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ブッポウソウは、ブッポウソウ目ブッポウソウ科に分類される 鳥 です。
全長は約30cm、翼長は約20cm、翼を開いた時の長さは約60cmあります。
国内で見られるブッポウソウは、オスもメスも同じカラーで、全体は青緑、頭は黒褐色、翼の先端部にある羽には、大きな白斑があるのが特徴です
鮮やかな赤色の幅広いクチバシを活用し、トンボ・セミ・カナブンといった大型の昆虫を捕食します。
日本で観測できるブッポウソウは、基本的に繁殖活動のために飛来してくる夏鳥です。
夏場は本州や四国・九州地方で繁殖し、冬になると東南アジアに渡っていきます。
「ブッポウソウ(仏法僧)」というユニークな名前の由来は、昔の人の勘違いから生まれたと言われています。
仏教の聖地とされている森林で、「ブッ、ポー、ソー」と鳥の鳴き声が聞こえてきたことから、この鳥はブッポウソウと名付けられ、またその美しい姿が観察されたことから、霊鳥とされてきたそうです。
ところが昭和初期に、この鳴き声の持ち主は、実は別の鳥であることが判明しました。
実際に「ブッポウソウ」と鳴く鳥の正体は、 フクロウ の仲間である「コノハズク」です。
フクロウ科の鳥なので夜に鳴いていたため、先人達には鳴く鳥の姿がはっきり見えていなかったのかもしれませんね。
※合わせて読みたい: 「けものフレンズ」にも登場!小さくて可愛い「コノハズク」の生態やペットとしての飼育方法
それでは、ブッポウソウの鳴き声とは、どのようなものなのでしょうか。
実は、「ゲゲゲ、ゲー」という声が、ブッポウソウの鳴き方です。
このような興味深いエピソードを持つブッポウソウは、現在は環境省のレッドデータブックに、絶滅の危機にある種として登録されています。
そこで「日本野鳥の会」の人々を中心に、国内の様々な地域において、巣箱の設置などによる繁殖・保護活動が積極的に行われています。
日本に飛来してくるブッポウソウの数が減ってしまった要因として考えられているのは、全国的な都市開発です。
1940~50年代、北海道以外の全国各地で、多くのブッポウソウが社寺林周辺で巣を作り、繁殖していました。
しかし、あらゆる地域の宅地化により、主食であるはずの虫が多く生息していた樹林が減少し、自然破壊が悪化していくにつれて個体数が激減してしまったのです。
また、巣穴として使用できたはずの木製の電柱がコンクリート製や鋼管製の物に交換されたことも、ブッポウソウが生息できなくなった一因とされています。
このような危機を迎え、推定される日本のブッポウソウのつがいが約200組となり、近い将来、国内では見られなくなるとさえ思われていました。
そこで1980年代後半頃から、ブッポウソウの営巣場所の確保のため、広島・岡山・長野県などの地域において、電柱に「巣箱かけ」が行われるようになりました。
その結果、著しく減少していたブッポウソウの数が、2000年頃には推定500羽(つがい250組)近く、2015年には700組のつがいを観測できるほどまで回復し、現在はさらにその数が増え続けています。
一方で、巣箱かけの活動が行われていない東北や関東などのエリアでは、やはり繁殖が難しいため、ブッポウソウの姿は見られなくなってしまったのも現状です。
それでも、国内からのブッポウソウの絶滅はほぼ回避できたと考えられており、日本での希少動物保護活動の中でも珍しいほどの成功例と言われています。
今でもブッポウソウ保護のための活動は継続されており、例えば岡山県の吉備中央町では加茂川エリア全域が天然記念物に指定され、ブッポウソウが繁殖地として利用しやすい環境を整えています。
ブッポウソウは、5月初旬〜下旬になると営巣場所の選定を開始します。
特に朝や夕方に活発に行動しており、地上から3~15mにある樹木に開けられた穴や、ダムの排水口、建物の隙間に巣を作るほか、保護活動のために設置された巣箱を利用する個体も数多く見られます。
5月初旬〜7月上旬は、ブッポウソウが産卵・抱卵する時期です。
3〜5個の卵を産み、オスとメスが交代して20日以上、抱卵します。
巣箱の外に居るブッポウソウは半減し、巣箱を監視するように少し離れた枯れ木や檜の頂上に止まっています。
6月下旬〜7月下旬には、無事にふ化した雛に給餌をします。
巣の中で雛を温めるのはメスの仕事ですが、雛が成長してくるとエサを運ぶ作業はオス・メス共同で行います。
巣箱を行き来する親鳥の姿をたくさん観察できる時期で、木の幹にいる虫を捕獲するところや、電線から飛翔して虫を捕える様子が見られます。
給餌内容は、 クワガタ ・セミなど大型の昆虫です。
20日ほど経つと、ブッポウソウの雛は巣立ちの時を迎えます。
7月中旬〜下旬に巣立つのが一般的で、8月になるとブッポウソウの姿は徐々に減っていき、9月に入る頃には幼鳥も親鳥も新たな地へと旅立つため、姿を見かけなくなります。
春から夏にかけて飛来してきたブッポウソウを観察する際の注意点について、簡単にご紹介しておきましょう。
絶滅の危機を経験してきたブッポウソウは、警戒心が強い生き物です。
人間が設置した物とは言えど、巣箱に不用意に近くことはしてはいけません。
また、長時間の観測や撮影も、ブッポウソウのストレスとなってしまう可能性があるので避けましょう。
先ほど解説したように、営巣地として利用できるよう天然記念物に指定されている地帯もありますから、環境に配慮した行動を心がけるようにしてください。
ブッポウソウに限らず、野鳥達が強く生き続けていくためには、遠くから自然に生活している姿を見守ってあげることも大切です。
人間が好き勝手に行動するのではなく、ありのままの状態で営巣や子育てに励むことができるよう、優しく観察してあげましょう。
私達のほんの少しの心遣いも、ブッポウソウを保護し続けるためにできることの一つです。
公開日 : 2018/10/19