本ページに掲載のリンク及びバナーには広告(PR)が含まれています。
キジは日本の国鳥としても知られており、日本国内では北海道を除き、本州・四国・九州と、ほぼ日本全土に生息している鳥です。
また、昔話の「桃太郎」に出てくる鬼退治の仲間としても知られていたり、一万円札の裏側でもキジの絵が描かれていた事もあったりと、日本国民としても馴染みのある 鳥 の一種でもあります。
このように、キジは日本にとって深い関わりがある鳥ですが、その理由のひとつとして、キジが日本固有の鳥であるということが理由にあげられるのです。
しかし、あくまでもこれは一つの説であり、他にも亜種が存在するという説もあります。
厳密に言うとキジが日本にしかいないというのは一つの説で、もう一つの説にはユーラシア大陸に生息する「コウライキジ」の亜種が、日本のキジであるという説も存在します。
日本に生息するキジは、日本固有のキジなのか。
もしくは、ユーラシア大陸等に生息しているキジの亜種が、国内に生息しているのか。
この答えはほんの数年前まで決着がついていませんでしたが、現在においては「キジは単一種として認められ、ユーラシア大陸や日本に生息している」という見解が一般的となっています。
日本国民としては、日本固有の鳥である事にこだわりたいところですが、残念ながら日本固有種というわけでは無さそうです。
そのため、日本では「キジとコウライキジ」、もしくは「ニホンキジとコウライキジ」と分けて考える場合も多いようです。
もともと日本に生息しているキジ(ニホンキジ)は4種類で、
◎キタキジ
・学名:Phasianus versicolor robustipes Kuroda
・主に本州北部、佐渡に生息。
◎トウカイキジ
・学名:Phasianus versicolor tohkaidi Momiyama
・主に本州中部〜西部、四国に生息
◎キュウシュウキジ
・学名:Phasianus versicolor versicolor Vieillot
・主に本州南部、九州、五島列島に生息
◎シマキジ
・学名:Phasianus versicolor tanensis Kuroda
・主に三浦半島、伊豆半島、伊予半島、屋久島、種子島、伊豆諸島に生息
の4つの亜種が確認されています。
前述では、キジは 北海道 に生息していないと説明しました。
しかし、実のところ「コウライキジ」に関しては、北海道にも生息が認められます。
「キジ」は、もともと4種が日本に生息していました。
しかし、現在では「コウライキジ」も北海道や対馬等でも見られるようになっています。
その原因となったのが「狩猟」です。
テレビや映画等でも、キジを狩猟している様子を見たことが無いでしょうか。
キジは狩猟対象としても知られており、キジの肉を使った料理も有名です。
このキジ猟を目的として、人為的に育てられた「キジ」や「コウライキジ」が野生へと放鳥されており、野生化して本来生息していなかった地域にも生息するようになっているのです。
また、野生のキジと放鳥されたコウライキジとの繁殖も進んでしまい、在来キジとコウライキジとの混血も増加してしまっているのです。
キジは日本固有の鳥であると言われるだけあり、桃太郎に登場していたり、古くは奈良時代に詠まれた万葉集からキジの存在を確認することができます。
またキジ肉に関しては、平安時代にはすでに親しまれていたと考えられており、もしかすると奈良時代からも親しまれていた可能性もあります。
このように、キジは古くから日本人の生活に身近な存在であったことがわかります。
しかし、前述の通り日本に本来生息していたキジは、未計画なキジの放鳥や外来種と呼べるコウライキジの増加によって、現在においては本来の生態系に変化が現れてきています。
鳥獣保護と聞くと、野生の動物が守られるものなのだと解釈してしまいますが、実際の所は問題が多い法律でもありました。
「鳥獣保護法」とは、野生における鳥獣を保護するための法律で、1896年(明治28年)に定められた「狩猟法」を土台とした法律です。
この「狩猟法」は、野生動物の狩猟を管理するための法律として定められ、「狩猟対象となる動物」と「狩猟対象ではない動物」を区別するために作られたものでした。
その後の1963年(昭和38年)には法改正が行われ、狩猟法は「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」へと名称変更、俗にいう「鳥獣保護法」へと変わっていったのです。
鳥獣保護法への法改正では、単に狩猟目的の法律だけではなくなり、人々の暮らしにも関係する事例も盛り込まれました。
具体的には、農林水産業への影響や生態系への影響といった、鳥獣が被害を及ぼす事例の防止や、狩猟時の危険を予防するための法律へと変わっていきました。
しかし、この時点での鳥獣保護法では内容がしっかりとまとまっておらず、保護という名前が加わっただけで、狩猟法が基本となっているものでした。
人々の生活に被害を及ぼす鳥獣と言えば、「イノシシ」や「 サル 」「シカ」「クマ」等の動物が挙げられます。
また、キジによる主な被害は大豆などの農作物で、2002年の調査では2800万円と比較的少額ながらも、人々の暮らしに被害がないというわけではありません。
(カラスによる被害は41.6億円にものぼる)
しかし、こうした動物を駆除するのか、保護するのかといった明確な内容は曖昧なもので、国単位ではなく自治体によっても考え方が様々なのです。
また、明確な管理もされていなかったために、過疎地域等では鳥獣による被害が深刻なものとなっていったのです。
保護法とは名ばかりで、保護するべき動物の種類や個体数の管理、駆除対象となる動物の管理、全てが曖昧なものでした。
一方、狩猟法のなごりも残していたため、キジをはじめとした狩猟目的の鳥獣は管理されることもなく、数を増やしていくような状況になってしまっていたのです。
こうした状況を変えるため、「保護」と「管理」を重点的にした法改正が行われ、「鳥獣保護管理法」が2014年に成立したのです。
まだまだ修正すべき点は多いですが、野生動物を安全に保護するために管理は不可欠なもの。
上記写真の、コウライキジやコウライキジとの「雑種」が増えてしまったのも、こうした問題に関係することなのです。
キジはオスとメスで大きさが違い、オスの全長は80cmほど、メスの全長は60cmほどが平均的な大きさです。
また、体重に関してはオスが800g〜1kgほど、メスは600g〜900g位が平均的な体重となっています。
因みに、コウライキジに関してはキジのサイズよりもやや大きめということに加え、日本のキジの4亜種に対し、コウライキジは30の亜種が存在します。
そして、キジは鳥ではあるものの、飛ぶことが苦手な鳥でもあります。
基本的には地上で生活しているため、飛ぶという機能が退化してしまっているのか、かわりに時速32kmものスピードで走り回ることができます。
寿命に関してはおおよそ10年ほど。
長生きした個体では、20年近く生きたキジもいたようです。
キジは更に厳密に分けて考えていくと、「 クジャク 」の仲間でもあります。
キジとコウライキジは「キジ目ーキジ科−キジ属」に分類され、クジャクは「キジ目−キジ科−クジャク属」に分けられます。
クジャクと言えば、自慢の羽を広げてメスにアピールするのが印象的ですが、あの美しい羽を持つのはオスだけで、メスはあのような美しい羽を持ちません。
一方、キジに関してもオスのほうが美しい容姿をしており、特徴となるのは赤く垂れたようなほっぺたと、美しい緑色の体。
頭部には青紫色の羽毛や、首から胸にかけて光が当たることで光り輝く羽毛が印象的です。
メスに関しては茶褐色の体に、黒褐色の斑点模様が特徴と、オスに比べると圧倒的に地味な配色です。
多くの鳥は、一度オスとメスがペアになると、生涯パートナーを変えずに過ごすのが一般的なのですが、キジにはこういったルールは無いようです。
繁殖期になると、オスは縄張りを守るために他のオスと喧嘩をするなど、非常に攻撃的になります。
また、威嚇のために「母衣打ち(ほろうち)」、もしくは「ドラミング」と呼ばれる、羽を激しく震わせて音を立てる行動をすることでも知られます。
メスはオスの縄張りに入り、また他のオスの縄張りに出入りするなど、特定の相手を決めずに行動します。
また、抱卵から子育てにいたるまでメスが全てを行い、オスは子育てには参加しません。
キジは警戒心の強い鳥としても知られ、物音がすると逃げ出してしまうほど臆病な鳥でもあります。
そんなキジも、卵を守っている時のメスに関しては話が違います。
キジは子供を大切に育てる鳥としても知られており、自分の命よりも卵や子供を守ろうとします。
卵を温めているメスは事故に遭う確率も高く、危険が迫ってきていても、卵を置いて逃げ出す事はありません。
そのため、キジが居ることに気が付かず、草刈り機で頭を飛ばされてしまう事故が起きてしまうほどなのです。
国鳥でもあるキジですが、前述の通り、狩猟対象にもなっているという、なんとも複雑な運命を背負っているキジ。
そんなキジをペットとして飼うことは可能なのでしょうか。
キジは鳥獣保護法で「狩猟鳥獣」として定められている為、「狩猟免許を持っている方」が「限られたエリアと期間」においてのみ狩猟及び飼育が可能です。
ただし、都道府県によっては「狩猟鳥獣」に当てはまっていても、狩猟が禁止されていることもあります。
まずはお住まいの県や市区町村の役所などに確認をしてみましょう。
なお、これは法律によって決められている事ですので、違法な捕獲の場合、都道府県にもよりますが1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が課せられる場合があります。
また、捕獲だけでなく「飼育」や「譲り渡し」「売買」も違法行為となります。
キジは害獣として見られる場合もありますが、現在においてはしっかりとした管理の元、キジを始めとした野鳥も保護・管理され始めています。
怪我をした野鳥を保護したという経験がある方も、多いのではないでしょうか。
ペットとして原則飼育することが出来ないキジですが、狩猟対象にもなっている鳥獣でもあるため、怪我をしたキジを発見することも考えられなくありません。
しかし、こうした場合にはそっと見守るのが正しい野鳥の扱い方となります。
残酷なようですが、人間が保護したことによって更に状態が悪くなる場合もあるのです。
特に、キジは非常に警戒心が強く、臆病な鳥獣ですので、保護しようと触れただけでショック死してしまう場合もあるのです。
ただし、骨折している等、あきらかに回復が困難な状態であると判断した場合には、素手で触らずに保護してあげましょう。
その場合にはあまり動き回れない程度の箱を用意し、25℃〜30℃程度まで保温を行い、暗くして安静に保つようにしましょう。
また、弱っていても水や餌を与えてはいけません。
保護した際には、必ず都道府県の野生鳥獣担当期間に連絡し、指示を仰ぐようにしましょう。
残念ながらペットとしてキジを飼うことは出来ませんが、キジはどのような性格なのでしょうか。
野生下でもキジを見たことがある方も多いとは思いますが、キジは非常に臆病で、すぐに逃げてしまいます。
そのため、ペットとして飼育する際にも懐きにくい、もしくは懐かない場合が多いと言われています。
野生のキジは食料を求めて人が棲む場所の近くに生息しており、主に「草原」や「平野地」「農耕地」「林」と言った場所で見られます。
警戒心が強いので、物音がすると逃げてしまいますが、意外と身近な場所でキジに会うことも少なくありません。
キジは保護対象にもなっている国鳥です。
キジを見つけた時には、脅かさないようにし、静かに見守るようにしましょう。
キジは日本古来の書物などからも、度々登場してくる動物のひとつ。
有名なことわざなども、キジが関係しているものもあるのです。
あの有名な松尾芭蕉も、「父母の しきりに恋し 雉子の声」という句を詠んでいたりと、キジは人々の暮らしの中でも身近な存在であった事がわかるものばかりです。
前述でもある通り、キジのメスは命をかけてでも子を守る習性があります。
親が子を深く愛する事の例えとして使われるのが、この「焼け野の雉子夜の鶴」と言うことわざ。
キジは漢字で書くと「雉子」と書き、古語では「雉子(きぎす)」と読まれます。
「焼け野の雉子夜の鶴」は、「やけののきぎす よるのつる」と読み、野原を焼かれても子を救うキジと、寒い夜に翼の中で子を暖める鶴の様子から詠まれたものです。
ことわざの中でも特に有名な「頭隠して尻隠さず」。
大事なものは隠しているつもりでも、ツメが甘くて隠しきれていない、といったような例えで使われることわざです。
犬 も同じような行動を取るため、勝手に犬に由来することわざかと思っていましたが、実はこのことわざもキジが関係したもの。
草原で隠れるキジが、茂みに隠れているつもりが尾羽は丸見えになっている様子から、このことわざが誕生したのだとか。
「雉の草隠れ」とも言われるようです。
強いものと弱いものを対比する時や、勝ち目がないといった時に例えられる「多勢に無勢」ということわざ。
これもキジが関係した言葉で、「多勢に無勢、雉と鷹」と詠まれるのが本来なのだそう。
地上を走り回るキジにとって、大空から襲撃してくる鷹はまさに天敵。
その様子から詠まれたことわざなのかもしれません。
余計なことを口走ったために、状況が悪くなってしまった事の例えとして使われる「雉も鳴かずば撃たれまい」ということわざ。
文字通り、キジがうっかり鳴いてしまったために、その居所が見つかり狩られてしまう事から詠まれたことわざです。
キジは地震を察知する能力があると聞いたことがあるでしょうか。
これは、古くから言い伝えのように知られた話なのですが、実際に立証されている話でもあります。
キジの足の裏は敏感で、振動をいち早く察知する感覚細胞が発達しています。
そのため、地震が起き始めた直後に揺れを察知出来るため、人間よりも早く地震に気がつくことが出来るようです。
地上で生活するキジにとって、天敵の多い地上での生活には欠かせない能力なのでしょう。
こうして、いち早く天敵の動きに気が付くことで、危険を回避しているのかもしれません。
疑問に感じている方も多い、桃太郎の仲間にキジが入っている理由。
犬や猿は理解できるけど、キジはどうやって鬼と戦うのだろうと疑問にも思います。
これには色々な説が存在しておりますが、「鬼門」と「裏鬼門」、つまり干支に関係するものとする説がしっくりとくる感じです。
鬼のイメージと言えば、虎柄のパンツ(腰巻き)に、牛の角です。
「鬼門」は干支にあてはめると「丑」「寅」の方角であり、その反対となる「裏鬼門」を干支にあてはめると「申」「酉」「戌」となるそうです。
また「申」は知恵、「戌」は忠義、「酉」は勇気の象徴としても考えられていたのだとか。
そして「酉=キジ」となったのは、昔からキジが身近な鳥であったため、子供たちにもわかりやすくしたためという説も。
昔話なので真意の程はわかりませんが、こうした説がたくさんあるようです。
前述の通り、キジは日本固有の鳥であるという考え方と、コウライキジ等と同じ亜種であるという説があります。
現状では、後者の説が一般的となっており、様々な文献などの説明も変わってきてはいます。
少しわかりにくいのですが、日本固有の種であると説明する時に使われる学名は、「Phasianus versicolor」と表記されます。
一方、日本のキジは亜種のひとつとする際には「Phasianus colchicus」と表記されます。
本文の第2項で触れたキジの種類では、固有種を表す「Phasianus versicolor」の名前が学名に使用されていますが、2014年5月14日更新の日本鳥類目録 改訂第7版では、「キジ」は「Phasianus colchicus」の表記が採用されています。
そのため、今後は「Phasianus colchicus」の表記が一般的となっていくことでしょう。
とはいえ、もともと日本に生息していたキジは4種。
コウライキジを「外来種」と区別するのかは難しいところですが、多くの場合、外来種が入ってくることで在来種が絶滅に追い込まれるパターンは珍しくありません。
コウライキジの増加はこうした懸念もありますが、キジも同じような事にならないよう、しっかりと保護・管理をしていってほしいところです。
学名:Phasianus colchicus(Phasianus versicolor)
英名:Green Pheasant、Japanese Pheasant
漢字表記:雉子、雉
体長:(オス)約80cm(メス)約60cm
体重:(オス)800g〜1kg(メス)600g〜900g
原産:日本、ユーラシア大陸全域
食性:種子、芽、葉などの植物と昆虫類
性格:警戒心が強く、臆病。
値段:ペットとしての飼育不可
日本人にも馴染みの深いキジ。
キジ鍋などでも親しまれますが、東京都では絶滅危惧種として指定されている鳥でもあるのです。
保護を重視しているのか、狩猟対象にもなっている害獣として見られているのか、はたまた国鳥として大事にされているのか複雑な鳥です。
残念ながら飼育することは出来ない鳥ですが、キジは日本の国鳥でもありますので、大切に見守っていってあげましょう。
最終更新日 : 2023/07/26
公開日 : 2017/09/16