います。
口も閉じていることが一般的です。
頭を下に下げたり、伏せのような姿勢をとることが多く、胸や腹を波立たせながら 息を急速に吐くようなフッフッフッという音や、フハッフハッという音を繰り返し出します。
見た目では、 猫が苦しそうにしていると感じることが多い でしょう。
見たことのない方は、吐く前兆や悪心と勘違いしてしまう方もいるかもしれません。
人間のようなゲホゲホという音を出すこともありますが、多くの場合は鼻息を荒く出す音に似ています。
口を大きくは開けず、半開きもしくはほとんど閉じた状態が多いです。
猫の咳は、喘息や肺炎などの重症疾患の可能性も考えられます。
様子を見ることはおすすめしませんので、愛猫に咳のような仕草が継続して認められる場合は、動画を撮影し動物病院を早めに受診しましょう。
特に咳の頻度が激しい場合は歯肉の色にも気を付けてください。
白っぽかったり、紫色っぽかったりしたら、体に酸素がうまく取り込めていない緊急状態の可能性が考えられます。
すぐに緊急受診しましょう。
人間のくしゃみに非常によく似た仕草 を猫もするため、猫のくしゃみはわかりやすいです。
くしゃみの音は 「クシュン」や「ハクション」 と目をつぶって大きな口を開けて強く空気を吐き出します。
ときには唾液や鼻水も飛び散ります。
猫は吐くときに、 「クポックポッ」というような音を規則的に繰り返した後、ゲーっと勢いよく嘔吐 します。
その際、 伏せのような状態で顔は音に合わせて上下に動いています 。
音を出している間はとても苦しそうに見えますし、音量もとても大きいので、一度見れば見分けることができると思います。
もし毛玉を定期的に吐くのであれば、前述の対策をとってあげると良いでしょう。
1日に何回も嘔吐する場合は、原因は軽い胃腸炎だったとしても、脱水を起こして状態が悪くなってしまうこともあります。
そのため、嘔吐が認められる場合は、早めに受診して対応してもらうことがおすすめです。
猫のゲップは人間のように大きな「ゲー」という音を出すことは少ないです。
ささやかに 「クフッ」という感じで息を吐き出します 。
口が開いていないことも多いので、しゃっくりとの見分けは少し難しいかもしれません。
ゲップは単回で終わることが多く、しゃっくりはしばらく続くことが多いと思うので、回数で判断しても良いと思います。
しゃっくりもゲップも長時間続いたり、他に症状が出ないなら様子を見ることのできるため、見分けがつかなくてもすごく心配する必要はありません。
どうしても気になる場合は、動画に撮影して獣医さんに聞いてみましょう。
基本的にはしゃっくりに対して 何もせず見守るという対応がいい と思います。
人間に行われることがある驚かせるなどの対応方法は逆に猫にストレスを与えてしまい、悪影響になる可能性が高いです。
また、物を食べさせることも誤嚥の原因になる可能性もあるため避けた方が良いです。
どうしても何かしてあげたいのであれば、さりげなく体を撫でるなどしてあげましょう。
しゃっくりが数時間以上続く場合は、体に異常を起こしてる可能性もあるため、獣医さんに相談してみてください。
基本的にすぐにおさまる猫のしゃっくりは、したからといってすぐに動物病院を受診しなくてはいけないというものではありません。
ただし、重大な疾患のサインである可能性も否定はできないため、しゃっくりがあった場合はいつも以上に猫の様子を気にして見るようにしましょう。
特に老齢の猫で急にしゃっくりを頻繁にするようになった場合は、病気のサインの可能性も考えられます。
また病気まではいっていなくても、しゃっくりをすることは良くない生活習慣やケアの必要性を示してる可能性もあります。
認められる場合は、一度猫の生活について見直してみるのがおすすめです。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
最終更新日 : 2020/12/21
公開日 : 2020/12/17