Top > 中型哺乳類 > 霊長類/類人猿/サル
本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
アイアイは、マダガスカル島にのみ生息するサルの仲間です。
深い森に住んでいるうえ、目立たない色をしているアイアイは、長い間ほとんどその生態が知られていませんでした。
「アイアイ」という名前はマダガスカル語で「よく知らない」という意味です。
マダガスカル島(固有種)
アイアイの体長は30〜40cm程、尻尾の長さは55〜60cm程で体より長い尻尾を持っています。
体重は2〜3kg程度で、ネコと同じくらいかやや小さいくらいの大きさです。
アイアイは「キー」「ニィーア」と鳴きます。
甲高い声で仲間同士鳴き合う行動がよく見られ、他にも様々な鳴き声を使い分けているようです。
アイアイは雑食性で植物の種子、昆虫の幼虫、果実などを食べて暮らしています。
マダガスカル島に生息している個体は「ラミー」と呼ばれる木の実の種子を主食にしています。
アイアイはラミーの果肉は食べず、はぎとってブッと勢いよく吹き出して捨ててしまいます。
そして、中にある非常に固い種子をかじって穴を開け、中身(仁)だけを食べます。
ラミーの仁はクルミのような味で、人間が食べても美味しいそうです。
この木の実は非常に固く、クルミの3倍もの厚さがありますが、アイアイは難なく穴を開けてしまいます。
ラミーの他にも鳥の卵を食べることもありますが、卵黄しか食べないというこだわりがあるそうです。
また、甘いもの好きで、花の蜜やハチミツも好んで食べます。
アイアイは毛が生えていない大きな耳とまんまるの目、針金のように細長い中指にふさふさと毛が生えた大きなしっぽを持った非常に個性的な見た目をしています。
そして、一生伸び続ける頑丈な前歯に、しっかりと物を掴める両手、どこを見てもアイアイはどんな動物の仲間なのか、わかりづらい姿をしています。
実際発見された後はその見た目からリスの仲間だとされており、100年程たった後に詳しい研究が行われてようやくサルの仲間に分類されたそうです。
アイアイの姿でも特に特徴的なところは、中指が他の指に比べて非常に長いことです。
体長は30~40cm程のアイアイですが、中指はなんと約8cmもの長さがあります。
体の3分の1から4分の1くらいの長さと考えると、アイアイの中指がどれだけが長いかわかりますね。
この中指を器用に使って木をトントンと叩いて植物の種子から仁(中身)を取り出したり、樹皮の下にいる虫を探してほじくり出したりして食べています。
アイアイには特に繁殖期がなく、個体によって発情する時期が異なるようです。
メスが発情するとその周りに複数のオスが集まり、メスを巡って争います。
アイアイの妊娠期間は164日程、通常は1回に1頭の子を産みます。
仔は体重100g程度のほとんど自分では動けない、とても未熟な状態で産まれます。
そして、生後2ヶ月程までは巣の中で母乳を飲みながら過ごします。
飼育下では20年程生きることが確認されています。
野生での寿命は定かではありませんが、飼育下の寿命よりは短いと考えて差し支えないでしょう。
アイアイは1属1種で、亜種が存在しません。
1000年以上前のマダガスカル島には「ジャイアントアイアイ」と呼ばれる、巨大なアイアイが生息していたようです。
しかし、既に絶滅しており、その姿は化石でしか確認することができません。
恐らく現存しているアイアイの2~5倍の大きさがあったのではないかと推測されています。
アイアイはマダガスカルでは不吉な動物とされ、悪魔とも悪霊とも呼ばれて忌み嫌われてきました。
色々な動物を混ぜたような不思議な外見も、中指で木を叩く特異な行動も、現地の人から見ると不気味なことこの上なかったようです。
確かに昼間でも、暗い木々の中から不思議な見た目をしたアイアイが突然出てきたら、びっくりしてしまうかもしれません。
現地の人の間ではアイアイが村に現れたら誰かが死ぬ前兆である、アイアイに指さされた人は死ぬと言われてきました。
あるいはアイアイに触ってしまったら、1年以内に死んでしまうと信じている人もいたそうです。
現在でもマダガスカルではアイアイは見つけ次第捕獲して殺すか、あるいは見なかったことにしなければならないという迷信が根強く残っているようです。
アイアイは姿を表すだけで不吉と見なされて殺された上、生息地である森林の伐採が進み急速にその数を減らしてきました。
そして、栽培しているマンゴーやココナッツを食べてしまう害獣として駆除されたことも重なって、1980年代には絶滅してしまったと考えられていました。
その後生きているアイアイが再発見され、現在では法律で保護されています。
しかし、その数は決して多くないこと、生息地の破壊が続いていることから、予断を許さない状況であることは変わりありません。
マダガスカルでは農地や放牧地を作るために日々森林が焼き払われていて、かつては国土のほとんどを覆い尽くしていた森林は、今や1割を切る程度しか残っていません。
夜飛行機からマダガスカルを見下ろすと赤々と燃える炎が見える程であり、森林に暮らす動物たちのほとんどが絶滅の危機に陥っています。
分類:哺乳綱 霊長目 白鼻亜科 アイアイ科
和名:指猿
学名:Daubentonia madagascariensis
英名:Aye-aye
分布:マダガスカル島
大きさ:
体長:約30〜40cm
尾の長さ:約55〜60cm
体重:約2〜3kg
鳴き声:「キー」「ニィーア」
食性:雑食性
繁殖:
性成熟:恐らく3年程
妊娠期間:164日程
産子数:通常1頭
寿命:飼育下で20年程
アイアイは環境破壊や狩猟圧によって数を減らしている絶滅危惧種の動物です。
また、 ワシントン条約(CITES・サイテス)の附属書I に掲載されていて、国際的な取引が制限されている動物でもあります。
国際的に保護されているため、ペットとして飼うことは現実的ではありません。
一般の方がペットとして飼う目的で、 アイアイを購入することはほぼ不可能 です。
購入することができる動物ではないため、 具体的な値段は不明 です。
しかし、非常に貴重な動物であることから、値段が付くとしたらかなり高価であると推測されます。
ワシントン条約の附属書Iに掲載されている動物は、商業のための輸出入が禁止されています。
アイアイはマダガスカル島にしか生息していない上、国内で飼育しているのは上野動物園のみという状況です。
入手したい場合は、生息地であるマダガスカル島から輸入する他に手段がありませんが、個人が所有する目的ではまずマダガスカル・日本両国の許可が下りることはないでしょう。
附属書Iに掲載されている動物を輸出入する時は学術的な研究のため、繁殖計画のためなど具体的な目的があっても、輸出国と輸入国の政府が発行する許可書が必要となります。
万一ワシントン条約に違反すると税関で輸入品(アイアイ)が没収され、その上で罰金もしくは懲役刑が課せられることになります。
アイアイをペットとして飼育することは現実的ではありませんが、もし自宅で飼うとしたらどのようなものが必要になるかを動物園の飼育員である筆者が考えてみましょう(筆者は上野動物園勤務ではないため、アイアイのお世話を実際にしたわけではありません)。
日本においてアイアイが主食としている、ラミーの果実を継続的に入手するのは困難です。
動物園向けに作られている葉を食べる猿(リーフイーター)用ペレット、オートミール、アボカド、パパイヤ、ライチ、きゅうり、くるみやピーナッツ、ミルワームやハチミツ、卵などを用意すると良いでしょう。
アイアイは熱帯雨林の木の上で暮らしている動物です。
なるべく自然に近い環境にするため、葉がついた木の枝を用意してあげましょう。
できれば木の枝を組んで立体的な空間を作り、アイアイが好きなように移動できるようにしてあげると良いです。
野生のアイアイは木の枝や葉を使って巣を作り、明るい時間はその巣の中で休みます。
アイアイが作る巣は直径50cm程のボール状になっていて、内部には木の葉が敷き詰められています。
巣作りが苦手な個体の場合は、巣箱を用意してあげましょう。
巣箱は購入しても自作しても構いませんが、アイアイの体がすっぽり入るくらいの大きさのものが望ましいでしょう。
アイアイの健康に影響を及ばさないように、木製で塗料や防腐剤などを使っていないものを選んでください。
アイアイの前歯は非常に強く、コンクリートや鉄のパイプすら破壊してしまう程のパワーがあります。
飼育施設は頑丈なものにしないと破壊して脱走してしまう恐れがあり、また万一咬まれるようなことがあったら大怪我をしてしまうので注意してください。
そして、万一アイアイが病気や怪我をした時に対応してくれる動物病院を探しておく必要もあります。
しかし、アイアイをはじめとした、原始的なサルの仲間を診察したことがある獣医はほとんどいないと考えた方が良いでしょう。
動物園に勤務しているもしくは勤務していた経験があり、アイアイについて一緒に考え、気軽に相談に乗ってくれるような方を探しておくべきでしょう。
アイアイは様々な理由から大幅に数が減ってしまい、絶滅が危惧されている動物です。
そのため、マダガスカルやヨーロッパなど各国の動物園や大学が協力して数を維持し、増やしていく活動を行なっています。
しかし、実は日本のみならず、 アジアでアイアイを飼育しているのは上野動物園のみ です。
上野動物園に遊びに行った際は、ぜひアイアイに会いに行ってみてください。
ちなみに、上野動物園以外ではマダガスカルのチンバザザ動植物公園、アメリカのサンディエゴ動物園、イギリスのダレル野生動物保全トラストなどで飼育されています。
\アイアイ誕生/
— 東京ズーネット[公式] (@TokyoZooNet_PR) September 24, 2018
※上野動物園で2018年3月27日、「ソア」が出産。子は「トゥニー」と命名。母子ともに非公開。写真は生後約2週間。 pic.twitter.com/3Aj6NPIdVF
上野動物園にある「アイアイのすむ森」ではアイアイが飼育・展示されています。
展示場は夜行性であるアイアイが昼間活動している様子を見せるために、昼夜逆転となっており、日中でも暗くなっているので足元に注意してください。
また、強い光はアイアイの目に大きなダメージを与えてしまうため、撮影する際は必ずフラッシュを切るようにしましょう。
毎日午後3時半がおやつの時間となっていて、アイアイが長い指を使って食事をする場面を見ることができます。
住所:東京都台東区上野公園9-83
マップ: Googleマップ
電話番号:03-3828-5171
入園料:
一般 600円
65歳以上 300円
中学生 200円
都内在住・在学の中学生、小学生までは無料
開園時間:9時30分~17時
休園日:月曜日および年末年始
公式ホームページ: 上野動物園
※合わせて読みたい: パンダだけじゃない!上野動物園の見どころまとめ
日本人の多くが名前だけ知っているアイアイですが、実は絶滅の危機に瀕しているとても貴重な動物です。
悪魔と見なされて迫害されてきた悲しい歴史を乗り越え、各国が協力して彼らを守っていこうという動きが少しずつ広がっています。
アイアイを始め貴重な動物が数多く暮らす、マダガスカルの大自然。
残り少ない貴重な環境を守りたいと思っても、遠い国に住む私たちが直接アクションを起こすのは簡単なことではありません。
ただ、マダガスカルの動物やそこに住む人が置かれている現状を知り、その話題をSNSに投稿するだけでも何かが変わるかもしれません。
何事も小さな一歩から、まずは上野動物園にいるアイアイたちに会いに行ってみてはいかがでしょうか。
※合わせて読みたい: 猿の歴史、生態、種類、飼い方
公開日 : 2019/04/22