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まず「ピグミー」ですが、これは成人男性の身長が150cmに満たないアフリカに存在する民族の名前に由来しています。
コリドラス・ピグミーという魚がいるように、小型の動物の名称に用いられることがあるようです。
そして、「マーモセット」とは 猿 の種類の名称であり、この種類は基本的に体長15cmから25cmと小型です。
つまり、ピグミーマーモセットは 「小型猿の中でも特に小さい猿」 ということを表しています。
ピグミーマーモセットの体長は同じマーモセット種の中でも特に小さく、尻尾を省けば 11cm〜15cmほど しかありません。
特に赤ちゃんの頃は非常に小さく、人間の指と同じかそれより小さいほど。
そのように小さいこともあり、ピグミーマーモセットの寿命は 約12年 です。
リスザル など同じ小型猿の平均寿命が15〜20年と言われていますから、それと比べても短いですね。
かつては世界最小とされていましたが、それは1998年にピグミーネズミキツネザルという種類が発見されました。
現在はそれに次いで世界で二番目に小さい猿と言えるでしょう。
野生のピグミーマーモセットはコロンビア南部、ペルー南東部、エクアドル南部などの南米アマゾン川上流域に分布し、基本的には川沿いにある森の木にとどまって生活しています。
基本的に地面に降りてくることはありません。
彼らの主食は 樹液 です。
その採取方法が実に賢いもので、木の幹を歯で削っておき、翌日そこに染み出て溜まった樹液を食べるというものです。
この行為は未来を予測してされることであって、通常人間以外の動物が行うことはありません。
ピグミーマーモセットの知能の高さが伺えますね。
また、彼らは雑食なので、樹液以外にも昆虫や果実を食べることもあるようです。
ピグミーマーモセットにとって宿でもあり食料でもある木は欠かせないものですが、近年の森林伐採によってそれが奪われ、年々数が減っていってしまっているのが現状です。
そして、一時ペットとして人気になったために乱獲されてしまい、絶滅の危機にまで陥りました。
このような背景もあり、現在彼らは入手困難になっています。
野生のピグミーマーモセットには面白い特徴があります。
それは 鳴き声に方言がある ということです。
2009年にされた研究発表により、ピグミーマーモセットが発する鳴き声が地域ごとによって違う特徴を持っているのが判明しました。
その理由は、森の木々の密度が関係しているとも、自分たちのグループを見分けるためとも言われています。
ある説では、ピグミーマーモセットが自分の配偶者を決める場合、近親交配を避けるために鳴き声を聞いて出身地を判別しているとも言われています。
先述したように現在彼らは希少種であり、2006年にワシントン条約付属書(サイテス)Ⅱに分類されました。
それに従い、輸出国の許可がなければ商取引きがされないため、入手は困難であると言えます。
しかし、全く取引されていないわけでもなく、日本では国内で繁殖された個体を販売しているところがあります。
ただ、それも希少なので、値段は平均的に高く 50万円以上する ことが一般的です。
一時は注目を集めたピグミーマーモセットですが、その数が少ないため普及はしておらず飼育情報も少ないです。
また、多くの部分が他の猿に共通するので、別の種類の猿を飼うことを検討している方もぜひご覧ください。
まずはじめに、飼育する上で必ず意識しなければいけないことをご紹介します。
なお、 猿の特徴や飼育方法に関してはこちら でも詳しく解説しているのでチェックしてみてください。
これはどの猿にも言えることですが、彼らは知能が高く大人になるにつれて自我をはっきり持つようになります。
本来野生動物である彼らは、その本能と自我に従い、野生の猿と同じような行動をとる可能性も出てきます。
必ずしも人間に従順になるとは限りません。
この点が、他の動物を飼うこととは大きく異なるところです。
そして、知能が高いゆえに、しつけや訓練は幼い時からじっくり長い時間をかけてしなければいけません。
躾が甘い、または猿が自分の意思で行動するようになった場合は、人間の手に負えなくなる可能性もあります。
猿を飼う時は、成体になって猿がどんなことをしても、愛情を持って接してあげることが必要です。
また、樹上を移動して活動するために、トイレの習慣はありません。
賢いことからトイレトレーニングをすればできるようになると思われるかもしれませんが、基本的に習性を変えることはできず、トイレは覚えません。
排泄物の匂いは相応にあるため、オムツトレーニングができるまでは苦労することが多いでしょう。
ピグミーマーモセットは賢い上に警戒心が強い性格をしています。
最初から無理に手の上に乗せようとしたり、過剰なスキンシップを強いると心を開いてくれません。
はじめはゆっくり、無理をさせないように接しましょう。
信頼されるようになれば、互いに安心できる良いスキンシップが取れるようになるでしょう。
猿を飼う場合、他のペットと大きく異なることがあります。
それは、人間と猿は同種族であるために、同じ病気にかかるということです。
もし片方が感染症にかかってしまったら、もう片方に移ってしまう恐れがあります。
猿から人間に移るケースは少ないようですが、それでも警戒しなければなりません。
また、自分が感染症にかかった時は、猿の健康状態にも気を付ける必要があります。
人は幼少期からたくさんのワクチンを接種することによって怖い感染症から守られていますが、現在日本にはピグミーマーモセットに対して安全に接種できるようなワクチンは存在しません。
特にピグミーマーモセットは小さく、丈夫であるとは言いづらいので、長生きさせるためには細心の注意が必要です。
運動不足を防ぐため、動き回れるほど広いケージを用意しましょう。
高さも1m〜1.5mほどあると良いです。
また、室温は温度25~27℃、湿度50%を保つようにしてあげてください。
生後1年までは必ず上記を保つようにし、成体後は多少低くなっても問題ありません。
参考価格:14,800円(税込)
サイズ(幅×奥行×高さ):90×62×167cm
重量:22㎏
生産国:中国
習性としてよく物をかじるので、丈夫で太めな木を用意します。
上は猿がてっぺんまで登った時に天井が掴めないように、また下は尻尾がつかない位置に調整して設置しましょう。
また、猿は床にとどまっていることはほとんどないので、とまり木以外にも捕まったり乗ったりできる物をケージ中間部においてあげると良いです。
参考価格:719円(税込)
サイズ(幅×奥行×高さ):1.5×30×2cm
重量:85g
生産国:日本
ケージの中に設置し、ホットスポットを作りましょう。
そうすればピグミーマーモセットが自分で温度調節をしやすくなり、より快適に過ごせます。
特に幼体時で寒い時期には必須です。
熱くなっている部分に触接に触ってヤケドをすることがないよう十分に配慮してください。
室温は、エアコンで25~28度ほどを保つようにしましょう。
参考価格:1,052円(税込)
サイズ(幅×奥行×高さ):6.2×10×6.2cm
重量:30g
噛んで壊してしまうことが多いため、丈夫なものを選びましょう。
参考価格:3,195円(税込)
サイズ(幅×奥行×高さ):29×15.5×6cm
容量:300ml×2
ピグミーマーモセットにはモンキーフードを利用することができます。
本来は花の蜜や木の樹液、時に昆虫やカエルやトカゲ、クモなどを食べています。
ピグミーマーモセットの成長に合わせて、どういった餌を与えれば良いのでしょうか。
ここでは、幼体から成体まで、成長過程に合わせて与えるべきフードをご紹介します。
成体になるまでは約24ヶ月ですが、生後約1年までには成体と同じような食事を取らせるようにします。
まず始めの3~4ヶ月間は、モンキーミルクを3~5時間に一回与えます。
4ヶ月目からは、モンキーミルクと合わせ離乳食をあげましょう。
離乳食は粉末状のフードにすりつぶした野菜、果物を加えたものを作ります。
また、よく運動するようになったら、固形の野菜や果物を与えてみても問題ありません。
ただし、それらが消化出来ずにいるようだったら与えるのを控えるようにしましょう。
本格的にえさを固形物に移行させ始めるのは、6ヶ月目からです。
徐々に固形物の割合を増やしていき、10ヶ月目には成体と同じえさをあげられるようにしましょう。
えさの量は、体重が増えない範囲ならどれほど与えても大丈夫です。
そのため、体重は毎日こまめに測るようにしてください。
基本的には栄養バランスが最も取りやすいモンキーフードを中心に、固形の野菜や果物をあげるようにします。
量は幼体時と同様体重の増減をみながら調整し、1日2回与えましょう。
ただし、ピグミーマーモセットは小さい体の上本来の食料が樹液ですから、固形物を吸収しきれない場合もあります。
様子を見て、あまりえさを食べられていない時はモンキーミルクをあげましょう。
また、ビタミンC・D3が不足しないようにビタミン剤を時折与えると良いです。
参考価格:999円(税込)
内容量:300g
ピグミーマーモセットを飼う時に、必ず用意しなければならないのが紫外線ライトです。
室内で飼う場合は、本来必要な太陽光が不十分になります。
子供の時に紫外線を必要量浴びていないと、ビタミンDの欠乏や代謝異常を起こし「くる病」(骨軟化症)にかかりやすくなってしまいます。
足が曲がって成長してしまったり、骨が軟化により変形したりと体全体に異常をきたす大変な病気なので、ケージに入れしっかり当ててあげるようにしましょう。
特に生後半年はきちんと浴びさせるように意識してください。
爬虫類と違って上下に活動できるので、ライトに直接触れてヤケドをしてしまうことがないように柵などで対策しましょう。
参考価格:2,119円(税込)
サイズ(幅×奥行×高さ):10×22×7.5cm
重量:400g
犬のように家畜化されて歴史が長い愛玩動物とは違い、躾という概念を持ち合わせていない野生動物に近いとも言えるので、激しく叱ったりすればストレスを溜めてしまいますし、甘やかしてしまうと舐められてしまいます。
よくペットのしつけ教室がありますが、猿のしつけ教室は探すのは困難です。
まずは適度な距離感を徹底して守り、猿が警戒心を持っているうちはむやみにしつけようとしない方が良いでしょう。
体長:11cm〜15cm(尻尾は約20cm)ほど
体重:240gほど
体色:茶色、灰色、黄色
寿命:12年ほど
価格:基本的に50万以上
ピグミーマーモセットは2匹セットで売られていることが多く、その場合値段は倍になります。
しかし、単体だと臆病な性格になることが多いと言われているため、余裕があれば2匹同時にお迎えする方が彼らにとっても良いかもしれません。
また、病気になったときに見てくれる動物病院はほとんどありませんので、あらかじめ受診できる病院を探しておくことが大切です。
ピグミーマーモセットは賢いので、飼育する際は適切な距離感と心遣いが必要です。
賢いものの、愛玩動物ではないことをしっかりと認識しておきましょう。
互いに快適なスキンシップをしていけば、あなたの良きパートナーになってくれる可能性があります。
監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2023/05/31
公開日 : 2016/11/09