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夏休み、近所や帰省先の野山で早起きをして、もしくは意外と住宅街の中でも街頭の灯りに寄ってきたノコギリクワガタの姿を見かけるかもしれません。
湾曲した立派な大顎を持つ姿に心奪われた元少年も多いことでしょう。
ひと夏の思い出として カブトムシ などと一緒に飼育した経験のある人も多いことでしょう。
見た目も格好がよく、飼育もおこないやすいノコギリクワガタですが、目にするのは成虫となって活動している姿が多いでしょう。
夏以外の様子や、意外に詳しくは知らないノコギリクワガタのあれこれを知ってみたくはありませんか。
ノコギリクワガタ(鋸鍬形)は、コウチュウ目・クワガタムシ科・ノコギリクワガタ属の1種で、5つの亜種に細分される国内に広く分布している日本の代表的なクワガタムシの一つといえるでしょう。
名前は雄個体の大顎の内側に鋸のように歯が数多く並んでいることから名づけられました。
生息している個体数も多く、広い分布からも日本全体で多くの少年に親しまれてきました。
ノコギリクワガタの体長は雄が24.2mmから77.0mm、雌が19.5mmから41mmと雄の方が大柄な体格に成長します。
個体ごとの体格による変異が雄では顕著に表れ、体長が約55mm以上の大型の個体では先歯型といわれる大きく屈曲した長い大顎を持つが、中型個体では両歯型といわれ、大顎がゆるやかな湾曲となり、小型個体では原歯型という直線的な大顎になり、内歯は均一なノコギリ状となります。
雄の体色は赤褐色から黒褐色でミルクチョコレートのような赤みがかったものとビターチョコのような黒いものが多く見受けられます。
雌は体色は赤褐色まれに黒色をしていて脚部も全体的に赤いことが多いとされます。
立派な雄の大顎は雌や縄張りを他の雄や他の甲虫と争うための武器として進化したと考えられますが、ヒラタクワガタなどと比べても挟む力は強くなく、挟んだ相手を放り投げる技巧派の甲虫であるといわれています。
北海道から屋久島までの日本全体に加え韓国を中心とした朝鮮半島、済州島、鬱陵島にも分布しています。
平地から山地までの広葉樹の森林、都市郊外の小規模の雑木林にまで生息していて、生息数はやや多いとされています。
成虫の活動期は6月上旬から10月でオオクワガタと違い夏に活動した成虫は越冬せず、初夏から夏いっぱいの期間しか生きられません。
広葉樹や照葉樹の樹液などを主な餌として生活していて、クヌギ、コナラ、ミズナラ、ヤナギ、ハンノキ、ニレなどに集まります。
基本的に夜行性で明け方付近まで活発に動き回ります。
しかし、昼間でも木陰などで見ることができ、土の中ではなく樹上などの高い所で休んでいることが多いため、昼間の昆虫採集で見つかることもあります。
木を蹴飛ばして落ちてきたノコギリクワガタを捕まえた経験のある人もいるのではないでしょうか。
これは足にある感覚毛で震動を感じると擬死して落下してくる習性によるものとされています。
先述の通り、一般に大顎の力が弱いと言われることもありますが、攻撃性が強く、活発であることから、他のクワガタムシよりも優位な地位を占めることが多いとされ生息数も相対的に多くなっています。
雌は、広葉樹の立枯れの地中部や倒木の埋没部やその周辺に産卵し、卵を雌が産み付けてから孵化まではおおよそ1か月とされています。
幼虫時代は水分を多く含む劣化の進んだ朽木を食べて成長します。
幼虫期間は1年から3年で、2回の脱皮を経て終齢である3齢幼虫となります。
3齢幼虫は蛹になるために、春から夏にかけて蛹になるための部屋である蛹室を作り始めます。
約1ヵ月をかけて蛹となり、蛹から羽化までは約1ヵ月を要します。
初夏までに羽化した成虫は、その夏に活動を開始しますが、晩夏から秋に羽化した成虫についてはそのまま越冬して翌年に蛹室を出て活動を開始します。
先ほども軽く触れましたがノコギリクワガタは5つの亜種に分類されています。
雄の体長は24.2mmから7.0mm、雌は25から41.5mmで北海道・本州・九州・四国・伊豆諸島(大島・利島)・佐渡島・対馬・壱岐・種子島・屋久島・朝鮮半島・済州島・鬱陵島に生息しています。
黒島(三島村)に生息し、雄は31mmから69.5mm、雌は25 - 41mmでノコギリクワガタに比べて短く湾曲が強い大顎を持っています。
光沢が強い体に細長い脚をしており完全な黒化型も出現することがあります。
硫黄島の三島村に生息する種です。
雄の体長は27.5mmから68.8mmで雌の体長は4.5mmから35mmとなります。
ノコギリクワガタに比べて太く、やや湾曲が弱い大顎を持っています。
体は光沢がやや強く、細長い付節が特徴となっています。
口永良部島に生息している種になります。
雄の体長は28.5mmから71.0mmで雌の体長は19.5mmから38.5mmでノコギリクワガタに比べて細く湾曲が弱い大顎を持ち体は細く、やや光沢が強い体色をしています。
新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島に生息している種です。
雄の体長は24.0mmから65.0mmで雌の体長は22.0mmから36.0mmでノコギリクワガタに比べて雄は大顎が内側に湾曲し、太く短、頭の発達が悪く黒化したものが多くいます。
体が太く、前胸の縁が丸みを帯びているものが多くなります。
雌も黒化したものが多くオオバヤシャブシの樹液や灯火にも良く集まる性質をしています。
ノコギリクワガタは、国産のクワガタムシの中でも最もポピュラーかつ代表的な大型種であることから、カブトムシ、スズムシなどと同様に古くから子供達の愛玩動物として飼育されてきました。
ひと夏のペットと考えれば成虫は、飼育ケースに止まり木の木材をいれ、それを飼育用マットで埋めたものにいれておけば甲虫用のゼリー等を与えることで簡単に飼育することができます。
雌雄のペアで交尾をさせ、産卵した卵を成虫まで育てる場合はもう少し準備が必要になるため後ほど詳しく説明します。
繁殖を考えない飼育での必要品目と注意点を簡単にまとめておきます。
飼育ケース(市販のプラスチックケースでよい)に止まり木の木材を置きその周りを埋めるように飼育用マットを敷き詰めます。登り木を設置してもよいでしょう。
・産卵させることを想定しないのであれば雄雌を同じ容器で飼育しない。
・狭いケースに複数の雄を入れると喧嘩して弱らせるのでケースを分ける。
・霧吹きで湿気を常に保つ。
・餌は甲虫ゼリーを主としてスイカ(短命の原因に)は与えない。
・直射日光の当たらない涼しい場所に設置する。
ノコギリクワガタを産卵させ、そこから成虫まで育てる場合に必要なものと方法をまとめていきます。
夏の間の成虫の飼育環境については先述の通りで問題ないため交尾からその後の幼虫の飼育について2種類の飼育方法を紹介します。
止まり木の木材
甲虫ゼリー
霧吹き
飼育ケースの半分ほどまで湿った状態の飼育マットを固まる程度まで押し固めながら敷き詰め、その上に2,3cm固めないマットを敷き、止まり木、餌の甲虫ゼリーを入れる。
雄雌のペアを先ほど作った飼育容器に入れ、10日間前後飼育します。雌が土に潜る様子が見られると期待値が高いと言えるでしょう。
10日間が終わったペアを取り出してからひと月もすると幼虫の姿が見られるはずです。
幼虫がいないようなら再び別のペアを入れて交尾に期待しましょう。
同居から一月後に容器の外から幼虫が確認できるのならばマットを容器から出し、幼虫を取り出して個別に飼育していきます。
ノコギリクワガタの幼虫の飼育方法してはマット飼育、菌糸瓶(きのこの菌糸をおがくずと混ぜて固めたキノコ栽培に用いる培地)飼育、材飼育の三種類が主流です。
その中で材飼育は大きくきれいな個体ができる利点がありますが手間がかかるためここではマット飼育と菌糸瓶飼育の二つを紹介します。
飼育用マット(交尾環境のマットに準ずる)
蓋つき瓶(布蓋をゴムで止めてもOK)かボトル容器
どらの方法も基本の手順は同じです。
個体ごとに分けた幼虫をマットを詰めた容器/菌糸瓶に入れてあげるだけです。
この時、マット、菌糸瓶ともに幼虫が収まるスペースとして体長より少し深い穴を掘ってあげるようにしましょう。
マットの方は幼虫が食べてマットが減ったらマットの詰め替えを、菌糸瓶の中身が減ったら瓶の交換を行って餌を絶やさないようにしてください。
菌糸瓶についての注意点としては届いた瓶を飼育環境で3日ほど置いてから使うことと、開けた際にきのこがあれば取り除くことでしょう。
幼虫は25度前後で管理すれば12か月前後で成虫になりますが、自然の温度変化がある場は二年近くかかる場合もあるため根気強く生育しましょう。
個別に育て始めてから数ヵ月すると餌を食べるペースが落ちてきて蛹になる準備が始まります。
この間はいじらずそっと観察しましょう。
蛹になってから1,2ヵ月の羽化するまでのこの期間はむやみに動かさず安静にして見守りましょう。
また、羽化後もノコギリクワガタはしばらく活動しないので自ら瓶から這い出すまでそっと見守りましょう。
容器から出してもあまり動かず餌も食べないので安静にするのがベストです。
ノコギリクワガタの卵からの飼育は温度管理をしても1年近くかかる上にそっと見守る期間の長い作業です。
根気強くノコギリクワガタを愛せる自信のある人が挑戦するようにしましょう。
見た目の格好長から人気もあるノコギリクワガタですが本来は自然に生きる命です。
飼育を試みる際にはそのことをしっかり認識したうえで責任をもって面倒を見ることをお願いします。
ノコギリクワガタにはいつまでも日本の夏の風物詩でいてもらいたいものですね。
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最終更新日 : 2020/12/10
公開日 : 2017/02/21