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カモ目カモ科マガモ属にあたる「カルガモ」は、日本で生息するカモの中では珍しい、どの季節にも見ることができるカモです。
北海道のような寒い地域では数は少なくなりますが、それでも日本全国、どこへいっても大抵カルガモに遭遇することはできるでしょう。
そんなカルガモとはいったいどのような 鳥 なのでしょうか。
カルガモは和名で、漢字表記は「軽鴨」となります。
この漢字になった由来はいくつか説があるようです。
万葉集の中に、カルガモが登場する歌があり、おそらくそこから取られたのではないかというのが最も有力な説となっています。
歌の中でカルガモは「軽の池」というところにいたと記されています。
この「軽の池」は、現在の奈良県橿原市の大軽周辺にあったのではないかと言われています。
学名は「Anas zonorhyncha」で、英名は「Grey duck」または「Spotbill duck」と標記します。
カルガモといえばやはりあの尖ったくちばしです。
くちばしの先のほうだけ黄色いこともカルガモの特徴です。
体高はオスの平均が約63cmで、メスの平均が約53cm程度。
翼を広げると、およそ83~99cm程度の大きさにもなります。
水の中にいる印象が強いので、足がオレンジ色をしていることを知らない方も多いでしょう。
春先に報道されるカルガモのお引っ越しの映像を見る機会があれば、ぜひオレンジ色の可愛い足をチェックしてみてください。
羽毛は全体的に黒っぽい褐色で、顔から首やお腹の部分に掛けて白っぽい色をしています。
ちなみに、全体を覆う黒っぽい色は、メスよりもオスのほうが濃い色なのです。
胸元にはまだら模様のような茶色い斑点が広がっているのも特徴です。
カルガモは、ヒナの時には「ピヨピヨ」と愛らしい可愛い声でさえずります。
しかし、成鳥になると「グェグェ」とまるで アヒル のような大きな鳴き声を上げます。
マガモも似たような「アヒルテイスト」の野太く大きな鳴き声をあげるのですが、両者には微妙に違いがあります。
マガモは「グェーグェー」と語尾を伸ばし気味に鳴くのに対し、カルガモは「グェグェ」と短めに鳴き声を上げます。
ここからはカルガモの生態についてご紹介します。
カルガモはどのような物を食べ、どのように生息しているのでしょうか。
カルガモは、基本雑食性の生き物です。
水の中にいる水生の昆虫や、水草を食べたり、水辺の草の実や葉を好んで食べています。
水陸両用で生活することから、どちらでも採食を行います。
また、カルガモはイネなどを食べてしまう食害をおこなうことから「害鳥」とされてしまうケースも見受けられます。
採食活動は日中よりも、主に夜間に行われます。
皆さんがカルガモに抱くイメージ通り、カルガモは主に湖や沼、池や川などに多く生息しています。
寒い季節になると、海でもその姿を見ることができるエリアもあるそうです。
海まで行くと、当然カルガモ以外のカモも生息していますので、他の亜種のカモや、他の種類の野鳥たちと共に生活をします。
アジア圏に多く分布しており、日本や中国、朝鮮や韓国、さらにはロシア東部でも生息が確認されています。
渡り区分は「留鳥」。
留鳥とは、基本的に同じ場所に一年中生息し、そこで繁殖や子育てを行う鳥類のことを言います。
ですが、寒さには少し弱いので、寒冷地などの北のエリアに生息しているカルガモは、気温の低下と共に南下することもあるようです。
他の鳥たちと同じく、カルガモも春から夏の時期にかけて繁殖・子育てを行います。
巣は主に水辺の草むらなどに作り、その中で産卵します。
竹やぶなどの乾いた地上に巣をつくることもあります。
一度に産卵する数はおよそ10~12個程度で、メスのカルガモが抱卵を行います。
抱卵期間はおよそ26~28日程度と言われています。
実は、カルガモのように一度に多くの卵を産む野鳥は珍しいのです。
カモとキジはまさに野鳥の中でも、1度の産卵数が多い野鳥と言われています。
そのせいか、増えすぎることによる弊害も起こってしまいます。
繁殖を行うエリア内が高密度になってしまうと、親鳥が子どもを殺してしまうケースも出てきます。
これは、自分の子どもだけでなく、他の種類の子どもにまで及んでしまう事もあるそうです。
なのにどうして、一度の産卵数がこんなにも多いのでしょう。
野鳥の子どもというのは、生まれてすぐに歩けるようになり、カルガモのヒナも、だいたい2か月もすると飛べるようになります。
そして、春に生まれたヒナは、冬を超えるころには立派な成鳥へと成長を遂げます。
この成長の速さと、産卵数の多さは、ひとえに野生の厳しさを反映しているのです。
野鳥には天敵が多く存在し、天候の悪さや、自然故に起こるケガや病気もたくさん身に降りかかってきます。
つまり、種の保存を考えると、多く卵を産むことが最重要となるのです。
沢山産んで、素早く成長することで、低くなりがちな生存率を少しでも高めようと本能がそうさせているのです。
カルガモのような野鳥は、ヒナのころが一番外敵に狙われます。
弱いものから淘汰されてしまうのは、自然の摂理なのです。
ヒナの時期は地上で生活していることが多いことから、カラスやハヤブサのような大型のトリ類だけでなく、 犬 や 猫 にも狙われます。
かといって水の中にいても、淡水に生息する「ライギョ」に狙われてしまいます。
カルガモはヒナが犬などに襲われた際は、「擬傷(ぎしょう)」という行為をすることもあります。
「擬傷」とは、傷をおい飛べないふりをして、外敵から注意をそらす目的を持っています。
つまり、親であるカルガモは、子であるヒナを外敵から守るため、自分の身を挺すというわけです。
カルガモのお引っ越しといえば、東京都は千代田区大手町にある「三井物産ビル」の敷地内にある「プラザ池」から、皇居の「和田倉堀」への引っ越しで一躍脚光を浴びました。
しかし、カルガモは留鳥であるにもかかわらず、なぜお引っ越しをするのでしょうか。
苦手とされる気温の低下も、東京都内ではあまり関係がなさそうです。
カルガモがお引っ越しをするのは、ヒナを育てる環境をよりよくするためだと考えられます。
分かりやすく言えば、エサの確保をするためと、ヒナの安全を確保するためです。
カルガモのヒナの主食は、水辺に生息する草や昆虫が主。
しかし、10羽近いヒナに加え、他の種類の野鳥たちも同じ場所で生息しているとエサ不足になってしまいます。
そこで、カルガモの親子はまるで遊牧民のように定期的に引っ越しをするのです。
同じ場所に居続けることで、外敵に居場所を突き止められずに済みますので、実に合理的です。
カルガモは基本、メスのみが子育てを行います。
ですので、お引っ越しの時先頭を歩いてヒナたちを誘導しているのは、お母さんのカルガモということになります。
カルガモの子育てというのは、すこし他の鳥たちとは異なります。
通常の野鳥などの子育てといえば、ヒナは巣で待機していて、親鳥が巣までエサを運ぶのが一般的です。
しかし、カルガモの子育てはそんな優しいものではないのです。
カルガモの子育ては「巣は用意する。安全は確保する。エサは自分で取ってこい」というものなのです。
なんともスパルタ方式な子育てです。
それもこれも、先ほどカルガモの繁殖の項目でお話しした、成長の速さが原因となっているからです。
早く成長するということは、早く自立し自分でエサをとれるようになるという事なので、このようなスパルタ育児になるのでしょう。
カルガモがなぜ引っ越すのかはこの辺りも影響しており、適切にヒナがエサをとれるように配慮しているのです。
お尻をフリフリして歩く姿がが何とも愛らしいカルガモを見ていると、飼ってみたいと思う方もいるかもしれません。
しかし、カルガモも一応「野鳥」となるので、ペットとして飼育できるかどうかが気になるところです。
鳥獣保護などの兼ね合いで、野鳥の種類によっては飼育どころか、保護すら許されないものもいます。
カルガモは鳥獣保護法で「狩猟鳥獣」として定められています。
ですので、決められたルールにのっとれば、飼うことは可能なのです。
この狩猟鳥獣に定めている鳥類は現在28種類で、カモの仲間はほぼ当てはまります。
他には「キジ」や「スズメ」「ムクドリ」なども狩猟鳥獣です。
ただし、都道府県によっては「狩猟鳥獣」に当てはまっていても、狩猟が禁止されていることもあります。
まずはお住まいの県や市区町村の役所などに確認をしてみましょう。
カルガモは狩猟鳥獣なので、カルガモを手に入れるためには「狩猟」を行うことになります。
ここでは、カルガモを狩猟するために守るべきルールをご紹介します。
狩猟するには「狩猟免許」が必要です。
狩猟免許を持っていて、狩猟する地域の都道府県に登録していることと、所定の狩猟税を納付していることが条件となります。
基本的には毎年10月15日から、翌年の4月15日までが狩猟期間と定められています。
北海道のみ9月15日から解禁されます。
ですが、鳥獣の保護などを考慮し、実際は毎年11月15日から翌年の2月15日までを狩猟期間としています。
こちらも北海道のみ10月1日から翌年の1月31日まで。
猟区内の場合は、10月15日から翌年の3月15日まで、北海道のみ9月15日から翌年の2月末日までとされています。
狩猟が禁止されているエリアは以下の通りです。
もちろん、この決まり以外にも都道府県によっては狩猟が禁止されているエリアもありますので、詳しくは都道府県の窓口に確認をしておくと良いでしょう。
カルガモなどの「狩猟鳥獣」でも、やはりヒナや卵をとることは禁止されています。
狩猟に関してはこれ以外にもたくさんのルールが定められています。
鳥獣保護の目的のルールもありますし、周囲の人への安全対策や、環境対策などさまざまな決まりがありますので、事前に確認を行いましょう。
狩猟期間中にきちんとしかるべき手順を踏んで捕獲されたカルガモなどの「狩猟鳥獣」の飼育や販売は基本的には可能です。
しかし、実際のところペットショップや小鳥専門店でもカルガモを見つけるのは至難の業でしょう。
販売されているものの多くは、カルガモではなく「アイガモ」です。
参考までにアイガモの場合で価格をみてみると、成長の場合だいたい15,000円程度、ヒナの場合は3,000円程度と考えておくと良いでしょう。
同じ水鳥であるアヒルと同じぐらいというところが多いようです。
カルガモではなく、カモ全般の水鳥の飼育方法をご紹介します。
水鳥を飼うにはどのような飼育環境を整える必要があるのでしょうか。
飼育する際は必ず ケージ が必要となります。
ヒナの間はダンボールや、収納ケースでも問題ありません。
ケージ内には新聞紙などを敷き詰め、その中に水やエサを入れる容器も設置します。
これらは、フンなどですぐ汚れてしまいますので、こまめに取り換えが必要です。
参考価格:1,729円(税込)
メーカー名:アイリスオーヤマ
サイズ(幅X奥行X高さ):44×74×35cm
重量:2.5kg
生産国:日本
ヒナの場合は、保温も重要となりますので、夜など室温・気温が下がったら、ペット専用の保温球やペットヒーターで温めてあげてください。
特に冬はヒーターの他、毛布をケージに敷いてあげるのもおすすめです。
参考価格:2,383円(税込)
メーカー名:ミニマルランド
サイズ(幅X奥行X高さ):40×17×40cm
重量:380g
生産国:中国
ヒナの場合は、ヒナ専用の飼料でもかまいませんが、キャベツや白菜、レタスのような葉物野菜を細かく切ったものを与えても大丈夫です。
エサを食べるとすぐに水分を欲しますので、食事の際は水を切らさないように注意してください。
成鳥になったらヒナの時同様に、葉物野菜を与えるか、ペットショップで販売されている成鳥用の「飼育用飼料」を与えればOKです。
ちなみに、成長になると炊いたご飯やうどんも喜んで食べてくれます。
食事の回数は、1日に1~2回程度を目安としてください。
参考価格:972円(税込)
メーカー名:ベルバード
内容量:4㎏
生産国:日本
毛づくろいや羽についた虫を落とすため、野生の水鳥は水浴びをするのです。
飼育下でも、水浴びするためのプールのような水辺は絶対に必要です。
ヒナを飼う際の最大のポイントとなるのが、泳ぎを教えなくてはならないということです。
しかし、教えると言っても、人間が手本を見せるわけにはいきませんので、水に入れて自力で泳ぐ訓練をさせることとなります。
この際、不慮の事故が起こってしまわないように、決してヒナから目を離さないよう、十分注意してください。
大きなタライや衣装ケースなどに水を張って、カルガモを入れてあげると良いでしょう。
もちろんペット用のプールでもOKです。
参考価格:3,690円(税込)
メーカー名:Cuteshower
サイズ:直径80×高さ30㎝
成鳥の場合はフンがかなり臭いため、室内飼育を考えている場合は対策が必要です。
庭などに水辺を用意して飼育するほうが良いかもしれません。
飼う前に必ず設備の準備を完ぺきにしておきましょう。
屋外で飼育するということは、外敵に襲われるリスクが発生します。
そのため、必ず金網で囲ってあげて、襲われないようにしてあげてください。
このように人の手を介して飼育を行えば、大変長生きすると言われています。
一般的なカルガモの寿命は、野生の場合5~10年程度と言われていますが、飼育下にいるカルガモはなんと20年近く生きることもあるようです。
カルガモだけに限りませんが、飼育を開始する前に必ず考えておかないといけないのは、最後の時まで一緒にいられるかどうかということです。
人間のエゴや、わがままで動物を捨ててしまうことは、決して許されることではありません。
カモなどの水鳥は、ダメになったら近くの川や池に離したらいいのではと考える方もいらっしゃるようです。
しかし、一度でも人の手を介してしまうと簡単に野生に戻ることはほぼ不可能です。
野性を失っている野鳥は、戦うことも逃げることも知りません。
外敵に襲われたら、即死んでしまうぐらいに考えておいてください。
飼い主さんにエサを貰って育った子は、エサをとる術もわからない可能性もあります。
可哀そうな目にあわせないように、飼う前に必ず未来を考えておきましょう。
カルガモの特徴や生態、カルガモを含む水鳥の飼育方法、そして狩猟についてご紹介しました。
今回お話しした通り、カルガモを入手するのは至難の業です。
また水鳥を飼育するというのは、愛玩用の鳥類の飼育とは違った大変さもあります。
しかし、適切な環境で飼育してあげれば大変長生きするパートナーとなってくれるでしょう。
カルガモの飼育は難しそうだと感じる方も、心配はいりません。
自然の中で年中愛でることができ、私たち人間のすぐ近くにいるカルガモなのですから、野生のカルガモたちにいつでも会うことができるのです。
優雅でおだやかな、でも鳴き声がちょっと大きくて驚かされる、ちょっとユーモラスな鳥。
そんなカルガモの愛らしさに癒されたいものですね。
公開日 : 2017/09/09