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うさぎは、あらゆる生物の中でも簡単に妊娠できる動物です。
それは自然界において捕食される側、食物連鎖の底辺に近い所にいるためと考えられます。
肉食動物の犠牲になってしまう以上の数の子どもを産み続けなければ、絶滅の危機にさらされてしまいます。
そして、うさぎの外敵は野生の肉食動物だけではありません。
私たち人間も同じです。
食用として狩るだけでは飽き足らず、毛皮を剥いだり、虐待をするような酷いことをする人間も、悲しいことに存在するのが現実です。
また、現在ではほとんどレプリカが流通していますが、一時期アメリカなどの国では繁殖力が高いうさぎの足「ラビッツ・フット(ラビットフット)」をお守りとして持ち歩くことが流行した歴史もあります。
このように、あまりにも外敵がたくさん存在する中で、うさぎの繁殖力が旺盛になっていったことは実に自然なことです。
面白おかしく「うさぎは性欲が強すぎる」と笑う方も時々いらっしゃいますが、うさぎにとっては本能的にそうせずにはいられなかった理由があると言えるでしょう。
生きているうちに1頭でも多く子を残せる生体へと進化していった、うさぎの体や発情期の特徴について、より理解を深めていきましょう。
他の動物が生後半年目以降に発情期を迎える傾向があるのに対し、うさぎの発情時期は生後数ヶ月と比較的早い段階で見られます。
種類や個体によっても、発情が始まる年齢(月齢)の違いはありますが、メスなら生後4~8ヶ月頃、オスであれば生後6~10ヶ月頃です。
成長が早い子ですと、生後3ヶ月頃に発情期を迎えるケースもあります。
基本的に、うさぎは年中繁殖できる体質ですが、特に温度や日の長さなどの影響で発情する傾向があります。
具体的には、暖かく過ごしやすい春や、 冬毛から夏毛に生え変わる換毛時期に発情しやすいと言われています。
ちなみに、うさぎは「重複妊娠」、つまりお腹の中にすでに赤ちゃんを授かっていても、さらに妊娠できる動物です。
また、一度に出産できる子うさぎの数も多く、平均は5羽や6羽、多い時には10羽を産む例も見られます。
日本で人気のあるネザーランドドワーフなどの体重1kg前後の小さな体格の種類では4~5匹が多いようです。
ウサギの発情周期は12〜14日で繰り返されます。
人間や犬など多くの哺乳類は、女性(メス)には生理があり、排卵の時期以外には妊娠・繁殖できないものですが、うさぎは繁殖力の高さを維持しなくてはいけないため、発情周期が短いと考えられます。
さらに、うさぎは発情期の交尾の刺激で排卵します。
ちなみに 猫 も同様です。
「交尾排卵動物」と呼ばれるものですが、妊娠できる確率が非常に高くなり、健康体ならほぼ百発百中で妊娠できるとさえ言われています。
なお、うさぎの尿に血が混ざっていた場合は、当然生理ではなく出血です。
もしうさぎの血尿を発見したら、子宮や膀胱などの病気である危険性が高いため、早急に動物病院へ連れて行ってあげましょう。
うさぎを飼育する際に「子うさぎを出産させる予定がない」場合は、オスなら去勢手術、メスなら避妊手術を実施すべきか迷いますよね。
そこで、メスの場合とオスの場合の対応について確認しておきましょう。
飼育されるメスうさぎは、4歳を過ぎると卵巣と子宮の病気になってしまうリスクが高くなります。
4歳以上のメスうさぎの子宮がん発生率は約50~80%と言われており、非常に高い数値であることがわかります。
未避妊の4歳以上のメスのうさぎに、血尿が見られた時にはほぼ卵巣と子宮の癌です。
外陰部からの出血が止まらずに、貧血となって斃死(へいし)していくことが多くあります。
避妊手術を行わず妊娠できないでいると、メスうさぎはホルモンバランスを崩してしまうのです。
病気のリスクを回避し長生きさせてあげるためには、3歳未満の若いうちに避妊手術を行うことを、多くの獣医師の方々が推奨しています。
また、メスうさぎはしばらく赤ちゃんを産まずにいると「想像妊娠(偽妊娠/疑似妊娠)」をしてしまいます。
お腹やおっぱいが膨らみ、本当に妊娠しているかのような体型になります。
もちろん、出産しようとしても産むことはできません。
頻繁に続くと、うさぎの心身に負担がかかってしまいます。
赤ちゃんを産める体の状態になると、神経質になり、巣作りをしようとして床を掘り続けたり、自分の毛をむしったりという行動をします。
特に毛を飲み込んでしまった場合、うっ滞(毛球症)になってしまうなどの危険性も考えられます。
上記のような理由から、メスうさぎの場合は早めに動物病院で避妊手術について相談しておきましょう。
オスうさぎの場合には、医者によって去勢手術をすべきかどうかの意見が分かれます。
オスうさぎで去勢手術をするメリットは、おしっこをまき散らすスプレー行動の抑制です。
しかし、体が小さいうさぎにとって麻酔はリスクが高く、メスうさぎのように病気になる可能性は低いことから、自然体で飼育させるよう勧める動物病院も多いです。
「どうしても発情期の行動が激しく手に負えず、去勢手術を実施した」という飼い主の方もいらっしゃいますが、発情期を一度迎えてしまったオスうさぎは、去勢してしまうとストレス発散法が食欲に集中してしまい、肥満になる危険性が高くなるとも言われています。
もし去勢手術を検討されているのであれば、体力がある若いうちに、また可能であれば発情期を迎える前に済ませてあげてください。
なお、オスかメスかに関わらず、高齢になったうさぎの去勢・避妊手術を行いたい場合も、まずは信頼できる動物病院に相談してみることをおすすめします。
ここまで解説したことからお分かりいただけたと思いますが、うさぎは非常に妊娠しやすい動物です。
オスうさぎとメスうさぎが一緒の空間にいると、すぐに妊娠してしまいます。
目を離した隙に、30秒程度の短時間で交尾を終えます。
特に兄妹(姉弟)が交尾をしてしまった場合、人間と同様で奇形児を出産してしまうリスクもあります。
子うさぎを育ててあげる自信がない場合には、去勢・避妊手術をしていないオスうさぎとメスうさぎのケージは別々にしてあげましょう。
ちなみに、性別にかかわらず複数のうさぎを飼育する場合は、必ずケージは分けてあげてください。
縄張り意識が強いなどの理由から、うさぎ同士でケンカをしてしまい、最悪の場合、死に至るほどの争いをしてしまう可能性があるためです。
もちろん、部屋の中を散歩させてあげる時も、 2羽同時に行わないよう配慮が必要です。
ここからは、発情期のうさぎの行動の特徴についてチェックしていきましょう。
もちろん個体差はありますが、下記のような様子が見られたら、早めに対策してあげる必要があります。
発情しているオスうさぎは、性格が変化する傾向があります。
縄張り意識がより強くなり、オシッコを遠くへ飛ばすようなスプレー行動が増えます。
また、自分のテリトリーであるケージ周囲では攻撃的になり、威嚇してくることもあります。
そうかと思うと、いつも以上につきまとってきたり、甘えて寄り添ってきたり、舐めてきたりします。
メスうさぎは、1~2週間ほど発情行動が続くと言われており、上述した通り、想像妊娠をしてしまうことがあります。
また、オス同様にトイレではない場所でオシッコをしてしまうことがある他、便は柔らかく臭いが強い場合があります。
そして、お尻を高く上げるようなポーズ(ロードシス)をとるケースがあるのも、発情しているメスうさぎ特有の行動の一つです。
この時、交尾の体制に入りやすくなってしまうため、背中から腰の辺りを撫でるのは避けてください。
ここからは、発情期が始まってしまった場合の飼育時の注意点についてお話しします。
うさぎは交尾をする際に、オスがメスの背中付近に噛みつき、腰を小刻みに振る動きをします。
発情したメスが、時々お尻を高くあげるのは、このような習性によるものでしょう。
擬似交尾(マウンティング)は、特にオスうさぎは激しくなりやすいため注意してください。
飼い主の手足に噛みつき、腰を振るマウンティング行為を始めたら、すぐに止めてあげましょう。
マウンティング行動を許し続けてしまうと、興奮して噛みつく癖がついてしまい、また飼い主よりも自分の方が優位だと思うようになります。
発情期のうさぎの行動は、しつけで解決できることがほとんどです。
反応すれば構ってもらえると勘違いしてしまうため、マウンティングしてきたらその場を離れ、無視するようにしましょう。
しがみつく・噛みつくといった行動がしつこい場合には、マウンティングしようとした時にすぐに抱き上げ、うさぎのおでこの上にご自身のアゴをやや強めにのせると良いですよ。
うさぎのおでこにアゴをすりつけることで、「飼い主の方が立場が上」としつけることができます。
なお、マウンティング対策として「ぬいぐるみ」を勧めるような説がありますが、筆者の経験上これはNGです。
うさぎの体の大きさに似たぬいぐるみや、太い縁のあるペット用クッションなどがあると、オスうさぎはマウンティング行動を始めてしまいます。
マウンティングは、癖になるとどんどんエスカレートしていき、なかなかやめてはくれません。
日に日に頻度が上がり、見ていて本当に気の毒になってきます。
マウンティングをどんなにさせても、うさぎの「子供を作らなければ」という本能的な願いを叶えてあげることなどできません。
ぬいぐるみをその場しのぎで与えるようなことはせず、マウンティング自体をしなくなるよう、根気よくしつけてあげましょう。
トイレ以外の場所でオシッコをしてしまう行為は、前述したように縄張りアピールによるものと考えられます。
うさぎは、自分の臭いがあると安心できる生き物です。
スプレー行為によって部屋の壁などが汚れてしまうと、当然飼育者としては掃除をしたいところですよね。
ただ、きれいに臭いを拭き取りすぎてしまうと、かえってうさぎは不安になり、スプレー行為が激しくなってしまうでしょう。
そこで「多少のスプレー行為は仕方ない」と許容してあげる方法をおすすめします。
ペットサークルや段ボールなどを活用して「スプレー行為をしてもOK」なエリアを作ってあげましょう。
あえて行動範囲を制限してあげることで、うさぎは「ここは常に自分の縄張りだ」と安心して過ごすことができるはずです。
どうしてもスプレー行動が許容できないのであれば、スプレー行動が習慣化する前の若い時期に早く去勢することをお勧めします。
ちなみに、噛みつき癖がひどい場合や、やたらと威嚇してくるような時にも、うさぎが縄張りをアピールしている可能性があります。
このような際には「うさぎのテリトリー」と思われるケージ周辺やスプレー行為OKの範囲には近付かず、気持ちが落ち着くまでは静かに見守ってあげましょう。
ただし、威嚇を許容してしまうと、どんどん縄張りエリアを広げたり「飼い主より自分のほうが優位だ」と思い込んだりしてしまうため、あらかじめうさぎのテリトリーがどこからどこまでか、きちんと制限しておくことも大切です。
特に想像妊娠をしてしまったメスうさぎの場合の話ですが、自分の毛をむしる行為をしている際には、牧草・チモシーをケージの中に多めに敷いてあげると良いでしょう。
毛をむしる行動は巣作りのためなので、代わりとなる巣材を提供してあげることで対策できます。
ここまで、発情期のうさぎの主な行動パターンと対応策について解説してきましたが、「しつけができない」「どうしてよいかわからない」といった場合には、一人で悩まず動物病院やうさぎ専門店に相談しましょう。
健康状況やストレス状態などを考慮した上で、去勢・避妊手術を勧められることもあります。
発情期のうさぎは興奮している時間が長くなることから、食事の量が減ってしまう場合もあるため、体重管理やエサのあげ方についてもアドバイスしてもらうと良いですね。
「普段と違う行動が見られる」など少しでも不安に感じることがあれば、プロの獣医師やブリーダーなどの指示を仰ぐ方が、うさぎにとっても飼育する方にとっても安心でしょう。
うさぎに健やかに長生きしてもらうためにも、うさぎとの暮らしをより豊かにするためにも、性欲が強くなってしまう理由や発情期の行動パターンをきちんと理解し、適切な距離で接してあげてくださいね。
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監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/10/20
公開日 : 2020/03/04