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愛犬に納豆をあげたことのある方はご存知かと思いますが、犬は納豆好きなことが多いです。
もちろん、すべての犬が納豆好きという訳ではありませんが、大半の犬は納豆を喜んで食べます。
「犬の健康のために良いかな?」
「納豆を食べていると犬が近寄ってくるし、与えてみようかな」
上記のような理由で納豆を気軽にあげてみることが多いと思うのですが、予想よりも犬が喜んで納豆を食べるため、驚かれる方も沢山いらっしゃるようです。
納豆には犬にとって中毒になるような物質は含まれていないので、犬が納豆を食べても基本的に問題はありません。
もちろん、大豆アレルギーがあったり、胃腸が繊細でよくお腹を壊したり、吐き気が頻繁に見られるなど、体質によっては納豆であっても良くないこともあるでしょう。
そのため、初めて愛犬に納豆を食べさせてみる時には、ほんの少し、ティースプーンでひとな舐めできる程度から与えてみてください。
納豆を食べても、その後に吐き気や下痢、湿疹や目の充血など、アレルギーのような症状が出なければ納豆を食べても大丈夫でしょう。
「うちのこは納豆があまり好きではないけれど、健康のために食べてもらいたいわ」というケースもあるかと思います。
中には「そのままの納豆は食べないけれど、フリーズドライの納豆はよく食べる!」と言う飼い主さまもいたので、普通の納豆が苦手なワンちゃんは、サプリメントや犬用オヤツとして販売されているフリーズドライの納豆もお試ししてみるのはいかがでしょうか。
犬も大好きなことが多く、体にも良い納豆ですが、どのくらいの量をあげても良いのでしょうか。
総合栄養食のドッグフードを食べている犬にとって、納豆は必須の食料ではありません。
総合栄養食は犬に必要な栄養がバランス良く含まれているので、追加で食べる納豆は補食、おやつ、ご褒美という位置付けになります。
犬が食べても良いおやつやご褒美の量の目安は、一日の必要カロリーの総量の10%と言われています。
目安ですが、成犬での一日の必要カロリーは大まかに下記の通りなので、一日に与えても良いおやつのカロリーは下のように計算できます。
納豆の一般的な含有カロリーは1gあたり2kcalで、だいたいの納豆パックは40g〜50g前後なので、おやつとしての納豆の量は以下を目安にしましょう。
本来は、一日に必要なカロリーは避妊去勢手述の有無や活動性などから計算されるので、上記はあくまで目安でしかありません。
おやつやご褒美という位置なので、納豆のあげ過ぎにはくれぐれも注意してください。
納豆の栄養素は、タンパク質、脂質、食物繊維、ビタミンBやK、そしてミネラルなど、身体に良いものが沢山含まれています。
また、納豆に特有なものとしては大豆イソフラボン、ナットウキナーゼなどがあり、人の健康食品の代表と言えるでしょう。
犬にとっても健康への効果は期待できるものが多いので、健康補助として活用するのはおすすめです。
ここでは、納豆に含まれるそれぞれの栄養素について解説していきます。
体を構成するために必要な栄養素の代表で、20種類のアミノ酸からできています。
そのアミノ酸のバランスがとても良いと言われている納豆は、体内でスムーズに活用できる良質なタンパク質なのです。
犬は雑食傾向はあるものの、基本的には肉食なので、多くのタンパク質を食べて体に取り込む必要があります。
納豆はその30%がタンパク質でできており、犬にとっても良い栄養源になります。
活動量が多い犬はタンパク質の要求量も増えるので、納豆をおやつとしてあげると良いでしょう。
脂質も細胞膜を構成したり、ホルモンの材料になったり、そして何よりもエネルギー源としての役割を持っています。
納豆の脂質は、動物性ではなく植物性の脂質で、多くは多価不飽和脂肪酸です。
脂質も偏りなく、動物性も植物性もバランスよく食べるのが理想です。
納豆の脂質も良質な脂肪酸を含んでいるので、犬にとっても良い栄養素となります。
しかし、脂肪に関しては多くとりすぎると肥満や炎症の原因となることもあるので、たくさん食べれば良いというものではありません。
食べ過ぎには注意しましょう。
腸内細菌の餌になる食物繊維は、水溶性と不溶性に分かれています。
水溶性の食物繊維は血糖値の急上昇を抑えたり、脂肪の吸収を抑制する働きがあります。
不溶性の食物繊維は便秘の解消に効果的です。
納豆は両方がバランス良く含まれているので、腸内細菌にとっても良いと言われているのです。
人では腸の免疫調節が、全身の免疫調節にも大きな役割を持っていることが分かっています。
犬もやはり腸内フローラの役割は注目されており、厳選した食物繊維をバランスよく含んだドッグフードが大手メーカーから次々と発売されています。
納豆を少量で、定期的にあげることによって、腸内細菌のバランスが良くなる効果が期待できます。
納豆に含まれているビタミンの代表は ビタミンB と ビタミンK です。
ビタミンB群は、体の代謝機能や、免疫機能を支える大切な水様性のビタミンです。
水溶性ビタミンなので、多く摂り過ぎてしまっても、尿中に出ていくため過剰になる心配はありません。
ビタミンKは、血液の凝固(出血を抑えるために固まる)や骨の形成、血管の保護としての役割を持っています。
腸内細菌が合成してくれるものと、食べ物から得られるものの両方を体内で活用しています。
脂溶性ビタミンの一種ですが、体内に多くなったときには腸管内での吸収が制限されるなどして、過剰になることはほとんどありません。
犬では抗菌薬(抗生物質など)の投与が人よりも長期に渡って行われていることがあります。
ビタミンKの合成に影響もでていることがあるので、納豆で補給するのも良い方法でしょう。
納豆に多く含まれるミネラルは カルシウム と マグネシウム です。
カルシウムは言わずと知れた骨の成分であり、神経伝達や筋肉の収縮にも必須です。
カルシウム濃度は生命維持に必須なため、腸管での吸収や骨での貯蔵、腎臓からの排泄などによって厳密に管理されています。
マグネシウムも酵素の補酵素(酵素が働くのに必要)として多くの働きを持ち、カルシウムと共に筋肉の収縮を調節しています。
こちらも大切なミネラルなので、カルシウムと同様に体内では吸収や貯蔵、排泄によって管理されています。
犬にとってもカルシウムとマグネシウムは必要なミネラル成分です。
多すぎても少なすぎても問題にはなるので、やはり納豆を食べるのは少量が良いでしょう。
人は納豆を食べることによって、ナットウキナーゼや大豆イソフラボンが摂取できるので、健康に良いと言われています。
それでは、犬にとってはどうなのでしょうか?
まず、 納豆キナーゼ の働きですが、血管内での凝固を防ぐ効果があり、血液サラサラで脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ効果が期待されています。
犬は人に比べて脳梗塞や心筋梗塞が多い動物というわけではありません。
犬の心臓の栄養血管は人の様に枝分かれが少ないことはなく、心筋梗塞はごく稀です。
ただ、高齢の犬の脳梗塞は、症状としては発見されにくいものの、小さなものは多く発生していると考えられています。
その点からすると、高齢犬の微小血管の梗塞を予防する効果は期待できるかもしれません。
大豆イソフラボン は、人の女性ホルモンと似たような働きをするために、肌の張りや骨粗しょう症の改善に期待ができると言われています。
犬では人の様な効果は期待できないものの、イソフラボンはポリフェノールの一種なので抗酸化作用は期待できるでしょう。
酸化によって細胞が傷つくのを防ぐ効果は、犬でも同様であると考えられています。
納豆には栄養素が多く含まれているので、過剰に与えると良くない影響が出てくると知っておきましょう。
タンパク質が多いので、アレルギー源にもなりやすいと言えますし、脂質も摂り過ぎれば炎症を起こしやすい体質になります。
食物繊維も、繊細な消化器の犬にとっては消化に悪いという結果になる可能性もあります。
ミネラルであるカルシウムとマグネシウムは、摂り過ぎれば腎臓から排泄する量が増えるので、尿路結石の原因になってしまうかもしれません。
冒頭でも述べた通り、体質に合わないという可能性もあります。
その原因となる一番大きなものは食物アレルギーです。
もし初めて納豆を与えてみて、以下のような症状が見られたときは、アレルギーを疑いましょう。
もし食べて30分以内に上記のような症状が出た時には、アナフィラキシー(重症なアレルギー症状)かもしれません。
特に呼吸が荒くなる、ぐったりと元気がなくなるという症状が出た時には、すぐに動物病院に連絡をしましょう。
実際に納豆にアレルギーを起こす犬は少なく、診察でも納豆(大豆)アレルギーと効くことはほとんどありません。
それでも、万が一ということはあるので、食べた後の体調はよく観察しておきましょう。
また、納豆や大豆にアレルギーがあると、 麻酔薬にアレルギーが出る 確率が高くなります。
大豆アレルギーのある動物には使えない薬剤があるので、必ず獣医師には伝えるようにしましょう。
大豆や納豆にアレルギーを持っている犬には与えてはいけないのは当然のことながら、アレルギーはなくても犬に納豆をあげない方が良いケースがあります。
基本的に持病があって、治療食を食べている犬は、納豆であっても食べるのは控えることをおすすめします。
膵炎は重症化すると命にも関わる怖い病気です。
体質と食べ物によって発症を繰り返します。
治療の要は食餌です。
治療食が膵炎の治療のもっとも大切な部分となるので、納豆を勝手に食餌に追加するのは止めましょう。
納豆の良い部分である高タンパク質と脂質が、膵炎では逆効果になることがあるためです。
適切な量のタンパク質と脂質でなければ、膵炎はすぐに再発して犬を苦しめることになるので、健康食の納豆であってもリスクが高いと言えるでしょう。
高齢になり、血液検査で腎臓の値が高くなり慢性腎不全の治療食を食べている犬は多くいます。
高タンパク食は腎臓への負担が大きいため、タンパク質を多く含む納豆は腎臓に負担がかかる可能性があります。
また、慢性腎不全が重度になると、リンやカルシウムのバランスが崩れている犬もいます。
慢性腎不全の治療食では、タンパク質やリンについて厳密に調整されていますので、納豆を食べてそのバランスを崩すのは良くありません。
腎不全で食欲がなくて、体重がどんどん落ちる、獣医師からも納豆を食べる許可が出ているという時でなければ、積極的に納豆を与えるのは止めましょう。
体質として、尿路結石ができやすいという犬は多くいます。
以下のようなコメントを獣医師から受けた犬は、治療食を紹介されていることでしょう。
尿路結石は、食べ物と体質によってできる確率が変化します。
体質は変更できないので、食べ物を調節することによって、尿路結石を予防することがほとんどです。
治療食では、カルシウム、リン、マグネシウム、タンパク質の量が絶妙なバランスで配合されています。
そのため、納豆を食べるとこれらのバランスが崩れて、結石が大きくなったり、たくさん出来てしまうかもしれません。
納豆だからダメということではなく、治療食以外のものを食べさせることが尿路結石にはリスクになるので、納豆も食べさせるのは控えるようにしましょう。
しっかりとした治療を受けているアトピー性皮膚炎の犬は、外用薬とシャンプーと飲み薬、そして低アレルゲン食で治療されています。
この低アレルゲン食が、アレルゲンの除去の程度にもよりますが、厳密にタンパク質をアミノ酸レベルまで分解されているタイプの治療食は驚くほど高価です。
治療食は軒並み高価であるにも関わらず、アレルゲン除去食の価格の高さといったら…使用している飼い主さまに頭の下がる思いです。
それほど高くて効果のある治療食を食べているのであれば、納豆であっても食べてはいけないケースがほとんどです。
納豆のタンパク質が、アトピー性皮膚炎を悪化する可能性もあるためです。
必ず獣医師に確認してから与えるようにしましょう。
納豆が健康食品の代表であり、犬にとっても良い効果があるのは間違いないでしょう。
犬が納豆を好きなことも多いので、持病やアレルギーがなければ、ぜひ一度は食べさせてみてください。
身体に良いオヤツやご褒美として少量で活用していただくのが良いです。
健康面ではない注意点として、伝えておきたいことが一つ。
納豆を食べたあとの愛犬の口臭とネトーっとしたヨダレが、思いのほか飼い主さまにはダメージになると思います。
たくさんあげると愛犬の口のネバネバ感も強くなるので、やはり納豆を与える際は少量にするのがおすすめです。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/07/15
公開日 : 2022/07/07