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乳製品にアレルギーがある猫を除き、猫にチーズを与えても問題ありません。
ただ、塩分や保存料の少ない 猫用のチーズ であることが前提です。
人用で売られているものは猫にとっては塩分が多すぎるので、あげるのは止めましょう。
また、人用のチーズで味付けや風味付けがされてあるものの中には、玉ねぎエキスやニンニクエキスなど、猫に中毒を起こす成分が入っていることがあります。
香辛料やハーブが入っている場合も猫にとっては有害であることがあるため、「机の上に用意したおつまみのチーズを猫に食べられた…!」ということがないよう十分に注意してください。
チーズは乳脂肪とたんぱく質の塊です。
チーズの25〜30%は脂肪分で、20〜30%はたんぱく質で出来ています。
猫は 完全肉食動物 なので、動物性脂肪とたんぱく質が多ければ多いほど食べ物としての魅力を感じるようになっています。
また、甘みを感じない(甘みの受容体がない)猫にとっての大切な味覚は、旨味と言われています。
チーズは熟成期間にたんぱく質がアミノ酸に分解されて、多くの旨味(グルタミン酸)を含んでいます。
動物性脂肪とたんぱく質の塊であるチーズは、猫にとっては人が感じるよりも美味しいと感じていることでしょう。
以上のことから、大体の猫はチーズが大好きなのです。
「牛乳を飲ませたら下痢になってしまいました…!」という猫さんでも、チーズは熟成期間に乳糖が減っているので、問題なく食べることが出来るケースが多いです。
ただ、猫は幼少期に食べたものを好む傾向にあるので、中にはチーズが好きではない猫もいます。
基本的に、猫用に販売されているチーズであれば 塩分への配慮 はしっかりとしているはずです。
ただ、日本は猫のおやつの基準が厳しいというわけでもないので、添加物は気になるところかと思います。
本来であれば冷蔵で保管するはずのチーズが、乾燥されているとはいえ、常温保存でも長い消費期限であるのは不思議です。
チーズ風味のおやつであれば常温保存であることも頷けますが、厳密に言えばそれはチーズではないものでしょう。
人用のチーズで猫にも食べさせられる可能性があるのは、塩分の少ないチーズです。
成分表からすると リコッタチーズ と モッツァレラチーズ です。
しかし、脂肪分もたんぱく質量も他のチーズに比べると少ないので、猫にとってチーズの魅力は半減するかもしれません。
一般的に人が食べているチーズはプロセスチーズなのですが、これは猫にとっては塩分が高すぎるため与えないようにしてください。
猫は体が小さいことから、少しの塩分でも多すぎる状況になってしまうので要注意です。
猫にチーズをあげることのメリットとして一番に挙げられるのは、猫が喜ぶという点です。
完全室内飼育 は猫の健康にとって非常に重要なことで推奨されている飼育条件ですが、猫の 狩猟本能 や 探索本能 は満たされていないケースが多くあります。
室内飼育は、危険ではない代わりにハラハラドキドキなどの楽しさが無いのです。
そんな室内飼育の暇な時間に、大好物のチーズを使って楽しくトレーニングや夢中になれる遊びを考えてあげてください。
チーズが好きな猫であれば、チーズが活動のモチベーションになることでしょう。
例えば、以下のようなトレーニングがあります。
猫は自分の欲求や本能に従順なので、無理にトレーニングをすることはできません。
そこでモチベーションとなるチーズの出番です。
大好きなチーズで飼い主さまとのコミュニケーションや本能行動の欲求を満たしてあげると、様々な問題行動も予防できるかもしれません。
次に、猫にチーズをあげるメリットとしてはその栄養素が挙げられます。
チーズには沢山の ビタミン と ミネラル が含まれています。
具体的に挙げると、脂溶性ビタミンであるビタミンAや、水様性ビタミンのビタミンB2が代表的です。
また、カルシウムも多く含まれており、成長期の猫には良い補助食品となるでしょう。
猫は犬よりも多くのたんぱく質量を必要とするため、チーズのたんぱく質量の多さはとても良い栄養源となります。
しかし、脂肪分も多く、カロリーは思っているより多くなってしまうかもしれません。
体に良いとしても食べ過ぎては肥満の原因になるので、十分に注意してください。
猫に与えても良いチーズであるかどうかを確認したら、次に注意するべきは カロリー過多 です。
チーズによってカロリーは大きく異なりますが、体重あたりで換算してみると、ひとかけらでも大きな影響があることが分かります。
例えば、チーズのおやつを体重4kgの猫に5粒、毎日与えたとします。
これは、単純に計算すると体重60㎏の人間では75粒も食べていることになるのです。
毎日75粒はどう考えても食べ過ぎです。
体の小さな猫への影響力について想像するには、人間に置き換えてみるとわかりやすいですね。
また、大前提としてチーズをあげられるのは、アレルギー(または体質に合っていない)がないという点です。
中には「アレルギーってどういう症状が出るの?」と不安になる人もいることでしょう。
猫の 食物アレルギーに多い症状 は以下の通りです。
初めてチーズを食べる時には、上記のような症状が出ないかどうかを確認するようにしましょう。
猫に乳製品アレルギーが多いかと言えば、そんなことはありません。
ただ、体質というのは外側から予想できるものではないので、初めて食べる時にはごく少量だけを与えるのが良いです。
既に持病がある時には、チーズをあげるのに注意が必要です。
以下に猫の持病に多いものを挙げましたので、順に確認していきましょう。
基本的には慢性腎不全の猫にチーズをあげるのは推奨されません。
猫の慢性腎不全の治療の大きな柱である治療食は、腎不全のステージによってたんぱく質の制限がかかっています。
また、カルシウムとリンの調整も治療食にはとても重要なものです。
チーズにはたっぷりのたんぱく質とカルシウムが含まれているので、治療食の効果を減弱してしまいます。
せっかく慢性腎不全の治療食を食べているのであれば、チーズをあげるのは止めておきましょう。
しかし、"基本的には"というところはポイントです。
慢性腎不全によって食欲が無くなって、どんどん体重が減ってしまうと余命が短くなってしまいます。
腎不全で食欲が無いけれど、チーズだけは食べるというケースもあります。
チーズだけでも食べるなら食べて欲しいという状況であれば、慢性腎不全でもチーズを食べてもらうこともあるので、担当の獣医師に確認してみてください。
尿石症の治療中の猫にもチーズは与えてはいけません。
食べたものによってオシッコの性状は左右されるので、膀胱炎や尿路結石、ストルバイト尿、シュウ酸カルシウム結晶などの診断名がついている場合には、少量でもチーズをあげるのは良くありません。
猫の尿石症も、治療食がメインの治療となる病気です。
つまり、食べたものを管理することによって尿中に石ができないようにしているのです。
そこでチーズをあげてしまうと、尿中の性状が変化してしまって膀胱炎が再発したり、尿路の石が大きくなってしまう可能性があります。
美味しいチーズを食べてしまうと、治療食を食べなくなるというリスクもあるので与えないようにしましょう。
猫の心筋症は、食餌制限や食餌療法がメインの治療ではないので、チーズを少量食べても問題は無いでしょう。
ただし、心臓に負担がかかるような肥満体型であれば話は別です。
適正体重になるためには、オヤツやチーズを食べないようにしなければなりません。
もし既に利尿薬を飲むほどの心筋症(心不全状態)である場合には、塩分の多いオヤツは避けるべきです。
血圧の上昇は猫の心臓や血管にも負担になります。
間違って大量の塩分を取ってしまうと、肺水腫(肺に水がたまる)可能性も出てくるので、盗み食いにも要注意です。
この他にも 糖尿病、関節炎、膵炎、皮膚炎 などの持病がある猫に、チーズを安易に与えるのは良くありません。
必ず担当医に確認してからチーズをあげるようにしましょう。
チーズは動物性脂肪やたんぱく質が多く、猫にとって嗜好性が高い食品です。
塩分やカロリーに気を付けて、持病が無ければ食べても問題ないでしょう。
もちろん、あげ過ぎては健康を害するので、ごくごく少量にとどめておくのがおすすめです。
チーズの魅力によって猫の狩猟本能や探索本能を満たす生活になるように工夫するのは良いことです。
肥満にならないように、十分に注意して与えるようにしましょう。
持病がある猫さんでも、状況によっては食べても良いと判断されることもあります。
その場合は必ず持病の状態を把握している担当の獣医師に確認しつつ、チーズを与えるようにしてください。
執筆・監修:獣医師 山口 明日香(やまぐち あすか)
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科卒後、2つの動物病院に勤務し、現在も臨床獣医師として働く。
ワークライフバランスを整えるため、在宅でのLINEおよび電話による健康相談、しつけ相談も開始。
その過程で、病気のみならず各種トレーニングと問題行動の大変さ、大切さを知る。
今後は学校飼育動物学で学んだ動物飼育と、子供の情緒の発達についても発信し、獣医動物行動研究会において問題行動の知識を深め、捨てられる動物が減るように正しい情報を伝えるべく模索中。
最終更新日 : 2022/05/16
公開日 : 2022/05/13