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猫をペットショップやブリーダーから迎え入れても、「予防接種を受けさせてくださいね」ということは必ず言われます。
また、購入前の情報として、いつ何回予防接種を受けたのかは教えてもらえます。
ただ、 猫 の健康に関わることで重要度はわかりながらも、意外とその実態は知らないものです。
そもそも何のために予防接種を受けるのか、どういった病気が防げるのか、費用はいくらかかるのか、いつどれぐらいの頻度で受けさせればいいのか…
気になる情報や注意点をQ&A形式でまとめました。
受動免疫、または移行抗体という言葉をご存知でしょうか。
母猫から貰える免疫力である移行抗体は、妊娠中の胎盤内から移行するものと、初乳に含まれるものがあります。
猫が子供を産んだ場合、母猫は子猫が生後20日間前後(あるいはそれ以上の場合も多い)になるまで子猫にお乳を与えます。
出産後の一週間に与える乳汁には、母猫の抗体(病気に対抗できるグロブリンといわれるもの)が特に多く含まれており、初乳と言われています。
この初乳をしっかりと飲めているかどうかが、子猫の免疫力の強さを大きく左右しています。
また、その移行抗体が有効なのは期間限定です。
なぜなら体内からどんどん減っていってしまうからです。
病気によって移行抗体の減るタイミングの早さが異なるのですが、怖いパルボウイルス抗体は早めに消失してしまうので大変です。
基本的には生後8週目でだんだんと抗体価が減ってきて、効果も薄れてしまうでの、それくらいの時期に一回目を受けるのが理想とされています。
さらに、2回目は生後12週目で予防接種をし、移行抗体が完全に消失して、自分で免疫力が作られる16週以降に最終接種の3回目を打ち、1年目はそれで終わりです。
ただし、生まれた子猫がなんらかの理由で母猫からお乳を十分にもらえなかった場合は、生後4週目で一回目の予防接種を追加してあげてください。
以降、2回目は生後8週目、3回目は生後12週目、最終接種はやはり16週目以降に行わなくては免疫力が付かないとガイドラインでは発表されているので、4回になってしまいます。
もし感染のリスクが低い環境であれば、獣医師と相談して4週間隔ではなく5~6週間隔などにすると、3回目が16週前後に調節できるでしょう。
このように、 子猫 が生まれた一年目は、3回ないし4回の予防接種が必要です。
ペットショップで子猫を迎え入れたら、8週目の一回目は予防接種を済ませてくれている場合がほとんどです。
通常であれば、ペットショップから次のワクチン接種の日にちについて指定があるはずです。
指定や説明が無いときは、ワクチネーションプログラムについて教えてもらいましょう。
どう育てるかによって、3種ワクチンか、5種ワクチンを選ぶ必要があります。
4種や7種もあるのですが、家猫なら3種で特に問題ありません。
しかし、外に遊びに行く猫として飼うのなら、感染症のリスクが高いので5種を選ぶのも良いでしょう。
ただし5種ワクチンの場合は、事前にFeLV(猫白血病ウイルス)に感染していないことを確認してから接種することが大切です。
値段は種類や病院によって違いますが、平均的な費用は以下の通りです。
これが、予防接種にかかる費用の目安と考えておいてください。
予防接種によって防ぐことが出来る猫の病気を知っておきましょう。
まず、飛沫感染の3つの病気です。
最初の症状は主にクシャミですが、いずれも死に至る可能性がある病であることに違いありません。
特に最後の猫汎白血減少症は、下痢、嘔吐に始まり、大変死亡率が高い伝染病です。
これらの病気を3種混合ワクチンの予防接種で防ぐことができます。
そして、猫同士での接触(交尾、喧嘩、毛づくろい)での感染症として、「猫白血病ウィルス感染症」「猫クラミジア感染症」があります。
これを防ぐのが5種混合ワクチンの予防接種です。
また、これらとは別に猫エイズ(FIV)の予防接種もあります。
上記のいずれの病気も、他の猫との交尾や喧嘩などで感染します。
なお、猫カリシウィルスは実は厳密に言うと3タイプあり、7種混合ワクチンでカバーできます。
値段は8,000円ほどです。
よく人間の予防接種と混同されることもありますが、一生抗体ができる予防接種とは違い、これらの感染症のワクチンは毎年受けて猫を守れるものです。
また、アメリカでは3年に一度の予防接種を推奨していますが、日本の猫とアメリカの猫はその生態が違います。
アメリカは猫のなんと50%以上が予防接種を受けていますが、日本は野良猫が多く、全体の10~20%しか予防接種を受けていません。
実にアメリカの猫の3倍の危険性を日本の猫たちは被っているのです。
そのため、アメリカの3倍、つまり年に一度の予防接種をほとんどの病院では推奨しているというわけです。
しかし、ワクチンの接種も猫に対してリスクが無いわけではありません。
ワクチンのガイドラインでは、不必要なワクチン接種はするべきではないと記載されています。
そのため、毎年盲目的にワクチン接種を行うのではなく、病気に対する抗体価を測るという方法があります。
ワクチンは抗体をあげるために行われているので、検査で抗体価がしっかりと高いことが分かれば、ワクチン接種をする必要は無いということになります。
逆に、病気を防ぐのに必要な抗体価が無いということであれば、やはりワクチン接種をすることが必要でしょう。
完全な家猫として育ているから大丈夫と考えている方も多いかもしれません。
しかしながら、家猫でも3種混合ワクチンの予防接種を受けるべきです。
猫に飛沫感染するウィルスは、人間が外出から戻った時、外から一緒に持って帰ってきてしまうことがあります。
靴や服を毎回玄関で除菌でもすれば良いのですが、それなら3,000 ~4,000円/年の費用を負担して3種混合ワクチン予防接種を受けさせる方が面倒がないでしょう。
予防接種を猫が受けるということは、その伝染病に軽くかかるということでもあるので、受ける時のポイントを知っておく必要があります。
その日の体調を見て予防接種を受けましょう。
赤ちゃん猫は、前の日に便を取って持って行きます。
病院では、触診、問診、体温測定、心音を聞き、寄生虫の有無のチェック(前日の便で調べる)をしてくれます。
また、当然のことですが、妊娠中の猫には予防接種をしてはいけません。
どうしても妊娠中に接種が必要な場合、あるいは妊娠の可能性がある場合には、生ワクチンではなく不活化ワクチンを接種しましょう。
子孫を増やし代々と育てたいと思う方なら、出産計画も必要です。
交配の一ヶ月前には予防接種しておきましょう。
予防接種にはリスクもあります。
怖いのは「アナフィラキシーショック」です。
多くはワクチン接種の15〜40分の間に発生する即時型のアレルギー反応で、急激な呼吸異常と低血圧、嘔吐や下痢などが見られます。
予防接種のワクチンに過剰な反応を起こして、逆に生命に危険を及ぼすことがあり、アメリカの獣医師会によると0.01~0.05%の割合で発生すると言われています。
何か起こった時に、できるだけ早く病院で対応してもらえるよう、午後の診察のある日の午前中に予防接種を受けると良いでしょう。
予防接種後、15分~20分くらいで呼吸困難、嘔吐、虚脱(ぐったり)などの症状が起こったら、上記のアナフィラキシーショックを疑います。
そのため、病院では予防接種後に会計まで少し待合室で待たされることがありますが、アナフィラキシーショックが起きた際に早急に対処できることができるようにというわけなのです。
病院側から待合室で待つように指示がなかった場合でも、予防接種のあと、15分は待つことをおすすめします。
予防接種による抗体ができるまでには2~3週間かかります。
そのため、予防接種の後2週間ほどは、他の猫がいる場所(ペットホテルなど)には行かないようにします。
また、予防接種したばかりの子は少々元気が無くなりますが、それは普通のことなので安静にさせてあげましょう。
安静とは、普通の生活のことです。
猫を一緒に車に乗せての外出や、激しい運動、シャンプーなど、最低でも予防接種後10日間は避けましょう。
それでも予防接種の後、重度の副作用があれば、ためらわずに猫を病院に連れて行ってあげてください。
可愛い愛猫と一緒に長く暮らすために、もしもの時のリスク管理は大切です。
その第一歩が予防接種と言えるでしょう。
猫を飼うなら、ぜひ予防接種をしてください。
猫から癒しをいただいている飼い主自身のためとも言えます。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/27
公開日 : 2016/05/19