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狂犬病ワクチンはなぜ打たなくてはいけないの?打つ時期が決まっているの?
成犬で初めてワクチンを受ける場合、保護犬などで以前の接種歴が不明な場合の回数
犬のワクチン接種後は何に気をつけたらいい?シャンプーや散歩はいつから出来る?
ワクチンには様々な種類がありますが、、日本において犬のワクチンは一般的に 混合ワクチン という 犬自身を犬同士の感染症から守るワクチン と 法律で接種が義務付けられている狂犬病ワクチン の2種類に分けて考えると理解しやすいです。
5種、7種と呼ばれるようなワクチンは混合ワクチンを指し、こちらはそれぞれの犬の生活環境等に応じてどの種類を接種するかを飼い主さんが決めなくてはなりません。
日本国内における狂犬病は、人では1956年、動物では1957年の猫の発生報告を最後に発生していません。
2000年以降も輸入感染事例での報告はありますが、日本国内で感染しての発生報告はありません。
しかし、法律で接種が義務付けられているため、日本では全ての犬が毎年狂犬病ワクチンを打たなくてはならないのです。
国内での発生がないのに、なぜ打たなくてはいけないの? と疑問に思われる方もいるかと思います。
その主な理由としては、日本と国交のある近隣諸国では未だ狂犬病の発生が多く報告されており、日本に狂犬病が再び侵入してくるリスクも考えられるためです。
また、狂犬病は全ての哺乳類に感染しますが、人が感染する場合、その感染源となる動物の多くは犬であるといわれています。
そのため、万が一国内に狂犬病が侵入しても狂犬病に対する免疫を持つ犬がたくさんいれば、人への被害も抑えられ蔓延を防止することができるという訳です。
狂犬病は非常に恐ろしい感染症で、効果的な治療法はなく、一度発症してしまうとほぼ100%死に至ります。
以上の理由から、 国民を守るために日本では飼い犬の登録と狂犬病の接種が法律で義務付けられている のです。
狂犬病ワクチンの接種時期は法律で決められています。
簡単に説明すると「生後91日以降の犬で狂犬病ワクチンを接種していない場合(接種歴不明な場合も)は飼い始めてから30日以内に接種する。約1年以内に接種している場合は3月2日から6月30日に接種する」ということです。
ただ、犬の体調や、他の予防プログラムとの兼ね合いで上記の時期の接種が難しい場合は、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
混合ワクチンの中には 致死率の高い感染症を防ぐためにどのような生活環境の犬でも接種が推奨されるコアワクチン と、 飼育環境に応じて打つかどうか判断するノンコアワクチン に分かれます。
犬パラインフルエンザウイルス に関しては、 ペットショップに預けたりする犬 は接種を検討しましょう。
レプトスピラ に関しては主に感染ネズミの尿に汚染された物を食べたり、土に触ったりすると感染しますので、 屋外飼育の犬、猟犬、田んぼや河川の近くに住んでいる、ネズミが周囲に多くいる環境に住んでいる、ドッグランによく行く、アウトドアによく行く という生活環境の犬は接種を検討しましょう。
日本の動物病院では、一般的に5種や7種の混合ワクチンを扱っている病院が多いと思います。
5種では、コアワクチン4種に犬パラインフルエンザウイルスが入っており、7種は5種にプラスしてレプトスピラが2種類入っています。(レプトスピラには多くの型があります。)
各動物病院によって用意している混合ワクチンの種類が異なりますし、ペットショップで購入した子は前回の接種ワクチンによっても接種すべき種類が変わってきます。
コアワクチンについてはどのような状況の犬でも接種が推奨されるので、ノンコアワクチンの接種をどうするか飼育環境を考えて検討しつつ、かかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
ワクチンの接種回数は仔犬、成犬で異なります。
ここでは世界小動物獣医師会(WSAVA)の提唱するワクチンプログラムをご紹介します。
WSAVAではワクチンを効果的かつ安全に使用するために研究を行っています。
仔犬の場合は複数回ワクチンを打たなくてはなりません。
仔犬には母犬からもらった免疫力が体内にあるので、それがある内はワクチンを打っても充分な効果がなく、またその免疫力がいつ無くなってしまうかは個体差がありはっきりしません。
長く持続する子では16週齢まで母犬の免疫が残っていたという報告もあります。
成長とともに母犬由来の免疫力が無くなったり、ワクチンで作られる免疫力もまだない無防備な時期を出来る限り作らないように接種プログラムが組まれています。
そのため、いつ母犬由来の免疫力が無くなってもいいように複数回ワクチンを接種し、免疫力を維持させることが重要なのです。
6〜8週齢で初回接種を行い、その後は2=4週齢毎に追加接種を行い 必ず16週齢以降に最終接種を行うようにします 。
その後は免疫の強化の意味と万が一免疫力がついていない場合に備えて 6ヶ月〜1歳のなるべく早い時期に再接種 をします。
以降は3年毎以下の頻度では接種しません。
<犬パラインフルエンザウイルス>
6〜8週齢で初回接種を行い、その後は2〜4週齢毎に追加接種を行い、 必ず16週齢以降に最終接種を行うようにします 。
その後は免疫の強化の意味と万が一免疫力がついていない場合に備えて 6ヶ月〜1歳のなるべく早い時期に再接種 をします。
以降は年1回毎の接種が推奨されています。
<レプトスピラ>
8週齢以降に初回接種 を行い、その 2〜4週間後に2回目の接種 を行います。
以降は年1回毎の接種が推奨されています。
成犬の場合も初めて接種する場合はしっかりと免疫力をつけるために、種類によっては何回か追加接種をする必要があります。
ワクチンの種類によって回数は異なってきますので、かかりつけの獣医さんと相談してワクチンプログラムを組みましょう。
ワクチンの製品によって推奨接種回数が異なり 、1回のみの接種で充分に免疫力を獲得できるものから、製造メーカーから2~4週間隔で2回接種が推奨されている製品もあります。
その後は3年毎以下の頻度では接種しません。
取り扱っている製品の種類によって推奨回数が異なるので、かかりつけの獣医さんに確認してみましょう。
<パラインフルエンザ>
1回の接種 で防御効果が認められると考えられます。
その後は 年1回毎の接種が推奨 されています。
<レプトスピラ>
2〜4週間隔で2回接種 を行う。
その後は 年1回毎の接種が推奨 されています。
WSAVAのワクチンプログラムでは、次年度以降の接種については種類によって推奨される回数が異なります。
基本的にWSAVAではコアワクチンは3年以上間隔をあけることが推奨されていますが、個体や製品によって免疫の持続期間は異なってきます。
WSAVAの指標もあくまで一つの目安ですので、かかりつけ獣医さんの考え方、地域による感染リスク、生活環境、手に入る製品によっても変わってくるため、免疫力が持続しているかを判定する検査等を併用してその子に合わせた計画を作っていきましょう。
ワクチンの副作用には命に関わる重大なものから、自宅で様子を見れる軽度のものまであり、特に重大な副作用は接種直後から一時間以内に起こることが多いといわれています。
接種後、急に倒れてしまう、ぐったりする、何回も吐いてしまうという場合は緊急性が高く、すぐに処置をしないと命に関わる危険があります。
そのため、副作用がでた場合に対応できるよう、ワクチンを打つ日は一日様子を一緒に見てあげられる日を選ぶようにしましょう。
そして、必ず午前中の早い時間に打ち、接種後しばらくは待合室で様子を見ておくと、万が一重大な副作用がでた場合も迅速に対応できるので安心です。
他にも接種した部位を痛がったり、歩き方がおかしくなったり、顔がまんまるに腫れてしまったり、皮膚が痒くなったり、蕁麻疹が出ることもあります。
食欲がいつもに比べると少しなかったり、ちょっと元気がないような軽度な症状もよく見られます。
今まで副作用が出たことの無い子でも、副作用が起こってしまう可能性はいつでもあるため、油断せずきちんと様子を見てあげましょう。
接種後の様子で気になることがあれば、すぐに動物病院に相談してください。
ワクチン接種当日は激しく動くと副作用が出やすくなるともいわれているので、可能な限り安静にしてください。
性格によって安静は難しいかもしれませんが、少なくとも激しく興奮するような遊びやお散歩も行わないようにしましょう。
接種後2〜3日は過激な運動やシャンプーは避けた方が良いです。
理想としてはシャンプーは接種1週間後以降に行うようにしましょう。
また、接種後免疫力がつき感染症から身を守れるようになるまで二週間ほどかかるといわれています。
ペットホテル、トリミング、ドッグランの利用等で接種を検討している方は、利用予定日の二週間前までには打つようにしてください。
狂犬病以外のワクチンに関しては、任意接種なので飼い主さんが何を打つかどういう頻度で打つかを決めることが出来ます。
このワクチンプログラムが絶対に正しい!ということは無く、その子の状況により最適なプログラムは変わってきます。
WSAVAの提唱しているプログラムを参考にしつつ、飼育環境、体調、その子の体質(副作用を起こした事がある等)によって打つ頻度や種類を検討し、愛犬に負担が少なく、感染症から効率的に身を守れるプログラムを獣医さんと一緒に考えてみましょう。
また、ワクチンの種類によってはワクチンの効果が持続しているかを調べることの出来る検査も広く動物病院で行われているので、接種間隔に悩むようであればこのような検査も利用しつつ、接種の有無を判断するとより犬に負担の少ない形で予防が出来ます。
執筆・監修:獣医師 にしかわ みわ
大学卒業後、一般小動物病院にて臨床獣医師として勤務、一次診療業務に携わる。
その後、都内大学付属動物病院にて研修獣医師として勤務、高次診療業務に携わる。
再び各地の一般小動物病院に勤務する傍ら、電話における動物健康相談業務にも従事。
海外にて動物福祉を勉強するため、2019年に欧米諸国へ留学。
現在は留学や臨床業務の経験を活かし、動物の健康や各国の動物福祉に関する記事の執筆業務を行う。
公開日 : 2020/06/23